きょうの社説 2011年10月20日

◎ルビーロマン4年目 ブランド定着へ一歩ずつ
 石川県産ブドウの高級品種「ルビーロマン」の市場化4年目となる今年は、首都圏への 本格出荷がスタートし、大阪にも試験的に出荷された。市場関係者らの注目度は高く、全国ブランド化へ一歩を踏み出した年といえる。

 ルビーロマンは県が重点的に取り組む戦略作物であり、長年の品種開発と生産の苦労を 実らせる大事な時期を迎えている。ブランドの定着に向けて、生産と普及の両面で着実な取り組みを進めてもらいたい。

 今年の出荷量は昨年の約1.8倍となる8522房で、出荷農家数も昨年の51戸から 68戸に増えたものの、目標の1万房には届かなかった。日照不足や台風が影響したといわれるが、ルビーロマンを全国発信するには安定的な出荷が欠かせず、栽培技術の確立と品質保持が一層重要になってくる。県農業総合研究センターが粒を大きくそろえる栽培技術を開発するなど、関係機関でのルビーロマンに関する技術開発や研究も行われており、それらの成果を含めて、効果的な技術の普及を一段と進める必要がある。

 価格面では1房当たりの平均落札価格が、6110円(昨年5711円)、販売金額は 5206万円(同2778万円)で、ともに昨年を上回っている。栽培技術の確立は、出荷量の増加と価格維持につながり、作付面積拡大の裏付けにもなるだろう。

 首都圏への本格出荷では、谷本正憲知事が東京・大田市場でトップセールスを行い、ル ビーロマンのブランド化に取り組む県の意気込みを示した。粒の大きさや糖度の高さが発信力の大きい首都圏でも評価を得ているが、厳しい産地間競争のなかで存在感を高めていく取り組みが求められる。高級贈答用などの需要動向や販売店、客の反応を検証して、今後の販売戦略に盛り込んでもらいたい。

 生産者らでつくるルビーロマン研究会は、県民を対象にした初の試食会をこの夏、近江 町市場で開いた。石川の顔といえるブドウとして広く認知されるように、県民にルビーロマンの魅力が浸透する機会を今後も増やしてほしい。

◎日韓首脳会談 対韓配慮が過ぎるのでは
 日韓首脳会談で、大きな外交成果を挙げたのは、李明博大統領の方だろう。ウォン安に 伴うドル不足に苦しむ韓国にとって、のどから手が出るほど欲しかった日韓の通貨スワップ(交換)枠を5倍強の700億ドル(約5兆4000億円)にまで拡大し、自国の経済危機の際には強い日本円を利用する道を開いた。また、本来、請求権のない朝鮮王朝由来の文書1205冊の一部を無償で手に入れ、残りを大統領の訪日時に受け取る算段をつけた。

 本来なら首脳会談は李大統領が来日する番だったが、韓国側はこれに難色を示し、野田 佳彦首相を呼び寄せた。大統領が野田首相の来日要請に対して時期を明言しなかったのも深い計算があってのことだろう。支持率の低迷に悩む大統領にとって、満足すべき成果を得たと言ってよいのではないか。

 これに対し、日本側が得たものは少ない。国内向けに隣国との友好を演出し、拉致問題 への協力要請を取り付けた程度である。ウォン安は韓国の内政問題であって、通貨スワップ枠の拡大は、日本にはほとんどメリットがない。朝鮮王朝由来の文書も日本側の一方的な譲渡であり、韓国が保管する日本の古文書の返還を求めることはついぞなかった。

 野田政権は韓国の要求を積極的に受け入れる一方で、要求は控えめだった。隣国との友 好関係は大切だが、外交は仲良くすることが目的ではない。韓国への過剰な配慮は国益を損なう恐れがある。

 最大の課題とされた日韓経済連携協定(EPA)の交渉再開については、実務協議を加 速するとしただけで、進展したとはいえない。韓国側はこれまで対日貿易赤字や日本の非関税障壁を理由に拒否してきており、やすやすと交渉のテーブルに着くとは思えない。

 野田首相は、竹島問題について一切触れなかった。竹島には韓国の閣僚らが続々と足を 運ぶ一方、隣の島への視察を目的にした自民党議員の入国を拒否している。韓国が不当に占拠している竹島について、日本のトップが何も言わないのは、どうしたことか。韓国側の思うつぼだろう。