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2話
「皆さん進級おめでとうございます」

 そう言っているはAクラスの担任である高橋先生の声が廊下に漏れるが、自分は意気消沈してるのでそれどころではない。Aクラスは当然だろうと期待していたのに、記入ミスでFクラスと判ったのでダメージが大きいせいである。鬱屈とした気分でAクラスを素通りし、ずるずると引きずる様にFクラスへ向かうもその足取りは重い。
 ようやくFクラスへ着いたものの、ダメージからの立ち直りはまだ出来ていない。しかしいつまでもこのままでもいられないので、考え方を変えて前向きにする。どの道一年間は一緒に授業を受けるのだから、暗い顔では悪い印象しか与えないので笑顔を作るり、脳内シュミレーションをすます。......よし!

 「すいませ~ん、おくれちゃいました☆」
 
 「早く席に着け! このウジ虫野郎!!」

 うん、台無し♪

 「......ってどうしたの雄二。教壇なんかに立って」

 「いや。担任が遅れているから代わりに立ってみただけだ」

 「......あ、そうか。名前の記入ミスは0点扱いだから、その時点で次の最高成績者が代表者になるんだね」

 「......ま、そう言う事だ。だから俺がFクラス代表だから、このクラス全員が俺の兵隊ってわけだ」

 「つまり雄二に頼べば全員動くんだね」

 「もう少しオブラートに包め」

 言って雄二は顔をしかめてボクに言う。我が友人ながら苦労性である。そう思っていると教室のドアが開く。

 「......あ~君達、もうHRを始めますので席についてください」

 そう言うのは、おそらくコノFクラスの担任になった先生......いや名前は言わなくていいよね? どの道自己紹介をしてくれるんだから......

 「え~皆さんおはようございます。今日から二年F組の担任になる......


          黒板台すっからか~ん


 「......福原慎です。よろしくお願いします」

          ......もしかして、チョークが設備されてないのかな?

 「それでは設備の確認をします。卓袱台・座布団、その他不備があれば申し出てください。また必要な物があれば極力自分で調達してください」

 「せんせー、座布団の綿がほぼ入ってないです」

 「はい、我慢してください」

 「先生、俺の卓袱台の脚が折れています」

 「木工用ボンドが支給されているので自分で直して下さい」

 「センセ、窓が割れてて冷たい風が吹いてきます」

 「分かりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 
          ......あれ? ここって教室だよね?


 「では自己紹介を始めましょう。そうですね、廊下側からお願いします」

 そう言って廊下側の人達が自己紹介をうながす福原先生。

 「木下秀吉じゃ、演劇部に所属しておる」

 最初に自己紹介した木下秀吉は、可愛い容姿をしているが二卵性双生児の男性である。演劇部に所属しているだけあって演技が上手く、女装させれば姉である木下優子さんと瓜二つである。......一応言っておくけどボク達は可愛い部類にいるだけで、まだ男の子でも在るんだよ。

 「......土屋康太」

 次に自己紹介したのは口数の少ない土屋康太で、趣味は......バードウォッチングになるのかな? 一応写真趣味が高じているので人の笑顔等を撮るのが好き......なんだけど、たまにボクや秀吉の写真を売るのは止めてほしいな。
 
 「島田美波です。海外育ちで日本語は読み書きが苦手です」

 このクラスに珍しく女性の声が自己紹介したのが島田美波さん。男子生徒が多いFクラスで今唯一の女性であり、ドイツから来た少女である。日本に来てから一年しか経ってないため、本人の言う様に日本語関係にはうっといけど日常会話には問題は...... 

 「趣味は吉井明久を殴ることです」

 訂正、問題はボクに対しての発言でした。

 「はろはろ~ 今年もよろしくね吉井」

 うん、今年もよろしくね。だから日常会話に肉体言語も混ぜないでもらいたいな。こうして次々と自己紹介が終わり、次は自分の番となったので一応はボクの本名で自己紹介をしよう。

 「えーっと吉井明久です。気軽に『アキちゃん』って呼んで下さい」


          『『『『『ハァアーーーーーニィイーーーーー!!!』』』』』


 ......うん、気持悪い
 「うん、気持悪い。とにかくよろしくお願いします」

 こうしてボクの自己紹介が終わったところで教室の扉が開き女性が入ってくる。

 「あの...遅れてすいま...せん」

 そう言って入ってきた女性に、騒ぎだっていたクラスが静まり女性わ凝視する。

 「丁度自己紹介してる所なので貴方もお願いします」

 「はッはい!」

 そう返事をしてから、彼女は教壇に向かい。

 「あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします......」

 そう言って自己紹介をする姫路さん。本当ならAクラスに入るだけの実力が有るんだけど、残念なことに振り分け試験の時に体調不良のために途中退室してしまい、それ故0点扱いされてしまいFクラスに来てしまったのだ。

 「...あ、あのー質問良いですか?」

 そう言って手を上げて質問する男子生徒、

 「あっはっはい、なんですか?」

 「えーと。なんでFクラスにいるんですか?」

 「そっその。試験の最中に高熱を出してしまいまして......」

 そう言って恥ずかしそうに顔を赤くする姫路さん。

 「あぁなるほど、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに......」

 「あぁ化学だろ?アレは難しかったな」

 「俺の弟が事故に遭ったと聞いてそれどころじゃなくて......」

 「黙れ一人っ子」

 「前の晩彼女が寝かせてくれなくてさぁ」

 「今年一番の大嘘をありがとう」

 「秀吉とアキちゃんからラブレター貰ったから気になって」

 「今そんなの事言ったの誰!? ボクそんな事してないよ!!」

 「ワシもそんなの事しておらんぞ!?ワシはちゃんとした男じゃ!!」

          コレは想像を絶するほどの馬鹿だらけである
「でっでは一年間よろしくお願いしますッ」

 そう言って頭を下げる姫路さんの顔はいまだに赤いまま、こちらの方に歩いてくる。そして雄二の隣に座り息を吐く。

 「きっ緊張しました」

 「......あの姫「姫路」」

 ボクの声に重なるように雄二が姫路さんを呼ぶ。

 「あっはっはい! 何ですか、えーと」

 「坂本だ、坂本雄二」

 「あ、姫路です」

 「それより体調の方はもう大丈夫なのか?」

 「あっそれはボクも気になったよ」

 そう言って雄二の背中から顔を覗くと、姫路さんが驚いてしまった......

 「よ...吉井君!?」

 「とっと、明久が不細工ですまん」

 「うん、ごめんね。男の子が女の子の格好するのは変だよね......」

 実際ボクは女生徒の服装で居るから、驚くのは当然である。そんなボクらをしりめに姫路さんは

 「そっそんな事ないです! 目もパッチリしてるし顔のラインも細く綺麗です。むしろその......女性みたいです」

 そう言ってくれた。何にか嬉しくなる。
 
 「......まぁそうだな......明久に興味ある奴も居ることだし」

 「え?それって『そっそれて誰ですか!?』」

 雄二の言葉に反応する姫路さん。何故か先ほどよりも力強い気がする。

 「確か...久保ー」

 「あぁ久保君ね。一年生の時に勉強を教えてもらったからよく覚えてるよ」

 「えぇ!? よっ吉井くんって、久保君に勉強を教えて貰ったんですか!?」

 また驚く姫路さん。こう見えても久保君とは仲がいいので、振り分け試験のときには助けて貰ったよ。 ......でも名前の記入漏れのせいでFクラスになったからお礼を言い損ねたよ。

 「ハイハイ其処の人、静かに(パンパン)......」 教壇を叩く。

 「あ、すいません福原先s」

          ガタタン もぉわ―――――ん モクモクモク

 「え~......変えの教壇を用意します」

 そう言いながら廊下に出る福原先生は何事も無かったかのように行動する。......言っちゃあ何だけど、普通怒るとか呆れるとかするものだけど、平然としてるな~

 「あはははは......」

 ソレを見ていた姫路さんも可笑しそうに笑う姿はきr、

 「コホコホ」

 ......気弱そうに見える。

 「......雄二、ちょっと良い」

 「ン、何だ吉井」

 取り敢えずは廊下に出てから話をしよう。

「んで、話っていうのは?」

 廊下に出てきてもらった雄二が尋ねる。

 「ウン、実は設備の事なんだけど......」

 「言っておくが、俺は男に興味は無いぞ」

 「ウン、普段どういう目で見られてるのか思い知ったよ......。じゃなくてこの教室の事だよ」

 Fクラスに指を向ける。

 「あぁ、Fクラスは想像以上に酷いな」

 「Aクラスの方も見た?」

 「あぁ凄かったな、あんな広い教室は見た事無い」

 やはり雄二も驚いてる事がうかがえる。

 「そこでボクから提案だけど、せっかく二年生になったんだし『試召戦争』をやらない?」

 前々からやってみたかったし丁度いいかも知れないし。

 「戦争...だと」

 そう訝しげに聞き返す雄二、さすがに怪しむのも無理は無い。

 「うん、それもAクラス相手に......」

 「......何が目的だ......」

 「姫路さんのためだよ」

 目的の有無を聞かれたボクは、間髪入れずにそう答えた。

 「即答か......少し遠回しに話をはぐらかすと思ったが......」

 「遠回しでも元々Aクラスに攻める予定でしょう。だったら何か目的があった方が頑張れるでしょ」

 「......明久、お前......」

 「ウンなに?」

 「......いや、何でも無い。確かに俺もAクラス相手に『試召戦争』をやろうと思っていたところだ」

 そう言う雄二の顔がはにかみながらFクラスに戻る。

 「世の中学力が全てじゃないってそんな証明がしてみたくてな。それにAクラスに勝つための秘策も思いついた」

 ......確かに勝つための秘策は考えてるかもしれない。そう思いうながらボクもFクラスに戻るけど、本当に大丈夫なのか不安があるのは何故だろう?










 「―――です。よろしく」

 「では坂本君。君が最後の一人です」

 福原先生が雄二を促し、雄二も自信満々に教壇に向かう。

 「Fクラス代表の坂本雄二だ。坂本でも代表でも好きなように呼んでくれ」

 教壇に立ち自己紹介する雄二。こう見えて昔は神童と呼ばれるほどの才能がある。じゃあなんでFクラスにいるんだろう?

 「さて、皆に一つ聞きたい。Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが......」

 そして雄二が一息置き。

 「―――不満は無いか?」




           『『『『『大ありじゃあッ!!!』』』』』




 Fクラスが爆発した。

 「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ」

 「いくら学費が安いからってこの設備はあんまりだ!」

 「Aクラスだって同じ学費だろ!?改善を要求する!!」

 そうくちぐちに不満を漏らすFクラスの皆は、ほぼ男子生徒がいきり立っている。このFクラスで落ち着いているのは秀吉や土屋康太、唯一女子生徒の島田さんと姫路さんくらいしか居ない。

 「そこで代表から提案だが......」

 そして、雄二はFクラスを見渡して告げる。

 「FクラスはAクラスに対して、『試験召喚戦争』を仕掛け様と思う!」
長くなった・・・


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