空自次期戦闘機F-X選定まで1カ月 欧州勢「ユーロファイター」の実力を取材しました。
航空自衛隊のF-X(次期主力戦闘機)の選定まで、あと1カ月余り。欧米3陣営が、最後の売り込み合戦を繰り広げています。
アメリカの「F-35」が本命視されていますが、ダークホースである「ユーロファイター」の欧州勢が、猛烈に営業をかけています。
その意外な実力と、裏事情を取材しました。
一川保夫防衛相は7日、「次期戦闘機のわれわれが求める性能というのは、一番大事であることは間違いないわけですけれども」と述べた。
今、自衛隊の次期主力戦闘機選定をめぐり、欧米メーカーが、しのぎを削っている。
中でも唯一、ヨーロッパ各国が参加した共同メーカー「ユーロファイター」社が売り込んでいるのが、「タイフーン」。
イギリス・ウォルトンにあるユーロファイター社のタイフーンの組立工場では、現在、およそ10機が最終組み立て段階に入っている。
日本を意識してか、普段公開することのない工場への取材が、FNNに許された。
さらに、窓口となったイギリスの会社は、取材班にシミュレーターを公開した。
ほぼ完成に近いタイフーンだが、機体は比較的小型ながら、最高速度がマッハ2と、ほかのアメリカの2機種より速く、音速を超えた巡航飛行が可能だという。
軍事評論家・岡部 いさく氏は「タイフーンのメーカーは、スピードや上昇力、高高度性能を強調しています。搭載兵器も豊富で多様。そもそも、防空任務を意識してつくられていますから、最近多い、日本に接近してくる外国空軍機に素早く対処するというメリットもありますよね。まあ、そういう点は、日本のF-X選定においても強みになるのではないでしょうか」と話した。
現在、タイフーンは、ヨーロッパを中心に、イギリス、ドイツ、スペイン、イタリア、サウジアラビア、オーストリアの6カ国が採用していて、全部で300機ほどが配備されている。
最近は、リビアでのNATO(北大西洋条約機構)軍の作戦にも実戦投入され、メーカーにとってはセールスポイントになっている。
イギリスメーカー担当者は「日本がタイフーンを購入してくれれば、喜ばしいです。(導入すれば)イギリス政府を挙げた(日本への)最大の支援をしますよ」と話した。
将来的には技術を移転し、日本での100%製造も可能だとする、まさに破格の待遇を提示するメーカー側。
その裏側には、何があるのか。
工場内にはタイフーンの翼が置かれているが、ある1つはスペイン製で、ほかの1つはイタリア製。
タイフーンは、イギリス、ドイツなど4カ国による共同開発のため、部品は各国でつくられている。
製造に関わる企業は400社にまたがり、10万人の雇用を支えているというが、最近、その生産数は頭打ちとなっている。
イギリスメーカー担当者は「生産縮小の主な理由は、戦闘機を購入する欧州各国の不景気です」と話した。
現地では、メーカー側が、この工場も含め、従業員3,000人ほどを解雇すると発表した。
ユーロ危機にあえぐヨーロッパ中で、極東の日本では大きな市場が待っている。
その額は、2012年度だけでも550億円にのぼる。
ステルス性なども強調しながら、売り込みが続くタイフーン。
軍事評論家・岡部 いさく氏は「ヨーロッパからの軍用機で、これほど熱のこもった売り込みはありませんでした。日本のF-X選定は現在、アメリカ機が優勢とも言われていますが、不況にあえぐヨーロッパの航空機産業にとって、これが起死回生のカンフル剤となるのか、いよいよ正念場ですね」と話した。
(10/20 01:34)