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第十九話 アインハルトとヴィヴィオのその後
「ん………あれ……私は………?」


目を開けば、真っ白な天井が視界いっぱいに広がり、少し視線を傾けるととっぷりと日が暮れてしまい、外の風景は深夜であることを示すような暗さが星灯でわずかに照られている。
加えて、自分がベッドに寝かされ、タオルケットを掛けられていることに気がつく。

目が覚めたアインハルトは、自分がどうしてベッドで寝かされているのか、外は完全に深夜なのか。
若干の混乱を覚えた。

「スゥ……ん…」
「あ………」

だが、その混乱も、窓側と反対の方向に視線を向けることで解決した。
窓際のベッドで寝かされていたアインハルトだったが、隣のベットで千冬を抱き、壁に背を預けながら崇宏が眠っていた。

「そうだ……私、お風呂場で気を失ってしまって…………」

崇宏の顔を見た瞬間、自分がお風呂場でどうなってしまったのかを思い出す。
ティアナ達からの視線に、極めつけの崇宏からの謎の叫び。
その2つが絶妙な合体をした上で、アインハルトの恥ずかしがり屋メーターを振り切らせてしまったということを。

「うぅ……じ、自分が情けないです………」

自分がベッドで寝かされている、そして崇宏は隣のベッドで休んでいる。
この2つの状況から、気を失ったアインハルトを崇宏がここまで運んでくれたという予測はすぐに出来た。
服装が寝間着になっているのは、ティアナ達が着替えさせてくれたのだろう。


「で、でも…! 崇宏さんも崇宏さんです……いきなりあんな………あんなことを……大きな声で………」


そう呟くアインハルトの声は、徐々に小さくなってしまい、それに反比例する形で頬が紅潮してしまう。
同時に、あのお風呂場での崇宏の言葉が頭の中をループしてしまう。

〔まあ、アインハルトは凄く可愛いと思うけどな!〕

「可愛い……そんな事言われたら、どうしていいか分からないじゃないですか……!」


脳内で繰り返し再生されてしまうその一文に、アインハルトは眠ってしまっている崇宏を少し睨みながらも文句を垂れるが、彼女の表情には負の感情などは全くない。
というか、嬉しいのか頬が緩みっぱなしである。

「アインハルトは物静かだけど其れも清楚で良い感じだし、しっかり者で優しいよ」
「え!?」
「スーーー」
「寝言?………物静かな性格も清楚でいい感じ…………しっかり者で優しい………か……」


フニャフニャしっぱなしのアインハルトだが、崇宏の寝言。
アインハルトの内面について触れている部分を思い出すと、少しだけ落ち着きを取り戻す。
加えて、上半身を起こした状態から、ベッドの端に腰掛けるように座り、ちょうど崇宏の対面になる位置を取る。

「崇宏さんは……私の性格を、そんなふうに思っていてくれたんですね………」

外見などの見てくれを褒めてくれたのも、無論嬉しい。
だが、彼女としては自身の内面、性格面を崇宏がどう評価してくれているかのほうが重要だった。
人間、顔と性格、どちらが大切か? 
という選択肢に対する答えは、それこそ人それぞれバラバラだ。
そこへ行くと、アインアルトの場合は、性格面を重視しているということなのだろう。

ここだけの話、アインハルト自身は、自分の性格は良いものではないと自己評価を下していた。
無愛想、可愛げがない。
アインハルトは自分の性格をそう見ていたわけだ。

「…………本当に優しいのは……崇宏さんの方ではないんですか…?」

そんな自分を、清楚でいい感じ、優しいしっかり者。
そんな風に見てくれる彼の方が、よっぽど優しいのではないだろうか。
そんなふうに思って、口に出したりしてみるも……やはり、口元が少しフニャッとしそうになってしまう。

「…………」

ギシ……

ベッドが少し沈む音と共に、アインハルトはさっきまで使用していたベッドから降り、崇宏が眠っているベッドに近づく。
一歩、また一歩と、崇宏の近くに歩みを進める。
アインハルトは知らないだろうが、崇宏は寝起きが悪い……以前アクセルが同じように寝ている崇宏に近づいたところ、彼は自分にとっての害を成す何かと勘違いしたのか、アクセルに対して抜刀しそうになったのだ。
が、アインハルトはそんなことは知らずに崇宏に近づき……彼の警戒区域の内側に…………入った。

ギシ……

「…………」

しかし、崇宏はピクリとも動かなかった。
同じように千冬を手に眠っているにも拘わらず、誰かが自分の間合いに入ってきても、そのまま眠ったままだ。
そんな事情など知らないアインハルトは、崇宏の隣に腰を落ち着かせ、彼の寝顔を横から覗く。
普段と違い無防備で、未だに幼さの抜けない寝顔。

「…………ふぅ……」

崇宏の横顔を見つめ続けて何分経っただろうか? 
熱に浮かされたような双眸になったアインハルトは、どこか熱っぽい吐息を吐くと共に、自身の胸のあたりで右手をギュッと握る。
気がつかない間に頬には朱が差しているが、今の彼女には些細なことだ。

(どうしましょう……? ずっと見ていても……飽きないかもしれない………崇宏さんの横顔と寝顔を見るの………)


熱っぽい視線のまま、そんな事を考えてしまうこのお嬢さん。
知らない内に、彼女の体は先程よりも崇宏の方に近づいて行っており、あと数センチでも体を動かせば腕がぶつかってしまう。
至近距離から、ジィっと……飽きることなく、アインハルトは崇宏の寝顔を堪能していた。

(な、何なんでしょうか………体が妙に熱くて……頭が上手く回ってくれません………、それに、何故か崇宏さんの唇にばかり視線が………うぅ……)

自分はどこか病気なのではないかと、アインハルトは若干の恐れを抱きつつも、また徐々に崇宏との距離を縮めていく。
彼女の目には、何故か崇宏の唇ばかりが映ってしまう。
いや、そこしか見れない、そこに『何かをしたくて堪らない』、そんな状態だ。

あと5センチ…・・

4センチ……

3センチ……

2センチ……

(わ、私……何をしようと……? こ、このままだと…私と崇宏さんの………唇が………当たって……!)

俗世間では、その行為をキスだとかチューだとか、難しく言うと接吻だとか呼ぶらしい。
と、そんなどうでもいいことばかりが頭を駆け巡る。
だが、アインハルトが眠っている崇宏にしようとしているのは、正にそれらの行為にジャストミートなわけで。
詰まるところ、ただ今アインハルトさん、崇宏にキスしようとしているのです。

(た、崇宏さんが寝ているのに……私はなんてことを……?! あぅ…でも体が止まって…くれない………)


心とは裏腹に、体は素直に崇宏との繋がりを欲していた。
心の中では、彼とのことで悩んでいるアインハルトだが、体のほうでは完全に答えが出ているようにも見える。
アインハルトが、崇宏のことを好きなのだと。
その間も、アインハルトと崇宏の唇はゆっくりと接近していく。
その距離、既に1センチ。
遠くから見たのであれば、完全にキスしているように見えるレベルだ。

(どうしよう………もう、自分自身を……抑え込めない…………うぅ…崇宏さん……)

心の中で、歯止めが効かなくなっている自分自身を必死に止めようとするアインハルト。
対して、呑気に爆睡中の崇宏。
状況的に対照的な二人の距離は、ほぼ完全にゼロになりつつあった。
そして、両者の唇が触れ合った………。


談話室

此処には大人組が集結しアインハルトと崇宏の部屋を監視していた。

「あらあらまあまあ」
「アインハルトが行った~!」
「そ、そ、そ、そんな…………先を越された」
「アインハルトちゃん、やる~」
「アインハルトって意外と肉食系」
「凄く積極的」
「エリオくん…最近の子って凄いね」
「そうだね、キャロ」
「みんな……良いのかよこれ?」

メガーヌ、スバル、ティアナ、なのは、フェイト、ルーテシア、キャロ、エリオ、ノーヴェが次々とコメントをしていく。
だがなのはとフェイトはまだ知らなかった………明日、自分達が見る最悪の光景を………。


翌朝
アクセル視点

………とても温かい何かに、包み込まれているような感覚……それでいて安心できて………ホッとして…心が落ち着く…。
それに、なんだ……? 
もの凄くいい匂いがする……。
あと、何だか顔に微かな柔らかさが………?

「ん……?」
「……ううん……うにゅ……」
「……………は?」

……………ど、どうやら俺はヴィヴィオを部屋に運んでその後に寝ちゃったみたいなんだけど……まぁ、そこはいい。
大丈夫だ、問題ない。

同じ部屋に若い男女が一晩一緒っていうのも……限りなくアウトに近いけど……うん、今日のところは一万歩譲ってセーフにしてもいい。
でも、本当の問題というか、俺にとっての差し迫った危機というのはそのことではなく、もっと『イケナイ』匂いのする問題だった。

「むにゅ………」

(何で、ヴィヴィオと同じベッドで抱きしめられながら寝てるんだ俺はあぁぁぁぁぁ!!?)

つまりはそういうことなんです。
俺にとっての、今現在最も脳内サミットに掛けるべき懸案は、何故か俺と同じベッドで、俺を抱きしめながら眠りに着いている女の子。
高町ヴィヴィオのことだ。

…………ヴィヴィオって、すごくいい匂いがするなぁ……って、いかんいかん!! 
そういうのは無しにして、まずは現状把握だ………落ち着け…取り敢えず冷静に世界そのものを分析するんだ……


1.昨夜、逆上せてしまったヴィヴィオをベッドまで運んだ

2.彼女が目を覚ますのを待つ(眠っているヴィヴィオの唇や、呼吸で上下する胸、スラリとした綺麗な生足を視界から外しながら)

3.自らも睡魔の圧倒的な戦闘力の前に敗北

4.ヴィヴィオに抱きしめられながら起床

(って、分析もへったくれもない!!? 明らかに4つ目で異次元の扉開いた感じになってるじゃないか!! 3つ目から4つ目への間に一体何があったの!!?)


いくら落ち着いて考えても、流石に寝ていた間に何があったのかなんて、意識のない状態で把握できるわけ無いし………流石にこのままっていうのは……まずいよな…?
それ以前に、こ、こんなに女の子に…接近というか最早密着ってレベルで、こんな近距離だと………その……やっぱりドキドキしちゃうよ……。

昔なら、シャッハ姉と一緒に寝たことならかなりあるけど……やっぱり、家族と『女の子』は別なんだよ…だって、シャッハ姉の時はこんなにドキドキなんかしなかったし……

「んん………うにゅ……」

うわあぁぁぁぁ!!!? 
ヴィヴィオ、お願いだから今は動くな!!
ただでさえこんなに密着してるのに、動かれちゃうとこう………想像してはいけないこととか、ものが頭の中を駆け巡るから!!

ととととと、取り敢えずもちつけ……じゃない、落ち着けアクセル!! 
まずはこの密着状態、ヴィヴィオのハグから何とかして抜けだすんだ!!
じゃ、じゃないと……自分の意図しない所が反応しそうになる……。
てか、ヴィヴィオの保護者2人に血祭りにされる……もし生き残ってもシャッハ姉に殺られる。

「っと……まずは……ヴィヴィオの腕を………」

差し当って、一番のネックというか、唯一の拘束部分であるヴィヴィオの腕を何とかしないと……。
ヴィヴィオを起こさないように……そぉ~っと……。
万が一起きちゃったら…………うん、間違いなくディバインバスターをプレゼントされるだろうなぁ……。

あぁ、でも………このままこうしてヴィヴィオに抱きついていたい……って、そういうのは無しだ!!
そういうのは……ちゃんと『そういう関係』になった人達だけのものであって……俺とヴィヴィオはそんなんじゃないんだよ!! オーケー!!?

一体誰に話してるんだ……俺は…?

「むぅ~………」

グワシィ!!

「あふぅ!?」


って、ヴィヴィオ!!? 
何故、その綺麗且つ艶かしいお御足を、俺に絡ませてくるのでしょうか!!?
何!? 
ちょっとでも動くとダメか?
このままジッとしてろって事なのか? 
いやいや、無理無理無理。
ヴィヴィオのいい匂いとか、柔らかい感触、綺麗な太ももが体に擦りつけられる度に、煩悩が……!
このままじゃ、俺の寿命か煩悩がマッハなんだけど………。

「スゥ…スゥ……」
「どないせぇっちゅうねん……」

思わず、どこか他の世界の方言で喋ってしまうくらい、というかさっきからパニックになりつつあるのか、自分自身の口調が中々安定しないなぁ……。
少しでも動けば、更に拘束が強まる……何だろ、この『どうあがいても絶望』的な状況……?
これで、誰かがこの部屋に入ってきた日には……


「おはようございます、ヴィヴィオさん、起こしに来まs………」
「アインハルト、そんないきなり入っちゃダメだろ…もしまだ二人共合体したままっていうか、愛しあったままの状態でそのまま寝てるってこともあr………」
「あ……」


その瞬間、僕の人生が終了するような音が聞こえた。
具体的には、ドアが開く音と、崇宏達の声。
今まさに、ヴィヴィオと密着状態でしかも足を絡められた状態になってる俺を見て、二人共同時に固まってしまっている。
正直、俺も固まってしまいたかった。
固まった上で、粉々に粉砕して欲しいとさえ思ってしまう。

「………パクパク」
「落ち着けアインハルト…あぁ~……その…なんだ……まさか本当に『してる』最中だとは思わなかったわけでな……うん、取り敢えず謝っとくわ……すまん」
『アクセル……お前、意外と肉食系だったんだな……ちゃんと責任はとれよ』
「え、あ…ちょっと…?」

マズイマズイ!! 
これは二人と一機に勘違いされてるっていうか……兎に角よろしくない方向に話が進んでいってる。
いやいや、ここで慌てちゃダメだ。
大丈夫、まだあわてるような時間じゃない。
ここは冷静に…自分の現状を把握して、なんとか崇宏たちに事の真偽を説明しないと。

1.昨夜、逆上せてしまったヴィヴィオをベッドまで運んだ

2.彼女が目を覚ますのを待つ(眠っているヴィヴィオの唇や、呼吸で上下する胸、スラリとした綺麗な生足を視界から外しながら)

3.自らも睡魔の圧倒的な戦闘力の前に敗北

4.ヴィヴィオに抱きしめられながら起床

5.抜けだそうとするも、ヴィヴィオの足が絡められ脱出不可

6.絡み合い、抱き合っているようにしか見えない状態を崇宏とアインハルトさんに見られた

完全に詰んでるじゃん………パッと見、これ完全に一晩の過ちにしか見えないし……。
これ…言い訳しても信じてもらえないっていうか、気を使われまくるパターンなような気がする…。
それで、こういうタイミングでヴィヴィオが目を覚ましたりして……

「…………あ、アクセル…くん………?」
「……………おはよう」


俺の人生、終了のお知らせ。
いや、振りでもなんでもないつもりだったのに……最悪のタイミングでヴィヴィオが目を覚ました…未だに俺に抱きついて、足を絡ませたままの状態で……。


「た、崇宏くんに……アインハルトさん……?」
「おはよ~♪」
「お、お早うございます」

崇宏とアインハルトさんの存在にも気がついたヴィヴィオ………うわ、アインハルトさんだけ完全に笑顔が引きっ攣ってる……きっと、俺等がこんな状態になってるだなんて思ってなかったんだろうなぁ……いや、俺が一番そう思ってたわけなんだけどさ。


「あ……あう………ふえ………」
「あ、ヴィヴィオ……とりあえず落ち着こう……それと、出来ればその手と足を退かしてくれると……非常にありがたいと………」

自分の状態と、周囲の状況を確認して、ヴィヴィオは今この時、この部屋の中で起こっていることが、如何に恥ずかしく、加えて少しイヤラシい想像が出来てしまうことに繋がるかを理解してしまったみたいで、顔が、俺の目の前でどんどん赤くなっていく。
必死に落ち着くように説得するんだけど………うん、全然効果はなさそうだ。
心なしか、ヴィヴィオの目元に涙みたいなのが……本物の涙です、本当にありがとうございました。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「ふべらっ!!?」

その数秒後、俺がヴィヴィオの右ストレートによってぶっ飛ばされ、開いていた窓から、朝の日差しの気持ちいい空に向かって飛んでいったことは言うまでもない……良かった…ディバインバスターじゃなくて。

あれ? 何でこんなことになったんだっけ……?






「ほんっとーーーーーーーに、ごめんなさい!!! 寝ぼけていたとは言え…元はと言えば、私がやったことなのに……あんなことを…」
「あはは……だ、大丈夫大丈夫……」

朝の一件、羞恥心のあまり思わず放ってしまったヴィヴィオの右ストレートの餌食になり、朝っぱらから空を飛ぶことになったアクセル。
まぁ、朝から役得だったアクセルにとっては払うべき対価なのかもしれない。

朝食を食べ終わって、午前の訓練が始まるまでの休憩時間になっても、流石に今回ばかりは、ヴィヴィオは自分のしでかしてしまったことが許せないのか、ずっと謝り通しだった。

「それにさ……朝ごはん……食べさせてくれたりしたし………」
「そ、そんなことは……せめてもの罪滅ぼしというか……当たり前というか……」

アクセルが照れた様子で、朝食時のヴィヴィオの甲斐甲斐しい姿を思い出したのだろう、朝ごはんを全て食べさせてくれた事に対する礼をする。
対するヴィヴィオとしては、自分の所為で朝から空を舞うことになったアクセルへの罪滅ぼしという意味もあったし、少し食事が辛そうだった彼を放ってなど置けなかったから。
心の奥底では、そんなこと抜きで食べさせてあげたり……言ってしまえばアーンとかしてあげたかったり……。

「それに……ヴィヴィオの…暖かい感じとか…いい匂いとかさ……なんて言うのかな……存在感がもの凄く安心できるっていうか……」
「そ、そんなに持ち上げないでよ……それに、あったかい感じとか…いい匂いって……少し恥ずかしいよ………」
「あ…そうだよな……ごめん……ちょっと変なコト言って……」

自分でも気恥ずかしいことを口走ってしまったのを、アクセルは自覚し赤面する。
だが、その言葉に嘘偽りは全くない。
彼の心が、ヴィヴィオの存在に『安心』と『温かさ』を感じた。

「そ、その………言ってくれれば………くらいは………」
「え……?」

と、恥ずかしいのを隠すように照れてしまっていたアクセルを見て、ヴィヴィオが少し詰まりながらも小声で何かを伝えようとしてきた。
その顔には、アクセル同様の紅潮が見られ、ヴィヴィオ自身も今からかなり恥ずかしいことを言うのだということが分かった。

「お、お昼寝するときくらいなら……手を握ったり……膝を貸してあげることくらいは………出来るよ……」
「え…あの………マジ……ですか…?」
「ま、マジ……そ、それに、今朝のお詫びはまだまだ終わってないから!! 精一杯、その……お世話させてもらうから………」

ヴィヴィオ、その言い方は恥ずかしさからくる間違いだと信じたいのですが、些かエロ過ぎやしないか?
アクセルは、心の中でそんな風に呟く。

「お世話は…ともかくとして……コホン……ヴィヴィオ………その……本当に色々ありがとう」
「あ……ど、どういたしまして………(その笑顔は…反則だよ…)」


ヴィヴィオに向けられたアクセルの感謝の言葉と、独特の優しい笑み。
そのダブルコンボに、ヴィヴィオはものの見事にハートキャッチされてしまい、ポーッとしてしまう。
傍から見れば、完全に恋する乙女以外の何者でもない。

「あ、今日のチーム別模擬戦も、一緒にがんばろうぜ♪」
「うん、それはもちろん、敵になった場合は、容赦しないからね?」
「うん、それは僕も望むところ」

コツンッ

アクセルが今日予定されている、チーム別模擬戦のことを付け足すと、やはりそこは流石のヴィヴィオ。
即座に頭のスイッチを入れ替え、途端にいつもの表情を取り戻し、差し出されたアクセルの拳に、自身の拳を軽くぶつけたのだった。

(私も………アクセルくんから、元気をもらってるみたい………)


突き合わせた方の手を、胸のあたりでギュッと握るヴィヴィオ。
ヴィヴィオからアクセルへ、という一方通行ではない。
アクセルからもヴィヴィオにもたらすものが確かにそこにはあった。
相互的に、お互いを補い合い、支えあう……ベストパートナーの二人が人気のないロッジのテラスにあった………




「もう、お前ら結婚しちまえよ………」
「た、崇宏さん……」
「いや、あれ見たらさ」
「結婚………」
「戻ってこい、アインハルト」

そんな二人を、見つめる崇宏とアインハルト……そして

「う、動けないの」
「何これ……崇宏、離して」
「なのはさん、フェイトさん、諦めて下さいよ、アクセルを討ち取ろうとするのは……」

ヴィヴィオの叫びに駆け付けて暴走し崇宏にバインドされたヴィヴィオの保護者のなのはとフェイトだった。

「何でアクセル君なの?」
「崇宏……好き好きオーラ出してたじゃない」
「確かに……ヴィヴィオは崇宏お兄ちゃん好き好きオーラは出てましたね」
「「「は?」」」
「いや、ヴィヴィオにお兄ちゃんみたいって言われたんで……そう思っても良いぞって言ったらお兄ちゃんになったみたいで……いわゆる義兄妹ぎきょうだいみたいな」
「じゃあ」
「ヴィヴィオは」
「俺を異性じゃなくて家族として大好きですね」
「「ええ~」」
「ほっ、良かった…」
「何がだ?アインハルト」
「何でもないです」
「そっか…にしても年上の名前を呼び捨てはなれないな」
「駄目です! 慣れて下さい」
「はいはい」




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