第十六話 フェイトVS崇宏 後編 子供達の思い
フェイト視点
私は確かに崇宏を詰んだ筈なのに何で笑ってるの?
「斬魔剣 弐の太刀」
嘘!?
さっきより早い!!
そのまま私は後ろに急いで飛んだ……。
「斬られた!?」
「ええ、プラズマ・ランサーだけを」
崇宏の言うとおりプラズマ・ランサーか全て消えていた。
「何……今の?」
「内緒です」
スゥ…
「!」
ただ歩いていただけの崇宏。
だが、瞬く間に彼の姿が陽炎のように二人に増える。
その人数は徐々に増えていき、私に向かってきていた崇宏の数が一人から五人にまで増えていた。
(魔法陣も何も出てこないとなると、幻術の類じゃない………これって……体術?……歩法?)
観戦組
「崇宏、分身の術でも使えるの?!」
「幻術じゃないよね、あれ?」
それを見ていたリオやコロナ達も、崇宏の分身に驚いていた。
その間にも、五人にまで増えた崇宏は、そこで移動スピードを一段階早め、フェイトに向かってダッシュした。
再びフェイト視点
「っ!」
キィィィン!!!!
分身のような技を使った崇宏の攻撃は、攻撃の起点が読みづらい。
視覚的には五人分の剣戟の中から、実体だけを見極めて防御する必要がある。
でも、私にとってそれはあまり難しいことではない。
「っふ!」
「くぅ!!」
ガキィ!! ギィン!!
一度剣が打ち合わさると、そこからはお互いに剣の攻防にしのぎを削る。
崇宏の一撃目を捌いた私は、上段から崇宏に斬りかかる。
崇宏は、その攻撃を千冬で防ぎ、私のバルディッシュを千冬の刀身を滑らせるようにいなし、反撃してくる。
金属がこすれ合う音が鳴り響き、次いで剣同士が衝突しあう衝撃音に。
剣戟の雨の中では、様々な音が発生していく。
ガィン!!!
「うわっ?!」
その剣閃のラッシュが、私の一撃によって一旦途切れる。
私の斬り上げ攻撃を捌こうとした崇宏は、勢いを受け止めきれずに後方に体を持って行かれてしまった。
「と!……ふぅ!」
空中で一回転した後、崇宏は地面に着地。
私との間には10メートルほどの距離が生まれた。
「今のは、【そういう歩き方】なのかな?」
「えぇ、まぁ……桜に舞うとかいて【桜舞】って言います」
「なるほどね………」
崇宏の扱える体技の一つ桜舞…………歩行速度に緩急を与えるという変則的な歩き方によって、残像を生む歩法ってシグナムが言ってたっけ。
「でも、あくまで攻撃するのは崇宏だけだから、寸前まで引き付けてから、攻撃に転じる本体を叩き返せば済む話かな」
「えぇ、フェイトさんには母さん同様、やっぱり通用しませんでした……やっぱり、凄いです」
「崇宏よりも長いこと生きてるし、経験もそれなりに積んでるからね、後、シグナムとも仲は良いし」
そう言って、私はバルディッシュをザンバーモードにして構える。
崇宏視点
(やっぱり、フェイトさんに小手先の技術は通用しない……だったら、ここからはスピードを上げていく!)
「千冬……とっておきだ」
『わかった…シグナムにすら見せて無いんだ……はしゃぐなよ…モード舞姫』
フェイト視点
崇宏は、少し上体を倒し、ダッシュのような構えをとる。
剣は右手で構えたままで、左手の鞘が消えた。
(なにか仕掛けてくるかな………? あの構え……突進?)
「………行きます!」
私は、崇宏の少し前傾姿勢気味の体勢への移行を目にし、そこから考えられる攻撃方法を考えていたが、崇宏はそこから足に体重を掛け……
ヒュン!
「!?」
ババババババッ!!!!
一瞬、崇宏の姿が消えたと思った次の瞬間、崇宏と私の間にある地面が、機関銃の掃射を受けたような音と共に、途切れ途切れで小さい範囲で爆ぜていく。
崇宏の姿を見失いかけた私だったが、私の目は辛うじてこちらに向かって高速、いや神速とでも言えばいいのか、とにかくデタラメな速度で肉薄してくる崇宏の姿を捉えていた。
キィィィン!!
「嘘……どういうスピードしてるの?」
ヒュン!
ババババババッ!!!!
超高速での突進と共に、私に対して打たれた崇宏の剣戟は、その速度に反応することが出来た私の目と剣によって迎撃、防御した。
けど、防がれた後の崇宏の動きはまた速い。
再び高速移動に転じ、相変わらずの機関銃の発砲音のような音と共に私の周囲を駆け回る。
(このスピード……私と比べても負けず劣らずだよね……? しかも、これ……魔法じゃない、この子自身の脚力……一体どういう訓練してるの…シグナム!)
ガキィ!!
私は崇宏の健脚に心底驚きながらも、またしても神速の移動から繰り出される剣戟を弾く。
崇宏の姿は、途切れ途切れ見えるくらいで、地面を蹴り叩く音と、剣が繰り出される一瞬の剣気に反応できなければ、まず捌くことは難しい。
ババババ……ババババッ!!!
ギィィィン!!
崇宏視点
(凄い……! 縮地の手前……天剣の速度もかなり速いはずなのに、フェイトさんは普通に反応を………やっぱり、この人は本当にすごい人なんだ!!)」
地面だけでなく、設置された擬似ビルの壁、縦横無尽に縮地、いやその手前の状態である天剣で駆け回りながら攻撃する俺は、フェイトさんの底知れない実力に恐怖すると同時に、圧倒的な尊敬の念を感じていた。
これで、フェイトさんはまだ魔力制限や、恐らくだが手加減もしているのだろう。
そんな状態でも俺の攻撃を観察しつつ迎撃しているのだ。
良い相手に巡り合えたとしか思えない。
ババババババッ!!!
俺は、フェイトさんの経験、力量に感激しつつ、天剣でビルの壁を駆け上がり、クルリと宙返りする。
そのまま空中で千冬を高速で振り抜いた。
「鷹波!」
ゴアァッ!!!
「わあ♪」
フェイトさんが少し嬉々とした様子で、自身に迫り来る波状の衝撃波を見ている。
そして……
ドォォォォォン!!!!
見事に着弾。
フェイトさんが立っていた地点は、凄まじい砂埃が舞っていた。
無論、非殺傷設定なので、フェイトさんが死んだりする心配もない。
「今のは良かったよ…崇宏」
「どうも……」
地面に着地し、鷹波の着弾地点を注視していた俺だったが、やはりというか当然というか、フェイトさんは無傷だった。
(鷹波もダメか………天剣からの攻撃も見切られてるし………困ったな………)
フェイト視点
(今のはヒヤッとしたな……しかも、あのスピードからの攻撃も捌くことは問題ないけど、まだなにか隠し玉があると見て間違いないだろうし………)
観戦組
「ねぇ……崇宏くんの動き……一瞬見失っちゃったんだけど……」
「わたしも………」
「うん………たまにチラッと見えるくらいで、後は全然………」
「最早……人の領域を超えてるんだな」
崇宏の縮地、正確には天剣だが、彼の見せた超高速移動に目をまん丸にしてしまっていた。
リオ、コロナ、ヴィヴィオの目には急に崇宏の姿が掻き消えて見え、地面を蹴り叩く音と、たまに現れる彼の姿を捉えるのがやっとだった。
アクセルに至っては見えているらしい。
「凄いですね、崇宏のあのスピードは………ソニックムーブみたいな魔法を使ってるわけじゃないのに……」
エリオは同じスピードアタッカーとして、崇宏のあの能力には感心していた。
彼らと違い、崇宏のスピードは魔法を使っていないため、少し違っているものの、戦闘スタイルとしてはエリオに近しいものがある。
「なのはさん、あの崇宏の速度はどういう?」
「うん、あれは崇宏くんの体技の一つでもある【縮地】っていう体技だと思うの……強力な脚力が必要になるんだけど、初速からトップスピードで移動することで、まるで瞬間移動したみたいに間合いを詰めることができるんだって……」
「気ぃ張ってないと、ほんとに瞬間移動したようにしか見えねぇよ……目で追うだけでも一苦労だってのに」
スバルが、なのはに尋ねると、彼女はシグナムやヴィータから聞いた説明を、そのまま教えてくれた。
しかし、からくりが分かったとしても、やはりあの速度は目で追うのがやっとのようだ。
ノーヴェが言うように、なのは達も、気を抜くとすぐに彼の姿を見失いそうになるレベルなのだから。
「ちがう………」
「崇宏さんの本気は、もっと速いです」
「「「「「「「え?」」」」」」」
と、突然のアクセルとアインハルトの呟きに、全員がギョッとしたような表情になった。
今のままでもあそこまでの速度を出せるのに、これ以上の速さがあるのかと、そう思わずにはいられなかったのだろう。
今の崇宏より速く動こうと思えば、それこそフェイトやエリオの様にソニックムーブを使う以外に無い。
それが、まだこの速度に伸びシロがあるというのだから、驚かないほうが難しい。
「アクセルくん、アインハルトちゃんは知ってるんだ? 崇宏くんの縮地のこと?」
「ああ、あれは崇宏の【縮地】っていう体技の一歩手前の【天剣】って技だ………アレなら俺も崇宏に教わったから出来る………」
「アクセルさんの言うとおりです、何度も見せてもらいましたから……三人で訓練していた時も、いつも必死で練習していました」
「崇宏、もっと速く動けるの?」
「今でも目で追うのがやっとなのに、これ以上……?」
ルーテシアとキャロが、アインハルトとアクセルにそう尋ねる。
「というか……そうですね……崇宏さんが本気で縮地を使用した場合……本当に消えるんです」
「「「「「「「消える?」」」」」」」
「ああ、なんせ本物の【縮地】は無音移動術だからな」
アインハルトとアクセルの話を聞いて、なのはを筆頭に皆が息を飲んだ。
縮地の驚異的な速度、それに加えてそんな体技を習得するまでに掛かった時間と努力は計り知れない。
そして、それと時を同じくして、膠着状態であった崇宏とフェイトの戦況が、大きく動き始めたのだった。
崇宏視点
「さてと………こんなに強いなら…本気出さなくちゃね…バルディッシュ!」
『イエス』
「オーバードライブ………真・ソニックフォーム」
「…!」
(真・ソニックフォームって、確かフェイトさんのリミットブレイクだろ?)
シャッ!
「?!」
攻撃に転じた後のフェイトさんの行動は速かった。
まずは、俺の天剣のお株を奪う様な速さでの高速移動、これはもちろんソニックムーブを使用無しでの速度なのだ。
それ故に、俺は一瞬フェイトさんの姿を完全に見失ってしまった。
次の瞬間に俺を襲う、背後からのフェイトさんの一撃を防げたのは、本当に奇跡的だった。
(背後から、気配!!)
キィィン!!
背後に僅かに感じた剣気に、俺は脊髄反射で千冬を以て反応した。
視線を後ろに向けるのは後回しにして、何よりも先に背後に迫るフェイトさんの攻撃を千冬で防御した。
俺の感覚はフェイトさんの剣気を捉えており、背中に回した千冬の刀身に、バルディッシュがぶつかり、耳をつんざくような金属音が発生する。
(捌いた! ここから……!)
「と、思うのはまだ早いよ?」
ガッ!!
「うぐ!?」
背後からの一撃を捌いた俺は、そこからカウンターに打って出ようと千冬の刃を返した。
しかし、フェイトさんの心の中を読まれたかのような声と共に、俺の体は派手に吹っ飛ぶことになる。
ガシャアァァン!!
「くっ……つぅ……」
フェイトさんの剣での一撃を捌いたところまでは良かった俺。
だが、フェイトさんの攻撃は剣だけではなく、ガードされた直後に繰り出された回し蹴りも込みだった。
剣気だけに意識を集中していた俺は、フェイトさんの意表をつく蹴りをモロに横っ腹に食らうことになり、擬似ビルの壁に叩きつけられる。
「背後からの一撃を捌いたのは上出来だけど、攻撃は剣だけで行うとは限らない、剣気にだけ反応するんじゃなく、私の一挙手一投足全部に気を張っておかなきゃ」
「は、はい……!」
俺は、瓦礫から体を起こし、フェイトさんに応える。
恐らく、フェイトさんが上手く加減してくれたのだろう、怪我などは欠片もない。
(凄い……一瞬、完全にフェイトさんのことを見失った……真・ソニックフォームは、ここまで速いのか………)
立ち上がり、再び千冬を構える。
ここだけの話、俺は一応、スピードだけには自信があった。
(これが……Sランク魔道師の………超一流の魔道士なのか………)
今、目の前にいるフェイトさんを筆頭に、母さんやエリオさん達。
(でも………勝ちたい……やっぱり男として………!)
ヒュン!
バババババババッ!!!
俺にも、プライドはあるし負けたくないという負けん気がある。
スピードという点においては、いくら相手が自分よりも実力が高かったとしても簡単に負けを認めたり、諦めたいとは思わない。
少し三次元的な動きも交えながらフェイトの意識をそらそうと試みる、しかし……
シャッ!!
「バインド!?」
「これでトドメ!」
『ジェット・ザンバー』
ガスンッ!!
「があっ!!?」
魔力刃が俺に振り下ろされる。
(此処で終わる……なら一太刀でも浴びせる!)
「千冬」
『ああ』
俺は最後の気力を振り絞り縮地でフェイトさんと擦れ違う。
「転輪する勝利の剣」
『エクスカリバー・ガラティーン』
俺は意識を手放した。
フェイト視点
ちょっとやり過ぎたかな!?
え?
何これ!?
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
崇宏の方に振り向いた瞬間………無数の斬撃に襲われた。
「フェイトちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫だよ、なのは、崇宏の最後の一撃にやられたみたい、立てないや」
「最後の一撃ですか?」
「エリオ、多分、崇宏がフェイトさんと擦れ違った時に何かしたのよ」
「うん、ティアナの言うとおり、無数に斬られたみたい」
「あの一瞬で無数って」
「振ったとこすら見えなかったぞ!?」
「それ以前に崇宏くんが消えたと思ったら、フェイトさんの背後にいたし」
「キャロの言うとおり、私達には見えなかった」
崇宏の最後の一撃は大人組を戦慄させた。
一方子供組
子供組は大人組と違い崇宏をかこんでいた。
「何なんだ……此奴は」
「まーまー、アクセルくん」
「心配して来てみたら寝てるし」
「リオの言う通りだね」
「あれだけの戦闘をしたので疲れたんだと思いますよ、コロナさん」
そんな崇宏を見てヴィヴィオ、リオ、コロナ、アインハルト、アクセルの子供組は考える。
(崇宏くん、凄く強かった……フェイトママに引けをとって無かったし…私もこんな風に強くなれたら…良しまずは…)
(崇宏、強かったな…私も強くなりたい…それには…)
(私は格闘技とか苦手だけど………得意な魔法を磨けば強くなれるかな…まず目標は…)
(コレが崇宏さんの実力…今の私では届かない…でもいつかは…)
(どんだけ無茶苦茶なんだよ…此奴は…でも…目指す目標ができた…)
(((((打倒、崇宏【くん、さん】)))))
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