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第十五話 フェイトVS崇宏 前編 シグナムの教え
陸戦場
崇宏視点

「それじゃ、崇宏、行くよ!」
「はい」

俺とフェイトさんは一言かわしてお互いに向き合い、構える。

既にお互いジャケットと甲冑を纏っている。
フェイトさんはバルディッシュをハーケンモード、俺は言うまでもなく清姫。

フェイトさんと戦うのは初めて……だから一番無難な清姫を選んだ。

「それじゃぁ行くよ!」

そう一言だけいい、地面を滑るようにこちらに飛んでくる。

「はあ!」

振り下ろされる金色の刃を、千冬で受け止める。

『ソニック・ムーブ』
「なっ!?」

だが、攻撃を防ぐと同時にフェイトさんが俺の視界から消える。

「はあぁぁぁ!!」
「ちっ!」

次に声が聞こえたのは俺の頭上から。
見るよりも早く、後ろに飛び、回避行動を取る。

フェイトさんの刃が騎士甲冑に少しかすりながらも、何とか回避には成功。
だが、フェイトさんの攻撃が止む事は無い。

『プラズマ・ランサー』

(おいおいおい、マジか、手加減なしかよ!)

フェイトさんを囲むように、やじりにも似た金色の魔力スフィアが展開される。
その数六つ。

(確かあれって再射も出来たよな?)

この前、母さんにフェイトさんVS母さんの模擬戦ビデオを見せて貰ったのでフェイトさんの大方の技は分かる。

「プラズマランサー……ファイア!」

撃ち出される金色。

「斬魔剣!」

俺は金色を斬り捨てる、あたりに爆煙が巻き起こる。
だが、俺はまだ油断できない。

 「やっぱりか!」

爆煙の中から、一発のスフィアが煙の尾を引きながらこっちに向かってくる……おそらく一つだけ発射時間をズラしたのだろう。
それを、千冬を横になぎ払う形で横に弾き飛ばす。
本当は地面にでも叩きつけて消したかったんだが、贅沢は言ってられない。
俺は直ぐに次の行動に移る。

「ターン!」
「やっぱりか!」

俺は直ぐに爆煙に跳びこむ。
正確にはフェイトさんの元に走り出す。

プラズマランサーは完全に消さない限り、再射は可能。
さっきの一発を消せなかった時点でこうなる事は予想していた。
なら、俺がとる行動は一つ。

(今のうちに叩く!)
《雑な作戦だな》

千冬が何か言ってるが今の俺にはツッコむ余裕も無い。
一瞬で正しい選択肢を選ばなければならない。
間違えれば即ゲームオーバー。
そんな状況で一々相手はしていられない。

爆煙を抜けたところに、フェイトさんはやっぱり居た。
だがそれは――。

「っ! ――カウンター!?」


まさにバッターのそれ。
フェイトさんはさっき居た場所から一歩も動かずに、そこで俺を待ち構えていた。

 「はああ!」
 「ぐっ!」

襲い掛かってくるバルディッシュに千冬を垂直に立てる。
千冬はバルディッシュの柄の中心部分に当たり、攻撃を何とか防ぎきる。

が――。
フェイトさんの口元が微かに釣りあがったのを俺は見逃さなかった。

(防いだのに、何で……っ!)

そして気づく。
バルディッシュがハーケンではなく、アサルトフォームになっている事を。

「バルディッシュ!」
『ハーケン・フォーム』
「ちぃっ!」


首目掛けて伸びてくる金色の刃。

「マジかよ!?」

俺は垂直に立てていた千冬をずらす、バルディッシュは千冬を滑るように上と逸れていく。
と同時に俺はフェイトの腕の下を斬る。

「刀狼流し!」

だが、その攻撃も届かない。

『サンダー・アーム』
「っ!」


フェイトさんもその場で体勢を戻すのは無理と判断したのか、その場で半回転していた。
そして左手に発生させたサンダー・アームで千冬を文字通り、掴み取られた。

「ターン!」
「な……に?」

一瞬、戦いの中だということも忘れ呆ける。
そして気づく。
俺が弾いた一発のランサーはどこに行った?

(いや、考えてる暇はない!!)

「龍巻き!」
「えっ!?」

俺はフェイトさんに千冬を掴まれたまま回転する。

 「よし!」

運任せだったが、回転の遠心力でフェイトさんを吹き飛ばし後ろから迫ってきてたランサーを地面に真っ二つにして、消すことが出来た。

(このまま攻める!)

「私の勝ちだ」
「……へ?」

俺の喉元にバルディッシュと六つのフォトンランサーが突きつけられた。



なのは達観戦組

「あー、いい所までいったと思ったんだけどなぁ」
「良い所って言うか、完全な模擬戦ですよね……本当に小学生?」

なのはの呟きに呆れた声でティアナが返す。

「なんだよコレ? 彼奴……強すぎだろ?」
「凄い……魔力弾を斬るなんて」
「崇宏くん、こんなに強かったんだ」
「コレが崇宏の実力!?」
「本当に凄い……」
「マジかよ……シグナムさん、一体どんな訓練をしてんだよ」

アクセル、アインハルト、ヴィヴィオ、リオ、コロナ、ノーヴェが感想を漏らす。

「でも、凄いな~、フェイトさんを相手に彼処まで出来るなんて、ねっ、エリオ」
「そうですね、スバルさん、多分、ほぼ毎日、シグナム副隊長と斬り合ってたんだと思います」
「ねえ、エリオくん、気のせいか……崇宏くんが笑ってる様に見えるんだけど………」

キャロの言葉で一同は再び陸戦場を見た。


再び崇宏視点

俺は追い詰められたこの状況で母さんの言葉を思い出していた。








「崇宏、これがお前への最初の教導になるが…………最初に言っておくことが何個かある」
「言っておくこと?」
「まぁ、お前も剣を扱ってる以上は重々理解してるとは思うから、言うまでもないことかもしれないが………まず、剣術は人を殺すための方法、つまりは殺人術だ」
「…………」
「自分の身を守ることも、誰かを助けたり守るために剣術に頼ったとしても、それはただの結果だ………過程として、足元には肉の塊が転がってることもある」
「何よりも私とお前が手にしてるこの剣…………これも人を殺して、傷つけるための凶器だ、非殺傷設定があるからこそ、そういう認識が薄くなりがちだが、絶対に忘れるな」
「………はい」
「この剣を振るえば、相手に怪我も負わせ、死なせることにもつながる、例え、その相手が憎い敵だろうが、守りたい人だったとしても剣はそれを区別しない、どこまで行っても剣は剣、つまりは物であり武器、誰もを平等に傷つけ、殺す」
「…………」
「だからこそ、剣と剣術、この二つを使って戦うときは、目の前にいる相手が誰なのか、剣を向けるべき相手なのか、その判断を疎かにするなよ、でないと、お前は一生後悔し続けて、いずれはお前自身を殺すことになる」









(母さん、俺はフェイトさんに勝ちたい、更なる高みを目指す為に、俺の剣を向ける相手だ!)


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