【東京】東京電力は17日、福島第1原発から放出される放射性物質の量がここ1カ月で半減したことを明らかにした。原発の安定、ひいては避難住民の帰宅に向けて大きく前進した形だ。
東電は月例報告の中で、損傷を受けた3つの原子炉について、年末までに安全な停止、つまり冷温停止状態にするための取り組みを進めることを確認した。原子炉が冷温停止状態になれば、政府は避難命令を一部緩和できる。
冷温停止状態とは、燃料が十分に管理され、原子炉の温度上昇を阻止できている状態のことを言う。
原発事故を担当する内閣府の園田康博政務官は「できるだけ早期の避難住民の帰宅を可能にすることがわれわれの任務だ」と述べた。
原発周辺の少なくとも8万5000人に避難指示が出されているが、政府は今後2~3年で、それらの地域の放射線量を安全な水準に下げ、可能な限り多くの住民の帰宅を許可することを目指していると述べている。
東電は現在原発から放出されている放射性物質の量が毎時1億ベクレルと推計されることを明らかにした。この値は3月15日のピークと比較すると800万分の1。しかし東電はこの水準も通常よりは高いと指摘した。
今回の評価は、損傷した3つの原子炉の全ての炉心の温度が最近100度以下に下がり、放射性物質を含む蒸気の大気への放出が止まったことを受けたものだ。
北海道大学の奈良林直教授(原子炉工学)は、「蒸気の放出が止まったのは、放射性物質を管理する上で大きな前進だ」と述べた。同教授は、原子炉安定に向けた取り組みの焦点が長期的な冷温停止を確実にすることに移り、東電が廃炉作業への着手に向かう公算が大きいと語った。