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2009年のクリスマス


作:逃げ馬







今年もあっという間に12月。
満員電車の車窓から見える街は、クリスマスのイルミネーションで輝いている。
今年もいろいろな事があった。
昨年からの経済危機が続いて、景気はなかなか上向く気配がない。 政治では“政権交代。”を掲げて選挙を戦った政党が、国民の期待を得て大勝した。
しかし・・・大勝をしたことに浮かれているのだろうか? なんだか迷走をして、国民の不安をかえって煽っているようだ。
不安のなると、人々の心はますます暗くなる。そして財布の紐が固くなり・・・と悪循環になっているようだ。
僕も今年はボーナスも少なくなって、先行きには不安を感じている。
世間ではクリスマスとは言っても、晴れやかな気分にはならなかった。
帰宅ラッシュの電車は駅に着くと、ホームにあふれる人を飲み込んでいく。 車内は混雑していた。
僕の横には、中学生くらいの女の子が立った。
進学校で有名な中学のブレザーの制服と青いチェック柄プリーツスカートから伸びる健康的な脚線美。黒い絹糸のような長い髪をポニーテールにまとめている。
彼女はスクールバッグから文庫本を取り出すと読み始めた。 大きな瞳が文庫本の文字を追いかけていく。
僕も車窓の風景に視線を戻した。街の明かりがまるで流れ星のように流れていく。
突然、電車が減速した。車内の乗客たちが大きくよろめく。
「アッ?!」
女の子が声を上げると同時に、僕の足元に何かが当たった。
視線を落とすと床に彼女の読んでいた文庫本が落ちていた。
僕は体をよじって文庫本を拾うと彼女に手渡した。
「ありがとうございます!」
笑顔でお礼を言ってくれた。大きな瞳が僕を見ている。
「どういたしまして」
僕もペコリと会釈をした。

電車が駅に滑り込んでいく。
彼女はもう一度、
「ありがとうございました」
と会釈をした。
ポニーテールが大きく揺れた。
スカートの裾を揺らしながら、降りる乗客の流れに乗って電車を降りた。



僕はワンルームマンションのドアを開けた。
誰もいない部屋の明かりをつけた。
クリスマス前の冷え冷えとした部屋。エアコンのスイッチを入れ、パソコンを立ち上げた。
メールをチェックすると、
「これって?」
『おめでとうございます』
なんだか怪しい件名でメールが入っている。
ウイルスソフトは作動していない。ゴミ箱に捨てようかと思ったが、なんだか気になり開けてみた。

『先日は当サイトの懸賞にご応募いただき、ありがとうございました。 今回、あなたがクリスマスプレゼントにご当選しました。 新たな人生をお楽しみいただければ幸いです』

僕は疲れた頭で記憶をたどっていた。
そう言えば数日前、最近いつもそうだったように、ビールをたっぷり飲んで酔った頭でネットサーフィンをしているうちに、なんだか怪しいネット懸賞に応募をした…どんな懸賞だったか記憶がないが。
「フン」
僕は小さく鼻を鳴らすと、パソコンのスイッチを切った。
この景気の中、“タダで“そんなに良いものが貰えるとは思えない。
シャワーを浴びると、パジャマに着替えてベッドに入った。
目を閉じると、なぜだろう・・・さっきの電車の中の女の子が頭に浮かんできた。
さわやかな笑顔で僕を見ている。
彼女のあの大きく綺麗な瞳には、今の僕はどう映ったのだろう?
彼女には、まだこれからの未来がある・・・それなのに、僕は“時代に流されて”疲れ果てている。
「うらやましいな・・・」
思わず呟いた。
若くて可愛らしい女の子。 人懐っこい笑顔、健康的な身体。清潔感あふれる制服姿。
「フン」
僕は、また鼻を鳴らしていた。
いずれにしても、今の僕とは“正反対の人”だ・・・。
僕はいつの間にか睡魔に襲われ眠っていた・・・。



翌日はクリスマスイブ。
僕はいつものように仕事に出かけていた。
いつものように仕事をこなし、いつものように満員電車で家に戻る。
クリスマスとは言っても、いつもと変わらない一日だ。
部屋に戻り、明かりをつける。
いつものように部屋着に着替えて、ビールでも飲もうかと思っていた時、チャイムが鳴った。
インターホンのスイッチを押すと、
『宅配便です』
僕は玄関に出ると、ハンコを押して段ボール箱を受け取った。
伝票を見ると、昨夜のサイトから送られてきたものだ・・・ということは、これが“懸賞の景品”か?
僕は机の上に箱を置くと、ガムテープをはがして箱を開いてみた。
「なんだ?!」
箱の中には、どう見ても“僕には必要のない”ものが入っていた。
赤いチェックのプリーツスカートと黒いタートルネックのセーター。そして黒いニーソックス。
「こんなものをもらっても」
僕は思わず苦笑いをした。どこまでついていないんだ・・・せっかく懸賞に当選しても、自己嫌悪になってしまっていた。
これじゃあ、中学生くらいの女の子の着るものだな・・・そう思いながら箱に入れようとしたのに、なぜか手が止まってしまった。
『わたしを着て!』
手にした“女の子の服”が僕に囁いているようだった。
自分でもわからないうちに上着を脱いで、ニーソックスを手にしていた。
足を通していくと、武骨な男の足がニーソックスに包まれていく。
どう考えても入らないはずなのに、ニーソックスに包まれた脚は“少女の脚”になっていた。
常識では考えられな状況に、僕は興奮していた。
セーターを手にした。武骨な男が着るには小さすぎる・・・しかし、誰かが囁いている。
『さあ、わたしを着て・・・・』と・・・。
僕はセーターの袖に手を通した。袖の先からは日焼けした男の手ではなく、白く細い女の子の指が見えている。
僕の心臓がドクドクと脈打っている。いつしか息も荒くなっていた。
大きく息を吸うと、セーターに頭を入れた。
『破れるのでは・・・?』
そんな心配をしながら頭を出して上半身をセーターで覆う。
自分でも無意識のうちに、髪をかき上げていた。
「エッ?」
黒くしなやかな髪が腰のあたりまで伸びていた。
『そんな・・・』
ドクドクと脈打つ心臓。僕の象徴≠煖サ奮をしているようだ。
あと残っているのは、赤いチェック柄のプリーツスカートだ。 大きく深呼吸すると、僕はスカートを手にした。
『さあ、これからあなたは、新しいあなたになるのよ』
スカートが、そう囁きかけていた。
しかし、このスカートのウエストは55センチほどだろう。メタボ体系の僕が履けるのだろうか?
フローリングの床の上に、スカートが広がっている。無駄毛たっぷりの脚の膝から下をニーソックスが覆っていた。
『大丈夫よ・・・さあ・・・』
“スカートの言葉”を信じて、僕はスカートを持ち上げていく。スカートが足を這い上がってくる。膝を過ぎて太ももをスカートが触れてゆく。
スカートが過ぎた後には、あれだけあった無駄毛はきれいになくなり、白く健康的な太ももが現れた。
スカートのファスナーを上げてホックを止めた。ミニスカートからは健康的な脚線美が惜しげもなくあらわれていた。
いつの間にか、視線が低くなっている。興奮していた僕の“象徴”の感覚がなくなっている。
僕は小走りに玄関に行くと、作り付けの姿身を見た。
腰まである艶やかな黒髪と、細い眉。なだらかな胸のふくらみと折れそうなほどの細いウエスト、赤いチェックのプリーツスカートから伸びる健康的な太ももと脚線美。
僕はスカートを少し持ち上げてみた。
シンプルなデザインのショーツが、すっきりとした股間とヒップを覆っている。
「まさか・・・」
セーターの首のあたりを広げてみると、膨らみかけの胸をブラジャーが包んでいた。
そう、僕は“自分の理想の美少女”になってしまっていた。
突然、部屋を風が吹き抜けた。スカートが舞い上がり、鏡にショーツがはっきり映った。
「キャッ?!」
思わずスカートを抑えて座り込んだ。フローリングの床の冷たい感覚が、太ももに伝わる。
思わず出した“女の子の声”と、“女の子らしい仕草”に、僕は頬を赤く染めていた。

部屋に戻ると、
「・・・」
部屋は“殺風景な男の部屋”から、窓にはカラフルなカーテンがかかり、可愛らしいベッドの横にはぬいぐるみが置かれ、机には教科書とノート、そして可愛らしい文房具が・・・。
すっかり“思春期の女の子の部屋”に変貌していた。
「ひょっとして?!」
僕はクローゼットを開けた。中には、あの女の子と同じ、進学校の制服がかかっていた。
僕は段ボール箱に目をとめた。
段ボール箱の底に封筒とカードが2枚入っている。
一枚はキャッシュカード、もう一枚は中学校の学生証だ。
封筒を開けると、手紙と書類が入っていた。

『ご当選おめでとうございます。 当サイトでは、クリスマスプレゼントとして、あなたの望む人生をプレゼントさせていただきます。
キャッシュカードには、あなた様が社会人となるまで必要な費用を入金してあります。
尚、あなた様がこれから社会生活をするうえで必要な“手続き”は当サイトで行っておりますので、御心配ございません。
それでは、あなた様の新しい人生が、幸多い人生となることをお祈り申し上げます。』

書類は、住民票だった。
“新しい僕”は、13歳の中学校2年生の女の子のようだ。
『これからどうなるんだろう・・・』
ぼんやりそんなことを考えていると、睡魔がやってきて、僕は深い眠りに誘われていた・・・。



玄関のチャイムが鳴っている。
「ハイ」
僕は自分のものとは思えない可愛らしい声で返事をすると、玄関に向かった。
「おはよう!」
玄関に立っていたので、あの電車で出会った女の子だ。
「お・・・おはよう・・・」
『なぜ・・・?』
そんなことを思いながら返事をすると、彼女は僕の服装を見て、
「あら・・・まだ着替えていないの? 遅刻するわよ!」
「ごめん! すぐに着替えるから!」
ちょっと待っていて・・・なぜかそう答えると、僕は急いでクローゼットを開けて、制服を手にした。
制服を着ていくうちに、僕の心はいつしか“進学校の女子生徒”になっていた。
「おまたせ!」
「さあ、行こう!!」
僕たちはニッコリ笑うと、胸を張って朝の街を歩いて行く。

クリスマスの日、僕の新しい生活ははじまったんだ・・・。




2009年のクリスマス

(おわり)





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