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第六話 覇王VS覇皇と謎の剣士
ミッドチルダ某所の高架した

「う…ぐあ…」

夜の街の月明かりの下。
バイザーを着用した一人の女性が、屈強な男性のみぞおちに拳を叩き込んで、倒した。

「…次」

女性は男性をそのままにして、立ち去ろうとする。

「見つけたぜ覇王‼」

突然かかった声。
女性、イングヴァルトが振り向くと、そこには右に金色、左に銀色の虹彩異色をもつ、一人の男性がいた。
男性は続ける。

「覇王を名前名乗ってる割りに、やってることはチンピラ狩りか?其れで覇王名乗るか?」
「…何ですかあなたは?」

いきなり現れて失礼な挑発をする男性に対する嫌悪感を抑えながら、イングヴァルトは尋ねた。

「俺はアクセル・アルマー、この辺りに覇王を名乗る強いやつがいるって聞いたから、本物か確かめに来たのさ」
「それだけですか?」
「いや、もし見つけたら戦おうと思ってた」
『いきなり誘い方が強引ね』
「そうですか、ならばお尋ねします、あなたは強いのですか?」
「さあ、確かめて見ろよ」
「…そうさせてもらいます」

イングヴァルトは構えを取った。
アクセルと名乗る男性は、デバイスの名を叫ぶ。

「楯無‼」
『たまには私の本気も見せちゃおうかしら』
「そいつは重畳、真面目にやれよ」

アクセルの下にベルカ式の魔方陣が現れ魔力が跳ね上がる。

「…珍しい無手の騎士、ですか」

アクセルの手甲と具足が、イングヴァルトの目に止まる。

「さて覇王…語るよりも先にやることがあろう?」

アクセルは構えを取る。

「…そうですね、では、始めましょう」

二人の戦いは始まった。





先に動いたのはイングヴァルト。
ステップを利用して離れた距離から一瞬で接近し、左右の拳で連撃を繰り出す。
アクセルは一撃目を躱し二撃目を否して、蹴りを打ち込む。

「!?」

イングヴァルトはうまく防いだが、その一撃の威力に驚いて距離を取った。
相手は見た感じただ蹴りを、自分に打ち込んだだけ。
だが、威力があまりにも大きすぎる。

(あのタイミングであそこまで威力を上げられるほど、魔力を込める時間はなかったはず…)

どんな魔導師でも、あれだけ短い時間に威力強化として込められる魔力は、ごく少量でしかない。

(まさか!?)

イングヴァルトにとって考えられる事は、一つしかなかった。
「もしやあなたは、【断空】が使えるのでは!?」
「へぇ、断空を知ってるのか。ご明察!俺は断空が使える!! 白虎咬!」

言ってイングヴァルトとの距離を詰めて、アクセルは拳のラッシュを浴びせる。
イングヴァルトはそれに耐えながら、再び距離を取る。

(拳の一発一発に断空⁉……まさかこれ程…見事な断空とは…長期戦になれば、確実に負ける…!!)

自分が勝つには、短期決戦で決めるしかない。
そう思い至ったイングヴァルトは、一か八か、起死回生の一撃を実行すべく、アクセルに接近した。

「そいつは重畳!!」
『やるじゃない』

楯無はアクセルに付いてくるイングヴァルトを見て驚嘆する。
アクセルも速度上げて拳と蹴りの応酬でイングヴァルトに打ち込んで行く。
アクセルの攻撃は直撃こそしていないが、相当な威力があるらしく、かすっただけでイングヴァルトの騎士甲冑を削ぎ落としていく。

(力も速さも私より上…しかもまだ本気じゃ無い…私が遊ばれてる…)

アクセルの実力に戦慄するイングヴァルト。

(でも技なら…!!)

イングヴァルトはアクセルが見せた一瞬の隙を突き、アクセルの懐に潜り込んだ。

「覇王…」

そのまま足先から力を練り上げ、

「断空拳!!」

アクセルの鳩尾に拳を、練り上げた力を打ち込む。

「ちぃぃぃ!!!」

アクセルは派手に吹き飛び煙に包まれる。

(やった…あの人に勝った!!)

勝利を確信するイングヴァルト。
だが、

「⁉」
「油断し過ぎだ、覇皇断空拳‼」

直後にアクセルが目の前に。
気がゆるんでいたイングヴァルトはアクセルの断空拳を避けられず、直撃を受けて背後の壁に叩きつけられた。
「がっ!!」

(なっ、見えなかった…其れに今の技は!?)

突然の事に混乱するイングヴァルト。
何が起きたのか。
いきなり前に現れ、断空拳を使われた⁉
あり得ない事が多過ぎてイングヴァルトは混乱した。

「今のはやばかった、其れに覇王断空拳、お前は本物の覇王だわ、並みの魔導師じゃ、相手にならないな」
「くっ…」

イングヴァルトはよろめきながら立ち上がる。
そして

「アンサラー!」

次の瞬間……二人を紫色の剣が貫いた。

「何だこれ?」
「動けない!?」
「当たり前だ……その魔力刃はバインド効果があるからな」
「「!?」」

二人の前に刀を一振り持った…男性が現れた。

「何ですか…貴方は?」
「邪魔をするな!」
「別に邪魔をする気は無いさ………ただし良く音を聞け」

そう言って男性は二人のバインドを解く。
二人が耳を済ますとサイレンの音が聞こえてきた。

「チッ、サツか…此れからって時に決着はおあずけだ、ここは退くぞ」
「…そうしましょう…」

この場を見られてはまずいと悟った二人は、決着を持ち越し、撤収した。

「さて、俺も撤収するか……」

イングヴァルトと戦った場所から少し離れて、

「楯無…」
『は~い、お疲れ〜』
「ぐぅっ!!」

アクセルは膝をついた。

『やれやれ、派手にやられたわね』
「まあ、平気とは言え無いな、此処まで鋭い攻撃が出来るとは思ってなかったんだな」
『痛いの痛いのとんでけ~!』
「なんだそりゃ、全然嬉しくないんだな」
『アクセル……世の中はそんなもんよ』
「ますます分から無いんだな、まぁ、楽しめたし良しとするか」
『うん、結果は極上の至りかしら』

よいしょと立ち上がる。
と、

『アクセル、意図しの彼女からメールよ』
「見せろ、つーか良い加減その言い方やめろ」

アクセルはヴィヴィオからのメールを見る。
そこには、こう書いてあった。

〔明日イクスのお見舞いをしに、聖王教会に行きます、アクセルくんも一緒にどお?〕
『驚いたわね、ヴィヴィオはイクスヴェリアとまで知り合いなんて………』
「覇王に冥王か………王族大集結だな」
『正直……笑えないわね』
「まあ、な」

意識が…………………
どさ

『全く…しょうがないわね……貸し1よ…アクセル』


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