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首都防衛でリスキーな計画―タイ当局、必死の洪水対策


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 タイ政府当局は20日、洪水が首都バンコクに流れ込まないようにする阻止作戦の試みを撤回し、首都の運河や東部の郊外に水を誘導するという、潜在的にリスクの大きい迂回計画を採用した。

イメージ Reuters

冠水したバンコク郊外の仏像(20日)

 膨大な量の水がバンコクに流れ込もうとしており、バンコク証券取引所の株価や、海外企業で最も多くタイに進出している日本企業の株価が急落している。

 タイのインラック首相は20日の記者会見で、選択肢は残されておらず、冠水したバンコク北方の工業団地を救済するため、首都の一部地域を通じて洪水のはけ口を作る以外に方法がないと述べた。

 同首相は「われわれは水が流れ込ませるしかない」と述べ、「これまで海に流れ出ている水はほとんどなかった」と語った。

 バンコクのスクブパン知事は、この抜本的な対策に署名した。7月以降で少なくとも320人の死者を出した今回の洪水は半世紀で恐らく最悪となった。同知事はこれより先、中央政府の洪水対応チームの指示に同意せず、バンコク住民に自分の言うことに従うよう要請していた。バンコク市と中央政府の指導者のこうした関係は、激戦となった7月の総選挙でインラック首相が政権の座に就いて以降、ぎくしゃくしていた。

 バンコク市内は依然としておおむね冠水していないが、郊外の一部は冠水しており、首都に迫っている。

 この水迂回計画が機能すれば、洪水の打撃を受けた日本企業を中心とする何百もの企業は一息つける可能性がある。ホンダやトヨタ自動車など多くの日本企業は、洪水で生産が混乱しており、製造工場ないし部品工場を閉鎖したと発表していたが、20日はこれにソニーの発表が加わった。

 ソニーは、タイの下請け業者や部品供給業者の工場が洪水に見舞われたため、デジタルカメラ新製品の発売を延期したと発表した。これは、タイ工場でパソコン用ハードディスクの生産を中止した東芝やニコンなど日本ハイテク企業の措置に続く動きだ。

 日本企業の相次ぐ現地工場操業停止は、割安な海外生産拠点を求める日本企業が1980年代以降、いかに多くタイに進出していたかを物語る。日本の自動車メーカーのタイ生産の比率は大きくなっていた。それは優良企業を自然災害に伴う混乱に対してぜい弱にする。自然災害は日本企業が日本国内でも受けていたもので、つい最近では3月の東日本大震災で生産が混乱した。

 ただし一部の産業アナリストは、タイには大きな生産サポート産業、部品産業が広がっている点を指摘。ベトナムやインドネシアなど他の近隣諸国で投資が増加しているとはいえ、今回の洪水でタイの投資先としての長期的な魅力が損なわれることはないとみている。

 日本の貿易団体は、タイの当局からは最近数週間、しばしば混乱させられる洪水警報が出ていたと批判している。インラック首相が19日、涙ながらに、政治的な団結を訴えたのを受けて、タイの市と政府はようやく洪水に対処する新戦略で緊密に協力しようとしているかにみえる。  
 

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