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第四話 セイグリットハート
ヴィヴィオ視点

わたし、高町ヴィヴィオは、ミッドチルダ在住の魔法学院初等科4年生。
公務員のママとふたり暮らしで、けっこう仲良し親子です。
たまにケンカもするけどね。

なのはママが、コンソールを打ちながら訊いてきます。

「ヴィヴィオ、今日は始業式だけでしょ?」
「そだよー、帰りにちょっと寄り道してくけど」
「あとね、八神 崇宏も連れてきて今日から一緒に暮らす事になったから」
「八神崇宏くん?」
「そ、シグナムさんが保護した子でヴィヴィオと同い年」
「へ~」
「よろしくね~」
「うん!」
「それと、今日はママもちょっと早めに帰ってこられるから、ばんごはんは4年生進級のお祝いモードにしよっか?」
「いいねー♪」
「…さて、それじゃ…」
「うん」

「「いってきまーす!」」

わたしとなのはママは、いつものようにハイタッチをしてから出発しました。





St.ヒルデ魔法学院に着いたヴィヴィオは、自分の教室を目指すと、

「ヴィヴィオ!」

彼女に声がかかった。
ヴィヴィオは振り向く。そこにいたのは彼女の友人、コロナ・ティミルとリオ・ウェズリーだ。

「コロナ!リオ!」
「クラス分け、もう見た?」
「見た見た!!」
「三人一緒のクラス!!」
「「「いえーい♪」」」

嬉しくて三人でハイタッチする彼女達。

そこへ、

「お早う!」

青い髪の男の子が話しかけてくる。
青髪の子の名前はアクセル・アルマー。
聖王教会のシスター・シャッハの遠縁である。

「アクセルくん!」

ヴィヴィオは青髪の彼の名前を呼んだ。

「ヴィヴィオ、気持ちはわからなくもないが………もう少し人目って物を気にした方が良いんだな」

アクセルが額を抑えながら言う。

「「「え?」」」

言われて周りを見るヴィヴィオ達。
見ると、何人かの生徒が彼女達を見て笑っていた。
ヴィヴィオ達は顔を赤くする。

「そういえば、アクセルのクラスは?」

リオに尋ねられ、アクセルは答えた。

「お前らと一緒だぜ」
「ほんと!?」
「すごい!」
「四人一緒のクラスだ!!」

再びはしゃぐヴィヴィオ達。
とそこへ

「此処がSt.ヒルデ魔法学院生徒か~」
『案外、普通の小学校と変わらんな』
「だね~、ぶっちゃけエスカレーター式のお嬢様、お坊ちゃん学校だね」
『とても魔法を教えてくれるとは思えないな』
「ち~ちゃんに同感」
『その呼び方は辞めろ、崇宏』

ヴィヴィオはデバイスと会話する男子の名前に聞き覚えがあった。

「崇宏くん?」
「どうしなのヴィヴィオ?」
「なのはママが今日から一緒に暮らす事になった子がいるって」
「それと、アレにどんな関係がって………まさか!?」
「その子の名前が八神 崇宏くんって言うの」
「なら、話しかけてみようよ……って…あれ?」
「「「消えた!?」」」

四人が話し掛けようとしたのだが崇宏の姿が消えたのだった。




「はー終わった終わった!」

始業式を終え、リオは解放感から背伸びをする。
崇宏はあの後、ヴィヴィオ達のクラスに転入して来た。
ヴィヴィオの同棲発言にクラスがざわめいたのは言うまでもない。



「これからどんな授業があるか、楽しみなんだな!」
「アクセルは単純でいいよね、今年はアクセルとの決着がつけられることを祈るよ」

アキとリオのやり取りを聞きながらコロナはヴィヴィオに尋ねる。

「寄り道してく?」
「もちろーん!」

それを聞いていたリオは、ならばと進言した。

「また図書館寄ってこーよ!借りたい本あるし」
「あ、でもその前に、教室で記念写真撮りたいな、お世話になってるみなさんに送りたいんだ、みなさんのおかげで、ヴィヴィオは今日も元気ですよ……って」
「面白そうだな、俺も一緒に写っていいか?」
「もちろんだよ、アクセルくん!」
「崇宏も一緒に…って!?」

アクセル達が崇宏の方を見ると大勢の男子に囲まれて何処かへ行く所だった。

「やべぇ、彼奴らをおっかけるぞ!」

アクセル達は崇宏を追いかけた。


学園闘技場

崇宏視点

「あんたらに用は無いんだが?」
「テメーに無くてもコッチにはあんだよ!」

あー面倒い。

「なら、早くしてよ」
「お前……ヴィヴィオちゃんに近付くな!」

ヴィヴィオ?
近付くなって言われても同じく家だぞ?

「同じ家だし無理でしょ?」
「巫山戯るな!」

勘弁してくれよ……何か此奴等はヴィヴィオのファンクラブか何かか?


アクセル視点

「おいおい、大丈夫か……彼奴?」
「「どうしよう」」
「……………私のせい」

リオとコロナはパニクって、ヴィヴィオはショックだろうな…………自分のせいだと思ってるだろうし……あっ、泣きそう。

「落ち着け、ヴィヴィオ、俺が助けに行くから」
「ほ、本当!?」
「ああ!」

良し何とか持ち直した。
だがしかし

『崇宏……この程度に私はいらんな』
「ああ、取り敢えずめんどいから全員で来いよ」

崇宏の言葉で切れた男子が一斉に崇宏に襲いかかるが………

「お前等如きに千冬は必要無いな」

次の瞬間、崇宏に殺到した男子が全員………吹き飛んだ。
彼奴は何をした?
ポッケに手を入れて立ってただけなのに……何で人が吹き飛ぶ?
魔力すら感じなかったぞ。

『数で勝てるほど崇宏は甘くはないぞ……馬鹿者共が』

一体何をしたんだってばよ。

「凄い……」
「アレだけの人数を…」
「一瞬で……」

何なんだよ……彼奴。

「やれやれ、面倒かったぜ」
「お疲れ」
「アクセルだったか?」
「ああ」
「崇宏くん!…私…高町ヴィヴィオ」
「私はリオ・ウェズリー」
「私はコロナ・ティミル 」
「ああ、ヨロシクな」
「「「うん!」」」
「………で、アクセル達は何の様だ?」
「写真をヴィヴィオ達と撮ろうと思ってな」
「俺が一緒しても良いのか?」
「うん!」

こうして俺等五人は、教室で記念写真を撮った。
そして崇宏を連れて図書館に行った。




図書館

「あ、メール返ってきたー」

ヴィヴィオの携帯端末から音が鳴り響く。
リオとコロナは言う。

「そういえば、ヴィヴィオって自分専用のデバイス持ってないんだよね?」
「それフツーの端末でしょ?」
「そーなんだよー、うち、ママとレイジングハートがけっこー厳しくって…」

ヴィヴィオはなのはとそのデバイス、レイジングハートが言っていたことを言う。

『基礎を勉強し終えるまでは自分専用のデバイスとかいりません』
『それまでは私が代役を』

「だって」
「そーかー」

コロナは苦笑した。

「リオはいーなー、自分用のインテリ型で」
「あははー」
『すみません』

リオも苦笑し、彼女のデバイス、ソルフェージュは謝る。

「アクセルくんはアームドだっけ、それもいーなー…」

ヴィヴィオはアクセルを羨ましがる。

「…コレが羨ましいか?」
『あら、アクセルったら酷いわ~、お姉さん……泣いちゃうぞ?』
「楯無、図書館は静かにしろ」

アクセルは自分のデバイス【楯無】に注意する。

「あははは、崇宏くんはデバイスは何型?」

ヴィヴィオは崇宏に聞いた。

「千冬もアームドだな」
『形状は刀だ』
「刀って日本刀って事?」
『ああ、崇宏は居合いの達人だからな』
「そう言や、お前はシグナムさんと親子だっけ……剣の使い手は納得だな」
『あはは、アクセルはフルボッコされてたもんね~』
「うるさい、楯無!」
『もう、アクセルの怒りん坊』
「お前等、仲が良いな」
『まるで恋人だな』
「恋人!?」

と、ヴィヴィオの端末から音が鳴り響いた。

「あ…丁度ママからのメールだ」
「なにかご用事とか?」
「あーへいきへいき、早めに帰ってくると、ちょっといいことがあるかもよ…だって」
「そっか」
「じゃ、借りる本決めちゃお!」
「うん!」

本を探しに入るヴィヴィオ達。
だが、崇宏とアクセルは黙ったままだった。

「崇宏くん!アクセルくん!」

コロナの言葉で、二人はようやく我に返る。

「わ、わりい」
「御免」

(何を考えてたんだろう…)
コロナはそう思った。





帰り。

「ヴィヴィオ、俺はもう帰る」
「うん、また明日ね!」
「ああ、じゃあな」

アクセルは帰宅した。

「…じゃあ、わたし達も帰ろっか! 崇宏くんはわたしと一緒ね」
「了解」
「そーだね!」
「じゃ、また明日!」

ヴィヴィオ達は別れた。




ヴィヴィオ視点

実は、わたしはその昔、生まれ方関係でいろいろあったりした。
なのはママとも血の繋がった親子ではないし、今は仲良しのみんなとも、ほんの数年前には本当に、本当にいろいろな事があった。

助けてくれたいろんな人たち。

わたしがわたしのまま、高町ヴィヴィオとして生きる事を許してくれた人たちのおかげで、

わたしは今、なんだかすごく幸せだったりします。

「たっだいまーっ!」
「おかえりーヴィヴィオ」
「あれ?フェイトママ!?」
「うん」
「バルディッシュも!」
『お久しぶりです』
「フェイトママ、艦の整備で明日の午後までお休みなんだ、だから、ヴィヴィオのお祝いしようかなって」
「そっか…ありがと、フェイトママ」
「お茶いれるから、着替えてくるといいよ」

フェイトママはなのはママの大親友。
9歳の頃からだって。
わたしがなのはママと親子になる時後見人になってくれて、その時なんだかわたしはフェイトママの事もママって思っちゃったらしくて…覚えてないよ!ちっちゃい頃の事だもん。

以来ずっと、わたしには二人のママがいる状態。

まぁ、ちょっと変わってるけど、ふたりともわたしの大切なママです。

「そうだ、崇宏君は?」
「崇宏くん!」


崇宏視点

「昨日ぶりです、なのはさん、フェイトさん」
『これから、崇宏共々世話になる』
「いえいえ」
「こちらこそ」





「ごちそうさまー!」

ヴィヴィオは夕食を終えた。

「さて!今夜も魔法の練習しとこーっと」
「あー、ヴィヴィオ、ちょっと待って~」

なのはがヴィヴィオを呼び止める。

「ヴィヴィオももう4年生だよね」
「そーですが」
「魔法の基礎も大分できてきた、だから、そろそろ自分のデバイスを持ってもいいんじゃないかなって」
「ほ…ほんとっっ!?」

思わず自分の耳を疑うヴィヴィオ。
そんな彼女に、フェイトは箱を渡す。

「じつは今日、私がマリーさんから受け取ってきました」
「あけてみてー」
「うん!」

ヴィヴィオは期待を膨らませ、箱を開ける。
中に入っていたのは…

「うさぎ…?」

だった。

「あ、そのうさぎは外装というか、アクセサリーね」
「中の本体は、普通のクリスタルタイプだよ」

交互に説明するなのはとフェイト。
その間にうさぎは浮かび上がり、挨拶するように手を上げた。

「とっ…ととと飛んだよっ!?動いたよっっ!?」

驚いてママ達の後ろに隠れるヴィヴィオ。

「それはおまけ機能だってマリーさんが」
「あ…」

フェイトが説明して、うさぎはヴィヴィオの腕の中に収まる。

「色々とリサーチもしてヴィヴィオのデータにあわせた最新式ではあるんだけど、中身はまだほとんどまっさらの状態なんだ」
「名前もまだないからつけてあげてって」
「えへへ…実は名前も愛称も、もう決まってたりして」

再びなのはとフェイトから説明を受けて顔をほころばせるヴィヴィオ。
と、ヴィヴィオはあることが気になった。

「そうだママ!リサーチしてくれたってことはアレできる!?アレ!!」
「もちろんできるよー」
「……?」

なのはは何のことかわかっているようだが、フェイトはわからないらしい。





その後、庭にて。
ヴィヴィオは新しいデバイスの登録を行う。

「マスター認証、高町ヴィヴィオ、術式はベルカ主体の混合ハイブリッド、わたしのデバイスに個体名称を登録、マスコットネームは『クリス』、正式名称『セイクリッド・ハート』」

ヴィヴィオは登録を終えた。
次はいよいよ初起動だ。

「いくよクリス」

ヴィヴィオの呼びかけに応えて、彼女の新たなデバイス、クリスが力強く右手を上げる。
そして、

「セイクリッド・ハート!セーーットアーーーップ!」

ヴィヴィオはクリスを掴み、起動させた。
眩いばかりの光に包まれるヴィヴィオ。光が消えた時、

ヴィヴィオの姿はバリアジャケットを纏った大人の女性へと変わっていた。

「やったぁー!ママありがとー!」
「あー上手くいったねー」

無事に初起動が成功し、喜ぶヴィヴィオとなのは。
しかし、フェイトだけが喜んでおらず、そのままへたり込んでしまった。

「フェイトママ?」
「……あ」

なのはは重要なことを思い出す。
だが、もう遅かった。

「なのは…ヴィヴィオが…ヴィヴィオがぁぁー!!」
「いや、あの、落ち着いてフェイトちゃん、これはね?」
「ちょ…!なのはママ!なんでフェイトママに説明してないのー!」
「いやその…ついうっかり」
「うっかりってー!」

こうして初起動は、大騒動に終わった。




此処はとあるビルの屋上

特徴的な青い髪の青年が立っていた。

「連続傷害事件?」

青年はデバイスから、話を聞いていた。

「ええ、被害届が出て無いから、まだ事件扱いじゃ無いけどね…」

デバイスの話では、最近格闘系の実力者が何人も街頭試合を挑まれ、完膚なきまでに叩きのめされているらしい。

「で、どこのどいつなんだ?その馬鹿は?」
「それが…覇王らしいのよ」
「覇王…イングヴァルト…!?」
「ええ、相手はそう名乗ってるみたい」
「覇王イングヴァルトといえば、古代ベルカ、聖王戦争時代にシュトゥラの国を治めていたっていう英傑…何でそんなやつの名前を…」
「わからないわ、ただ…やる事は一つなんでしょ?」
「ああ、叩きのめす!」

言って青年は、一枚の写真を見る。
そこには、バイザーを着用した女性と、彼女に倒されたと思われる屈強な男性の姿があった。


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