富士通が製造したスーパーコンピューター「京」は世界最高性能を実現し、科学技術大国・日本の面目躍如となった。革新的なネットワーク技術がこれほどの高い計算性能を実現した。背景には日本における「コンピューターの父」と呼ばれた同社の故池田敏雄氏が残した現場のチームワークがあった。
池田敏雄氏
8月下旬、富士通が製造した世界最高性能のスーパーコンピューター「京(けい)」を構成する八百数十台目の最後のラックが、神戸市の理化学研究所の施設に納められた。今後はソフトを磨き上げ、1秒間に1京回の計算性能を目指す。京は富士通のコンピューター部門のベテランや若手が密接に協力し、新しいネットワーク技術を生み出して、スパコン世界一を奪還した。それができたのも、富士通という会社において、60年に及ぶコンピューター事業が脈々と築いた、イノベーション魂があった。
富士通のコンピューター事業は、破天荒の天才、池田氏抜きには語れない。1950年にコンピューター開発のプロジェクトが始まると、チーフとして研究にまい進した。チームは何度も合宿し、「設計を急がされて、気が狂うのでないかと思った」と仲間が語るほど、周りを巻き込みながらリレー式、トランジスタ使用と、次々と新しい国産コンピューターを生み出した。しかしその途上、51歳で急逝する。
京の性能のカギを握るアイデアが生まれたのも、池田氏の時代によく行われていた「合宿」だった。2006年年明けの伊豆の研修所。のちに開発コード「Tofu」(豆腐)と呼ばれ、世界で注目された、CPU(中央演算処理装置)間を相互に接続するネットワーク(インターコネクト)技術だ。
安島雄一郎氏
京は毎秒8162兆回という世界一の計算速度が注目される。しかし、実際の運用では瞬間的な速度だけではなく、8万個以上のCPUがすべてきちっと働かなければ、その能力を使い切り、膨大なデータを計算するシミュレーション時間を短縮できない。大事なのは効率と信頼性だ。
その実行効率で93%というずばぬけた数字は、膨大な数のCPUをつなぐネットワークであるTofuが大きく貢献している。考え出したのは当時、富士通研究所で30歳代前半だった次世代テクニカルコンピューティング開発本部の安島雄一郎氏らだった。技術的には「6次元メッシュ/トーラス」と呼ばれ、「CPUどうしが複数の手を持ち、相互につながる」仕組みだ。
何より重要だったのが信頼性をいかに確保できるかだ。「部品点数を減らさないと信頼度が持たない。故障しやすい部品を減らす。チップを直接つなぎ、電気的な中継をなくす」。故障しても常に迂回して通信できる機能を持たせた。
池田敏雄、富士通、スーパーコンピューター、IBM、京
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