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国策・中小型液晶「日の丸連合」は、世界で戦えるか

東洋経済オンライン 10月21日(金)10時36分配信

 「グローバルで強くない事業は、早晩つぶれる」。8月末の「ジャパンディスプレイ」設立会見で、日立製作所の中西宏明社長はこう言い切った。

 昨年末、日立は台湾の鴻海精密工業に中小型液晶事業を売却すると騒がれたが、以前から事業を切り離す道を探り続けてきた。新会社に譲渡する日立ディスプレイズは、直近決算で221億円の債務超過に沈む。韓国や台湾のメーカーとの、激しい価格競争が背景にある。

 東芝も苦しい。譲渡する東芝モバイルディスプレイは、直近で1033億円の債務超過。同社は「iPhone」に液晶パネルを納入しており、来春には新工場が立ち上がる。足元は絶好調に見えるが、新工場の設備投資1000億円の全額をアップルが負担し、自社で投資する体力は残っていない。ソニーの中小型液晶事業も直近は営業赤字だ。一部事業所を京セラに売却するなど事業整理を進めてきた。

 3社の売上高を合計すれば、一躍業界トップとなって存在感は一気に増す。だが、中身はフラフラであり、“ゾンビ企業”の寄せ集めと揶揄されるのも無理はない。新会社の社長には、抜本的な改革を行う手腕が問われている。

 一方、シャープは日の丸連合とは距離を置き、独立路線を貫く。亀山工場の大半を液晶テレビ向けから中小型液晶に切り替え、増産体制を敷いている最中だ。「シャープにも事前に相談したが、賛同してもらえなかった。もし実現しても、独占禁止法に引っ掛かったかもしれない」(産業革新機構の能見社長)。

 中小型液晶市場は伸び盛りだ。スマートフォンやタブレット端末向けが牽引し、市場規模は2011年の2.3兆円から、15年は4.2兆円まで拡大すると見込まれる(ディスプレイサーチ調べ)。iPhoneなどに使われる高精細な低温ポリシリコンの液晶パネルは量産が難しく、今のところ台湾メーカーは追随できていない。だからこそ日本メーカーの技術力が脚光を浴びたわけだが、キャッチアップされるのは時間の問題かもしれない。

 次世代ディスプレーとして注目される有機ELパネルも、日本発祥の技術。だが最初に量産にこぎ着けたのは韓国サムスン電子で、99%の世界シェアを握る。量産投資を進めるLGディスプレイがその後を追うが、ソニー、東芝、日立のいずれも慎重姿勢を貫いてきた。

 ただ、日の丸連合は有機ELの量産も視野に入れる。一度はあきらめた各社の技術を結集すれば、韓国勢に対抗できるのか。技術開発でも、強いリーダーが求められている。

(週刊東洋経済2011年10月8日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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最終更新:10月21日(金)10時36分

東洋経済オンライン

 

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