(昨日からの続き)施設入所を親族に説得され悩んで決めた方の看取り(前篇)を読んでいない方は、そちらから先にお読みください。

【主任ケアワーカー】
○居室環境
いつもきれいになっており(何も物がないせいか)清潔感はあったと評価する。ただ、ご本人の部屋というよりは、仮り間のように感じたのは、広いスペースがある居室なのに何故、入り口の側なのか? もう少しでも窓側の景色が良くて外の風を感じられる所にベッドは置く事を検討しても良かったのではと思う。容態急変し最期の時は、ベッドを居室中央に移動し周囲から見守れるように行った。スペースのある居室の使い方やそこで住む、その方が一番心地良いという環境を常に考えていく配慮も必要ではないだろうか。どうしても、処置や介助がし易いという職員側の都合になって、その方の住む所が業務の場所になりがちな点を今後は充分配慮していきたい。

○口腔ケア・保清
口腔ケアは一生懸命、担当が中心となって声掛け行われていたので保清が出来ていたと思う。入浴は出来る限り入ることができ、体清拭も実施、スキンケアが良く出来ていたと思う。

○今回の看取り介護を終えて
容態急変時に副主任ケアワーカーから声を掛けて貰えたことで、最期の瞬間に立ち会うことができた。聴いていたカセットテープの最後の曲が終わると同時に、ご本人は静か眠るように最後の呼吸をした。ねむりについたご本人に、付き添っていたユニットスタッフがひとこと話し掛けた言葉がすごく心に残った。「関さん、明日から私の毎朝の仕事が(口腔ケア)無くなっちゃったよ・・・・」。ご本人に対するユニットスタッフの日頃のケアの全てを見たような瞬間だった。手を握り締め喪失しているケアワーカーの姿は、最期に立ち会えなかったご家族の代理を果していたと思う。立ち会えなかったご家族に最後の様子を伝え、聞いていたカセットテープを手渡すと感謝の言葉を受けた。看取りの研修で学んだ心を行動に移すユニットスタッフ、担当ケアワーカーと一緒に看取ることが出来た事は、今後の自分にとって大きな糧となった。

 (相談援助部門の評価 ・ 課題 )
【ソーシャルワーカー】
5ケ月間という長い看取り期間だったが体調の良い日にはケアワーカーが行事への声掛け行い参加出来ていたと思う。入浴に関しても体調を見て入浴出来ていたと思う。また、亡くなる数日前にケアワーカーと〇〇の利用者で、ご本人の誕生会を祝う事ができご家族の方も喜ばれており良かったと思う。朝の出勤時に訪室すると体調の良い日には声掛けに反応があり笑顔を見せて頂いた。最期の時にご家族が間に合わなかったのが残念であったが〇〇のケアワーカーが最期の時を看取ることができたのは良かったと思う。

【ケアマネジャー】
入園されてから間もなく看取り介護となり、通常の援助よりも看取り介護となってからのほうが長かったが、その期間を通してご本人・ご家族とスタッフとの距離が少しずつ縮まり良好な関係が築けたと思う。入園後より、特に夕方からの不穏状態が続きどのように関わるべきか、その対応について戸惑ってしまう事が多くあったが看取り介護開始後より不穏状態が徐々に減少し、間もなく精神状態が安定してきた。会話を交わす際にも笑顔が多くみられるようになり、ようやく本来のご本人との関わりを持つ事ができたように感じた。しかし、この関係性が看取り介護の前から築く事ができていたのであれば、看取り介護開始後の支援はどのようになっていたのだろうか。私自身、ご本人との関わりを“大人数の中の一人”としてしか見ていなかったのではないかと思う。看取り介護になってから個人として改めて関わる事ができたように感じ、この時間があった事で当園での生活の質が高まったのではないかと思った。

入園当初より食事摂取面は細心の注意や配慮を重ね支援にあたっていた。まず入園前の情報提供の段階において、その時点での嚥下状況や長年の援助スタイル、他施設での対応方法や注意点などをケアワーカーや他職種に伝えてはいたものの、結果要領を掴みきれずその後の経口摂取支援に繋げる事が出来なかった事から、的確に情報提供する事の難しさを痛感した。入園後も、こまめに援助方法を確認し統一した対応がどのスタッフでもできるように支援すべきであった。看取り介護が開始となって少ししてから体調が安定した時に、再度食事摂取について検討したものの状態から難しいとの話を受け納得せざるを得ない状況だった。しかし、その中でも担当ケアワーカーの意見を取り入れ飴をなめる機会を作る事ができた事は、良かったと思う。

ご家族との距離間に関して、入園前よりあまり乗り気ではなかった思いや看取り介護開始後に体調が落ち着いた際に「もう1回食べさせる事はできないだろうか」との思いに対しても、しっかりと受け止める事が出来なかったように感じる。入園に向かうまでの過程がいかに大切か感じたと共に、ご本人の思いだけではなくご家族の思いに対しても、真摯に受け止めていける存在になりたいと強く思った。

看取り介護開始して間もなく、以前在宅生活を送っていた時に担当だった他事業所スタッフが面会に来た。ご本人も目を開け、スタッフの顔を確認する様子が伺えた。長年、担当していたスタッフとの信頼関係を目の当たりにして『自分たちも、そうなりたい』と思っていたが、この期間を通して当園のスタッフとの信頼関係が築け、寂しくない最期の瞬間を迎えられたのではないか。ただしご家族が最期の瞬間に立ち会えなかった事が残念だった。もう少し早い段階から、最期の瞬間に立ち会って頂けるような働きかけ、言葉かけを行っていけるように、他職種との連携についてを考えて行きたい。

( 給食部門の評価 ・ 課題 )
H〇〇年〇月〇日まで食事を提供し、翌日の〇日から食止めになった。厨房ではすぐに提供できるゼリーや飲み物を何種類か用意し、要望があれば提供できる準備をしていた。
ただ、ゼリーなどを用意するだけでなく、他職種の方と話し合い、何ができるか考え、今後は看取りの方の部屋にも訪問出来るようにしたい。

( 総合的な評価 ・ 課題 )
口腔ケアに関して、前回看取り介護対応を行った方(〇〇氏)の反省点を活かし、残歯があり常に口を開けた状態だったがご本人に合う口腔内保清ジェルをみつけ対応することで、傷のない清潔な状態で過ごす事ができた。ただし、この保清ジェルに関しては1年以上前に歯科医師による研修(毎月実施されている口腔機能維持管理指導)でサンプルを各ユニットに渡していたが、実際に活用すること・日々の援助に繋げる事が今まで出来ていなかったという点が明るみになった。他のユニットも含めて、看取り介護を実施する前の段階で随時必要な状況を判断し、その人にあった援助を実践できるようにしていきたいし、再度ユニット内でも検討してほしいと思う。

居室のしつらえに関して、〇〇居室(2人部屋)の廊下側に看取り介護前から居住していたが、看取り介護開始後はご家族の宿泊を視野に入れ、ケアワーカーが夜間対応する際にも少しでも気にならないようにとの配慮により、そのまま廊下側で過ごして頂いた。その後状態が落ち着いてからもベッドの場所を調整する事がなく最期まで過ごす結果になったのは、生活よりも業務を優先した事が原因だった。またキャビネットの扉を外して衣類や必要物品等の出し入れがしやすくしていた事や整理整頓されていたというよりかは殺風景な雰囲気になっていた事も同様の原因である。今までは何の疑問もなく自然としていた事だが、今後は“生活の場である”という視点を忘れず改めて“その人らしい生活空間”が維持できるようにしたい。看取り介護開始となってから居室内の環境を必要以上に装飾する事が必要なのではない。その人が今まで過ごしてきた・生きてきた雰囲気が感じ取れる空間を、緑風園で生活している方達に『今から』取り組む事が必要だという事を、〇〇スタッフだけではなく全ユニットスタッフにも伝え、ぜひ今日からでも実践していきたい。

今回、栄養状態低下し皮膚トラブルリスクが高かったにも関わらず傷・発赤等なく過ごす事ができたのは、スタッフの細心の配慮のもと対応が徹底してなされていたものであると評価する。ただし、看取り介護対応者以外のスキントラブルが未だ多く、看取り介護対応者には徹底した対応ができて、なぜ通常の援助を行っている方にはできないのかを今一度考える事が必要ではないかとの意見があがった。この課題について今一度担当ユニットスタッフ間でしっかりと話し合い、日々の援助を見つめ直してほしい。

呼吸状態が悪化した際に看護職員とケアワーカー間での引き継ぎ、確認が不十分だった事で対応内容にケアワーカー間での混乱が生じ、結果ご家族が息を引き取る際に間に合わなかったのではないかとの話が上がった。これに関して看護師間の状況確認等の話し合いが行われていなかったため、このカンファレンスでは話が進まなかった。しかし、カンファレンス終了後に互いの状況を確認しあう。結果看護職員としては普段通りの対応をとっており何の問題もなかったが、冷静な看護職員の対応からその場に居たケアワーカーは冷たい印象を受け感情的になり看護職員とのコミュニケーション不足が生じてしまった。今後は通常でも行っている報告・連絡・相談体制の重要性を今一度確認すると共に互いがその体制を意識しあい、その方の苦痛や不安を取り除くべく具体的援助を見出していくと共に、他職種へ課せられている責務の理解をし、共に歩みより協力し合える関係性が強まるように努めたい。

今回の看取り介護の総合評価として、ご本人に対する身辺保清をはじめとした身体ケアは適切に実施されており、できる限り苦痛や不快感のない生活を送る事ができていたのではないかと評価する。特に『もし自宅で最期を迎えるなら、こうするのではないか』という視点に立ち援助の一つ一つを考え実践するよう努めた。自宅により近い状況で最期を迎えることができるように、ご家族との話し合いを重ね協力を得る体制がとれた事も大きな成果であった。結果、ご家族と同じ気持ちで最期を送る事ができたと思う。今回これらの援助が徹底して行えたという事は、担当ケアワーカーからの発言・問いかけ、そしてその影響力が非常に大きく、誰かが先頭に立ち取り組む事、発信する力を持つ事が大きな原動力に繋がることを改めて学ぶ事ができた。この評価を受け担当ケアワーカーから次の話を聞く。「私が発する事はほんのちょっとした一言だったが、それを同じユニットのケアワーカーや他職種のスタッフが聞いてすぐに動いてくれたという協力があったからできたものだと思います。私一人の力ではできなかった。皆で一丸となって関わる事で、ご本人が最期まで緑風園で過ごす事ができて本当に良かったと思います。」一人の小さな気づきが、その方の人生の大きな変化に繋がった事をスタッフ全員で受け止めてほしいと思う。
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以上2日間に渡って親族が入所を決めることを迷った利用者の「看取り介護」の検証内容を書かせていただいた。

旅立たれていった方は、本当に我々が傍らにいることを許してくれたのであろうか。本当に安らかに旅立って逝かれたのだろうか。その答えは我々が常に追い続けなければならないが、ただ我々は、どこの誰よりもそのことを実現すべく日々のケアに努めねばならないという気持ちを持ち続けている。

もしそれが辛いとか、嫌だと考えるようになった時は、「看取り介護」という場所にも、「介護サービス」という場所にも、我々が立つ資格はなくなったのだと思わねばならないだろう。

※明日は23日(日)の講演に向けて広島入りします。明日のOFF会や翌日の講演会でお逢いする皆さん、よろしくお願いします。今回はあまり時間がありませんが、始めての広島訪問を楽しみにしています。
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