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ロシア:北朝鮮に関与じわり 特別列車を試験運行 半島統一を想定か

 ロシア極東沿海地方のハサン駅と北朝鮮羅先(ラソン)市の羅津(ラジン)港を結ぶ鉄道(全長約55キロ)の補修工事が完了し、12~13日に特別列車の試験運行が実施された。露朝両国は首脳会談以後、外交や軍事分野などで結びつきを強めている。ロシア側は朝鮮半島情勢に関与する姿勢を示しており、今回の鉄道整備を「積極政策の第一歩」(在モスクワ外交関係者)と位置づけているようだ。【モスクワ大前仁、北京・米村耕一】

 国営ロシア鉄道などによると、特別列車は12日夜に沿海地方ウラジオストクを出発し、ハサンを経由して国境を越え、13日朝に羅先市の豆満江(トゥマンガン)駅に到着した。駅付近の「露朝友好の家」前で記念式典を開き、ロシア鉄道のレシェトニコフ副社長や北朝鮮のチュ・ジェドク鉄道次官らが出席。副社長は「路線の第1期工事を無事に終えた」と述べた。

 ロシア鉄道は今後、残された路線整備と羅先にある羅津港の施設工事を進めて、来夏までに貨物輸送を始める方針。露朝両国は01年の首脳会談で、ロシア極東と北朝鮮を結ぶ鉄道建設で基本合意し、08年に補修工事を始めた。

 北朝鮮には羅津港を鉄道や道路網でロシア、中国と直結させ、物流の拠点として発展させたいという思惑がある。羅津港の三つの波止場のうち一つは、すでにロシア側が使用権を持っており、韓国の聯合ニュースは11日、「(波止場の)補修工事はすでに始まった」と伝えている。

 ただ、8月下旬に現地を訪れたロイター通信の記者は、15基のクレーンが全く稼働していない港の様子などを報じており、ロシアとの鉄道補修が完成しても、北朝鮮の思惑どおりに物流拠点としてフル稼働するまでには相当の時間がかかりそうだ。

 ロシアのメドベージェフ大統領と北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記は8月下旬の首脳会談で、ロシアと朝鮮半島を結ぶ天然ガスパイプラインの建設で基本合意した。さらにロシアは北朝鮮が抱える債務約110億ドル(約8460億円)のうち9割を放棄する方針を固めたとの報道もある。

 ロシアは朝鮮半島統一のシナリオを念頭に積極関与する政策を進めている模様だ。ロシア科学アカデミー極東研究所のジュビン朝鮮研究センター所長は、朝鮮半島を鉄道が縦断することで南北間の接触が促進される可能性を念頭に「北朝鮮と韓国の信頼醸成につながる政治的な効果を持つ」と鉄道路線整備の意義を解説する。

毎日新聞 2011年10月14日 東京朝刊

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