分析は技術ではなく考え方[マシス]
相馬学社長
| 会社名 | (株)マシス |
|---|---|
| 代表者 | 相馬学社長 |
| 業種 | 分析法開発 |
| 所在地 | 青森県南津軽郡大鰐町大字八幡館字山下17-9 |
| 電話 | 0172-47-8650 |
不況にも負けない技術と信頼
青森県津軽地方の南端に位置する大鰐町。温泉とスキー、りんごの町として知られる、人口約1万2000人の小さな町である。
1995年、大鰐町に設立したマシスは食品分析や分析技術の開発を主業務としている。現在、大手を中心に約1200社の食品会社と取り引きがある。設立以来、順調に売上げを伸ばしており、この不況時でもほとんど影響がないという好調ぶりだ。
「地方の小さな町で生き残っていくためには、他社と差別化できる技術や人材が必要。設備の開発、体制強化、人材育成など、常に会社が成長していなければ、遠く青森まで発注してもらうのは難しい」というのは、代表取締役の相馬学社長。
同社が他社と異なるのは、一般の分析会社の3〜5倍の検証を行う点にある。「これ以上はない」というところまで検証することで、限りなく真の値に近づける。
「分析値は絶対値ではない。同じ物質でも分析の手法によって、結果にばらつきが生じる。真の値に近づけるために、できるだけの努力を行う」というのが同社の方針。
独自の作業システムを導入し、複数の研究者がチェックできる体制を敷いた。
「分析の世界では、ひとりの研究者が一貫して作業するのが一般的。この方法だと、ミスや漏れがあっても気付かないことがある。当社はそれを避けるために、分析作業の流れの中に複数の人間のチェックを取り入れている」(相馬社長)。
同社は、分析の検証項目を増やし、複数人でチェックし、真の値にできるだけ近づける努力を惜しまない。
また、分析の“技術”よりも“考え方”に重点を置いて、人材を育成している。
「同業者の中には、技術だけを習得して、分析の概念を考えていない人が少なくない。分析の考え方を言葉で表現するのは難しいが、固有の物質を分析するにあたり、どんな手法を取るかが重要だ」(相馬社長)。
技術に固執した考えでは、適切な手法を導き出せなくなる危険性があるという。手法が適切でなければ、高い技術を用いても真の値は導き出せない。
新社屋に食堂と託児所を設置
社員には技術はもちろんのこと、仕事に対する姿勢についても厳しく教育している。
「これについてこれない社員は、残念だが淘汰される。都会にも分析会社はたくさんあるが、わざわざ青森の会社に依頼してもらい、会社が生き残っていくためには、そのくらいの厳しさは当然だと考えている」と相馬社長。
こうした社員教育の厳しさの一方で、待遇面では、さまざまな優遇措置を導入している。食事の支給や育児休暇もそのひとつ。
同社は2年後に新社屋への移転を予定している。作業スペースが手狭になってきたのと、受注の拡大に対応できるよう、スペースを拡大し設備を充実させる計画だ。
「新社屋に移ったら、食堂と託児所を設置する。希望する社員には、朝昼晩の食事を支給する。また女性社員が安心して働けるよう、育児関連の福利厚生を充実させるのも、会社として当然の義務だと思っている」と相馬社長。
社員が仕事に集中できるよう、環境を整えることにも力を入れている。
試験品を濃縮し分析作業にあたる
パッケージ化で効率アップ
相馬社長は高専の工業化学科を卒業した後、東京の分析機器会社に5年間、勤務した。独立を考えたとき、東京で立ち上げるか地元に戻るか迷ったという。海外での起業も視野にあった。さまざまな条件を考慮して、地元に会社を設立することに決めたが、地方という厳しい条件をカバーすべく、分析に必要な充填剤の開発に力を注いだ。消耗品を自社製品でまかなうことで、出費を抑えようという考えだ。独自に開発したカラムによって、これまで分析が不可能だった物質にも対応できるようになり、複雑な分析の時間を短縮し効率化も図れるようにうなった。
1年ほど前から、作業内容や分析結果などのデータベース化を導入した。これによって情報を共有することができ、作業効率がアップした。現在、分析項目をパッケージ化し、顧客がHP上で見積もりできるシステムを作成中。「見える分析」で顧客にも分かりやすい内容を提示していく。
今後も設備やシステムを充実させ、効率化を図りながら、分析の精度を極めていきたい。
掲載日:2009年4月 8日