原子力発電所がある立地自治体に支払われる国の交付金の申請の受け付けが今週から始まりました。東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きたことしは「脱原発」の姿勢を示すとして、4つの自治体が申請を取りやめるなど、これまでにない動きが出てきています。
原子力発電所や関連施設がある立地自治体には、「地域振興」の名目で「電源三法交付金」と呼ばれる交付金が国から支払われます。制度が始まった昭和49年度以降、昨年度までに支払われた総額は9152億円、1つの自治体でこれまでに500億円以上を受け取っているケースもあります。この交付金の申請受け付けが今週から全国の経済産業局などで始まりました。NHKで調べたところ、北海道から鹿児島までの合わせて44の立地自治体のうち、4つの自治体がことしは交付金を申請しない方針であることが分かりました。原発の立地自治体が交付金の受け取りを辞退するのは極めてまれです。このうち、福島第一原発の周辺自治体で東北電力が浪江・小高原発を建設計画中の福島県南相馬市は「脱原発の姿勢を示す」として交付金の受け取りをいずれも辞退することにしています。また、浪江町も「県なども脱原発の流れにあり、原発の新設を推進する状況にない」として、建設計画中の浪江・小高原発に関する交付金の受け取りを辞退することにしています。また、九州電力の川内原発を抱える鹿児島県と薩摩川内市は、すでにある1号機と2号機の交付金は受け取るものの、今後増設する予定の3号機については「原発事故のあと、建設のめどが立たなくなっており、現時点では交付金をもらう理由がない」として、申請を行わないとしています。しかし、残る40の立地自治体は「財政上欠かせない」などとして、今回も申請を行い、引き続き、交付金を受け取る意向であることが分かりました。このうち、青森県東通村では、国から入る見込みの交付金が今年度予算の40%近くを占めるなど、多くの立地自治体の財政が巨額の「原発交付金」によって維持されている構図が浮き彫りになっています。
原発の立地と地方財政の問題に詳しい福島大学の清水修二副学長は、ほとんどの自治体が交付金を引き続き申請することについて「多額の交付金が毎年入り、それを前提に予算を組んでいるので、多くの自治体は交付金が急になくなるのは困るという判断をしているのだと思う」と話しています。そのうえで、原発に関連した交付金の問題点について「交付金でにぎわった町は、そのブームが去っても財政規模を元には戻せない。要するに発電所がないと、ごはんが食べられないような地域経済に変わってしまうところに問題があり、それを本当に『発展』と呼べるのかと思う。交付金を辞退すれば雇用が失われるなどの影響が予想され、そうしたダメージを緩和するための措置は国が工夫して行うべきだと思う」と話しています。