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[25576] リリーさんの聖杯戦争【Fate×お・り・が・み】 
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/04/01 19:46
処女作です。
がんばって書いていきますのでよろしくお願いします。
一度こちらの不手際で全消去してしまいました。
誠に申し訳ありません。
ついでに板移動しました。
では本編をどうぞ。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 プロローグ
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/04/02 19:29
彼女は其処にいた。

生前において破格の偉業を成し、世界に認められた者達だけが立ち入ることを許された場所。

時間、空間、概念。あらゆる全ての要素から隔絶された聖域―――英霊の座。

其処に彼女はいた。

彼女は王であった。

神々に認められし魔王にして、救済の象徴たる聖女であった。

そんな万能とも言える彼女には叶えたい夢があった。

世界平和。

誰もが幸福を甘受し、誰もが幸福に笑っていられる暖かな世界が欲しかった。

一度はその願いは果たされた。けれど。

力を手放したことで、世界は自分の言うことを聞いてくれなくなった。

ならば再び世界をこの手にせんと開いた戦いでは、自らの弱さを指摘され、盟友たる勇者によって討ち倒された。

………叶えられなかった願いは楔となり、彼女は英霊となった。




そして、遠く離れた彼の地にて。

あらゆる願いを叶える聖杯は、とある少年の従者として―――彼女を選んだ。




衛宮士郎は追い詰められていた。

喉は極度の緊張でからからに乾き、穿たれた筈の心臓はまるで張り裂けんばかりに鳴り響く。

荒い息を止められぬまま、あっさりと圧し折られたポスターを迫りくる蒼い死神に向かってがむしゃらに投げつける。

当然、手榴弾のように爆発するわけでもないそれは、男の振るった槍によって煙を払うよりも容易く弾かれる。

叩きつけられる殺気。身体が自分の物ではないかのように、凍りついて動かない。


「悪いな、坊主。見られたからにゃ確実に死んでもらうしかねえんだ」


身体から吹き出す殺気とは裏腹の、まるで友人に語りかけるような軽口。

だが、その内容は決して軽々しいものではない。

冗談のつもりなどさらさらないのだろう、現に先ほど自分は確かにこの男に殺されたのだから。

自分は、ここで終わるのか。

誰も救えないまま、ここで死ぬのか。

正義の味方になれないまま、ここで死ぬのか。

悔しさが止めどなく溢れる。無力な自分を呪いながら、せめてもの抵抗として目の前の男を射殺さんと睨みつける。


「ハ。魔術師にしちゃ良い目をするじゃねえか。………もしかしたら、お前が7人目だったのかもな」


呟き、男は紅い槍を構える。

今度こそ士郎の息の根を止めるべく、たっぷりと槍の穂先に殺意を乗せて。

だが。まるでその運命を引き裂くように、土蔵の床に刻まれていた術式が眩い閃光を放ち始める。


「バカな、これは―――召喚だと!? まさか本当に7人目だったか!?」


驚愕する男に向かって、溢れ出る光の中から『何か』が飛びかかる。


「くっ!」


男は砲弾の如く突貫する『何か』を槍で弾き、険しい表情のまま凄まじいスピードで土蔵の外へ後退する。

士郎はそんな一連の流れを茫然と眺めていた。

光から出てきた『何か』が振り返る―――人だ。背丈は自分と同じか、少し低いくらいだろうか。

それは少女だった。

光をそのまま閉じ込めたかのような純白のドレスを身に纏っていた。

闇をそのまま塗り固めたかのような漆黒のマントを身に着けていた。

だが、そんな派手な衣装よりも目を引くのはその瞳。

鮮血よりも尚紅いだろうその眼光は、睨まれているわけでもないのに思わず後ずさってしまいそうなほどの威圧感を与えている。

少女は士郎の姿を認めると、二ヤリと口元を歪ませ言葉を放った。


「初めまして。貴方が私のご主人様………で、いいのかな?」




―――運命の物語に、偉大なる王が降臨する。









そんな訳で我らが聖魔王陛下が参戦なさいました。
ええチートです。公式です。ステータスどぞ。


【CLASS】ファイター
【マスター】衛宮 士郎
【真名】名護屋河 鈴蘭
【性別】女性
【身長】女子高生くらい
【体重】血で汚れていて読めない
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷B+ 魔力A+++ 幸運A 宝具???
【クラス別スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では鈴蘭に傷をつけられない。
【固有スキル】
???
【宝具】
???

セイバーと呼ぶには得物がちっさ過ぎるんじゃないかなと思いイレギュラークラスになって頂きました。もともと鈴蘭のじゃないし。


鈴蘭はたぁくん狙いだと思ったんだけどなー
ああ、挑戦的な笑みを浮かべながら翔香さんと睨み合う鈴蘭が見たい




[25576] リリーさんの聖杯戦争 第一話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 16:31
「マスター? 何のことだ?」

少女の言葉を理解出来なかった士郎は思わず聞き返す。
士郎の反応に少女は首を傾げながらも答える。

「何って……貴方、聖杯戦争の参加者でしょ? 知らないの?」

「聖杯戦争?」

またも不可解な単語が出てきた。
もう一度聞こうとしたところで、全身が凍り付いたようなプレッシャーを感じた。
発生源は目の前にいる少女だ。眼を細めて土蔵の入り口―――正確にはその先に居るであろう相手を睨む。

「……質問はあとでね。マスターはここに隠れてて」

視線を逸らさぬまま言い残し、土蔵の外へと駆ける。
士郎にしてみればそれは自殺行為と同義だった。自分から出て行ったとはいえ、あの男がまだ外にいるかもしれないのだ。最悪のイメージが脳裏によぎる。
止めなければ。アレは人間にどうこう出来るような存在ではないのだ。

「待っ……!」

立ち上がろうとして足が縺れる。男の殺気と少女の威圧で足が震えていた。

(そんなこと気にしてる場合か! 急がなきゃいけないんだ!)

震える体に喝を入れ、傍に転がっていた鉄材を杖代わりに立ち上がる。
こんなもので立ち向かえるはずがないとは思うが、無いよりはマシのはずだ。何としてもあの少女を守らなければ。
後を追うように自分も外へ出―――

「……え?」

ようとして入り口で止まった。予想外すぎる光景を目の当たりにしたからだ。
やはりまだ居た蒼い男。これは予想範囲内だった。
予想と違ったのは白黒の少女が件の危険人物と切り結んでいたことだ。
右手に装着されている籠手から透明なナイフ程度の刃が伸びており、男の槍を弾いていた。

「炎獄、舞えッ!!」

少女の左手から放たれる蒼炎。
炎は男を取り囲むように広がり、まるで喰らい尽くさんとばかりに膨れ上がり―――

「うおおっ!!」

すんでのところで跳躍し、炎から逃れる。
着地した男と少女は睨み合いの形で膠着した。

「……はっ!?」

思わず魅入ってしまっていた士郎は本来の目的を思い出す。

「おい、何やってるんだ!? 早く逃げないと!」

「隠れててって言ったのに……」

対峙したまま渋面を作って嘆息する少女。
その反応に士郎は激昂する。

「何言ってんだよ! アイツは本当にやばいんだぞ!」

殺されかかった士郎は本気で少女を逃がすべく声を荒げる。
が、そこで男が声をかけてきた。

「あー、取り込み中悪いんだが。ウチのマスターから帰還命令がきたんで、ここは分けってことにしねえか?」

少女がチラリと視線をこちらによこす。どうする? と。

「え……あー……。帰ってくれるんなら俺はいい、けど……」

「話がわかるねぇ。ところで嬢ちゃん、あんたはセイバー、でいいのか?」

「帰るんじゃなかったの? ……私はセイバーじゃなくてファイターだよ」

「ファイターだと? イレギュラーってやつか。通りで得物が違うわけだ」

令呪によって全てのサーヴァントと戦うように縛られている槍兵は、いままでセイバーと戦っていない。
それ故、目の前の少女こそがセイバーと思っていたのだが、どうやら違うらしい。

「じゃあなお二人さん。次は本気で戦ろうぜ」

好戦的な笑みを浮かべ、男は飛ぶように跳躍し闇へと消えた。
命の危機を乗り越えた士郎は安堵のため息と共にその場でへたり込む。
だが。

「休むにはまだ早いみたいだよ、マスター」

「……衛宮君。貴方、魔術師だったのね」

見上げると、そこには紅い外套の男を連れた遠坂凛が見たこともない形相でこちらを睨んでいた。





おまけ
【CLASS】セイバー
【マスター】
【真名】長谷部 翔希
【性別】男性
【身長】高い
【体重】細マッチョ
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運E- 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:A+
バイクを手足の如く操り、超人的な走りが可能。
生物に乗れるかは不明。
【固有スキル】
直感:B
常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
無窮の武練:A
ひとつの時代で(純粋な人間に対して)無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
豪剣:―
とある神を殺す為に受け継がれてきた剣技。
しかし我流で剣を学んだため持っていない。
仮に持っていたならば、神性を持つ相手に対して天敵と言える程のアドバンテージを得る。
【宝具】
『黒の剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
折れず、曲がらず、揺るがない鋼の信念を持つ者のみが振るうことを許された聖剣。
かつて神の系譜である鬼に対して振るわれ、以後翔希の愛剣となる。
防御不能の斬撃を放ち、翔希の耐久を1ランクアップさせる。
【解説】
神殺し四家の一つ豪剣の長谷部家に生まれ、類稀な剣才を誇る。
眉目秀麗、成績優秀、神殿協会の勇者として選別され歴代最強の呼び声も高い。
こう書くとどこの完璧超人だと言いたくなるが、作中においては基本名有りの敵キャラに負けまくる。スライムに負けたこともある。
実力は確かに人類トップクラスなのだが、パーティメンバーが公式チートばかりのため影が薄い。ぶっちゃけ下から数えた方が早い。
マスラヲではパートナーのエリーゼに出番を喰われまくり、レイセンでは恋人を同僚に寝盗られ、ミスマルカに至っては名前すら残っておらず、更には最後の砦であった二代目聖魔王の称号さえもヒデオに奪われた。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第二話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:25
「遠坂……?」

「ええ、こんばんは。衛宮君」

「あれ? 知り合い?」

「あ、ああ。学校の同級生だ」

「うわぁ面倒くさい」

本気でそう思っていそうな顔を浮かべるファイターと名乗った少女。
飄々とした口調ながらも、眼前の二人を油断なく睨み付けつつ士郎を守るように移動する。

「面倒って、どういう意味だよ?」

「だぁーかぁーらぁー、聖杯戦争の相手が知り合いなんでしょ? 嫌いなら兎も角、親しい人と殺し合うのって面倒事以外の何物でもないじゃない」

「殺す……!? 何で俺と遠坂が殺し合うんだ、そりゃあさっきは殺されそうになったけど」

「……はぁ。衛宮君、もしかして貴方、聖杯戦争について碌に知らないマスターなんじゃないでしょうね?」

「ああ、さっきこの子も言ってたけど何が何やら……」

「やっぱり。それじゃあまるきりド素人ってわけね。じゃあ、説明してあげるわ。中で話しましょう。この聖杯戦争について、ね」





場所は移り、ここは衛宮邸の居間である。
士郎が律儀にも人数分のお茶を淹れ終わったところで凛による状況説明が始まった。

「早速本題に入りましょう。聖杯戦争は聖杯と呼ばれる、奇跡を可能とする神秘の結晶を巡って行われる戦い。令呪という刻印を持った7人の魔術師と、それに従う7騎のサーヴァントによって繰り広げられるわ。ここまではいい?」

「ああ。令呪っていうのはこの左手にあるヤツか?」

「そう。令呪っていうのはサーヴァントに対する3度限りの絶対命令権。それを使えばどんな理不尽な命令でも言うことを聞かせることができ、逆に限界以上の力を発揮させることもできるわ。例えば絶対服従だったり、全身全霊で戦えとかね」

「なるほど」

「付け加えるなら、サーヴァントを令呪なしで従えるなんていうのは不可能よ。何故なら彼らは人の手に余る強大な存在だから。サーヴァントっていうのは、実在した英雄なのよ」

「英雄!? それって、アーサー王みたいなもののことなのか?」

「そう、神話や伝説。数え上げたらキリがない。生前の偉業により英雄として認められた人物はその死後に英霊の座へと召し上げられる。
聖杯はそうした彼等に7つのクラスを当て嵌める事でこの世に召喚することを可能としたの。
剣士(セイバー)、弓兵(アーチャー)、槍兵(ランサー)、騎乗兵(ライダー)、魔術師(キャスター)、暗殺者(アサシン)、狂戦士(バーサーカー)。聖杯は召喚された英霊に相応しいクラスに当て嵌めてマスターに与えるのよ。まあ、その子は拳士(ファイター)なんてイレギュラーだけど」

「私は剣とか振り回したりしないし。まあ異世界の英雄だからまずそこからしてイレギュラーだよね」

「異世界ですって? それってもしかして平行世界のことじゃないの?」

「ああ、うん。正確には異世界と言えるくらい遠い平行世界だね。あっちじゃ魔人とか魔獣とか普通にいるし。あ、それと私の名前は名護屋河鈴蘭。よろしくね」

ぽりぽりとお茶受けの煎餅を齧りながら答えるファイター改め鈴蘭。どうせ異世界だから、とついでのように自分の真名をさらっと明かす。それにつられて士郎も自己紹介を返す。

「あ、俺は衛宮士郎だ。こちらこそよろしく」

「和やかになるなー! そして何で真名をバラすのよ!? 訳分かんない!」

ぎゃーすぎゃーす。
ぜぇはぁひぃふぅ。

「はぁ、はぁ……遠坂として異世界について聞いてみたい気もするけど今はいいわ。兎に角、そのサーヴァントとマスター達を戦わせて、最後に生き残った者が聖杯戦争の勝者であり、聖杯の所有者というわけ。これがこの聖杯戦争のおおまかなあらましよ」

「そんなのおかしいだろ! 人の命をまるでゲームみたいに遣り取りするなんて!」

「そうね、けどその表現は間違ってないわ。選ばれた7人の魔術師がサーヴァントと令呪を手駒として聖杯を手にすべく殺し合うゲーム。貴方はそのゲームに巻き込まれたってわけね。じゃ、これから行かなきゃいけないところがあるから。一緒に来て」

そう言って徐に立ち上がる凛。

「行くところ? どこに行くんだ?」

「言峰教会。聖杯戦争の監督役がいるところよ」





真名明かすのはまずかったかな?

おまけ2
【CLASS】アサシン
【マスター】
【真名】クーガー
【性別】男性
【身長】デカい
【体重】ゴリマッチョ
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具A++
【クラス別スキル】
気配遮断:―
宝具による影響で失われている。
【固有スキル】
神性:E
視姦魔人の使徒。
本人はあまり好ましく思っていない。
魔眼:A+
視姦魔人の使徒になったことで得た疑似的な視覚。
究極の気配察知。クーガーに対して隠れるという行為は意味を成さない。
心眼(真):B
修行・鍛錬で培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を見出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
【宝具】
『クーガーおじさん(キリング・クーガー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
悪役を演じ続けたクーガーの人生の具現。
クーガーの姿を直視した者に恐怖心を与え、一定時間硬直させる。
魔力によるものではないため、無効化するには対魔力ではなく同ランク以上の精神防御スキルが必要。

『エーテル結晶』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
葉月の雫が生み出した宝具の中でも傑作と呼ばれる神造兵装。
斬り裂いた対象の魔力を“殺す”
『エーテル結晶』によって付けられた傷はいかなる治癒魔術、再生能力をもってしても『傷を負った状態』にまでしか回復することができない。
ディスペルは不可能で、呪いを破棄するには『エーテル結晶』を破壊するか、使い手であるクーガーを滅ぼすしかない。


作者が好きなおっさんキャラ。
でもやりすぎた感が否めない。
アサシンのくせに真っ向から戦えるって……でもアヴェンジャーって感じでもないんだよなあ。

ゲイ・ジャルグ+ゲイ・ボウ+直視の魔眼=エーテル結晶

なにこのマジキチ宝具。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第三話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:26
深夜。
人気のない道を3つの人影が歩いている。
凛、士郎、鈴蘭である。
凛の道案内の元、3人は言峰教会へと向かっていた。
何故英霊であるはずの鈴蘭が霊体化していないのか?
それは鈴蘭の召喚があまりにもイレギュラーであったため、霊体化する機能が失われている―――なんて訳ではなく。

「ふうん、だいぶ神秘の意味が違うのね。バレても力が減るわけじゃないなんて」

「勇者なんてのもいるのか……」

「うん、でも表社会のほうはあんまり違いはないと思うよ? 神殿教団はないみたいだけど」

凛が異世界について聞きたがったためである。正義の味方志望の士郎も、民衆の期待を一身に背負う勇者の話に眼を輝かせている。
まあ、自分についての情報は渡すつもりなどないし、凛もそのあたりは察しているので聞こうとはしない。
何気に和気藹々である。少なくとも士郎はそう思っている。
そこへ一台の救急車がサイレンをけたたましく鳴らしながら走り去って行った。

「遠坂、今のって」

「ええ、またガス漏れ事件みたいね。ホント物騒だわ。今度は何人病院送りになったのかしら」

「いやー、見つかるかと思った」

救急車が通り過ぎたあとで鈴蘭が再び実体化する。雨合羽? 何それ。

「そういえば遠坂、サーヴァントって今のファイターみたいに霊体化ってやつで姿を隠せるんだよな? そしたらお前のサーヴァントは……」

「ええ、霊体化してるわ。本人曰く、『わざわざ敵と話す必要はない』ってね」

「そうか。すまないな遠坂、俺はお前の敵なのに色々面倒見てもらって」

「……勘違いしないでね。私は変な借りを作ったままにしておきたくないだけ。戦うかどうかは貴方の自由だけど、もし貴方が私の前にマスターとして現れるなら―――私は迷わず貴方を殺す」

力強い宣戦布告。
士郎が息を呑み、鈴蘭の眼がついと細まる。

「だから私を味方だなんて思わないことね。甘い考えは今のうちに捨ててしまいなさい」

ここに至ってようやく士郎も凛が己の『敵』であると理解する。
しかし、理解はできても納得はできない。なにより聖杯戦争などという不条理な争いは、衛宮士郎として断じて認められるモノではない。

「……着いたわ。ここが言峰教会よ」

確かに、目の前に見えるのは間違いなく教会だが―――夜のせいだろうか?
どうにも教会から滲み出るような嫌な気配が漂う。

「―――凛。私はここで外敵に備える。別に私は監督役に用があるわけでもないしな」

「あ、それなら私もここで待ってたほうがいいかな」

「そ。じゃあ行くわよ、衛宮君」

「ああ、分かった」

2人が教会の中へ入っていく。
霊体化して待とうかと思っていた鈴蘭に、アーチャーが声を掛ける。

「ファイター、君に尋ねたいことがある」

「ええ? ナンパ? えへへー……」

「違う。というか質問しただけで何故そんな反応になるのかね」

どうもこのイレギュラーは性格が掴みづらい。
気を取り直してもう一度、聞いておかなければならない問いを告げる。

「君は、聖杯に何を望む?」

「世界平和」

間髪入れぬ即答。
答えたことよりも、その内容に対して呆気にとられるアーチャー。

「……正気かね?」

「あ。正しくは愉快に楽しい世界平和、かな」

楽しそうに話す鈴蘭に、アーチャーは微かな苛立ちを覚えつつ。

「世界平和、なるほど高尚な願いだ。しかしそんな夢が本当に実現できると思うのかね」

「できるよ」

自信に満ちた鈴蘭の答え。
自信というよりはむしろ確信による返答だった。

「私に、私達にできないことなんて何もなかったんだから」

腰に手をやり、得意げに胸を張る。
アーチャーはそんな鈴蘭を眩しそうな、それでいて冷めきった複雑な眼で見降ろす。

片や、理想を掲げ、遂にはそれを実現してみせた英雄。
片や、理想に縋り、それゆえ理想に裏切られた反英雄。

似ているようで、決定的に似ていない2人はしばし見つめ合う。

「――――――君は、」

「なにやってんの、貴方達」

ふと我に帰る。
いつの間にか教会から2人が帰ってきていた。
凛は普段通りだが、士郎のほうは明らかに様子がおかしかった。

「大丈夫マスター? 顔が悪いよ」

「失礼だな……」

「ああ、ごめん間違えた。顔色が悪いよ?」

「大丈夫だ、少しぼうっとしてただけさ」

安心させるように笑いかける。
別に深刻な様子ではないことに、鈴蘭は内心胸を撫で下ろす。

「決めたよ、ファイター。俺はこの戦いを見過ごすわけにはいかない。だからマスターになることを受け入れた」

「つまり……」

「ああ。頼りないマスターだろうけど、これからよろしく。それから、俺のことは士郎と呼んでくれ」

「うん。よろしく士郎君。私のことも鈴蘭でいいよ、どうせ知ってる人もいないだろうしね」

堅く、固く握手を交わす。
ここに2人の契約は為った。




「それじゃ、ここで別れましょう」

帰り道の交差点で凛が提案する。

「分かってると思うけど、これで貸し借り無し。次に会う時は敵同士よ」

「ああ。遠坂、お前のおかげで助かったよ。ありがとう。良いヤツだよな、遠坂って。俺、お前みたいなヤツは好きだ」

「なっ……!?」

「ほぉう?」

士郎の言葉に赤面する凛。
その反応に何かを感じた鈴蘭。

「ちょっと! わかってんの!? 私達は敵同士で……!」

「? わかってるさ。だけど世話になったんだ、礼を言うのは当然だろ」

「く……もういいわ。せいぜい早死にしないように気をつけることね。じゃ」

ニヤニヤと笑みを浮かべる鈴蘭を睨んだ後、くるりと踵を返す。
だが、まるで石にでもなったかのようにその動きが止まる。

「あら、もう帰っちゃうの? 夜はまだまだこれからだっていうのに」

―――夜はまだ終わらない。











文才のなさに涙が出そう。
アチャってこれでいいんだっけ……?

おまけ3
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】アーチェス・アルエンテ
【性別】男性
【身長】高い?
【体重】成人男性くらい?
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運C 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:B
魔術師として自分に有利な陣地を作り上げる。
“砦”の形成が可能。
道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
【固有スキル】
暗黒神の加護:A+++
闇の最高神の加護。
幸運を1ランクダウンさせる代わりにあらゆる精神干渉を無効化する。
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で一国の王としてはBランクで十分と言える。
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、
逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
召喚:A+
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
入念な準備があれば神霊クラスの召喚さえ可能だが、
扱えるかどうかは別問題。
【宝具】
『千切れぬ蜘蛛の絆(アルハザン)』
ランク:EX 種別:固有結界 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
かつて駆けた城塞都市を展開し、アーチェスが生前最も愛した部下であり戦友であり家族をサーヴァントとして現界させる。
召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の『単独行動』スキルを保有し、
最大30ターンに及ぶ現界が可能。

まんま征服王じゃないか。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第四話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:27
現れたのは少女。
まだ10にも満たないだろう愛らしさと、氷を具現したかのような濃密な殺気。
本来なら相反するはずの真逆の雰囲気を持った少女だった。

「君は……」

「また会ったね、お兄ちゃん」

「こんな時間に何をしてるんだ?」

士郎の問いかけに銀髪の妖精は答えず、優雅に一礼する。

「はじめまして、私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、と言えば分かるかしら?」

「アインツベルン……!?」

少女の名に愕然する凛に、士郎が理由を問う。

「知ってるのか、遠坂」

「ええ……アインツベルン。聖杯の入手を宿願とする魔術師の家系。毎回この戦いにマスターを送り込んできているヤツらよ」

「マスター、なのか? あんなに小さいのに?」

「そうだよ。お兄ちゃん」

にっこりと、それだけ見ればまるで天使のような笑みを浮かべるイリヤ。

「だけど私、聖杯よりも楽しみにしていたことがあるの」

くるり。踊るように一回転。

「それはね、お兄ちゃんを殺すこと」

「っ―――!」

殺気? 狂気? 狂喜? どれともつかない圧倒的な感情が士郎を覆う。

「私ね、この日をずっとずっと待っていたの」

士郎を愛しそうに、憎らしそうに見つめ。

「だからお兄ちゃんは念入りに殺してあげる。おいで、バーサーカー!!」

少女の後ろから滲みでるように出現する―――灰色の巨人。
2メートルは優に超えるだろうその巨体は、小柄な少女の傍らにいることも相まってより一層巨大に見えた。凄まじいほどの存在感。
これが、英霊。

「どうしたの? ぼけっとしてるならこっちからいくよ? さあ、バーサーカー! そいつらみんな叩き潰しちゃえッ!!」

「■■■■――――!!」

「士郎君!」

迫るバーサーカーから、士郎の襟首を掴んで安全圏へと放り投げる鈴蘭。
降りかかる斧剣を籠手から飛び出たナイフで受け流す。
真っ向からは戦えないと判断、小回りを利用した戦法に切り替える。
バーサーカーの、まるで隕石とでもいうべき速度と威力でもって繰り出される斬撃。それらを鈴蘭はナイフで微かに逸らし、小回りで翻弄し、立ち向かっていく。
バーサーカーは理性を引き換えとして強大な力を手にしたサーヴァント。
故に本来は弱い英霊が呼ばれるのが通例だが―――

(なんて、デタラメ! こんな化け物がいたなんて!)

内心毒づく凛だが、魔術師としての自分が状況を冷静に分析する。

「逃げるわよ、衛宮君」

「え!? 待てよ遠坂! 鈴蘭を置いて逃げるなんてできるわけないだろ!」

「馬鹿! 分からないの!? 私達があそこにいても足手まといなだけ!」

士郎のふざけた言い分を一蹴する。そもそも構っている暇などないほど状況は最悪だ。

「あの子1人なら隙を見て逃げることもできるわ。今は一旦退いてアレの対策を考えるべきよ。そうでなきゃ勝ち目なんてないわ!」

「だけど!」

「2人だけこっそりいなくなるなんて酷いじゃない。作戦会議でもする気だったの?」

立ちふさがる小さな悪魔。その余裕は崩れることはない。

「でも、どうせバーサーカーには勝てないわ。だってあいつはヘラクレス―――古代ギリシャの『神の子』なんだから!」

『神の子』、というフレーズにぴくりと反応する鈴蘭。
それには気付かず、朗々と語り続ける。

「サーヴァントは英雄の魂を現世に呼び出したもの。それは貴方達も知ってるわよね?」

妖精は楽しげに嗤う。

「霊体である彼らの存在はそこに住む人々の認知度に強く影響される……故に。この世に広く名の知れ渡った英雄ほど、そのサーヴァントはその力を増す」

見せつけるように、誇るように両腕を広げ。

「『だからヘラクレスに勝てるヤツなんかいるわけない』! そこらへんのサーヴァントなんか敵じゃないわ!」




「上等だ。だったら試してやる」




死の隕石を掻い潜り、左手をバーサーカーの胸に添える。

「炎獄、貫けぇッ!!」

「■■、■■■―――!!」

鈍い爆音。
バーサーカーの背中が爆ぜた。
体内に仕込んでいた爆弾が炸裂したかのような、あまりにも非現実的な光景。

「そん、な……バーサーカー!?」

自信満々に語っていたイリヤは、見てわかるほどに動揺し―――

「なんて、言うと思った?」

「っ、再生能力!?」

映像の巻き戻しのように塞がっていく致命傷。
治癒と呼ぶには再生力が高すぎる。

「ヘラクレスは十二もの難行を乗り越えた英雄。なら、命を十二個持ってたって不思議はないでしょ?」

「蘇生魔術の重ね掛け……! どこまでデタラメなのよ!?」

「――――――偽・螺旋剣」

もはや完全にヒステリーに陥った凛。
が、それはフェイクだった。
飛来する一本の矢。いや、矢と呼ぶにはそれは些か語弊があった。
捻じくれた剣。バーサーカーに直撃した奇妙な矢は瞬く間に爆散した。

「へえ……驚いちゃった。まさかバーサーカーを二回も殺すなんて。でも、もう同じ手は通用しないわ。一度乗り越えた試練は二度と失敗することはない」

絶望的な台詞。
先の言葉通り、あり得ない速度で再生していく傷。

「アーチャーと……セイバー? に興味が湧いたわ。今日は見逃してあげる」

最後に、とびきりの笑顔を士郎に向ける。

「じゃあね、お兄ちゃん」













NGシーン
「おいで、バーサーカー!」

少女の呼ぶ声に応じ、背後から現れる灰色の―――

「セギホノセギホノ。アヴェスタアヴェスタ」

訂正。なんか変なのだった。
ガタガタと震える変なのは、ガニ股でものすごい勢いで貧乏揺すりさせ、その場で駆け足でもしているかのように、だが確実に近づいていた。
あえて表現するならラメ入りペ○シマン。
鈴蘭の絶叫がこだまする。

「ふざっけんなあああああああああああああああああああああああああ!!!」

2人の拳が交わる時、運命の物語が幕を開けr

「いやだから何でだよ!?」

続かない









遊びすぎたかな。
反省も後悔もしてないけどな。

おまけ4
【CLASS】バーサーカー
【マスター】
【真名】アラン・マクレガー
【性別】男……性?
【身長】伸縮自在?
【体重】不明
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力A+ 耐久E 敏捷A+++ 魔力C 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
【固有スキル】
戦闘続行:A
生還能力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
矢避けの加護:B
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
現在狂化しているので、能力を発揮できない。
【宝具】
『神速連打(セギホノ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ1~50 最大捕捉:1~50人
秒間2万発もの打撃を繰り出す、宝具の域にまで高められた技。
全方位から放たれる拳を防ぐことは不可能である。

『無限再生(アヴェスタ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
全身に散らばった65536個のコアのマイクロ秒単位の相位互換の再生速度による、驚異的な再生能力。
仮に刀剣類で打ち破るのであれば、およそ6千発の斬撃を『ほぼ同時に』食らわせなければならない。

最終巻のみのスポット参戦にも関わらず、強烈な存在感と絶望感を与えた剛の者。
バーサーカーよりも死なないぞこいつ。
ギル様助けて。



[25576] 番外編 ドキッ! チートだらけの聖杯戦争!? グチャリもあるよ☆
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/29 21:38
聖杯戦争。

それは願いを叶える万能の釜を求めて争う魔術師と英雄達の壮絶なる戦い。

今宵、次元を越えて数多の伝説達が新たな闘争へと身を投じてゆく―――



衛宮士郎、セイバー。

「行くぞ、セイバー!」

「うむ。このようなおぞましき戦い、勇者として見過ごすわけにはいかぬ」


遠坂凛、アーチャー。

「さあ、勝ちにいくわよ」

「無論にございます、主様。我が弓と神殺しの秘奥でもって、必ずや聖杯を手にしてご覧にいれましょう」


バゼット・フラガ・マクレミッツ、ランサー。

「奇跡を起こす万能の釜ですって!? ああ、持ちかえればきっと我が主もお喜びになるに違いないわ!」

「分かりました、分かりましたからもう少し落ち着いてください」


間桐桜、ライダー

「先輩……私は」

「ぎゅげあぐる、げえっげぎゅるぐ(猿の手下というのは虫酸が走るが、円卓の出張らない絶好の機会。存分に暴れてやろうではないか)」

「あまり調子に乗らないでくださいね、水炊きにしちゃいますよ?」

「ぎゅあッ!?」


葛木宗一郎、キャスター&アサシン

「フフフハハハハハハハハハハ! 待っているがいいまだ見ぬ余の花嫁達! 今迎えに「二一五ページ」ぷげらぁッ!?」

「品がないわね。一成、お茶を淹れて頂戴」

「はいッ! 少々お待ちをッ!!」

(拾わなければ良かった……)


間桐臓硯、真アサシン。

「ふむ、此度の聖杯戦争はなにやら面倒じゃのう」

「風を、お使いになられますか?」


イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、バーサーカー。

「遠慮はいらないわ、存分に切り刻みなさい!」

「了解でありまっすッ!!」


交錯する想い。

「貴様が、真のゼンラーマンだ……!」

「友よ……!」

明かされる真実。

「そう、本気を出せばいいのね」

「「「「やめろー!!」」」」



そして、ついに降臨する最悪の邪神―――

「くすくす。ああ、楽しい♪」

「これ、士郎や。さっさと飯を持ってこぬか」

「助けてぇ――――――ッ!!」


原形を保っていられるのは、誰だ!?


『聖杯戦争~冬木の終わる日~』

近日放映予定














するわけないだろうが。

キャスト

セイバー:ランデルディー
アーチャー:名護屋河睡蓮
ランサー:フローレンス・フリス・ラディス
ライダー:イワン・トビノフスキー
キャスター:エルシア
アサシン:マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト
真アサシン:エーデルワイス
バーサーカー:白井沙穂
アンリ・マユ(眼):マリーチ
アンリ・マユ(口):みーこ


何というカオス。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第五話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:28
「うわあああああッ!!」

絶叫と共に飛び起きる。
全身はぐっしょりと汗に塗れ、着たままになった制服が気持ち悪く肌に張り付いていた。

「大丈夫? かなり魘されてたけど」

ひょっこり現れた鈴蘭が心配そうに尋ねる。
はい水、と差し出されるコップ。
礼を述べてから受け取り、一気に飲み干す。

「ああ、大丈夫だ。ちょっと夢見が悪くてさ」

本当にひどい夢だった。
露出狂同士のやたら暑苦しい友情だったり、無限の胃袋(アンリミテッド・ストマック)を持つ美女だったり。いや、忘れよう。アレは夢だ。

「……ホントに大丈夫? 『ゼンラーマンオメガ』とか『エンゲル係数が』とか言ってたよ」

「あ、ああ。多分疲れてたんだと思う。昨日はいろいろあったし」

基本、大らかで細かいことは気にしない鈴蘭でさえ心配になる魘され方だったようだ。
バーサーカーを撃退(?)した後、遠坂と別れ、自宅の玄関をくぐった辺りで記憶は途絶えている。恐らくはそこで緊張の糸が切れてしまったのだろう。

「それよりすまない、鈴蘭。バーサーカーを押しつける形になっちまって」

「何言ってんの? サーヴァント同士が戦うのは当然でしょ。さらに言えば士郎君は魔術師として弱すぎるんだから」

「でも」

「マスターが死ねばサーヴァントも死ぬんだよ? マスターが前に出てくるのは本来ありえないんだから」

「……」

鈴蘭の言うことは尤もだ。
戦いは既に始まってしまった。
10年前のあの惨劇を繰り返させない。その為にはまず生き残らなければならないのだ。

「……ガラス」

「へ?」

「いや、ガラスどうしようって思ってさ」

「どうもこうも……直せば?」

あからさまな話題転換だが、鈴蘭は戸惑いつつも応じてくれた。

「俺は“強化”の魔術しか使えないんだ。物の構造を把握したりは出来るんだけど直したりとかは……」

「マイナーだねぇ……」

「仕方ない。新聞紙でも張っとこう」

「そういえばさ。言おうと思ってたんだけど、私がイレギュラーだったのか召喚がアレだったのか、何故か魔力供給ラインが無いんだよね」

「え!? サーヴァントはマスターから魔力をもらって現界してるんだろ!? それができないならこのままじゃ」

「いずれ消滅だろうね。まあ、私の魔力は多いからそうそう底を尽きたりはしないだろうけど。でも万が一もあるから」

「そ、そうか……安心した。それじゃあ部屋に案内するよ、離れの客間でいいか?」

「んー。気を遣ってくれるのは嬉しいけど、私サーヴァントだから眠らないし、士郎君守らないといけないから離れるのは不味いと思うよ」

「いや、だけど鈴蘭だって女の子だろ? 俺と一緒の部屋に寝るわけにもいかないし」

「女の子……ッッ!!」

生前、あらゆる人々に『女の子』として扱ってもらえなかった鈴蘭にとって、士郎の言葉はある意味で必殺技と言えた。
鈴蘭の反応に不可解なものを感じつつも説得を続けようとするが、突然鳴り響いた呼び鈴がそれを遮る。

「し、しまった! もうこんな時間か!」

「え? 何? 敵襲!?」

来客にうろたえる士郎と、恍惚状態から完全に復帰できていない鈴蘭。

「違う! そろそろあの2人が来るころだ!」

「2人?」

「くっ、こんなことを忘れてるなんて……! 鈴蘭は兎に角隠れててくれ!」

士郎のあまりにも切羽詰まった様子に気圧され、鈴蘭は素直に霊体化する。
それを確認し、士郎は玄関に向かい扉を開ける。

「あ、先輩。おはようございます」

「あ、ああおはよう。藤ねえと一緒じゃなかったのか」

「はい」

扉の先に居たのは少女。後輩であり家族同然の間桐桜だ。

「それで先輩、朝ご飯の準備は?」

「それがまだなんだ、手伝ってくれるか?」

是非! と答える桜に微笑む。

「しかしすまないな、部活で疲れてるだろうに」

「そんなことありません。私が勝手にお邪魔してるんですから、これくらいはさせてください」

「何言ってんだ。桜はもう家の家族みたいなもんだろ、今更遠慮なんてするなよ」

「遠慮なんかしてません。私、先輩のお手伝い好きですから」

「言うようになったじゃないか」

朗らかに笑い合う2人。
そこへ紛れるように蠢く黒い影が―――

「そこかッ」

「ふぎゃッ!」

「いい歳してつまみ食いなんてやめろよ藤ねえ、みっともないぞ。というかいつの間に……」

Gではない。女性だ。虎柄の。

「ふふん、さっき縁側から忍びこんだのだー。桜ちゃんこれ食べていい?」

「もうすぐご飯ですからダメです」

「そんなッッ!!」

頭をはたかれた女性は悪びれる様子もなく、桜に餌をねだり、笑顔で拒絶されて崩れ落ちた。
女性の名は藤村大河。
落ち着きとは無縁といった雰囲気の女性である。
なんやかんやで食事は完成し、3人で食卓を囲む。

「いやー、桜ちゃんお料理うまくなったねー」

「ああ、洋物なら俺以上だな」

「そ、そんなことないです……」

食後。
絶賛する大河と士郎。恥ずかしそうに謙遜し、わたわたと食器を片づける桜。
これがいつもの衛宮家の朝だ。

「物騒ねー、ねえ士郎。ここって結構近くじゃない?」

大河がつけたテレビでニュースが流れていた。
一家惨殺。殺害の手口は大きな刃物によるもの。
まさか、という思いが士郎を満たす。
聖杯戦争の犠牲者? ありうる。ランサーやバーサーカーといった規格外ならば、一般人の殺害など造作もないだろう。
自分は、みすみす誰かが殺されるのを見過ごしたのだ。

「……い、先輩? 大丈夫ですか?」

「え? ああ、悪い。考え事してた」

「士郎が責任感強いのは知ってるけど、なんでもかんでも抱え込んでちゃダメよ?」

「分かってるよ、藤ねえ」

ならよしと大河は頷き、立ち上がる。

「それじゃあ、学校行こうか」

「あ、俺はちょっとやることがあるから2人は先に行っててくれ」

2人を玄関から送り出し、一息つく。

「妹系の後輩に姐御肌の女教師……。士郎君て結構やり手な人?」

「どういう意味だ。というか悪いな、ほったらかして」

「それは気にしてないよ。あの2人との関係のほうが気になるけど」

ニヤニヤとからかうように笑みを浮かべる。

「何でさ……。ところで、鈴蘭も飯食うだろ? というかサーヴァントって飯食うのか?」

「できるよ、少しだけど魔力も回復するし。それで、あの2人だけど」

「ただの後輩と保護者だよ、変な関係じゃない。家族……みたいな人たちだ」

「なるほどね。よくここに来るの? だったら安全のためにも暫く出入り禁止にしたほうがいいんじゃない?」

「そうかもしれないけど、そんなことすれば逆に怪しまれると思うぞ。それに―――絶対に、巻き込んだりなんかしない。必ず守り抜く」

「それが、士郎君の戦う理由なんだね。聖杯なんていらないのかな?」

「ああ。笑わないでくれよ、俺はな」

――――――全てを救う、正義の味方になりたいんだ。











気が付いたら朝だったうえ番外編は夢だったでござる。
鈴蘭がヒロイン?
ハハハ……そんな馬鹿な。
ゼンラーマンオメガとは?
それはゼンラーマンカブトからゼンラーマンZに受け継がれたゼンラパワーが共鳴し合い、誕生した新たな自由の戦士の名前である。

おまけ5
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】セリアーナ・ヴァーゼンシュタイン
【性別】女性
【身長】中学生くらい
【体重】内緒なんですーっ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力A+ 幸運A 宝具A
【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。
【固有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
言語理解:B
獣でありながら人語を理解し、話すことが出来る。
本来の姿は獣であるため動物達の言葉も当然のように理解できる。
妖術:A+
極めて高度な妖術の使い手であり、特に魅了、変化等の妖術を得意とする。
限定的だが世界に働きかける事も可能である。
【宝具】
『八尾供養』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
己の尻尾を首級代わりに差し出した逸話の具現。
尻尾を命に見立て、切断することで死を免れる。
実質7回分の命のストックがある。ストックの補充はできない。

『憑依・凶ツ星』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
相手に張り付くことで発動。
発動中は自身にBランク相当の気配遮断が自動的に付与され、相手の幸運をE-ランクにまで落とし、戦意を含めたあらゆる気力を喪失させる。
また、伝染病のように効果が広がるため、対軍宝具としての側面を秘める。
憑依に成功すると、ある程度の精神操作が可能。

ミスマルカに出てきたとき思わず目頭が熱くなったキャラ。
立派に育ったなぁ……。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第六話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:28
(学校かー懐かしいなー)

(鈴蘭も学生だったのか? そういえば表社会にそう違いはないって言ってたっけ)

(うん、高卒だよ。卒業した後は悪の組織にメイド長として就職したんだ)

(悪の組織に、メイド……?)

通学路。
霊体化した鈴蘭と他愛もない世間話を念話でしつつ、2人は学校へと向かっていた。途中、鈴蘭の人生について問い詰めたい事柄もあったりしたが。
理由は分からないが、自分の夢を語った辺りから彼女の機嫌は割かし高めだ。
もしかしたら、鈴蘭も似たような理想を持っていた英雄だったのかもしれない。

(それにしても、わざわざ律儀に登校するなんてね。普通なら引き篭ってたっておかしくない状況なのにさ)

(だから、そんなことしたら逆に目立つだろ? ……ほら、遠坂だって学校に来てるじゃないか)

校舎に入り、凛の姿を見つけて声を掛けようとするが。

「……」

一瞬だけ、凶悪な目付きで睨みつけた後、直ぐ様何事もなかったかのように通り過ぎて行った。

(やーいやーい嫌われてやんの)

「くっ……」

野次を飛ばす鈴蘭に言い返すこともできず、教室に向かう。
扉を開け、級友達と挨拶を交わし自分の席に座った。

「はーいみんなおはよー! ホームルーム始めるよー」

少しして、担任の大河が入ってきた。
配られるプリント。内容は最近の騒動への対処だろう、部活動の短縮やグループでの登下校を促すものだった。
今朝のニュースを思い出して暗欝としそうになるのを振り払い、改めて覚悟を決める。




昼休み。
士郎は友人である一成と共に昼食を摂っていた。

「そういえば衛宮。先日から頼んでいた備品修理についてだが、今日までにしようと思う」

「ん?」

「ホームルームでも話題に上がっただろう? 例の殺人事件。アレを受けて我が校では当面下校時間を早めることになったのでな」

「そうか……じゃあ、今請け負ってる仕事だけでも終わらせちまおう」

「すまない、助かる」

(凛もいるから此処も一応戦場なんだけどね……分かってる?)

(学校じゃ遠坂だって仕掛けてこないさ。魔術師は一般人の居る所じゃ戦わないんだろ?)

その学校で一回死んでいるくせに暢気な反論を返す。
そんな士郎にせっかく上がっていた鈴蘭の好感度も下がり気味だ。気付かないほど小さなため息が漏れた。





「うし、終わった! さて、帰るか」

辺りを見渡せばすっかり夕暮れだった。
昨日のことを思い出し、校内を見回って誰かいないか確かめようと思い立つ。
自分のような犠牲者が出ないとも限らないのだから。

「呆れたわ。まさか、学校に出てくるなんてね」

階段の上から声が掛かった。
凛だ。見るからに機嫌悪そうだが、それを知ってか知らずか士郎は話しかける。

「なんだ。まだ残ってたのか、遠坂。今朝はどうしたんだよ? 昨日の礼を言おうと思ってたのに」

「……どうやらまだ自分の立場が分かってないみたいね。三流の魔術師が聖杯戦争中に外を出歩くなんて、正気の沙汰じゃないわ」

「でも、このタイミングで休んだらあからさま過ぎるし、魔術師は人目のあるところでは戦わないんだろ?」

アーチャーと鈴蘭が実体化する。
ぎしりと空気が悲鳴をあげ、放課後の校舎は一瞬で戦場へと変貌した。

「え? おい2人共……」

「人目がない、ね……じゃあ、衛宮君。今、ここには魔術師が気にすべき人目があるのかしら?」

バッと振り返る。
無人。当然だ。生徒が事件に巻き込まれぬよう、教師達が促したのだから。

「昨夜、私が貴方を教会に連れた行ったのはね、別に貴方にマスターとして戦って欲しかったわけじゃないわ」

無表情のまま凛は語る。
袖を捲りあげ、その下から露になった魔術刻印が淡く輝く。

「貴方に現状をしっかりと認識して欲しかったからよ。自分の立場が理解できたなら無謀な行動は避けるだろうし、そうなれば私もこんな余分な手間を掛けずに済むはずだった。言ったはずよね? 『今度会ったら敵同士だ』って」

「と、遠坂……? まさか、」

「あれだけ忠告してあげたのに、さっぱり分かってなかったなんてね。衛宮君、貴方はここで―――死になさい」

「炎獄、疾れぇッ!!」

鈴蘭の蒼炎が視界を覆い尽くした。












短すぎた。
あとこちらのミスで全消去してしまいました。
申し訳ありません。

おまけ6
【CLASS】ブレイバー
【マスター】
【真名】アロンソ・キハーナ
【性別】男性
【身長】不明
【体重】不明
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX
【クラス別スキル】
正義の心:EX
ただの人間が辿り着いた無我の境地。
悪の属性を持つ相手に対して有利な補正が掛かる。
彼の眼から逃れられる悪など存在しない。
【固有スキル】
勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『誰も知らない英雄(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
隔離世に潜む火龍を追い払った逸話の具現。
龍の因子、悪の属性を持つ者が相手である場合、お互いのステータスを入れ替える。

『不屈なる者の武勇伝(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
如何なる強敵を前にしても退くことがなかった伝承の具現。
例え心臓を貫かれようとも、相手を打倒するまで絶命しない。


神々が認めた真の勇者。
翔希が心の中で師匠と呼んでそうな人。
宝具『黒の剣』はいつか現れる自分の後継者のために、彼が製造したものである。
そんな設定があったらいいなと思ってみる。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第七話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/06/23 14:23
「くッ!」

「ふんッ!」

鈴蘭の爆炎に対し、準備していたアクアマリンを放る。
が、それでも相殺しきれず、アーチャーの振るった双剣でもって漸く掻き消えた。
バーサーカーの時よりも威力が低い気がする。
手を抜いた? それとも何か条件でもあるのだろうか。いや、それよりも。

「……逃げられたな」

「目くらましってわけね」

眼前に居た筈の2人の姿は忽然と消えていた。
見渡せば、蹴破られた痕跡の窓。
仮にあのまま戦っていたとしても実質2対1。片方を相手にすれば片方が士郎に向かっていただろう。
ならば、士郎の安全を確保した上で戦うことが鈴蘭としては最上。

「やはり、あの小僧に助言などすべきではなかったな。殺すのならば私がやろう。一度情の移った相手に手を下すのは難しいだろうからな」

「必要ないわ、これは私のけじめよ」

戦場に、紅い魔術師が降り立つ。






「げっふ……」

鈴蘭によって強引に、強烈な横Gを食らった士郎は絶賛○○中だった。
その原因を作った張本人は士郎の様子に気を配りつつ、周囲を警戒していた。

「大丈夫? 吐けるなら吐いといた方がいいよ。そんな暇があったらだけど」

「ああ……ぐふっ……それにしても遠坂の奴、いきなり仕掛けてくるなんて」

「此処も戦場だって言ったでしょ。それに放課後の学校なんて、絶好の無人空間なんだから」

「俺には遠坂と戦う理由はない。聖杯なんて興味もない。無関係な人達を守れればそれでいいんだ」

「士郎君はそうでも、向こうは違うよ。最低でも私を殺すのが目的なんだから」

「っけど!」

瞬間、空気が脈動した。
全身から力が抜けていくような喪失感。

「な、ん……だよ……これ」

「結界!? しかもなんて悪趣味な……!」

規模からいって人間に発動出来るものではない。
ならばサーヴァント、それも魔術に特化したキャスターに依るものか。

「しっかりして士郎君! 全身に魔力を流せばなんとか抵抗できるから!」

鈴蘭に言われるがまま、魔力を通す。
全快、というほどではないが、普通程度には動ける。

「鈴蘭、これって」

「結界だね。中に居る人間から生命力を吸い取るやつ。たぶんキャスターの仕業だと思うけど」

生命力を、吸い取る?
この結界を張った者は生徒達の生気を吸収するつもりだったのか?
自分は魔力を流せたからこそこうして動けるのだ。
もし抵抗できない生徒達に対して使われたなら。

「くそっ、ふざけやがって……この匂いも結界の効果なのか?」

「匂い?」

「ああ、感じないのか? こんなにも甘ったるい匂いなのに」

「それ、結界が発動してから感じたの?」

「結界が発動する前からしてたけど、さっきいきなり強くなった」

眼を閉じ、神経を研ぎ澄ます。
より匂いの強い方を探る。

「……こっちだ。向こうから匂いがする」

「行こう。そこに結界の基点があるはずだ」







学校裏の林。
近づくほどに、甘い匂いが強くなっていく。

「……ここだね。言われなくても分かるよ、魔力溜まりが出来てる」

「ああ、ここが結界の中心だ」

激流とも言うべき魔力の奔流。
こんな醜悪な結界はさっさと破壊してしまうに限る。

「おや、驚きました。貴方達はこの基点の在り処が分かったのですか」

基点の向こう側からの称賛。
顔の半分を覆う眼帯を身につけた、長髪の女性。

「お前がこの結界を張ったのか!?」

「ええ、いかにも。この『他者封印・鮮血神殿』を張ったのは私です」

「前に出てきたってことはキャスターじゃないね。貴女のクラスは……」

槍兵、弓兵、狂戦士は既に確認している。
暗殺者が真っ向勝負を挑むとも考え辛い。
ランサーの言葉から察するにセイバーはいないらしい。
ならば、残されるクラスは―――

「私はライダー、戦場を駆ける一陣の風。基点を見つけられたご褒美に、貴方達は優しく殺してあげましょう」











本流は神性持ち以外には普通に強い炎という扱いにしたいと思います。
そうでなきゃ強すぎやっちゅーねん。

おまけ7
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】川村 英雄
【性別】男性
【身長】ひょろい
【体重】モヤシ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運EX 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:E
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な“結界”の形成が可能。
道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
【固有スキル】
直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
召喚:EX
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
祈るだけで神霊クラスの召喚が可能であり、
さらに使い魔として使役(?)することができる。
電子・聖銀・闇の神霊と契約している。
銃の神霊も呼べる?
【宝具】
『億千万の電脳(スカイネット)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
電子の神霊が持つ人類の叡智の結晶。
電脳版無限の剣製とでも言うべき宝具。
だが生み出せるものは刀剣類だけではなく、およそ人類が記憶してきた全てが創造できる。
認識さえしていれば“月”の掌握も可能、かもしれない。

『麗しき聖銀の乙女(エリーゼ・ミスリライト)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
聖銀の神霊が持つ対魔の金属。
自在に形を変える金属は武器にも盾にもなる。
魔獣、怪物、悪の属性を持つ者に対して必ず先制攻撃できる。

『億千万の闇(ロソ・ノアレ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
闇の神霊の完全召喚。
三千世界に亘って存在するあらゆる意味での闇であり、乖離剣によって切り裂かれた世界そのもの。
数ある神の中でも最古にして最強たる存在。闇の属性を持つ聖杯と言える。

『魔眼王の脚本』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
英雄本来の宝具。
弱者のまま覇者となった逸話の具現。
自らのステータスを相手が第一印象で感じたままに偽装する。
見破ることは不可能であり、対峙する相手にとっては無双の戦士として映る。
だが、実際にステータスが変動しているわけではない。

『ああ素晴らしきこの世界(ヒキニパ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
発動すると自身にAランク相当の精神汚染が付与され、
この状態で会話した人物にCランク相当の精神汚染を付与する。回避するには英雄を論破するしかない。

難産だった……。
未来視を宝具にするか迷ったけどこんな感じでいいかな。
てか宝具全部借りものじゃないか。

宝具追加しました。
召喚宝具はヒデオのものではないのでヒデオが持ってるのは1つだけです。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第八話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:31
「お前……なんでこんな結界を張るんだ!? まさか本当に生徒達を襲うつもりだったってのか!?」

「当然です。人間の霊魂はサーヴァントにとって力の源と言ってもいい。そのうえここは若者が数多く集まる場所、生命力を吸収するのにこれほど適した場所はありません」

「人間の、霊魂……?」

何故、サーヴァントが人間の霊魂を吸収する必要がある?
殺すのは神秘が一般人に漏れそうになった時だけではないのか?
補足するように鈴蘭が説明する。

「サーヴァントは霊体だからね、食べた分だけそのサーヴァントは強くなる。人間の霊魂は格好の燃料ってわけ」

――――――。
ふざけるな。

「ふざけるなッ!! 今すぐ結界を解除しろ! 無関係な人間をこれ以上巻き込むな!!」

「何を言っているのです? 聖杯戦争において人間の生命力を己が魔力とするのはむしろ常道。ならば、搾取される彼等は戦いにおける駒。無関係、とは言えませんね」

クスクスと、愉しげに士郎の言葉を嘲笑うライダー。
ゆっくりと体を傾げ、戦闘態勢を整える。対峙する鈴蘭もまた、無骨な籠手からナイフを伸ばす。

「そんな屁理屈が通用すると思ってるのか!?」

「いずれにせよ、私が貴方に従う道理などありません。従えることが出来るのは我がマスターのみ……。止めたいのであれば、私を倒すしかありませんよ?」

言い終わるや否や肉薄するライダー。
しかし鈴蘭のナイフがそれを阻む。繰り出される釘剣をナイフで弾き、左拳でもって反撃する。
その拳を捕らえようと絡まり付く鎖、だが鈴蘭はその鎖を逆に掴みとって力任せに引き寄せる。
ライダーは釘剣をあっさりと手放し、鈴蘭など興味もないとばかりに士郎へと新たな釘剣を放つ。
そうはさせじと牽制の蹴りでライダーを突き放す。

「なかなか速いですね、この私の動きについてこられるとは」

「陸上部だったからね。瞬発力には自信があるんだ」

「陸上部? ふむ、貴女は近代の英霊ですか?」

「異世界だッ!」

鋭く踏み込み、右拳をライダーの顔面に向かって繰り出す。
拳撃を釘剣でいなし、さらに距離を取る。
重力など知らないかの如く縦横無尽に駆けるライダー。
あらゆる角度から釘剣を投躑し、士郎を狙う。

「そんなものッ!」

「やれやれ、お転婆ですね。そんなことでは男の子に愛想を尽かされてしまいますよ? ああ、ですがそのような貧相な体ではそもそも見向きもされないのでしょうね」

ライダーの嘲笑。
ブチン、と何かが千切れるような音と共に、鈴蘭の纏う空気が戦闘のものから若干違うものに変化した。

「上等だキサマこの私のナイスなバディを愚弄するか喧嘩売ってやがるのかいいだろう買ってやるその無駄にデカイだけの脂肪ブチ千切って口に詰めて窒息させてやろうかクソアマがァッ!!」

引いた。
あまりにも口汚い言葉。有無を言わせぬ気迫。
原因であるライダーは言わずもがな、後ろで何とか鈴蘭の援護ができないかと見守っていた士郎までもが引いていた。
どうやら自分の体の一部に対してコンプレックスがあるらしく、ライダーはそのスイッチをこれ以上ないくらい的確に、しっかりがっちり押してしまったようだ。
今後プロポーションについては決して触れまいと心に誓う士郎だが、もはや鈴蘭は止まらない。

「うらァッ!」

「なっ、くっ……!」

割と拮抗していた筈の戦闘は一気に鈴蘭優勢だ。
気圧されたライダーは鈴蘭のワンツーを捌き続け、鈴蘭はといえば昨晩のバーサーカーを凌ぐのではないかという程の無双っぷりだ。シリアスはどこへ行った?
あとに残ったのは持つ者と持たざる者とのただただ一方的な攻防戦だけである。
だがライダーもさる者、持ち前の敏捷を活かし空中へと逃れ―――

「ぐうっ!?」

飛来した剣によって肩を貫かれた。

「衛宮君! 鈴蘭!」

「遠坂と……アーチャー!?」

「2対1とは流石に分が悪いですね……ここは退かせて頂きます。結界が完全に効果を発揮するまであと数日。精々足掻いてご覧なさい」

「待てやオラァ!」

「お、おい落ち着けって!」

ライダーが立ち去ったことと、結界が解除されたことに安堵する間もなく、両目からギラギラと赤光を放ちながら暴れる鈴蘭を必死に押さえつける士郎。
じゃれる2人の元に駆けつけ、凛が状況を確認すべく詰め寄る。

「衛宮君、一体何が起こったの?」

「と、遠坂……」

じり、と凛から距離を取り構える。
ようやく落ち着いた鈴蘭も(いまだ眼は危ない光を放ってはいるが)、ゆっくりと間合いを測る。

「ああ、もう! 別に襲いかかったりしないわよ! んな事よりもまず問題にすべきはこの結界でしょ!? この基点は衛宮君が見つけたの?」

私怒ってますオーラ全開で士郎に詰め寄り、雰囲気に呑まれた士郎は人形のように頷く。

「やられたわ……! 屋上に行ったら魔法陣しかないし。大方体力を削ってから仕留めるつもりだったみたいね」

ギリギリと歯ぎしりしつつライダーの策を分析する。

「衛宮君、あのサーヴァントって、」

凛の言葉は最後まで語られることはなかった。
アーチャーが突然士郎に双剣の片方を士郎に向かって振り下ろしたからだ。

「士郎君ッ!」

士郎を蹴飛ばし、アーチャーの剣をナイフで受け止める。

「いきなり不意打ちとか舐めてんのかコラ。悪の組織の怪人かオマエは」

そういうのは私がやるもんだろうが、という呟きは心の中で留め。
鈴蘭はアーチャーを射殺さんばかりに睨みつける。

「悪か、まあ否定するつもりはないが。そもそも我等は聖杯を求めて争う者同士、ならばこうして剣を交えるのに理由など要るまい?」

「御尤も!」

ニヤリと獣のような笑みを口に張り付け、アーチャーの懐を目指す。
弾かれた剣でナイフを弾く。
隠していた左手を手刀の形にして腹部を狙うが、片方の剣でまた弾かれる。
攻めきれない。
手数は兎も角、筋力、敏捷は共にこちらが上の筈なのに。
ならば捌ききれない程の圧倒的”火力”でもって焼き尽くす!

「炎獄、」

「待ちなさいッ!!」

凛の制止。
アーチャーは不服そうに、鈴蘭は邪魔しやがってとお互い非常に不満げだ。

「これから私と衛宮君は共同戦線を張るわ! だから2人とも矛を収めなさい!」



















結局同盟組みました。
まあ本筋ズレまくると作者の力量的にヤバい感じになってくるので。
もっと文章力練らないとなぁ。

おまけ8
【CLASS】アーチャー
【マスター】
【真名】名護屋河 睡蓮
【性別】女性
【身長】鈴蘭と同じくらい
【体重】黒コゲで読めない
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運B 宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
【固有スキル】
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
本流:A+++
とある神を殺す為に受け継がれてきた浄化の業火。
ここまで来るともはや術者自体が対神宝具の域である。
【宝具】
『炎獄、綿貫き』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
名護屋河の家系に伝わる本流の奥義。
空間を貫き、万象を照らす天照の御前へと罪人を招く究極の浄化。
“第二魔法”に通ずる神殺しの秘技である。


まあぶっちゃけ第二魔法かどうかなんて分からないんですけどね。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第九話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:31
「まずは理由を聞かせてもらおうか、凛」

すっかり興醒めした鈴蘭が、先ほど自ら蹴飛ばした士郎を助け起こしに行くのを確認し、アーチャーがマスターに真意を問う。
何故ここで共同戦線を張る必要があるのか?

「衛宮君、さっき基点は貴方が見つけたって言ってたわよね?」

問いに答える前に、念を押すように士郎に尋ねる。

「ああ。結界が発動したら急に甘い匂いがして、その匂いが強い方を辿ってきたんだ」

「なるほど。これも才能かしら、貴方は世界の異常に敏感なのよ。私にも分からなかった結界の基点を見破るくらいにね。ま、理由と言ったらそういうことよ」

「……ふむ、その小僧の嗅覚で結界に対抗しようというわけか。確かに、これほど大規模な結界だ。その発生源たる魔法陣も相当な数に上るだろう」

「その通り。彼の力を借りれば魔法陣の発見は容易いわ。加えて私の魔術ならそれらを片っ端から無力化出来る、完全な消去は無理でしょうけれどね。そして、この悪趣味な結界を消し去りたいという私達の目的は一致している―――だからこその共闘よ」

特化型の士郎では、基点を見つけることは出来ても破壊は出来ない。
魔術師として一流の凛では破壊は出来ても効率的に発見することはできない。

「結界の再起動まであと数日の猶予しかない。でも私と衛宮君が組んで基点を無力化していけば時間を稼げるわ。その間にライダーかマスターを倒せば私達の勝利ってわけ」

なんか文句あっか、と己の従者に向き直る。
弓兵は肩を竦め、了解、とだけ答えた。

「よし。そういうわけだから衛宮君、ライダーをどうにかするまで私達は一時休戦。その間敵に関する情報は共有し、その他のサーヴァントとの戦闘になった場合は期間内であれば可能な限り協力すること。私が言いだしっぺであることだし、色々面倒も見てあげるわ。勿論賛成よね?」

「ちょ、待」

「賛 成 よ ね?」

ゴゴゴ、と効果音を背負い士郎に詰め寄る。
確かに、士郎としても結界の無効化は望むところだ。願ってもない。だが、その前に。

「……遠坂、1つだけ確認したい。ライダーは聖杯戦争では人間の霊魂を奪うことは常識だと言っていた。もし、お前がそんなことをするマスターなら俺ぶがぁッ!?」

凛のボディブローが士郎の脇腹を抉る。悶絶する士郎。
今のはイイのが入ったと評する赤いのと、まだ腰の捻りが甘いと厳しめに評する白黒。心配してやれよ後者。

「こんの馬鹿! 私がんなコトするわけないでしょ!? 『魂喰い』なんて言語道断、邪道中の邪道! 外道のすることよ!!」

「げふぅ……ぅおぉ……あ、ああ、そうだな。遠坂がそんなことするわけないもんな。疑ってすまない。ああ、その話乗ったよ、遠坂となら敵なしだ」

横Gから回復していたとはいえ、その場で吐きそうになるのを全力で堪えつつ賛成の意を示す。男の子には意地があるのだ。

「ふん、まあ分かればいいわ。それじゃ、私はこれから準備があるから、詳しい話はまた後でね。行くわよアーチャー」

捨て台詞のようにそう残し、立ち去っていく紅い主従。
鈴蘭と共に見送り、ほうと一息。

「……いや。まさかこんなことになるなんてな」

「ガチ戦闘から和解通り越して同盟だもんね。で、学校はどうすんの? 結界の基点探しはするとして登校するのは止めたほうがいいんじゃない?」

「いや、わざわざ俺達の学校に目を付けたんだ。何か手掛かりがあるかもしれない。それに鈴蘭や遠坂達もいるんだ、そうそうやられたりなんかしないさ」

「まあ、アーチャーは兎も角、凛は信用できそうだったね。てか、士郎君アーチャーに何かしたの? えらい嫌われようだったけど」

「思い当たる節はないけど……用心しとくよ。さて、帰るか」

「今日のご飯はー?」

「鯵の開きとアサリの味噌汁、あとは……」

士郎の食事に味を占めた鈴蘭はメニューを聞きながらうきうきと歩きだし、そんな様子を微笑ましく眺めながら士郎も帰路に就く。
すっかり昇りきった月が2人を照らしていた。




「ただいまー……」

そろりと戸を開け、挨拶した割には気付いて欲しくなさそうに告げる。
だが、予想した反応はない。

「おかしいな、今日は2人とも来てないのか。まあいいや、とりあえず飯にしよう。鈴蘭、霊体化止めていいぞ」

「はーい」

てくてくと家の中に入り、夕食の準備に取り掛かる。冷蔵庫から素材を取り出し、調理開始。
メイドの経験があるというだけあって、鈴蘭もそれなりに家事ができるらしい。
特に問題が起きるわけでもなく調理終了。
是、唯の夕食也。

「ウマー」

「そりゃ良かった。気に入ってもらえて何よりだ」

「いやー、ホントにおいしいねコレ。お店出せるんじゃない?」

「みんなもそう言ってくれるんだけどな、でも俺にはなりたいものがあるから」

「ああ、正義の味方だっけ。いいね、そういうの大好き」

そういえば鈴蘭は悪の組織の構成員だと言っていたような。
正義の味方志望の士郎としてはそこらへんをきっちりと聞いておかなければなるまい。

「鈴蘭、あのさ」

遮るように鳴り響く呼び鈴。
今朝といい今といい実にタイミングが悪い。
少しだけ、少しだけイラっと感じつつも玄関へ向かう。

「はい、どちら様ですか?」

「さっきぶりね。衛宮君」

扉を開けると、あかいあくまが立っていた。
何故か旅行にでも行けそうな鞄を携えて。

「遠坂? え、なんで? というかその荷物は一体?」

「なんでもなにも、さっき言ったでしょ? “色々面倒みてあげる”って。そういうわけで今日からお世話になるから、よろしくね? 衛宮君」

「なんでさ」

づかづかと勝手知ったるとでも言うように上がり込む凛。
先ほどとは違う理由で崩れ落ちる士郎。そんな士郎を労わる様に鈴蘭が肩をぽむと叩き―――

「それなんてエロゲ?」

ただのトドメだった。













鈴蘭はヒロインなのだろうか。

おまけ9
【CLASS】ライダー
【マスター】
【真名】マニホルド・エスティ
【性別】男性
【身長】多分高い
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運C 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【固有スキル】
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
神性:C
千手観音菩薩の使徒。
末端ではあるが、アウターとして認められている。
【宝具】
『見えざる手(多管手構造)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
千手観音菩薩の元で会得した蓮華王の御業。
次元の異なる場所から相手に干渉し、一方的な攻撃を可能とする。
伸ばす手とは痛覚を共有しており、傷つけられればダメージを受ける。

『地獄の門を開くもの(ヘルズゲート・アタッカー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
かつてエスティと共に戦場を駆け抜けた戦闘艦。
超電磁鈴蘭やファランクスなど多彩な武装を施されている。
なお、本来の使用法とは異なるが最も威力の高い攻撃方法は”火船”である。

リリーさんのお兄ちゃん登場。
そういえばリリーさんも妹キャラだっけな、イリヤに対抗させてみようか。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/29 21:42
「さてと。それで衛宮君、私はどこに寝たらいいのかしら?」

「あっちに使ってない離れがあったよ」

「そう、ありがとう鈴蘭」

言葉遣いは兎も角、荷物を受け取り客人を部屋へと案内するその姿は良くできたメイドのようだ。
凛も似たような、というかそれ以上に家事スキルの高いサーヴァントを従えていることもあり、英霊って意外と庶民的な要素を持った存在なのだなと一人納得する。

「いやいやいやいや! ちょっと待て遠坂! あと鈴蘭、しれっと案内するな!」

「あ。勝手に寛がせてもらうから、気を遣わないでくれていいわよ」

離れに到着し、鞄の中から次々と荷物を吐き出す。
書籍、フラスコ、宝石、etc.etc.……。
どれもこれもが山ように積まれ、一体どうやって収納されていたのか疑問に思う物量だ。
さらに追加された怪しげなあれやこれやによって、あっという間に離れが改装、いや改造されていく。

「じゃあ、これからは食事も当番制にしましょう。とりあえず私夕食まだだから今夜の分はよろしくね」

「士郎君のご飯凄くおいしいよ。和食に至っては鉄人だね」

「へえ、それは楽しみね。期待させてもらうわ。あとこの部屋は私の工房にするから勝手に入ったりしないように。入るのならノックは忘れないで、いいわね?」

「りょうかーい」

「話聞けよ!!」

まるで親友のように仲が良い2人。士郎だけが置いてきぼりである。
そんな感じで先ほどから無視されっぱなしな家主が吼える。無駄な足掻きではあるが。




「だから、戦略上において私達は常に行動を共にする必要があるわけよ」

「なんでさ。全然説明になってないじゃないか」

居候についての説明をするということで、居間で食事を摂りつつ凛による第2回説明会が開催された。ちなみにアーチャーは屋根上で警備中の為欠席だ。
いきなりの同居に士郎は未だ納得出来ていないらしく、そこまでする必要があるのかと反論する。

「あのね、こうしている今も、他のマスター達に襲われるかもしれないって分かってる?  そうね、仮にバーサーカーがやって来たなら生き延びる自信あるの?」

「う……」

「もともと能力が化け物じみてる上に、12回殺さなきゃ死なないなんてね。私の炎獄でも1回しか通じなかったみたいだし」

さらに言えば一度受けたダメージに対して耐性まで出来るというマジキチ仕様。
鈴蘭の宝具は強力だが、それは一撃に絞った話だ。加えて士郎からの魔力供給もない状態である。
12回も違う攻撃など出来るはずもない。

「そこに私とアーチャーが加われば、勝つのは無理でも生き延びられる可能性が上がるわ。逃げるにしたってそっちの方が攪乱出来るかもしれないでしょ。私達はライダーを倒さなくちゃいけない、その為の同盟だもの。目的を達成する前に殺されたりなんかしたら意味がないわ。それに、他の敵が動いた時にも素早く連携も取れるし。だったら同じ場所に詰めてた方が一番効率がいいでしょう」

「むう」

理路整然と説明されてしまえば、士郎に反論の余地はない。
だが、それでも譲れない一線がある。

「遠坂。今朝鈴蘭にも言ったんだが、男である俺と一緒に生活するってのは問題があると思う。2人共女の子なんだから」

「今更何言ってるのよこの馬鹿。いい、士郎? アンタのその前時代的な貞操観念と全校生徒の命、どっちが大事なのよ。魔術師なら覚悟の1つや2つバシッと決めなさい」

「はい……って遠坂、いつの間に呼び捨てに」

「協力するんだったら名前で呼びたかったんだけど、嫌なの?」

「そのくらいなら気にしなくていいさ。それで遠坂、これからの事なんだけど、ライダーのマスターに心当たりってないのか?」

女の子扱いに再びトリップしてしまっている鈴蘭を揺すって正気に戻しながら、何か進展はないかと尋ねる。
いきなりヘブン状態になった鈴蘭を珍しそうに眺めていた凛は、その質問に難しい顔で首を振り。

「それなのよね……最初は学校関係者かと思ったんだけど、考えてみたら学校にはもう魔術師はいないはずなのよ」

「そうなのか?」

「ある程度経験を積んだ魔術師は他の魔術師を認識できるのよ。で、現状私達以外にそれらしい奴が見当たらないってわけ」

「ん? ちょっと待ってくれ。ってことは遠坂は前から俺の事を魔術師だって知ってたのか?」

「知らなかったわ。隠匿の才能があったとかじゃなくて、魔術師として判別できないくらいにへっぽこだってことでしょう」

ざっくりと突き刺さる酷評。
自分に魔術の才能がないことに自覚はあったが、改めて言われると凹む。
打ちひしがれる士郎の背中を、ようやく復帰した鈴蘭が慰めるようにさする。

「ま、そういうわけで学校には魔術師はいないってことだから……」

「……ライダーのマスターは外部の人間ってことか。となるとどうやって見つけるかだな」

「魔法陣を張るのなら、人目のない時間帯に行動するだろうし、案外夜中に見張っていればあっさり見つかるかもしれないわね」

「そう簡単にいくのか? 相手だって魔術師なんだろ」

「まあ、ね。そこら辺はこれから調べていくしかないでしょうね」

話が一段落したところで、急遽用意された夕食を一口。
先ほどの会話よりも真剣なのではないかと錯覚しそうな面持ちで吟味する。

「―――よしっ。勝った!」

「おい待てそれどういう意味だ」

「ふふん。明日になれば分かるわ。楽しみに待ってなさい」

楽しげな凛の笑顔になんとなく気圧されながら、自分達も食事を再開する。




食後、まったりとお茶を楽しみながらライダーの対策を練る。

「しかし、うまくライダーを見つけられたとしてもさ、ライダーを倒せなきゃ意味ないよな。あいつの強さってどんな感じなんだ?」

実際自分はライダーと戦ったわけではないが、目にも止まらぬ速さで障害物をものともせず縦横無尽に駆けるそのスピードはかなり驚異的だ。
この上力も規格外であったなら笑えない。

「スペック自体はそんなに高くないと思うよ。スピードはあるみたいだけど力の方はそんなでもなかったし」

「だとすれば、気を付けなきゃいけないのは宝具ってことになるわね。ライダーって言うくらいだし、やっぱり乗り物の類なのかしら」

「ちょっと待ってくれ、宝具って何なんだ?」

唐突に知らない単語が混じって来た。
ライダー自体はそれほどではないのは理解したが、宝具とは一体何のことなのか。

「宝具はね、英雄を英雄たらしめるシンボルである武器、防具、能力のことよ。サーヴァントにとっての切り札と言える神秘の塊。如何に英雄と言えど、自分の力だけで偉業を成したわけではないでしょう? アーサー王ならエクスカリバー、といった具合にね。召喚されるサーヴァントは皆今でもその伝説の武具を所有しているわ。内包される神秘が強ければ強いほどその宝具も強力なものになるってわけ」

「じゃあ、鈴蘭が使ってた……炎獄? が宝具なのか」

「ううん、あれは私のスキルだよ。宝具とは別に関係ないかな。それに私のはもっとずっとすっごいんだから」

「そんなに強力なら、何でバーサーカーの時とかに使わなかったんだ?」

「馬鹿言わないで。相手の宝具の方が強かったら打ち負けるだけよ。それに宝具は英雄にとって半身とも言えるもの。使ってしまえば、サーヴァントの真名がバレるのと同じ。伝承から対策を練られてしまったら一気に戦いづらくなるわ。ま、鈴蘭は異世界出身だからその心配はないでしょうけど、モノによってはかなりの魔力を喰うものだってあるの。アンタの魔力じゃね……」

言外に魔力がお粗末と言われて唸る士郎。
だがその通りなので言い返せない。

「まあそんなわけで。どれだけライダーが弱かろうと持っている宝具が強いものであったなら、って可能性があるから油断できないのよ」

「だったらさ、あの結界がライダーの宝具なんじゃないか? あんな馬鹿げた規模の結界なんてキャスターくらいのサーヴァントにしか張れないんだろ」

「『鮮血神殿』、だっけ。私も最初はキャスターのものだと思ってたし、ライダーのと呼ぶにはちょっと疑問だけど……」

「……ありうるわね。確かにライダーがあんな結界を宝具なしで使えるというのは不自然ね。『鮮血神殿』なんて聞いたことないけど……複数の宝具を持つ英霊だっているし、他にも真打と言えるものがあるかもしれない。やっぱり警戒していくしかないわね」

正体不明。
これだけで聖杯戦争においてかなりのアドバンテージを得ていると言っても過言ではない。
ライダーが結界以外にも宝具を持っていたら。
その宝具が強力なものであったなら。
何れにせよ、警戒するに越したことはない。

「今はライダーよりも、ライダーの仕掛けた結界の阻止が最優先よ。とはいえ今のままじゃ情報が少なすぎるから、しばらくは向こうの出方を窺うことになるわね。とりあえず士郎には魔法陣の捜索を手伝ってもらうわ。それじゃ、今日はここまでにしましょう。これからどうなるか分からないんだから、休める時に休まなくちゃね」






【固有スキル】
本流:B
とある神を殺す為に受け継がれてきた浄化の業火。
正統後継者ではないため十全には使えないが、神性を持つものにとっては十分脅威的と言える。



炎獄は一回しか殺せないけどゴッドハンドの耐性を無視して殺せるとかどうだろう。
アナフィラキシーショックみたいな。
書きたいシチュエーションはあるのにそこまで続けられる自信がない。
実際そのシーンが書きたいがためにこのSS書いたようなものだしなぁ。

おまけ10
【CLASS】バーサーカー
【マスター】
【真名】白井 沙穂
【性別】女性
【身長】女子高生くらい
【体重】同上
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具B
【クラス別スキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
はずなのだが固有スキルによる影響なのか会話が出来る。
しかし会話が成り立つとは限らない。
【固有スキル】
精神汚染:B
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。
生前受けた改造によって1ランクダウンしている。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
魔眼:B
霊視能力。
同ランクの気配遮断を無効化する。
【宝具】
『今月今夜』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
とある神を殺す為に長谷部の家系に伝わっていた名剣。
刃が相手を切り裂いたという結果の後に
斬撃を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。 
『今月今夜』を回避するには敏捷の高さではなく、『今月今夜』の発動前に運命を逆転させる能力・幸運の高さが重要となる。

『神を切り裂く人類の灯火(レーザー)』
ランク:B 種別:対神宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
右目に内蔵された人類の叡智の結晶。
剣神を討ったことで神殺しの概念を持つに至った。
出力を調整すれば対軍宝具としても使用可能。

クーガーの真似した時の可愛さは異常。
今月今夜の効果が分からなかったので兄貴のゲイボルクを参考。
不可避の居合とかなにそれこわい。



[25576] 番外編 神様の神様による神様のための聖杯戦争
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/05 22:44
かつて、誰かがこう尋ねた。

“神様が願いを叶えてくれるなら、神様の願いは誰が叶えてくれるのだろう?”

その答えは、聖杯だけが知っている―――


衛宮士郎、セイバー。

「俺に剣を教えてください!」

「ふん、勝手に見て覚えるがいい」


遠坂凛、ウォッチャー。

「貴女、戦えるの?」

「くすくす。さあ、どうかしら?」


バゼット・フラガ・マクレミッツ、イーター。

「食事など、腹に収めてしまえばみな同じです」

「よく言うたな小娘風情が」

かちこん。

「いったああああああああああああ!?」


間桐桜、オーガ。

「桜、白湯くれや」

「はい、どうぞ」

「性悪蜘蛛も、高飛車巫女もいねえし……あれ、ここ天国じゃね?」


葛木宗一郎、キャスター&アサシン。

「なんかワタシだけ場違いだよねコレ。ねえ聞いてる?」

「ぶっちゃけ、どうでもいいの」

「ンだとコラアアアア!!」

「静かにしろ、2人とも。坊主達の邪魔だ」


間桐臓硯、クリエイター。

「ま、待て! 待つんじゃクリエイター! 何じゃそのドリルは!?」

「いひひひっひひぃ! 心配いらないさぁ! 例えこれを取りつけたとしてもモテモテ回路があるッッ!!」


イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、ギャラリー。

「え、貴女あの子の妹なの?」

「ええ、不出来な姉です」




定められた戦い。

「ナマちゃんなの」

「やりますか」

分かりあえない思想。

「人の可能性は! 無限なんだよ兄さんッ!!」

「吠えるな、愚弟が!!」



顕現するは最強たるカミ―――

「いや、何故。僕までここにいるのかと」

「アンタを依代にしないと来れないからに決まってんでしょ。さっさと働ケ」

「まあまあ、細かいことはどうでもいいのですよー。楽しければそれで!」

「うふふ。あら、なんだか私の劣化コピーみたいのがいるわねぇ」



果たして地球はこの激戦に耐えられるのか!?



『聖杯戦争Ⅱ~神様の願い事~』

Coming soon










地球終了のお知らせ。
夜勤明けの変なテンションで書いた。今は後悔している。

キャスト

セイバー:水無月の時雨
ウォッチャー:マリーチ
イーター:みーこ
オーガ:ほむら鬼
キャスター:リップルラップル
アサシン:VZ
クリエイター:葉月の雫
ギャラリー:マリアクレセル
四次キャスター:川村英雄
アンリ・マユ(銀):エリーゼ・ミスリライト
アンリ・マユ(電):ウィル子
アンリ・マユ(真):闇理ノアレ

カッコ逃げて超逃げて



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十一話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/29 21:40
―――煉獄。
目の前に広がる光景を例えるのなら、そうした表現が正しいのだろう。
家は焼けている。
人は焦げている。
道は砕けている。
空には、まるで落とし穴のような黒い太陽が浮かんでいる。
本来、遍く全てを照らし見守るはずのソレが、醜悪に、飢えた餓鬼のように命という命を片端から飲み込んでいく。
―れ――。
当てもなく、ただ歩く。力なき自分は、そうしなければ生き残れない。
忘――な。
歩く。母親が我が子を守らんと抱き締め、どちらも真っ黒に焦げていた。
―れる―。
歩く。家に押し潰された男が、苦悶の表情を浮かべていた。
忘れるな。
やがて自分も力尽き、糸の切れた人形のようにパタリと倒れた。
仰向けになり、赤い、紅い空を眺める。
嗚呼、自分もまた死んでいくのか。
遅すぎた雨が降る。
目蓋が重い。
体はとっくに動かない。
そんな自分を、誰かが抱きあげた。

『生きてる』

くしゃくしゃに顔を歪ませて、涙ながらに男は呟いた。
その顔が、余りにも眩しくて。
その涙が、余りにも美しくて。
気が付けば、自分は―――。




「……夢か。最近は見なくなってたんだけどな」

ゆっくりと体を起こす。床が固い所為だろうか、関節がポキポキと小気味良い音を立てた。
久々に夢に見た、十年前の大火災。
そして、そこで■■士郎は養父に救われ、衛宮士郎になった。
士郎にとって、彼は正しく自分が目指す『正義の味方』であり、尊敬すべき父であった。まあ、かなりのズボラでもあったのだが。
夜はまだ明けていない。
再び寝つけるような気分ではない。顔でも洗って気を引き締めようと土蔵から出る。
新都の方からサイレンが響いていた。
また、ガス漏れにみせかけた魔術師の仕業だろうか。

「ん。どしたの士郎君」

霊体化していたのだろう、足音すら立てず鈴蘭が現れた。
しかし動きにくいのか鬱陶しいのか、どこか禍々しい雰囲気を放っていた黒いマントは付けておらず、その下のドレスが露になっていた。
月夜に照らされる白いドレスには微細な刺繍が施されており、その全ての刺繍が士郎にも分かるほどに強固な防御魔術として機能していた。

「ああ。また何かあったのかと思ってさ」

ほんの少し見惚れていたのを誤魔化すように、サイレンの鳴り響く方向を眺める。

「街でまた事件だって。凛達が出かけてったよ」

「……俺達は行かなくても良かったのか?」

「もうとっくに事後だろうからね、痕跡が残ってれば上々ってとこじゃない?」

「そう、か……悔しいな。目の前で苦しむ人達がいるのに、黙って見ていることしか出来ないなんて」

知らず拳を握る。その拳は怒りで僅かに震えていた。
自分の不甲斐なさに憤る士郎にゆっくりと歩み寄り、優しく拳を手で包む鈴蘭。

「大丈夫だよ。士郎君ならきっと、みんなを助けられるような人になれるから」

聖母のような、慈愛に満ちた笑顔。
その笑顔に溶かされるように、拳の震えが少しずつ収まっていく。

「……ありがとう鈴蘭。少し、楽になった」

「どういたしまして」

聖母の笑みは、すぐに悪戯小僧のようなそれに変わる。
ライダーの時といい、まるで二重人格のようだと思いつつ。
先ほどよりは幾分落ち着いた心地で、新都の方角を眺める。
サイレンは、まだ鳴り止まない。




【固有スキル】
カリスマ:EX
神々すら魅了する求心力。
ただしあくまで人間としての魅力であって女性としての魅力ではない。

幕間っぽいお話。
果たして鈴蘭はヒロイン枠に入れるのか。
それともやっぱりヒーロー確定か。
というか見惚れる描写は必要だったのだろうか。

おまけ11
【CLASS】アぺイロン
【マスター】
【真名】伊織貴瀬
【性別】男性
【身長】高い
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力A 耐久E 敏捷C 魔力EX 幸運E- 宝具EX
【クラス別スキル】
単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。
狂化:A+
全パラメーターを2ランクアップさせるが、マスターの制御さえ不可能になる。
【固有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
黄金律(偽):B
他人から金品を巻き上げる能力。
人脈を駆使すれば、億万長者も夢ではない。
神性:A+
食欲魔人の使徒であり、視姦魔人によって仕立て上げられた紛い物の神。
新世界を管理するシステム。
邪流:A+++
とある神に押しつけられた呪い。
魔獣、怪物の属性を持つ者に対して絶大な影響力を持つ。
【宝具】
『黒龍(ミッペルテルト)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:1人
最強の幻想種である“龍”
貴瀬に埋め込まれた、あらゆるエネルギーを吸収する特性を持ったスライム。
心臓を貫こうが頭蓋を砕こうが直ぐ様再生するため、事実上殺害不能。
対抗するには同ランクの不死殺しの宝具でなければならない。

【CLASS】ヒロイン
【クラス別スキル】
誘拐:A
ヒロインのお約束。
このランクならば、かなり劇的な誘拐・再会が期待できる。

みなさんお待ちかねメインヒロインたぁくん登場。
ネタに走ってしまった。
邪流ってどんなスキルだったっけ。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十二話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:34
「……何故こうなった?」

己の不運を呪うが如く、深い深い溜息を1つ。
今の自分が持つのは使いなれた夫婦剣―――ではなく、ごく一般的な竹刀2本だ。
道場に短いサイズの物が無かったのだから仕方がない。

「行きますよアーチャーさん! プロの技、しっかり見せてもらいますからね!」

意気揚々と宣言する虎、もとい大河。
ぶんぶんと竹刀を振り回し、無駄に元気が有り余っているのが見て取れる。
その元気を何故もっと他の事に周そうとしないのかと小一時間ほど説教したくなるのをぐっと堪え。

「アーチャー頑張れー」

「藤村先生、負けないでください……!」

元凶の一端が面白がるように、桜は何やら悲壮な感じでエールを送り。
凛と士郎は何とも言えない表情でこちらを眺めている。
何故、このような事態に陥っているのか?
事の起こりはおよそ30分ほど前に遡る。
回想シーンスタート。ほわんほわんほわーん。

「何故こうn」

回想だっつってんだろ。




「鈴蘭、ちょっとそっち持っててくれ」

「はーい」

何気ない朝。
いつもの調理風景。
変更点を挙げるのであれば、士郎の調理の相棒が桜ではなく、鈴蘭であることくらいだろうか。
桜ほどとは言えないが、筋が良い。
ドレスの上にエプロンを身に付けるという、中々にシュールな見た目ではあるが。
ともあれ。見た目と動き易さは比例しないらしく、小回りの効いた動きで士郎のフォローに徹する。

「……おはよ」

「あ、ああ。おはよう」

「おはよー」

凛が起きてきた。
だがその姿にいつもの優雅さは微塵も感じられず、全体的に気だるそうな雰囲気である。
意外な一面を見たような気分に浸りながら、こちらも挨拶を返す。

「……牛乳」

「はい牛乳」

パックごと差し出す鈴蘭。
いやいやせめてコップも渡してやれと苦笑しつつ―――

「えっ!? ちょ、遠坂!?」

そのまま腰に手を当て、ぐびぐびと男らしく牛乳を飲み干す。
半分はあったはずの量が一瞬で空になった。
呆然と眺める。鈴蘭は別にどうでもいいのか、さっさと調理に戻ってしまっていた。

「ん? ああ、私朝は弱いから気にしないで」

気にしているのはそこではないのだが。いや確かに意外だったけれども。
ラッパ飲みでようやく覚醒らしく、口調が普段通りになっている。
そこへ現われてはいけない闖入者が登場した。

「おっはよーしろーう! きょーおのごっはんはなーにっか……なー……?」

空気が凍った。
誰よりもまず闖入者―――大河が。
そして復活が一番早かったのもやはりというべきか、大河であった。

「士郎が女の子連れ込んでるゥ――――――――――!!」

訂正。やっぱり復活出来ていなかった。




「さあッ!! 納得のいく説明をしてもらおうかしら!?」

「そうです! ちゃんと説明してください先輩!!」

鼻息荒く士郎に詰め寄る大河と、つい先ほど到着して大河に追随する桜。
説明しろと言われても、士郎の肩を引っ掴んでガクガク揺さぶっているためそもそも喋ることすら出来ないのだが。

「藤村先生、それらについては私から説明させて頂きます」

「遠坂先輩……ちゃんと筋道は通っているんでしょうね?」

殺気すら漂わせながら桜が問う。
気のせいか目からハイライトが消えたような、頬のあたりに刺青っぽいものが見えるような。
いや、気のせいだろう。たぶん。きっと。おそらく。
内心冷や汗を感じつつも表面には出さず、“優等生”の仮面で以って応戦する。

「ええ、実は私の実家が改装中でして。その間ホテル暮らしでもしようと思っていたところに衛宮君から、
『だったら家を使えばいい』とのことで、お言葉に甘えさせて頂いたんです」

「むうう。確かに士郎なら言うわねぇ、困ってる人は放っておけないもの」

「じゃ、じゃあこの人はどういう訳でここにいるんですか!?」

あっさり凛の滞在がクリアされて焦る桜。
ならば、と豹変した凛にビビっている鈴蘭の方に向き直り、問い詰める。
今まで見掛けたこともない完全無欠の初対面だ。不審に思うのも無理はない。

「その子は私の従姉妹で名護屋河鈴蘭と言います。私を驚かせようとこちらに遊びに来たのですが、
家が改装中だということを知らなかったそうで、私と一緒に衛宮君のお世話になることになったんです。ね、鈴蘭?」

こくこくと頷く。
鈴蘭の服装がドレスだったことが幸いした。
マントを外し、純白のドレスを纏った鈴蘭は良家の子女に見えなくもない。
大河の脳内変換図はドレス→お姫様→お嬢様といった具合である。

「うーん。でも、お嬢様が一人旅なんて許されるの?」

大河のくせに真っ当な正論。
だが、迎え撃つ凛に隙は無かった。

「ご心配なく、藤村先生。彼女には専属の護衛がいますから。入ってきて、アーチャー!」

「呼んだかね、凛」

「「「ブッ!!」」」

ガラリと戸を開け、実に良いタイミングで弓兵が登場。
だが凛、士郎、鈴蘭が一斉に吹き出す。何故ならば―――

「ほわぁ……執事さんだ……」

「実在したんですね……」

そう。何故ならば、黒い上下のスーツ、赤い紐ネクタイ、白手袋。
一体いつの間に用意したのか、そんな完璧すぎる執事ルックで現れやがったからだ。
しかも無意味に似合いまくっている。

「こ、このように彼女には信頼できる執事がいるんです。その上彼はSPの資格も持っておりまして、
あり得ないことですが、もし仮に衛宮君が狼藉を働いたとしても安全に無力化することができます」

流石に執事服は予想外だったらしく、多少ドモりながらも説明を終える。
しかし、それでも納得できないのがタイガークオリティ。

「だったら、本当にそれだけの実力があるのか確かめさせてもらうわ!!」

……もしかしたら、単純に『オラわくわくしてきたぞ!』なだけかもしれない。




回想終了。現実逃避からの帰還とも言う。
過去をどれだけ振り返ったところで目の前の現実は変わらない。
だったら戦るしかあるまいと覚悟を決めようとするのだが、何せ相手があの大河である。
その獣じみた直感で自分の正体に気付くのではないかという不安が湧いてくる。
かつての自分は二刀流ではなかったし、何より容姿も大分変っているため気付く道理などある訳がない。
故にその心配は杞憂の筈、なのだが。

「先手必勝ォッ!!」

そんなことを考えている内に試合は始まってしまったようだ。
余計な戦術など不要とばかりに突貫してくる大河。
目を見張るスピードではある。が、それは人間にとっての話。
英霊たる自分にとっては遅すぎる。ましてや、突っ込んで来るのは態と作った隙である。捌くことなど造作もない。
右の竹刀で切っ先を逸らす。
その部分を支点にしてくるりと背後に回り込み、左の竹刀で大河の腰に軽く触れる。
仮にも女性だ。防具も無しに思い切り打ちこむ真似などすれば、猛烈な批判を受けてしまう。

「あ、あれ? おっかしいな」

「ふむ。勝負あり、か?」

相手のスピードを利用した封殺。
大河にしてみれば突っ込んだ相手がいきなり消えたように見えたことだろう。

「いいえッ! まだです!!」

ここからが本番だというかのようにストラップのついた竹刀―――虎竹刀を取り出す。
ああまだやるのか、と若干うんざりしながらも構える。
第2ラウンド、スタート。




「うっ……ううっ……ひぐっ……」

結論。
やっぱり英霊って強いね!
外傷こそ一つとしてないが、一発も有効打を入れられなかった大河の精神はこれ以上ないくらいにズタボロだ。
道場の床に崩れ落ち、さめざめと泣いている。
そしてアーチャーに突き刺さる四対の冷たい視線。

「ねえ見てアレ。女の人泣かせちゃってるよあの執事。サイテー」

「信じられないわね、それでも紳士なのかしら」

「男の風上にも置けない奴だ」

「藤村先生、可哀そう……」

もはや完全にアウェー。アーチャーの味方など何処にもいない。
せめてフォローは入れとこうと大河の肩に手を添える。

「大河、君の剣術は見事だった。そしてその剣才はまだまだ伸びることだろう。
何より、家族を思いやるその気持ちは素直に賞賛に値する」

顔を上げ、アーチャーの言葉にまた涙が溢れそうになる。
そして、何故か。

『士郎のこと、よろしく頼むよ。大河ちゃん』

彼の姿が、かつて恋い焦がれた人と重なった。

「アーチャーさん……ぽっ」

「待て。何故顔を赤らめる? 君はさっきまで泣いていたのではなかったのかね?」

大河の頬がうっすらと朱に染まり、アーチャーの顔をロックオンして動かない。
何やら場の空気に変なモノが混じっていく。
思わず一歩後ずさる。
大河も一歩近づく。

「きゅ、急用を思い出した! これで失礼する!」

竹刀を放り出して逃げるように、というか実際逃げ出すアーチャー。
逃がすまじと自らも虎竹刀を放り、後を追う。彼女は今まさに、獲物を狩る虎そのものだった。

「待ってぇ―――! アーチャーさぁぁん!!」

取り残される4人。
事態の移り変わりが急すぎてついていけず、未だに何が起こったのか理解出来ていない。

「なんでさ」

士郎の呟きが、全てを物語っていたとかなんとか。



セイバー→フルボッコ
アーチャー→ニコポ
感想の反応が怖い。
居候はこんな感じになりました。無理矢理すぎるような気がする……。
敬語使うと違和感がパねぇので口調はそのままで。

おまけ12
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】エルシア
【性別】女性
【身長】女子高生くらい?
【体重】死にたいのね
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷A 魔力A++ 幸運A 宝具B
【クラス別スキル】
陣地作成:―
そんなことは従者の仕事でしょう。
何故私がやらなければいけないの。
道具作成:―
そん(ry
【固有スキル】
魔力放出:A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
いわば魔力によるジェット噴射。
黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。
品格:A
淑女の嗜み。
如何なる状況下に置かれても落ち着いて行動出来る。
【宝具】
『獣の書(666)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
最後の魔王が自らの娘の為に作らせた神造兵装。
古今東西のあらゆる魔術が記されているが、魔導書としての価値はない。
本来の使用法としては魔力を籠め、ページ数を唱えることで発動する。
後半に向かうほど凶悪な威力を記したページがある。
増幅装置ではなく、所有者の魔力を魔術に変換するフィルターのような宝具。

『幸せ振り撒く愛天使(マジカルプリンセス・トワイライト・エルシアン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
魔法少女のお約束。
認識阻害の概念宝具。
誰にも正体がバレることはない……かもしれない。

キャスターでいいのか?
レイセンに登場しないのかな。
名前だけとはいえアカネは出たのに。
カレイドエルシアン……いけるか?



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十三話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:36
「元気出せって、藤ねえ」

「そうですよ。鈴蘭さんだって応援するって言ってくれたじゃないですか」

アーチャーに逃げ切られ(霊体化便利マジ便利)、鬱一歩手前まで落ち込む大河。
頼れる? 姉貴分の意外な一面を発見し、なんとなくほんわかとした気持ちになりながら大河を慰める士郎と桜。
応援すると言ったらしい鈴蘭はニヤニヤと笑みを浮かべて、アーチャーがいるであろう凛の後ろを眺める。
凛もまた面白い玩具を見つけたようなイイ笑顔。
先ほどとは違った意味でアーチャーの味方は存在しなかった。




職員会議があるとのことで、とりあえず通常程度には回復した大河が一足先に家を出る。
時間が時間なので士郎達も支度を整え、学校へ向かう。
余計な波風を立てることもないだろうと、凛は時間をずらして登校することになった。

「こうやって桜と登校するのも久しぶりだな」

「そうですね」

必然的に発生する条件付き2人きり空間。
最近は部活やら家庭の事情やらで一緒にいられる時間が減り、
さらに今朝現れた居候により危機感を覚えた桜にとって、この時間は至福の一時と言えた。
鈴蘭も桜の振り撒く幸せオーラを感じ取ったのか、茶化すでもなく微笑みながら付いてくる。

「桜!!」

しかし、校門をくぐったところでそんな微笑ましい空間をブチ壊す人物が現れる。
いきなりやって来た特徴的な髪形の少年は、桜の腕を強引に掴んで振り向かせ、力任せに桜の頬を引っ叩いた。

「ぁ……兄、さん」

思わず実体化して消し炭に変えてやろうかと意気込んでいた鈴蘭は、桜の呟きに愕然とする。

(人間とワカメが……兄妹関係、だと……?)

(いや人間だから。桜の兄貴だから)

目を剥き、本気で戦慄している鈴蘭に士郎が突っ込む。
おかげで止めに入るタイミングを逃してしまった。

「なんで朝練に出て来ないんだよお前! おかげで折角顔を出しに行ったのに恥をかいたじゃないか!
僕に無断でサボリなんて図々しいんだよ! 何様のつもりだ!?」

もう一度頬を張ろうと手を振り上げる少年。
その手を士郎が掴み、押し留める。

「やめろ慎二。桜には家の手伝いをしてもらってたんだ。責任なら俺にある」

「……これは家の問題だ。余計な首を突っ込むなよ衛宮」

慎二と呼ばれた少年は腕を振り払い、再び桜に視線を戻す。
その眼に罪悪感など微塵もない。自分は正しいと確信している者の眼だ。

「桜、昨日言っておいた筈だよな。コイツの家にはもう行くなって。何逆らってんだよ、馬鹿じゃないのか?」

「でも、兄さん……先輩はご家族を亡くされて大変で」

「は? 僕に口答えしようっての? 妹のくせにさ」

いよいよ視線が鋭くなった士郎がずい、と桜を守る様に間に立つ。
場所が校門で本当に良かった。
人目さえ無ければ、今頃鈴蘭が伝説の右を思い切り振り抜いているところだ。
面白くなさそうに士郎を睨み、ふん、と不敵に笑う。

「桜。お前勘違いしてるよ、衛宮に手助けなんか必要ない。コイツは何だって自分一人で出来ると思い込んでる奴だからな。
弓道部を辞めた時だってそうだ。僕達のことなんてどうでもよかったんだよ。
どうせ、家でだって人がいなくなって清々してるんだろ? つまり一人でいるのが好きな寂しい奴ってことさ!」

「兄さん、それは言い過ぎです……!」

「うるさい。兎に角お前は僕の言うことだけ聞いてればいいんだ。コイツの家にはもう行くな、分かったな」

吐き捨てるように言い残し、桜を連れて校舎に入ろうとする慎二。
しかし、桜とて言われっぱなしではない。

「……嫌です」

「あ?」

「嫌です。たとえ兄さんの言うことでも、それだけは聞けません」

いいぞもっとヤレ、と鈴蘭がエールを送る。士郎にしか聞こえないが。
どこまでも言うことを聞かない妹に、とうとう慎二が逆上する。
もはや張り手ではなく、拳を握って殴りかかる。

「この……!」

だが、その拳が桜に届くことはなかった。
背後に現れた赤い人影が慎二の腕を掴み、呆れたように佇んでいたからだ。

「朝っぱらから騒がしいと思えば……往来のど真ん中で迷惑よ、貴方達。場所を弁えなさい」

「「遠坂(先輩)!」」

「……何の用だい、遠坂。僕達はただ部について話し合ってたところなんだけど」

腕を離しながら、邪魔をするなと言外に突き放す。
白々しい言葉に心底呆れつつ、その台詞の矛盾点を洗う。

「だったら言わせてもらうけど。弓道部の朝練は確か自由参加だったはずよね?
間桐さんがどうするかについては、貴方が口を挟むことではないのではないかしら」

「桜は僕の妹だ。兄が妹を指導して何が悪い?」

「それこそお門違いね。彼女は何も悪いことなんてしていないし、
何よりもう自分の行動に責任を持てる年齢でしょう。
貴方は兄という立場を利用して自分の支配欲を満たそうとしているだけよ」

「言ってくれるね、遠坂……フン。おい桜、遠坂の顔を立てて、今日は許してやる」

今時やられ役Aでも言わない台詞を言い残し、今度こそ校舎へと向かう。

「待て慎二。二度と妹に手を上げる真似なんてするな。最低だぞ、そんなこと」

「はん、お前に指図されるいわれなんかないね。いい気になって、後で痛い目見るなよ」

最後まで三下台詞。
ここまで来るといっそ清々しくすら思える。

「あの……先輩、ありがとうございました。遠坂先輩も」

「気にしないで。鬱陶しかっただけだから。それにしても、言い過ぎたかしら。
彼にも世間体があるでしょうにね」

その割には特に気にした様子もない凛。
実際慎二のことなどどうでもいいのかもしれない。

「それじゃあ、私行きますね、先輩」

「私もやることがあるからこれで。それじゃあね衛宮君―――昼休みに屋上で」

去り際にそう言い残し、凛も校舎へと向かう。
嵐のような一幕だった。
時間に直せば5分にも満たないのだが。

(いやー凛カッコ良かったね、桜も)

(まあな、鈴蘭が慎二を殺しに掛かるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけど)

(私はそんなことしないよ)

全く失礼な。
精々九割九分九厘殺しぐらいで許してやろうと思っていただけだというのに。

「や、お疲れ」

「美綴! 見てたなら助けてくれれば良かったのに」

弓道部部長の美綴が、その男前な笑みをやや申し訳なさそうにしている。

「冗談。部の外でまで“お守り”なんて御免だよ。……なんてね、遠坂なら大丈夫だろうと思っただけさ」

「悪い奴じゃないんだけどな、慎二は」

「最近荒れててね、今朝も一年をいびって……」

「部長も大変だな。俺にも手伝えることがあったら言ってくれよ」

「それなら部に戻ってほしいところだけどね。私としてはそれが一番助かるさ」

「そりゃ買いかぶりすぎだ。俺なんか戻っても何もできないよ」

「良く言う。射の腕じゃ部の連中が束になったって敵わないくせにさ。
ま、気が向いたらいつでも声掛けてよ、じゃあね」

「ああ。みんなにもよろしくな」

他愛もない会話を交わし、教室に入る。

「はい、みんなおはよう。ホームルーム始めるよ」

いつもより若干テンション抑えめな大河が出席を取り、一日が始まった。






さりげなく九死に一生を得ていたワカメ。

IFネタ

「―――投影、開始」

想像する。
刃を司る神の斬撃を、寸分違わず模倣する。
左手を広げ、まだ現れぬ架空の柄を握りしめる。
ただの投影では届かない。
限界を超えた投影でなければ、あの巨人は止められない。
故に。

「―――投影、装填」

神速の斬撃で以って粉砕する。
巨人の、ありとあらゆる部位が急所となる。

「全工程投影完了―――“是、億千万の刃”」

降り注ぐ暴風を、神の剣で凌駕する―――!!
振り抜く。
我が斬撃に―――敵は無し。

まあ負荷がナインライブズとは比較にならないので使ったが最後、
腕どころか全身吹き飛ぶんじゃないかな。ソニックブームで。
知名度MAXのアーチャーなら分からんけども。

おまけ13
【CLASS】アサシン
【マスター】
【真名】長谷部 翔香
【性別】女性
【身長】女性にしては高い
【体重】フルボッコにされました
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具A+++
【クラス別スキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【固有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
宗和の心得:B
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。
豪剣:A+++
とある神を殺す為に受け継がれてきた剣技。
ここまで来るともはや剣士自体が対神宝具の域である。
【宝具】
『袁州虎徹』
ランク:B 種別:対神宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
人を斬り、鬼を斬ったことで宝具となった。
神性を持つ者に対し有利な補正が掛かる。
実際には“虎徹”ではなく、虎徹と呼ばれているだけで全くの別物。
しかし、その切れ味は他の追随を許さない。

『豪剣、水無月の時雨』
ランク:A+++ 種別:対神宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
長谷部の家系に伝わる豪剣の奥義。
如何なる防御、回避行動を無効化し、必殺の斬撃で“相手を必ず両断”する。
動作は刀を振り上げ、振り下ろすのみ。

多分最強なんじゃないだろうかこの人。
名護屋河姉妹手懐けてるし、たぁくんのお嫁さんだし。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十四話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:36
昼休み。
凛の元に向かう前に手土産でも持っていこうと思い立ち、自販機の前で何がいいかと少し悩む。

(私はや~いお茶で)

(ああ、分かった。遠坂には……首領コーヒーでいいかな)

コーヒー2本、お茶1本を購入。
意外に時間が掛ってしまった。気持ち急ぎ気味に階段を駆け上がる。
扉を開け、屋上へと辿り着き。

「遅い! この寒空に女の子待たすなんてどういうつもり!?」

怒られた。
だったら上着を着るなり、人払いを敷いた空き教室に場所を移すなりすればいいだろうと思うのは間違いなのだろうか。

「わ、悪い。遠坂の分もコーヒー買ってきたんだけど、飲むか?」

「……む。意外と気が利くじゃない」

どうやらお気に召したらしい。実体化した鈴蘭にもお茶を手渡す。
受け取って直ぐに給水塔の上へ飛び乗り、警戒という名の野次馬モードに移る。

「立ち話もなんだし、座りましょ。……コーヒーより紅茶の方が好きなんだけどな。まあいいか」

腰掛ける程度には競り出した壁の部分に座り、士郎の傍へ寄る。
予想外の行動に焦り、思わず離れる。

「何よ、寒いんだからもっと詰めなさいよ」

「い、いや。体が当たってるんだけど」

しどろもどろに言い訳する。
なんだそんなことか、と息をつき。

「ここなら人目もないし、話も出来るでしょう」

「話?」

「そ。昨夜の新都の騒ぎを調べて来たの。貴方も早く聞いておきたいでしょ」

士郎の視線が真剣なものに変わり、凛の話に耳を傾ける。

「……どうだったんだ? またライダーの仕業だったのか?」

「いいえ、使われていた術式が違いすぎたわ。おそらく別のサーヴァントに依るものでしょうね。
つまり、これでライダーの手掛かりは振り出しに戻ったってわけ。
当面は予定通り魔法陣を潰しながら地道に探すしかないわ」

「それしかないか」

「貴方も不審な人物がいないか気を配っておいて。まあ、学内に魔術師はいないだろうから、望み薄だけどね」

「分かった」

コーヒーを啜り、ほうと一息。
外気に晒された吐息が白く染まり、煙草を吹かしているような気分になる。

「そういえば遠坂、桜と知り合いだったのか? 今朝といい校門の時といい……」

「ま、ちょっとね。そういう士郎の方こそ、随分あの子と親しいみたいじゃない」

「同じ部の後輩だったからな。いろいろあって今も世話になってる。それもあって戦争中は追い出したりしたら怪しまれるだろうな」

「魔術師のくせに社交性ありすぎなのよ。……まずは目先の問題を片づけて行きましょう」

「ああ。俺も今日は結界の魔法陣探しに精を出すことにするよ」





全ての授業を終え、二手に別れ魔法陣の探索に当たる。
凛は校舎内、士郎はそれ以外。
お互いサーヴァントがいるので、もし襲撃されても直ぐに対応出来るだろうとは凛の弁だ。

「解析、開始」

魔術回路を“生成”し、魔法陣が有無を確認する。ここまで見つけた魔法陣は5つ。
使うたびに毎回作り直さなければならないので地味に命懸けだ。
凛が相当な腕前であるということはなんとなく察しは付くが、彼女もこんな大変な思いをしているのだろうか。

(士郎君、基点は裏の林にあったよね。だったらその傍に魔法陣があるんじゃないのかな)

(なるほど、確かに)

それにまだ探索していない場所でもある。
善は急げと弓道場へと足を向け、歩き出す。

「ここにいたのか、衛宮」

「何か用か? 今少し忙しいから悪いから頼みごとなら後にしてくれないか」

校舎の陰から現れた慎二。どうやら自分に用があるようだが、今はそれどころではない。
何しろ人命が懸っているのだ。流石に、雑用と結界を同列にすることはできない。

「別に用ってわけじゃない。ただ親切心で1つ助言を言ってやろうと思っただけさ。
この辺りを馬鹿みたいに探したってお前のお望みの物はないぜ」

「何……?」

「探してるんだろ、結界の魔法陣。聖杯戦争に参加するマスターとして、これくらいは知っておかなきゃね」

鈴蘭が実体化する。
士郎を守る様に立ち塞がり、慎二を紅い眼でギラリと睨みつけ。

「サーヴァントを出せ」

「待てよ、僕に戦うつもりはない。今回のこれは単なる忠告だ」

冷めた目付きで鈴蘭の言い分を捩じ伏せる。
鈴蘭の前に出て、こちらも戦闘の意思がないことを示す。

「慎二。お前、魔術師だったのか?」

「ああ。って言っても、巻き込まれたようなものさ。でなきゃこんな命懸けの戦いなんて、関わりたくもないね」

「……これは忠告だって言ったよな。それはどういう意味だ?」

「簡単さ。衛宮、お前遠坂と組んでるんだろう? 今のうちに手を切れよ。
遠坂のことだ、どうせ使い捨ての駒みたいに扱われるのがオチに決まってる。
だったら僕と組んだ方がいくらか安心できるだろ? それにアイツだって魔術師なんだ、
何時寝首を掻かれるか分かったもんじゃない」

「遠坂はそんなことはしない。俺はアイツを信頼してるからな」

毅然と返す。
慎二の眼が落胆に染まる。態とらしく溜息をつき、やれやれと首を振る

「そうか。僕よりも遠坂を信用するってことかよ。分かった、お前は僕の敵だ。
今は見逃してやるけど、殺されたって文句は言わせないからな」

「待て、慎二。この結界を張ったのはお前なのか?」

背を向け、立ち去ろうとしていた慎二を引き留める。
もし、結界の犯人が彼であるのなら、何としても説得して解除させなければ。

「だったら? 僕を殺すか? なあ衛宮」

「そんなことはしない。でも、全力で止めて見せる」

「詰まんない奴。……僕じゃあないよ。そもそも僕には知識ぐらいしかない半端な魔術師だ。
そんな奴にこんな結界が張れるわけないだろ」

「そう、か……安心したよ、慎二」

「ふん。精々背中を刺されないように気を付けるんだね」

言うだけ言って、立ち去っていく。
不服そうに鈴蘭も霊体化し、念のため当初の目的だった弓道場の周りを調べる。
魔法陣は、見つからなかった。





小さなイレギュラーを入れてみた。
あんまり意味あるか分からんけども。

おまけ14
【CLASS】ヒーロー
【マスター】
【真名】柴崎 甲子郎
【性別】男性
【身長】高め
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】
名乗り:A
自らの真名を宣言することで、幸運を除くステータスを1ランクアップさせる。
このランクならば判定次第で相手にも名乗らせることが可能。
【固有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
熱血:A
ダメージを受けてもひるまない。
申し訳程度の対魔力もある。
【宝具】
『正義の味方はここにあり(ジャバンスーツ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の鎧。
悪の属性を持つ者が相手である場合、必ず先制攻撃が可能。
打ち破るには、非常に高度なクラッキング能力が要求される。

『悪を駆逐する閃光(ジャバンブラスター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の銃。
1対1の戦闘において、絶対に避けられない光弾。
悪の属性を持つ者が相手である場合、威力が上がる。

『我は悪を否定する(ジャバンソード)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の剣。
相手が犯した罪、不義に応じて威力が増減する。
悪の属性を持つ者が相手である場合、問答無用で威力が最大となる。

昭和の匂いが漂う正義の味方(仮)。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十五話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/27 18:36
探索を終え、凛と合流し成果を報告しあう。
結局、あれ以上の魔法陣を発見することは出来なかった。
慎二が魔術師であり、彼もまた聖杯戦争に参加するマスターであることが分かったということは、ある意味収穫と言えたかもしれないが。

「慎二がマスター……!? そんな馬鹿な、学校にまだ魔術師がいるなんて……」

険しい目付きであり得ないと呟く凛。
バーサーカーの時ほどではないが、ここまでうろたえるほどに意外な事実なのだろうか。

「でもさ遠坂、お前は俺が魔術師だって知らなかったんだろ? だったら」

「違うわ、そうじゃないの。そもそも慎二が魔術師である筈がないのよ。
彼等は元々マキリと言って海外の魔術師だったんだけど、日本に移住してきて間桐を名乗る様になったのよ。
だけど日本の土が合わなかったのか、その後魔術師の血がどんどん薄まっていって……。
ついに魔術師の生命線である魔術回路が失われたのが、慎二の父親の代なの。
だから、慎二がマスターになれるわけがないのよ」

慎二は、自分には知識しかない半端な魔術師だと言っていた。
自分だって碌に魔術を知らずに鈴蘭を召喚出来たのだから、それくらいのイレギュラーはあっても不思議はない気もするのだが。

「む……それもそうね。とりあえずはそれで納得しておきましょう」

渋々、といった様子で引き下がる。
ふと思い浮かぶのは慎二の目的だ。

(慎二は、何のために聖杯を手に入れようとしてるんだろう?)

(世界征服、とか? あの性格だからあり得なくないんじゃない?)

かつて世界を手に入れた少女が笑いながら候補を挙げる。
聖杯とは莫大な魔力の塊。不可能なことなどありはしない。
それこそ世界征服から死者蘇生までやってのけることだろう。
本来の使用目的はまた別にあるということを、神ならぬ2人は知らない。

「ふむ。この辺りでよかろう」

「アーチャー? 何でいきなり……」

もうじき家に到着するというところで、アーチャーが実体化した。
はて? と首を捻る。こんなところで一体何をしようというのか。
なんとなく実体化した、などという理由であるわけがない。
まさか、この近くに他のサーヴァントが―――

「もしや、忘れているのではないだろうな? 私は名目上、ファイターの護衛兼執事を演じねばならんのだ。
護衛対象から離れる護衛などいるはずもないしな」

すっかり忘れていた。
良く見れば、服装も今朝見た執事服のままだ。違和感が無さ過ぎて気付かなかった。
その後に起こったイベントの方が印象的で、正直そこまで気が回らなかった。

「それにしても藤ねえがあそこまで惚れこむなんてな」

「………………」

どうやら地雷だったようだ。
苦虫を数百匹ほど噛み潰したような表情で士郎を睨みつける。

「小僧。言っておくがな、我々サーヴァントは聖杯戦争が終結すれば遅かれ早かれ消滅するのだ。
ならば余計な期待など持たせる必要もあるまい。どの道実らぬ想いだからな」

―――何より、私に誰かを愛し愛される資格などあるわけがない。

そんな心情は微塵も表には出さず、皮肉たっぷりに説明する。
小馬鹿にしたような笑みに、言いようのない反発感を覚えた。
アーチャーの言うことが分からない訳ではないが、どうにもこの男に対しては嫌悪感のようなものが纏わりつく。

「それじゃあ帰ろうか、執事さん?」

場の険悪な空気を感じ取ったのか、鈴蘭が実体化して帰宅を促す。
特に不満もないらしい弓兵も、小さく口元を歪ませる。

「フ。了解だ、お嬢様」

「アンタは私のサーヴァントでしょうが……」

執事なアーチャーと、見た目だけならお嬢様な鈴蘭を加えて自宅の玄関をくぐる。

「士郎、今日の夕食は私に任せてもらうわ。いいわね?」

「まあ、いいけど。そういや楽しみにしてろって言ってたな」

「ふふ、精々期待して待ってなさい」

不敵に笑みを浮かべ、台所へ向かって歩いていく。
することが無いので道場で鍛錬でもしていようかと思い立つ。
鈴蘭に夕食時になったら呼んでもらうよう頼み、道場へ向かう。




「「「「「いただきます」」」」」

夕食が完成し、『従者が主人と同じ食卓につくわけにはいかない』と言って逃げた執事を除いた全員で凛の料理に手を付ける。
凛のジャンルは士郎や桜もあまり作ることのない中華系統だ。
自信満々に言っていただけあり、思わず絶賛するほどの美味だった。

「遠坂さんすごいね! こんなに美味しい中華初めてだよ!」

「凛は何でも出来るねー」

「ありがとうございます。藤村先生、鈴蘭も」

アーチャーがいないと聞いてガックリと沈んでいた大河も、鈴蘭と一緒になって褒めちぎる。
当然だと誇らしげに答える凛と、新たな壁の出現に気を引き締める士郎と桜。
そんな何気ない日常を守ろうと、密かに決意を新たにした。




積みゲー消費に入るので更新遅れるかも。

おまけ15
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】レミーナ
【性別】女性
【身長】普通
【体重】不明
【属性】中立・悪
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B
【クラス別スキル】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“コンサート会場”の形成が可能。
道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成できる。
楽器程度しか作ることができない。
【固有スキル】
怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
異形:C
背中に収納自在な翼を生やした姿。
空を自由に飛べる他、翼を収納することで水中でも水の抵抗を受けずに活動できる。
呪歌:A
歌を用いた魔術体系。旋律を付けて発することで万物の心に働きかける。
特に人間に対して高い効果を発揮する。
【宝具】
『響き渡る哀の唄(セイレーン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
船を沈める悲劇の歌であり、危機を知らせる悲鳴。
聞いた者の心に干渉し、精神を完全に支配する。
耳を塞ぐ、もしくは精神防御のスキルで抵抗可能。

『勇者を称える応援歌(セイレーン)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
魔眼王との戦いで思い出した音楽への情熱。
聞いた者の全ステータスを1ランクアップさせる。

『歌姫の吐息(セイレーン)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
空気振動による衝撃波。
音程を操作することで特定の場所のみへの攻撃が可能。
歌声の大きさによって威力が変動する。

歌で鯖を強奪した上で更に強化。
だったら本体叩けばいいじゃないと思ってもそこそこ戦える。
何このチート。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十六話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/29 21:44
「なんでさ」

食事を終えて、桜と大河を見送った後。
昨夜のように、事故に見せ掛けた魔術師の横行が蔓延ることを危惧し、夜の探索に出ることとなった。
居候が増えて食費が上がりそうなので、ついでに養父が残した遺産を少し切り崩そうと銀行に立ち寄る一同。
しかし、そこで待っていたのは予想もしていなかったことだった。

「何よ、どうしたの?」

通帳を握りしめて驚愕する士郎に、凛が怪訝そうに声を掛けた。
振り返り、未だ信じられないと言いたげな表情のまま質問に答える。

「お金が、増えてるんだ……それも倍近く」

何ィ!? と何故か眼をギラリと輝かせ、通帳をひったくる。
養父が、一体如何なる手段を以って築いたか定かではないが、それなりに大金と呼べる額。
それがほぼ倍の金額になっていた。自分のバイトによるものではない。
ここまで一気に増えるほど高給な内容ではない筈だし。

(あー。それ多分私のスキルの影響だね)

(スキルの?)

意外なところから原因判明。
というかお金が増えるスキルとは一体。

(私には黄金律っていうスキルがあってね、簡単に言うとお金が寄ってくるスキルなんだよ。
何もしなくてもある程度は集まるけど、アクションを起こせば桁外れに稼げるよ。長者番付には確実に載るだろうね)

つまり、こういうことか。
1、鈴蘭が何かしら事業を起こす。
2、黄金律発動。
3、世界征服完了。
なにそれこわい。
生前は英雄ではなく実業家だったんじゃないだろうか。それも破格の。

「すごいな……」

「何が?」

通帳と睨めっこしていた凛が、思わず漏れた呟きに反応する。
鈴蘭のスキルについて説明してやると、サーヴァントを交換しないかと詰め寄られた。
割と真剣な眼差しで。無論丁重にお断りしたが。

「意外とがめついな、遠坂」

「う……し、しょうがないじゃない! 宝石を使った魔術はお金が掛るのよ! しかも使い捨てだし!」

なんという贅沢魔術。
一流主夫たる士郎からすれば、勿体無さ過ぎると突っ込むところだ。
事実突っ込んだ。

「魔力を蓄えて保存したり、臨機応変に対応できるから便利ではあるのよ。出費が痛いけどね……」

途端に眼から光が消えうせ、やたら荒んだ笑みを浮かべる。
かつての自分もあんな表情だったんだろうな、と鈴蘭が懐かしむように眺めていた。




気を取り直して探索開始。
襲われたのは人が固まっている場所が多い傾向にある。
そこを探し出し、魔術が使われたなら、その痕跡を辿れば魔術師へと辿り着けるかもしれない。
そういう方針ではあるが、いかんせん次に襲われる場所など見当も付かないわけで。
だったら襲撃が起きる前に、懸念に思っていたことを聞いておくことにした。

「なあ遠坂、間桐は魔術師の家系だって言ってたよな。そうなると桜は……」

「あら? 桜の事が気になるの? ふ~ん、へ~え」

面白いことを聞いた、とからかうように笑みを浮かべる。
はぐらかすつもりか、とも思ったが、単純に面白がっているだけらしい。
くつくつと笑いを堪えつつ、小さく謝りながら説明を始める。

「大丈夫よ、魔術は基本一子相伝。その家の長子にだけ魔術の知識を与えて、
それ以外の子供はごく平凡に一生を送るのが普通よ」

「そうか……安心した」

「それにしても、士郎って意外に結構やり手なのね。あの子に身の回りの世話とかさせて。
何? デキてるの貴方達?」

「なんでさ。桜は部の後輩で、俺が独り身なのを心配してくれてるだけだ」

「その程度の理由で普通家にまで押し掛けたりしないでしょう。なんか殺気とか飛ばされたし」

「だからそれは、―――ッ!?」

魔力が奔る。
全身を舐めるように、おぞましい悪寒が身体を一瞬だけ支配した。
険しい表情で、鈴蘭とアーチャーが実体化する。

「凛、感じたか?」

「ええ、昨日と同じ奴だわ。行くわよ士郎!」

魔術反応のあった方角は都市部の中心。直ちに急行し、痕跡を辿り―――

「待て遠坂! そっちじゃない! 魔術反応があったのは向こうじゃないのか!?」

目指すべき方向とは反対を示す士郎。
全く見当はずれな意見に困惑する。

「アーチャー、貴方は何か分かる?」

「いや。先ほどの魔術反応は都市部の中心からしか感じられんが」

「私も分からないけど……」

ここで士郎の意見を無視することはできない。
何せ結界の基点をあっさり見つける能力を持っているのだ。
どちらかが陽動であるという可能性も浮上する。
或いは戦力の分断が狙いか。

「……仕方ないわね。ここは二手に別れましょう。私達は都市部へ、士郎達はそっちへ向かって。
いい? 絶対に無理はしないで。手に負えないと判断したら構わず逃げなさい」

「分かった。遠坂も気をつけろよ」

「こっちの台詞だわ。行くわよアーチャー!」

急がねばならない。
もうこれ以上被害を出させてなるものか。
サーヴァントを従えて、2人の魔術師が夜の闇へと溶けて行く。





【固有スキル】
黄金律(偽):A
他人から金品を巻き上げる能力。
国家予算だろうが思いのまま。

おまけ16
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】リップルラップル
【性別】女性(ホムンクルス?)
【身長】幼女
【体重】軽い
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運A 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“神殿”を上回る“大神殿”を形成する事が可能。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成できる。
燃え盛るゴミ専用のゴミ箱を作ることが可能。
【固有スキル】
高速神言:A
呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
大魔術であろうとも一工程(シングルアクション)で起動させられる。
現代人には発音できない神代の言葉を、神託により授かっている。
召喚:EX
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
幻想種である“龍”を召喚し、使役することが可能。
神性:―
元天界最高位の天使。
だが堕天し、更に魔王として君臨した為完全に失われた。
【宝具】
『猛り狂う龍神の檻(ヘブンズゲート)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
最強の幻想種である“龍”を召喚する錫杖。
火龍、怒龍、飛龍、砂龍、水龍、光龍、黒龍の計7体が登録されている。
しかし、黒龍は貴瀬に埋め込まれているため欠番である。

『血塗れの悪魔(トリニティ・オブ・ミズノ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
打つ、殴る、叩くが三位一体となった魔王の凶器。
同時に3つの軌道で相手を襲う不可避の打撃。
一発でも掠ればタコ殴りにされるまで攻撃が止むことはない。

リクエストがあったので。
ああおまけ書くのって凄い楽。



[25576] 番外編 ハッピーエンドってこんな感じ?
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/02/24 18:54
真っ白な鳩が空を舞う。
まるで今日という日を祝福しているかのようだ。

「似合わねえな、その服」

窓の外から視線を戻し、声の主に向き直る。
壁に背中を預けるランサーがくつくつと笑いを噛み殺している。実に楽しげな表情だ。

「ふん。君こそ……いや、何でもない」

こちらも同じネタでからかってやろうかとも思ったが、止めた。
スタイリッシュなダークスーツ、ワインレッドのネクタイというシンプルな装いは、彼にとても良く似合っていた。
まあ、着崩しているためチンピラにしか見えないが、今日の参列者の内容を考えればそちらの方が正装なのかもしれない。

「自分でも、これほど似合わないとは思わなかった。……アレは似合うと言われたのだが」

自分が身に纏っている、違和感しか湧いてこない衣装を見下ろし、小さく嘆息。
似合わないからといって、その服に着替える訳にもいかない。今日は、絶対にこの服でなければならないのだから。

「おいおい、今日の主役が溜息なんてついてんじゃねえよ。幸せが逃げるらしいぜ?」

「どちらかと言えば私ではなく、“彼女”こそが主役なのだがね。それに、この程度で逃げる幸福などではないさ」

「ケッ、惚気やがって」

悪態の割には、先ほどから一向に顔がニヤついたままだ。
彼からしてみれば、今の自分は何を言っても面白い道化と変わりないのだろう。
少々うんざりしながら、小さく鼻を鳴らして窓の外に再び視線を戻す。
僅かに反射したガラスには、純白のタキシードに身を包んだ自分が映っていた。




目の前の扉の存在がひどく鬱陶しく感じる。
ノックをするという当たり前の行為でさえ、面倒で仕方がない。
出来るなら一刻も早く“彼女”に会いたいというのに。

「どうぞー」

「失礼する」

許可を経て、ドアノブに触れる。
カチャリという軽い音と共に扉が開き、ゆっくりと足を踏み入れた。

「藤村先生、アーチャーさんがいらっしゃいましたよ」

桜に促され、大河が振り返る。
その姿は、いつものような虎柄の洋服ではなく、雪を思わせる白。
予想してはいたが、実際目の当たりにすれば、自分の唯一の自慢である想像力が如何に貧弱だったか思い知らされた気分だ。
具体的には、気を利かせた桜がそそくさと退室したことにも気付かないくらいに動揺していた。

「アーチャーさん……その、似合いますか……?」

普段の活発さは完全に鳴りを潜め、上目遣いに見上げてくる。
虎というより、借りてきた猫のようだ。

「ああ……とても、よく似合っている。思わず魅入ってしまった。普段とは全く違う雰囲気だな」

「そ、そうですか? ありがとう、ございます。アーチャーさんも、その、ええと」

「無理に褒めなくていい。自覚はしている」

和やかな空気。
大河はやや緊張しすぎのような気もするが、まあしばらくすれば元に戻るだろう。

「そろそろ時間だ。向かおうか」

「はい、アーチャーさん」

「違うだろう?」

「あ……はい、あなた」

くすくすと、どちらからともなく笑いだす。
決して広くはない控室は、幸せ色の空気で満たされていた。




「似合わないね、そのカッコ」

「牧師役の君が言うのかね」

会場である言峰教会の礼拝堂で、仮初めの主従が軽口を交わす。
本来ならばこの教会の神父が務める牧師を、鈴蘭が代役という形で遂行していた。
何故なら、満場一致で「こいつに任せたら誓いの言葉の前に破局しそう」という理由で、綺礼が降板させられたからだ。
ある意味酷過ぎる理由だが、反対する気は更々なかったりするアーチャー。
だったら一応聖女と呼ばれていた鈴蘭に任せたらいい、という結構アレな理由で抜擢された。
降ろされた綺礼はといえば、パイプオルガンの前に陣取って割と楽しそうに音色を奏でていた。

「新婦、入場」

教会の扉が開かれる。
深紅のヴァージンロードを、雷画と大河が腕を組み寄り添って歩く。
雷画の瞳には今にも溢れんばかりの涙が湛えられ、必死で押し留めている。
大河の顔はベールで隠されよく見えないが、彼女もまた目に零れそうな涙を貯めていた。
ゆっくり、ゆっくりと祭壇へ近づいて行く。
やがて祭壇へ辿り着き、雷画がその力強い目でアーチャーの目を見詰める。

「大河を、頼む」

言葉はいらない。ただ黙して頷くのみ。それだけで事足りる。
今日ここで結ばれる2人は正面に向き直り、牧師の言葉を待つ。
まるで我が事のように目を細めて、鈴蘭がお決まりの台詞を紡ぐ。

「新郎、アーチャー。あなたは健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、
新婦と喜びも悲しみも分かち合い、彼女を愛し、その命続く限り真心を尽くし、助ける事を神に誓いますか?」

「誓います」

「新婦、大河。あなたは健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、
新郎と喜びも悲しみも分かち合い、彼を愛し、その命続く限り真心を尽くし、助ける事を神に誓いますか?」

「誓います」

穏やかに、柔らかに、しかし確固たる意志で以って肯定する。
士郎が、凛が、桜が、宿敵達が、穂群原の生徒達が、リリー魔殺商会が、藤村組が。
誰も彼もが2人を祝福している。

「では、誓いの口づけを」

微かに震える手で、ベールを捲る。
大河の顔が露になった。
上気した頬。潤んだ眼差し。
世界で最も愛しい人が、自分の目の前にいる。
嗚呼。
自分はこんなにも幸福だったのだと再認識させられる。
目を閉じ、肩を抱き寄せ、惹かれ合うように、お互いの唇が触れ合った。




――――――2人の未来に、幸多かれ。









もうこれ最終回でよくね? な感じに仕上がりました。
ちなみにコトミー死んでません。だってリリーさんがいるもの。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十七話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/02 10:19
市街地を抜け、ようやく目的地へと到達する。
不安を煽るような広々とした敷地。
光源はまばらで薄暗く、所々に蔓延る暗闇からは今にも魔物が現れそうだ。

「何、ココ……気持ち悪ぅ」

「ここでは十年前、大きな火災があったんだ。この公園はその跡地を利用して作られたものさ。
死にかけてた俺を爺さんが助けてくれたのも、ここなんだ」

夜ということもあってか、普段から不気味な雰囲気を漂わせる公園は、怨念すら徘徊しているのではないかといった疑念を抱かせる。
いや、実際そうなのだろう。
ここで失われた命は100や200ではない。生き残った自分を責め立てられているような錯覚に息が苦しくなる。
衛宮士郎にとって、ここは呪われた場所だ。

「ここで一体何を……」

「そこォッ!!」

すぐ後ろで破砕音が響く。
振り返れば、鈴蘭が……骨? の塊を殴り飛ばしていた。
骨の塊は鈴蘭の鉄拳に耐えられることなく、バラバラに砕け散る。

「何だ!?」

「士郎君の感覚が間違ってなかったってことだね。ついでに言うと、囲まれてるよ」

その言葉を裏付けるように、次々とその身に骨しか持たぬ兵士達が姿を見せた。
かちゃかちゃと耳障りな音を立ててにじり寄り、手には無骨な凶器を携えている。
全方位を骨の大軍が埋め尽くし、完全に退路を断たれた。
しかし、この程度の物量で聖魔王に恐怖を与えることなど出来る訳がない。

「炎獄、疾れッ!!」

それはまさしく炎の津波。
両手から放たれる爆炎が、周りを囲む骨兵士を片端から炭へと変質させていく。
比べるのも馬鹿馬鹿しい圧倒的な火力によって、見渡す限りに存在していた骸骨軍団はあっという間に壊滅した。

「すごい……」

「まだ来る。キリがないな」

面倒くさそうに吐き捨てる。
ぞろぞろと、炭になった同胞を踏みつけながら兵士達が暗闇から湧いてきた。
ざっと見ても先ほどの倍以上。
再生能力は持っていないようだが、無制限とでも言いたくなるような数は正直やりにくい。
もともと一撃必殺型に近い戦闘スタイルを持つ鈴蘭にとって、長期戦になりそうな戦いはあまり得意とは言えない。

「仕方ない。もっかい焼き払って、」

「鈴蘭、後ろだ!!」

へ? と反応する間もなく、突如迫る極太の閃光が鈴蘭を飲み込んだ。
まるで爆撃染みた轟音が鳴り響く。
もうもうと立ち込める煙が視界を埋め尽くし、鈴蘭の姿が掻き消える。

「な……す、鈴蘭! 鈴蘭!?」

「あら。まさかこれで片付いてしまったのかしら? 今のはほんの挨拶代わりだったというのに」

兵士達が道を開け、さながら王者の如く闊歩する人影。
紫のローブに身を包み、その顔は目深に被ったフードによって隠されていた。
そして、いままで出会ってきた規格外と同じ、強烈な存在感。

「サーヴァントか……!」

「貴方は……あの子のマスターかしら? ……随分と貧弱な魔力反応だこと。その程度でマスターとは、全く嘆かわしい。
私と比べるつもりなんて毛頭ないけれど、現代の質も落ちたものね。これではあのイレギュラーの子が哀れでならないわ」

「何……!」

「中々面白い魔術を使うから、じっくりと解析してあげた方が良かったかしら。少し早まったわね」

「や。別に死んでないよ」

煙の中から、悠然と鈴蘭が歩み出る。
その姿には焦げ目1つ見当たらず、先ほどの攻撃が全く通っていないことを如実に語っていた。

「鈴蘭! 無事だったか!」

「私の魔術を跳ね返すとは、優秀な対魔力を持って……いえ、貴女自身ではなくその衣装のおかげなのね」

「正解。私超偉い人だったから。特注なんだよコレ」

ちょこんとドレスの裾を摘まんで見せる。
神殿教団が有り余る財力を注ぎ、マッドな科学者が全身全霊を込めて構築した最強の防護服である。
加えてマントもセットなので、如何に神代の魔術と言えど簡単には通じない。
金庫を水鉄砲で壊そうとするようなものだ。
打ち破るなら、それこそ宝具級でなければなるまい。
そんなとんでもない装備の片割れであるマントを外し、士郎に被せる。

「それ着てれば大抵の攻撃も魔術も防げるから、失くさないでね?」

「ああ、ありがとう」

「さっきの炎といい、その衣装といい……つくづく興味深いわ。こうして網を張っていて正解だったようね」

「キャスターが戦場に出てきた時点で落第だよ」

地面を抉るほどに踏み込んで加速。拳を構え肉薄する。
完全に捉えた。一切の抵抗を許さず、キャスターの身体には風穴が―――

「そうね。貴女が相手なら、正々堂々の戦いなんて勝ち目は無いわ。けれど、こちらの未熟なマスターならどうかしらね?」

転移魔術。
極めて高度な魔術であり、もし座標の設定をほんの少しでも誤れば身体が霧散したとしてもおかしくはない。
本来ならば、凄まじく複雑な術式を幾重にも用意し、
さらに決して少なくない魔力を消費してようやく実現できる魔術を、一切の詠唱無しで行うという離れ業をキャスターはやってのけた。
転移先は―――士郎の目の前。
如何に防御が鉄壁だろうと、それはマントに覆われている場所のみだ。
覆われていない部分、例えば首を狙われたなら。

「実力もなく、前に出てくるマスターこそが貴女の弱点よ」

「やばっ……」

「強化、開始!」

手にした木刀で一閃。
しかし、鈴蘭の時と同じく虚しく空を切る。
その隙を逃さず兵士が斬りかかり、駆け付けた鈴蘭によって砕かれた。

「その竜牙兵は私が竜の牙から作り上げたもの。一体一体の力は弱いけど、いくらでも数を用意できるわ。
そんなささやかな魔力でいつまで戦い続けることが出来るかしらね?」

恐れを知らない竜牙兵は、主からの命を果たすべく殺到する。
キャスターが電撃を放つ。炎獄が壁となり、雷と竜牙兵の侵入を阻む。

「戦えないマスターなんて―――足手纏いでしかないのよ!!」

魔法陣が煌めき、無数の魔力弾が士郎の急所に迫る。
鈴蘭が士郎の首根っこを掴み、残像すら伴い跳躍で包囲網を逃れた。
だが、数え切れない竜牙兵は直ぐに再び2人を取り囲む。

「全然減ってないな……」

「つーか多すぎだよ。あと知り合いに似てるのがなんか腹立つ」

骸骨に似ている知り合いって何なんだ。
本格的に鈴蘭の人生が分からなくなってきた。
さておき。

「兎に角、親玉のキャスターを倒せばこいつらもどうにかなるんだろ。鈴蘭の宝具ってやつで一気に吹っ飛ばすことは出来ないのか?」

「出来なくはないけど、威力は炎獄の比じゃないよ。最低でも地形が変わるかも」

「―――待て。“最低で”? じゃあ、もし全力で使えばどうなる?」

背中合わせに立ち、迫りくる竜牙兵を捌く。
宝具はサーヴァントの切り札。
其れがどれほどの威力を持つものなのか、士郎は正確には知らない。

「……地平線の彼方まで一直線に破壊。間違いなく市街地まで届くだろうね」

駄目だ。そんな強すぎる力では。
それではまるで、十年前の―――

「っく! 宝具はなしだ! 自力で乗り切るぞ!!」

「私だってそんなことしたくないよ。でも、」

「足手纏いなのは分かってる。でも俺には“強化”したこれが、鈴蘭のマントだってある。自分の身ぐらい自分で守ってやるさ。お前はキャスターを倒してくれ」

「ちょ!?」

「今大事なことは俺の命じゃない。俺は皆を守るために戦うって決めたんだ。
だったら! 誰かが俺の代わりに犠牲になるなんてことがあっちゃいけないだろ!?
宝具なんて使わなくたって切り抜けて見せる! 行けッ!!」

竜牙兵が津波の如く押し寄せる。
炎獄と未熟な剣閃が迎え撃つ。

「勝手に死んじゃったりしたら、有り金全部もぎ取って凛に乗り換えてやるから」

……これは意地でも死ぬわけにはいかない。
一陣の疾風となった鈴蘭を背中に感じながら、うっすらと冷や汗を流す士郎だった。







聖魔王の装備が実はアヴァロンもどきだった件について。
戦闘描写って難しい。

おまけ17
【CLASS】キャスター
【マスター】
【真名】リッチ
【性別】男性
【身長】不明
【体重】骨
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力C 耐久E 敏捷C 魔力A++ 幸運C 宝具A+++
【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成する事が可能。
道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
【固有スキル】
召喚:A
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
自らが殺した者の魂を呼び出すことができる。
再生:B
肉体再生能力。
たとえバラバラにされても、組み立て直せば復活することができる。
闇の眷属:A
闇に属する者の特性。
時間が夜であれば戦闘能力が上昇する。
高速神言:A
呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
大魔術であろうとも一工程(シングルアクション)で起動させられる。
現代人には発音できない神代の言葉を、神託ではなく努力と才能のみで会得している。
【宝具】
『進撃せよ亡者の軍団』
ランク:A+++ 種別:対軍宝具 レンジ;1~99 最大捕捉:1000人
リッチと戦い、そして飲み干された数多の死霊兵団。
自らの命のストックとしても使用可能であり、この宝具で倒された者は『進撃せよ亡者の軍団』に加えられる。
対抗するには本体であるリッチを倒すか、全ての霊魂を殲滅するしかない。

数少ない良識派のアウター。でも骨。
ダンディな老紳士。でも骨。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十八話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/05 22:46
目指すべきはただ一点。
視界から不純物を排除し、キャスターを―――その心臓のみを狙う。
細い背中には可愛い“後輩”からの信頼を受け、仇敵に必殺の一撃を見舞うべく固めた決意は紅い眼光となって爛々と輝く。
一歩。地を蹴り、世界は後方へ流れ去る。
二歩。時間は緩慢となり、その身は一時的に音の壁を突破する。
三歩。最早地を駆ける意味は無く、音速へと至った拳は空気摩擦によって僅かに雲を纏う。
主に歯向かう不届き者を討ち果たさんと、物言わぬ竜牙兵は与えられた忠義心のままに立ち塞がる。

邪魔だ。

そんな感情を言葉にするよりも前に、触れた端から愚か過ぎる忠臣達は吹き飛んでゆく。
刹那にも満たない一瞬で、三十を超える軍勢はただの朽ちた骨片へと成り下がった。

「ハアァッ!!」

寸毫も目を逸らさずにいた標的に、速度のみを突き詰めた渾身の一撃を叩きつける。
水飴のように粘つく時間の中で、極限まで加速した拳は吸い込まれるが如くキャスターの心臓を穿つ―――筈だった。
嘲笑いながら、そんなものになど当たってはやらぬと再び行われる転移。
傍から見ればまるで蜃気楼にでも突っ込んだかのように見えたことだろう。

「フフ……何度挑んだところで同じことよ」

決定的な隙を作った鈴蘭の無防備な後頭部に狙いを定め、魔力弾を放―――

「炎獄、斬り裂け」

炎の刃が魔術師を貫く。
蒼炎は大剣の姿となって鈴蘭の“左肘から”まっすぐキャスターの心臓に向かって伸びていた。
人ならぬモノの生存を決して許さぬ断罪の業火は、己の敵を罰するように灼熱で以ってキャスターを責め立てる。

「成程。手からしか出せないものと思い込んだのは浅薄だったようね」

「え……!?」

馬鹿な。
自分は確かに心臓を、それも炎獄で撃ち抜いたのだ。
本来ならば即死、それでなくとも苦悶の表情を浮かべていて然るべき状況である筈。にもかかわらず、キャスターには全く堪えた様子がない。

「全く。これほど理解し難い魔術なんて生まれて初めてだわ。まあ、いずれじっくりと解析してあげましょう」

ブツブツと腹立たしげに呟くキャスターの姿が、霧のように霞んでいく。
転移で逃げた? いや。

「……最初から本物じゃなかったか。残念」

姿が消えると同時にぽとりと落ちる触媒。おそらくこれを媒体として今まで高みの見物をしていたのだろう。
自分の周りにいた魔術師達は皆が皆、最前線で剣士以上に戦えるような超ド級の規格外ばかりだった為、彼女のように隠れて戦うという発想を完全に失念していた。

「いやいやいや、私は悪くない。みんなが強すぎるのが悪いんだ」

軽やかに責任転嫁。某勇者はその仲間こそが鈴蘭の強みだと言っていた筈なのだが。
さておき。
キャスターが撤退すると同時に竜牙兵も次々と消えていき、士郎が木刀を杖代わりにして息を荒げているのが見えた。
凛の向かった都市部の方も偽物だったのかなーとか思いつつ、てくてくと士郎の元へと歩いて行く。




「そっちも外れだったか……チッ、してやられたわね」

十数分後、事を終えた凛が合流し、戦後の情報交換となった。
やはりあちらで使われた魔術もキャスターによるものだったらしい。
だが街中ということもあり戦闘が行われることはなく、既にもぬけの殻の状態だったそうな。
忌々しげに舌打ちし、不機嫌マックスであることを隠そうともしない。

「そういえば、アーチャーはどうしたんだ? まさか」

「やられてないわよ。今はキャスターの魔力の残り香を辿っているわ。―――ん」

アーチャーからの念話のようだ。虚空を見上げ、難しい顔で応対している。

「魂喰い……霊気の流れ……霊脈……? ―――そうか!」

ブツブツと単語を呟き、やがて何かに思い至ったかのように顔を上げた。

「何かわかったのか?」

「キャスターの居場所とか?」

「ええ、おそらくかなり可能性は高いわ」

「え、マジで?」

何やらあっさり見つかってしまったようだ。
適当に例を上げたつもりだった鈴蘭が一番驚いている。

「魂喰いによって獲得した魂を吸収するにはサーヴァントが直接摂取する必要があるの。
でも、今夜もキャスターは使い魔を動かしただけで現場には現れなかった。
いくら凄腕といっても、使い魔で魂の回収なんて出来るとは思えないわ」

「……そういう魔術があるんじゃないのか?」

妥当であろう意見を挙げてみる。
しかし凛にとっては不正解だったらしく、首を横に振る。

「そうだとしても、魔力の変換効率が悪すぎるわ。魂の伝送はそんなに燃費のいい魔術じゃないの。
―――裏技を使えば、その限りじゃないけれど、ね」

「裏技?」

「自然界には地形に応じた霊気の流れがあり、それを霊脈と呼ぶのよ
その霊脈を利用したのなら、さっき言った方法と比べると段違いで回収が簡単になるわ」

人手を使って荷物を運ぶ事と、河に流して運ぶ事のイメージ。
確かに後者の方が圧倒的に楽だ。最初に荷物を流して、後は到着地点で待っていれば良いだけなのだから。

「そして実に好都合な事に、この冬木の町には多くの霊脈が集まる霊格の高い土地がある」

「―――まさか」

「士郎も知ってるでしょ? 今も数十人の僧侶達が修行を積む場所、柳洞寺。そこがキャスターの本拠地よ」

「じゃあ、これから突撃する?」

「いえ、現時点では情報が少なすぎるわ。相手は絡め手の代表格と言っていい存在だもの。
せめてどんな魔術を使うのかだけでも把握しなくちゃ」

「むー。じゃあ嫌がらせでもしようか? 毎日ダンプ突っ込ませるとか」

「一成を始め色んな人に迷惑が掛かるから止めてくれ。というかそんなお金がどこに……ああ、あったな」

黄金律(偽)。
士郎は未だに金運上昇のスキルだと思っているが、断じて否だ。
カツアゲすればしただけ、破産させればさせただけお金が増える極悪スキルである。
もし鈴蘭が資金集めに専念したならば、赤い皇帝の再来と言っていい事態になることは確実だ。

「……どうせならそのお金で私の宝石工面してくれないかしら。その方が戦力も上がるし」

「んー、いいんじゃない? じゃあ明日宝石店買い占めてこようか」

うっか凛改めちゃっか凛。
しかし鈴蘭の返答に度肝を抜かれたようで、口を金魚のようにパクパクさせている。

「いや、家の遺産なんだけど」

既に財布も権力も奪われた家主が無駄と知りつつも反論してみる。
果たして明日までに一体何人の自殺者が現れるのか。










マッハ突き?
いいえ鈴蘭ミサイルです。

おまけ18
【CLASS】プリースト
【マスター】
【真名】甲斐 律子
【身長】成人女性くらい
【体重】おしおきやー
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具A+++
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では律子に傷をつけられない。
信仰の加護:B
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
加護とは言うが、最高存在からの恩恵はない。
あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。
【固有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望と言える。
弁論:A
言葉によって相手の精神を操作する能力。
心から語りかければ、例え一触即発の状態であろうと穏便な話し合いへの移行が可能。
【宝具】
『汝、罪を犯すことなかれ(ミドガルズオルム)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ1~5 最大補足:1人
罪人を討ち据える神罰の鞭。
相手が今までに直接的、間接的に奪ってきた命の数によって威力が変動する。
無実の者には一切のダメージを与えられないが、一人でも殺しているのなら絶対に回避不可能。
十三人以上殺しているのなら、その威力はもはや一撃必殺級である。

聖職者っぽいイメージで作ってたら宝具がチートに。
というかある意味鈴蘭以上に英雄らしい人じゃなかろうか。



[25576] 番外編 MOMOTAROU異聞伝
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/03/26 18:11
むかしむかし。

あるところにとっても皮肉屋な弓兵と、とっても元気な高校教師が仲睦まじく暮らしておりました。

「大河、食事の用意が出来たぞ」

「わーい! ごっはん! ごっはんー!」

なんか夫婦というより親子のような気もしますが、気にしてはいけません。

食事を済ませ、弓兵は教師を見送った後、正義の味方として日課のパトロールへと向かいます。

正義の味方はニートの別称ではありません。だって主夫だもの。




さて。

パトロール中には様々なことが起こります。

下着泥棒の小動物を捕獲したり、ジュエルシードの回収を手伝ったり、空腹で行き倒れたシスターにご飯をあげたり。

大体いつも平和なのですが、最近は鬼ヶ島の鬼が出没し、悪事を働いているという噂が広がっています。

「ふむ」

パトロールを終えた弓兵は何やら決意を秘めた表情で帰宅します。




「大河。私は鬼ヶ島に鬼退治に行こうと思う」

「鬼ヶ島、ですか? アーチャーさんが強いのは知ってますけど、いくらなんでも危ないんじゃあ……」

「なに、心配はいらんさ。この身には唯の一度しか敗北はないのだからな。
それに、放っておいたら君まで巻き込まれるやもしれん。それは、それだけは断じて許す訳にはいかない」

「アーチャーさ……士郎」

「藤ねえ……」

ゆっくりと二人の影が近づいていき、やがて唇と唇が以下自主規制。

~しばらくお待ちください~




愛する妻に別れを告げて、弓兵は旅立ちます。

その途中、流石に一人は無理っぽいなと悟った弓兵は何人かスカウトすることにしました。

「全身全霊で戦える戦場を用意しよう。どうかね?」

「行く」

槍兵は持っていた釣り竿を放り投げて快諾し、同行を申し出ます。

犬、確保。


「その歳でまだ就職していないのかね。いやはや嘆かわしいな」

「ほっとけよ! あとアンタにだけは言われたくない!!」

「生憎だな、私は専業主夫だ」

プー太郎の勇者を軽くイジりつつ、仲間に加えます。

猿(?)、確保。


「げあるげぇぐ、ぎゅえるげっぐぐ(猿どもの殲滅を鬼なんぞに先んじられる訳にはいかん、連れていくがいい)」

「……まあ、よかろう」

ちょっぴり危険思想なペンギンまでもがメンバー入りしました。

雉(!?)、確保。




キングクリムゾン。

どこか蛇っぽい印象の青年が操る巨大戦艦に乗せてもらい、とうとう鬼ヶ島へと到着した御一行。

「世話になったな」

「ご武運を祈っておりますよ。ええ、はい」

青年と短く挨拶を交わし、鬼ヶ島へと突撃していきます。

「げらげらげら! 随分と威勢のいい連中じゃねえかよぅ!」

「エェ………ミィ………ヤァァ………」

「あの人達強そうですねえ。……メイツで洗脳できないでしょうか」

繰り広げられる激戦。

あえて表現するのなら、三十ページくらいの厚さは固いだろうクライマックスっぷりです。

「私達の、勝ちだ」

「ああ、負けちまったい。いやぁ、暴れた、暴れたぜい」

全く悔いなどないと言わんばかりに最後の鬼が笑います。

少しやるせない弓兵。

ともあれ、これにて一件落ちゃ、

「げるぎぇぐえ、ぎゅがるげえぐるる!(よくやった猿ども、お陰で我が野望の達成が近づいたぞ!)」

「何?」

「どういうことだ?」

「ぎゅるがぎっぐげえぐ、ぎゅるあぅぐるげ!(知れたこと、たった今からこの世に蔓延る猿どもの殲滅を始めるのよ!)」

突然の裏切り、というか超展開。

戦友と思っていた人(?)物の野望を聞いて犬と猿が愕然とします。

「諦めるつもりは………ないのだな」

ある程度予想していたのか、弓兵は険しい顔で問いかけます。

「ぎゃるぐぐるげぇっげ、えるぐえっくくが―――!(くどい。どうしても止めたいのなら、力づくで止めてみよ―――!)」

三人の勇者が雉の暴挙を止められると信じて―――

ご愛読、ありがとうございました!




「アーチャーさん遅いなぁ………」

「ふぇ、ふぎゃあああ」

「ああっ、ごめんね。起しちゃった?」

めでたしめでたし。









地震怖いですね。
うちは山形なので停電くらいで済みました。
この度亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。


最初は浦島みーこと竜宮マリーちゃんで書いてたんですが、どうもツッコミ役が亀のエスティくらいしかいないので断念。



[25576] 番外編 Fate/EXTRA~もしもサーヴァントがよりどりみどりだったら~
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/04/17 20:08
『そろそろ刻限だ。
君を最後の候補とし、その落選を以って、今回の予選を終了しよう。
―――さらばだ。安らかに消滅したまえ』

………まだだ。まだ、諦めるわけにはいかない。
何も知らないまま死んでしまうなんてごめんだ。
こんなにあっさり死ぬのなら、あの違和感は、あの頭痛は一体何の為にあったというのだ。

『ほう。死の淵に晒されながらもまだ諦めることを良しとはしないか。
よろしい。ならば君のあり方に敬意を表し、最後にして最高のチャンスを与えよう。

龍殺しは生きていた!!! 更なる研鑚を積み真の勇者が甦った!!!
ライオンの騎士!!! ドン・キホーテだァ――――!!!

豪剣は既に儂が完成している!!
長谷部轟希だァ――――!!!

向かってくるなら喰い尽くすまで!!
スサノオの娘 みーこだァッ!!!

人間殺しなら外せない!
南極皇帝 氷の支配者 イワン・トビノフスキー!!!

真の正義を知らしめたい!! 神殿教会 長谷部翔希だァ!!!

聖魔杯は負けたがケンカなら例外なくオレが最強だ!!
カムダニアの復讐鬼 リュータ・サリンジャーだ!!!

打撃対策は完璧だ!! アルハザン アーチェス・アルエンテ!!!

全世界の干渉権は私の中にある!!
天界の天使が来たッ マリアクレセル!!!

タイマンなら絶対に敗けん !!
鬼のケンカ見せたる 地獄の獄卒 ほむら鬼!!!

バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
ミスマルカの毒蛇 マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルトだ!!!

木島連隊から鋼の傭兵が上陸だ!! 千変万化 木島キョウジ!!!

ルールの無い殺戮がしたいから導化猟兵になったのだ!!
プロの剣技を見せてやる!! 白井沙穂!!!

冥土の土産に聖杯とはよく言ったもの!!
達人の奥義が今 実戦でバクハツする!! 神殺しの大御所 名護屋河菊だ―――!!!!

鉄壁の鎧こそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの男がきてくれるとはッッ ハニ悪!!!

願いがあるからここまできたッ キャリア一切不明!!!!
日本のゴルゴ!? 川村ヒデオ!!!

オレは魔法最強ではない存在が最強なのだ!!
御存知ネクロマンサー リッチ!!!

戦いの本質はこの男が知っている!! オレを驚かせる奴はいないのか!!
クーガーだ!!!

デカァァァァァいッ説明不要!!
火龍だ!!!

格闘は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦派の大ベテラン!!
エンジェルセイバーからジョージ・レッドフィールドの登場だ!!!

聖杯は私のもの 邪魔するやつは思いきり殴って打って叩くだけ!!
初代魔王 リップルラップル!!

自分を試しに月へ来たッ!!
マルチタイプ魔導剣士 アークセラ・アイスウィル!!!

双剣に更なる磨きをかけ “光の御子”リーゼル・ファリス・マクラーレンが帰ってきたァ!!!

今の自分に死角はないッッ!! 亡国の姫君 パリエル・カーライゼル!!!

億千万の刃が今ベールを脱ぐ!! ゼピルムから VZだ!!!

ファンの前でならオレはいつでも全盛期だ!!
燃える闘魂 ハオウ 国務を放り出して参戦だ!!

医者の仕事はどーしたッ 狂気の炎 未だ消えずッ!!
治すも壊すも思いのまま!! 葉月の雫だ!!!

特に理由はないッ 魔族が強いのは当たり前!!
臣下には内緒だ!!! 展望階の君!
エルシアが来てくれた―――!!!

西域で磨いた実戦格闘術!
独眼竜 ジェスだ!!!

実戦だったらこの人を外せない!! 超A級暗殺者 エーデルワイスだ!!!

超一流剣士の超一流の決闘だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
帝国の虹剣!! ルナス・ヴィクトーラ・マジスティア!!!

本流はこの娘が完成させた!!
神殺しの切り札!! 名護屋河睡蓮だ!!!

若き王者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ チャンピオンッッ
俺達は君を待っていたッッッ名護屋河鈴蘭の登場だ――――――――ッ!!!

加えて負傷者発生に備え超豪華なリザーバーを3名御用意致しました!
赤き暴君! ネロ・クラウディウス!!
錬鉄の騎士! エミヤシロウ!!
白面金毛九尾の狐! 玉藻前!!

さあッッ 月に招かれしマスターよ! この中から己のパートナーを選ぶがいいッッ!!』

「………」

へんじがない。ただのしかばねのようだ。





俺は一体何がしたいんだ



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第十九話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/04/18 12:09
『ッ……く。はは……はははははっ! それでいいんだ、鈴蘭……』

何かをやり遂げた、満足そうな顔で男が笑った。
狐耳の少女が、血塗れの男へと今にも泣き出しそうな顔で縋りつく。
呼吸が上手くできない。腕の震えが止まらない。視界がぐるぐると回っている。
自分は奪ってしまったのだ。この手で、男に突き刺さった剣で。
少女にとって、最も大切で大好きな人の命を奪ってしまったのだ。

『どう……して……』

だから問うた。
男だって知らない筈はない。自分が少女にとってどういう存在なのかを。

『どうしてですかっ!! クーガーさん……どうして……』

知っていながら、男は笑っていた。
その表情の、なんと晴れやかなことか。

『これで、最後だ……約束どおり……俺を信じちゃくれねえか……聞いてやってくれねえか……この世界の、仕組みってやつを……』

『……世界の……仕組み……?』

男の口から紡がれる、カミサマの狂った計画。
ここで男を殺さなければ、今まで人類が築き上げてきた全てが終わってしまうと。
そのふざけた計画を打ち砕けと。そんな笑えない茶番劇を止めてくれと。
男の願いは、ただそれだけだった。
ただ自分に、その話をするためだけに、あっさりと自らの命を賭けたのだ。

『俺に信じさせてくれ……今度は、あんたが騙す番だってことを……。
“円卓”も、“天”も、あんたが出し抜くんだ……あんたが、“人”の意地を見せてやるんだ!!』

『はいッ……』

短剣を受け取る。意地を受け取る。強さを受け取る。
全部、全部持っていく。この世界が憎くて堪らないたった一人の革命家を、少しでも身軽にしてやるために。

『さよならッ……!!』

渡された短剣を、彼の胸に突き立てる。
もう二度と、こんな世界には戻ってこれぬように。

『二人とも……いい女……に……』

清々しい笑顔が、力なく消えていく。
男はもう語らない。語れない。
咥えていた煙草が落ちて行くのをやけにゆっくりと感じながら、泣いた。
止まらない涙を無理矢理ぐいと拭い去り、紅く染まっているだろう彼と同じ瞳に誓いを立てる。
思い知らせてやる。
彼を人形のように遊び倒したカミに、彼の想いがどれほどのものだったのかを。
彼をないがしろにしたことが、どれほど愚かだったのかを自分が思い知らせてやる……!!








「……今のは……夢……?」

鶏すらまだ寝ている早朝。地平線の彼方がようやく白んでいる気がするような時間。
不思議な夢を見た。
まるで誰かの記憶を追体験したような、そんな夢。
そして、その『誰か』は自分の知る人物だった。

「あれは……鈴蘭、か……?」

見たこともない大草原。天まで届きそうな巨大な門。
そして―――血塗れの、男。
男を殺すしかなかった鈴蘭は泣いていた。
何故、自分はあんな夢を見たのだろうか。
鈴蘭が登場するだけならまだ解る。
だが、自分の全く知らない場所が舞台で、自分の全く知らない登場人物が現れるというのは夢として普通なのだろうか?




「たぶん、それは鈴蘭の過去なんでしょうね。マスターとサーヴァントは魔術的に繋がっているから。
きっとそれを伝って士郎は鈴蘭の記憶を垣間見たのよ」

今朝見た夢のことを凛に尋ねると、そんな答えが返ってきた。
魔力を受け渡すラインは未だに繋がっていないらしいが……それとは違う別の繋がりなのだろうか。

(乙女のメモリアルを勝手に見るなんて……。士郎君のエッチ★)

(乙女は肉弾戦なんてしないと思)

(あ?)

(すいませんなんでもありません)

魔力の無駄な消費を抑えるため、鈴蘭は現在霊体化中だ。
アーチャーも高所から監視に務めているらしく、同じく姿は見えない。

「それにしても……一体何時の間にここまで増えたんだ?」

ペラリと通帳を捲る。
昨日まではほぼ倍だった金額は、既に約5倍にまで膨れ上がっていた。
アクションを起こさなくてもと鈴蘭は言っていたが、これはちょっと増えすぎではないだろうか。なんかまだ増えてるみたいだし。

「資金は立派な戦力よ。あるに越したことはないわ」

「せめて眼のドルマークをどうにかしてから言ってくれないか」

まあそんなわけで。
今日は凛の宝石を調達しに新都まで繰り出したのである。




「あ、ありがとうございました……ッッ」

全ての店員に最敬礼で見送られ、凛はほくほく、士郎はどこか居心地悪そうに店を出る。
流石に買った量が量だけに郵送を提案されたのだが、聖杯戦争中であることを考えればそれは悪手でしかない。死んだあとで武器が届いても遅いのだ。
合流させられたアーチャーと士郎にどっさりと紙袋を持たせ、いまにもスキップでも踏み出しそうなほどに上機嫌な凛。

「夢じゃないわよね、コレ。今まで私が使い捨てにしてきた宝石より絶対多いわ。
ああ、これだけあればもしかしたら戦争中に宝石剣とか造れるんじゃないかしら」

手提げ袋から宝石の一つを取り出し、太陽に翳すようにしてうっとりと眺める。

「遠坂、その宝石剣ってのはなんなんだ?」

「ああ、それはね……―――ッッ!!」

振り返った凛の、御満悦な顔がピシリと凍りつく。
アーチャーがゆっくりと凛の前へと歩み寄り、それを陰にするようにして鈴蘭が実体化する。

「こんにちは。お兄ちゃん」

白い妖精が、そこにいた。







登場させても良かったんだろうか。というかこの時点で夢って見れたっけ。
アニメと漫画しか知らないのに書くもんじゃないですね。
修正&文章水増ししようと思ったけど、駄文すぎて逆にどこを直せばいいのか分からなくなっちまったZE★


おまけ19
【CLASS】アサシン
【マスター】
【真名】マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト
【身長】高校生くらい
【体重】同上
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++(E) 幸運B 宝具B
【クラス別スキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【固有スキル】
芸術審美:B
芸術作品、美術品への深い造詣。
芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、高い確率で真名を看破することができる。
擬態:A
身分の詐称。
一般人として振る舞う事ができる。
弁論:A
言葉によって相手の精神を操作する能力。
一言で相手を逆上させることができる。
【宝具】
『駆け抜ける自由の象徴(ゼンラーマンZ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:― 最大補足:1人
敵軍犇めく要塞から無傷で生還した逸話の具現。
耐久をE-ランクにまで落とすことで、自分に降りかかるあらゆる攻撃、災難、事象を回避する。
顔に装着された仮面を剥がすか、股間を強打することで解除できる。

能力面だけ見ると悪ノ娘みたいだ。



[25576] リリーさんの聖杯戦争 第二十話
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/06/03 22:07
英雄とは何ぞや。
曰く、それは究極の善と悪。

英雄とは何ぞや
曰く、それは人々の願いの結晶。

英雄とは何ぞや。
曰く、それは……不可能への挑戦者である。





「かはっ」

ぐらりと、少女の身体が崩れ落ちる。
重力に引かれながら落下する従者を、咄嗟に伸ばした両腕で抱きとめる。

「鈴蘭!? しっかりしろ、傷は浅いぞ!」

「し……し……ろ……」

紅い雫が、彼女の口の端から零れ落ちた。
有り得ない、ありえない、アリエナイ―――!
士郎の思考が真っ白に染まる。
凄まじい格闘術の使い手であり、これまで誰を相手にしても決して屈さず、さらに言えば未だ切り札を隠し持っている筈の鈴蘭が―――初めて力なく膝を付いている。
敵は、それほどまでに強大だというのか……?

「止められたのに……止められた筈なのに! 俺はっ……!!」

後悔は先に立たぬ。
例えようもない罪悪感が、弓兵の心を責め立てる。
行き先の定まらない激情の捌け口にでもするように、固く握った拳をそのまま地面へと打ちつけた。

「立ちなさいバーサーカー! この程度の試練、軽々と乗り越えてこその英雄でしょう!?」

「■■、■■■■■ッッ!!」

同じく苦悶の表情を浮かべていた狂戦士。だが、幼い主の檄によって再びその眼に焔を宿す。
勇者は、絶望を粉砕し続けた大英雄は決して倒れない。
任せておけと言わんばかりに吼え立てるその様は、まるで傷ついて尚気高さを忘れぬ百獣の王を思わせる。

「士郎、諦めなさい。戦いには勝たなければいけないものと、逃げてもいいものがあるの。今のこれは間違いなく後者よ」

諭すように、憐れむように凛が語りかける。
彼我の戦力差は如何ともしがたい。
既に鈴蘭は満身創痍、アーチャーに至っては戦意すら持ち合わせてはいない。

「鈴蘭を見捨てろって言うのか……!?」

「その鈴蘭が望んだ事よ、責任は彼女にあるわ」

阿鼻叫喚の地獄絵図、覆せない逆境。
そんな光景を愉悦のままに、しかし僅かに寂しさを含ませて見下ろす男が一人。

「ふむ、セイバーの代理として呼ばれたイレギュラー……どんなものかと思っていたが。
やはりと言うべきか、これを受け入れることは出来なかったようだな。実に残念だ」

この惨劇の主催者にして、言峰教会に住まう神父、言峰綺礼。
そして、名立たる英雄である彼らを苦しめている悪夢。その名を――――――

『この世全ての辛味(アンリ・マーボー)』と、人は呼んだ。




数十分前、街中にて。

「な……イリヤスフィール!?」

「イリヤでいいよ、お兄ちゃん」

振り向いた先に居たのは、愛らしい無邪気な笑みを浮かべる銀髪の乙女と、彼女に付き従うように控える二人のメイド。
その内一人は汚物でも見るかのようにキツイ視線で士郎を睨みつけ、もう片方はどこか焦点の合わないぼんやりとした表情だ。
反射的に否応なく脳裏に思い浮かぶ鈍色の巨人の姿。足は地面に縫いつけられたかのようにピクリともせず、尋常でない汗がまるで滝の如く溢れ出る。
アーチャーの陰から出てきた鈴蘭が、そんな士郎を護るように間へと滑り込む。

「……何の用かしら、アインツベルン。まさかとは思うけど、ここで戦闘をしようってつもりじゃないわよね」

眉間に皺を寄せ、凛が問う。両の指にはいつの間にか宝石を挟み、臨戦態勢を維持している。

「真っ昼間からそんなことするワケないじゃない。それに、別に用なんてないわ。
ここで会ったのはただの偶然よ、今日はお買い物に来ただけなんだから」

……。
…………。
………………。

「は? 買い物?」

「いっぱいかった」

意外すぎる返答に、一瞬自分の耳がおかしくなったかと錯覚に陥るが。
まあ、彼女等だって生きている訳であるし。兵糧の貯蓄に励んだとて何ら不思議なことではあるまい。
ぼんやりとした方のメイドが、どことなく誇らしげに手に持った買い物袋を掲げてみせる。
袋の口から見える人参、玉ねぎ、ジャガイモ……カレーかシチューの材料だろうか。

「肉じゃがよ」

その発想はなかった。

「……イリヤ、君に話がある。何で君みたいな子供が、この戦いに参加して」

くきゅるるるるる。
士郎の言葉を遮って、なにやら非常に可愛らしい音色が辺りに鳴り響く。
音源はイリヤだ。澄ました顔が一転、真っ赤に染まった羞恥の表情に変貌する。
ひゅるりらと寒々しい風が、一同を嘲笑いながら通り過ぎて行った。

「……ふむ。腹が減ってはなんとやら、という諺もある。ここは一つ、お互い一時休戦し、会食など試みてはどうかね?
何より会話の内容も往来で垂れ流すべきものではないしな」

「場所を移すのは良いとして、会食とか何言ってんのよこのバカ執事。
これから殺し合う相手と慣れ合う趣味なんて持ち合わせてないわ」

「アーチャーの案に賛成の人ー」

なじる凛を無視して、学生みたいなノリで鈴蘭が決を取る。
手を挙げたのは鈴蘭、士郎、イリヤ、ぼんやりメイドと、言い出しっぺのアーチャーの五名。

「はい、というわけで五対二の賛成多数によってめでたく皆でお食事が可決されました」

民主主義に見せ掛けた専制君主である。
もはや完全に場の支配者となった鈴蘭。いつの世も流れを掌握した者には誰も逆らえないのである。
カリスマスキル恐るべし。
凛はもうどうにでもなれと諦めている。

「お嬢様……お言葉ですが。そこに立つはお嬢様の憎き怨敵の筈。
トオサカに同調するわけではありませんが、何故あの者と友好を深める真似などなさるのですか」

「私はお兄ちゃんのことがもっと知りたいの。セラは黙っていて」

メイドの諫言を、子供のわがままで捩じ伏せる。
まだ何か言いたそうな表情のメイドだが、主の命に従順なのか大人しく引き下がった。
……依然士郎を睨みつけてはいるが。

「それで、どこでお食事するの? お兄ちゃん」

「え、俺が決めるのか? ええっと……それじゃあ」

「あ、なんか美味しそうな匂い! ねえあそこにしよ!」

「前から思ってたけど自由すぎるぞ鈴蘭」

だからと言って押さえつけられる自信など微塵もないが。
そんな鈴蘭が指し示す店の看板には『泰山』、と記されていた。




何故か入店を渋る紅い主従を引っ張って扉を開け放つ。

「ほう、これはまた珍しいところで逢うものだな。その上中々に面白い組み合わせではないか」

がらばっしゃーん。

中にいた人物を確認するや否や、アーチャーが全員を店の外へと押し出し、凛が扉を破壊しかねない速度で叩きつけた。
無駄に息の合った連携に感涙を禁じ得ない。

「遠坂、今のって」

「他の店にしましょうそうしましょうほらあっちのお店とかとっても美味しそう!」

「全くもって同感だ! なんなら私自ら腕を奮っても一向に構わ」

「やれやれ、いつも以上に余裕がないな。『常に優雅たれ』の家訓はどうしたというのだ?遠坂の名が泣くぞ」

窘めるような口調で、店内にいた客が出てくる。
ゆったりとしたカソックに身を包み、首からはシンプルなデザインの十字架を下げた男。

「……誰?」

この中で唯一面識のない鈴蘭が士郎に小声で尋ねるが。

「ふむ、君が凛の言っていたイレギュラーか。こうして会うのは初めてだな。
私は言峰綺礼、この聖杯戦争で監督役を務める神父だ。以後よろしく」

「そんなことはどうでもいいのよ! 何で! あんたが! このタイミングで現れるのよ!」

「昼食を摂るのに何故許可を求めねばならんのだ。まあ何故というならば、ここの麻婆豆腐が唸るほどに絶品であることが理由だが」

「ふうん、そんなに美味しいの?」

イリヤの素朴な疑問に、我が意を得たりと嗤う神父。

「左様。とりわけ私が店主に特注で作らせた特注の麻婆などはもはや……筆舌に尽くせぬ味わいだ。
あれほどの味覚はそうそうあるものではないだろうな」

うっとりと麻婆について語る綺礼。まるで恋人の惚気話でもしているかのような恍惚っぷりに思わず少し引いた。
……何故か凛とアーチャーが青ざめた顔でカタカタと震えている。寒いのだろうか?

「じゃあ、それにしよう! すいませーん麻婆くださーい!」

その後の展開は、まあ言うまでもないだろう。
鈴蘭の無謀とも言える注文によって降臨した、マグマかと見紛う程にぐつぐつと煮えたぎる麻婆。
必死で止める凛とアーチャーだったが、もとより彼女は悪のカリスマ。むしろ火に油を注ぐ行為だった。
そして対抗心でも燃やしたのか、イリヤが(護衛として付いてきていた)バーサーカーを召喚。
こうして、聖杯戦争よりもさらに過酷と呼ばれる麻婆戦争は幕を開けた。

「辛いよぅ……辛すぎだよぅ……」

自業自得である。





シリアスなんて書けないよ。


おまけ20
【CLASS】セイバー
【マスター】
【真名】リシャール・イアン・ラーズグリュン
【性別】男性
【身長】高い
【体重】それなり
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力B+ 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではリシャールに傷をつけられない。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【固有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
矢避けの加護:B
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
奇襲:A
一時的に単独行動スキルを取得し、相手を襲撃することが可能。
Aランクならば、例え相手が“神殿”内に潜んでいたとしても攻撃が可能である。
【宝具】
『獅子王の誇りは民草の為に(ライオンハート)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:1人
祖国と民を護ると決めた王子の誓い。
アビスゲージ、ロメオジュリエッタなどと並ぶ名剣。
マスターの命が危機に晒されたとき、叩き折ることでマスターを護る救命宝具である。


出来れば今後も出てきて欲しいキャラ



[25576] 番外編 殺戮症候群(ジェノサイドシンドローム)
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/10/19 15:50
雨生龍之介は孤独である。
天涯孤独という意味でもあるが、それを無視しても孤独である理由を挙げるとするならば、やはり彼の性癖に依るところが大半を占めるだろう。

雨生龍之介は快楽殺人鬼である。
彼が自らの本質に関して初めて自覚したのは小学生の頃、誤って飼い猫だった三毛猫を押し潰してしまったことからだ。

めりめり、ぱきぱきと己の皮膚を通して伝わる骨が砕けていく感触。
他の猫と比べると無口だった三毛猫が、おそらくは生まれて初めて絶叫したであろう悲鳴。
その二つを感じ取った時の表現することすら出来ぬ暗い感動を、龍之介は目を閉じるだけで何時でも色褪せることなく思い出す事が出来る。

そしてその日から、龍之介は命の虜になった。

毎日毎日、家の庭に作られたお世辞にも豪華とは言えない猫の墓を撫で、その時の感触を思い出すのが少年時代の彼の日課だった。
中学に上がる頃、流石に両親も自分達の息子の行動がどこか異常なのではないかと感じ始めた。

自分の不注意ゆえ死なせてしまった、大好きな三毛猫。死を悼み続け、懺悔し続ける心に傷を負った少年。

傍から見てそのような印象しか受け取れなかった両親は、感受性豊かな息子の内面を改善するため様々な手段を試みた。
読書、映画、ゲーム、スポーツ……。
そうした試行錯誤の果てに龍之介が興味を示したものがB級映画―――中でもいわゆるスプラッタに分類されるジャンルだった。

映画の中で活躍する彼らに龍之介は夢中になった。
舞い散る血飛沫。溢れる脳漿。轟く悲鳴。
彼の脳裏に猫の断末魔が蘇えるのはむしろ当然であり、ダイニングに置きっぱなしにされていた果物ナイフに目が行くのはもはや必然ですらであった。

龍之介の興奮は止まらない。
震える手でナイフを握りしめ、鼻息はまるで絶世の美女を目の前にした童貞のように荒々しく繰り返される。
夕食の支度をしている母の背後に音もなく忍び寄り、その女性らしいか細い首に腕を回し。

ナイフを走らせた。

噴水の如く吹き出す温かな血潮を浴び、その時初めて龍之介は射精した。
もともと壊れかけていた彼は、この瞬間人として完全に壊れ切ったのだ。
呼吸困難に陥りそうなほどに自分でも驚くくらいに笑いが止まらず、もう動かない母の四肢を滅多刺しにし続けた。
やがて帰ってくる父の姿をニタニタと思い浮かべながら。




そんな生粋の殺人鬼である雨生龍之介にも悩みがあった。
スランプである。
これまでの彼は胸の裡から湧きおこる衝動のままにナイフを突き立て、金槌を振るい、鋸で両断してきた。
男も女も子供も老人も国籍も宗教も職業も関係なく殺してきた。その数は既に両手両足の指を倍にしても足りはしない。
しかし、衝動のままに、情欲のままに殺し続けるのではいずれ飽きが来る。
なので、今回の殺しは少しだけ凝ったものにしようと龍之介は思い立った。

「ふんふふふーん♪」

巷で流行っているらしいどこかで聞いた歌を口ずさみ、バケツに並々と注がれた大量の血をペンキのように刷毛を使ってぺたぺたと床に塗りたくっていく。
描いているのは良く分からない本で読んだ悪魔の召喚魔法陣。供物として用意するのは七つの子供の死体
龍之介は人格破綻者ではあるがオカルトの類は信じてなどいない。精々本当に出てきたらすげえ、程度の認識だ。

全ては偶然である。
龍之介の体内には嘗て野に下った魔術師の忘れ形見である魔術回路があり。
今年が六十年周期で行われる聖杯戦争の該当期間であり。
彼が描いた魔法陣がサーヴァントを呼び出す為のものであり。
かくして数多くの偶然の歯車が噛みあい、空前絶後のイレギュラーが降臨する。

「サーヴァント・マーダー。呼ばれたんで来てやったぜ、お前さんが俺のマスターか?」

嵐の如き暴風が巻き起こり、自分の身体から大量の何かが一方的に奪われるのを感じて思わず倒れてしまった龍之介に掛けられた言葉。
現れたのは偉丈夫。
白い衣に包まれて尚隠しきれぬ頑丈そうな体驅。若干ニヤついた無精ひげの目立つ顔は、ただただ精悍で訳もなく頼もしさを覚える。

「は………はは………」

笑うしかなかった。
殺戮の限りを尽くしてきた龍之介だからこそ気付けた、男の体から香水のように立ち上る血の匂い。
間違いない。この男は自分よりもずっとずっと昔から、ずっとずっと殺し続けてきたのだ。
龍之介は確信する。この男こそ、自分が目指すモノの正体であり、自分が崇めるべき存在なのだと。

「おい、聞こえてんのか?」

痺れを切らしたらしい男がしゃがみ込んで視線を合わせる。
顔がぐっと近づき、龍之介の思考が熱に浮かされたように高ぶっていく。

「すげえ………すげえすげえすげえすげえすげえすげえええええええええええええッ!! 最高だ! すげえよアンタ! 最ッ高にCOOLだ!!」

「………こりゃはずれか?」

念願の玩具を手に入れた子供のようにはしゃぐ龍之介を見て、初対面にしては大分失礼な発言を零すが、大興奮の彼の耳には届かない。

「まあいいさ。ところで坊主、お前の名前はなんだ?」

「龍之介っす! 雨生龍之介! で、旦那の名前は!?」

「俺か。俺の名前は―――」






こわいこわーい、クーガーおじさんだ







長らく放置してしまい申し訳ありません。
現在リハビリ中です。



[25576] おまけ一覧
Name: ドゥラえもん◆642761c9 ID:50a8ecd0
Date: 2011/06/23 14:22
プロローグ
【CLASS】ファイター
【称号】聖魔王
【真名】名護屋河 鈴蘭
【性別】女性
【身長】女子高生くらい
【体重】血で汚れていて読めない
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷B+ 魔力A+++ 幸運A 宝具???
【クラス別スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では鈴蘭に傷をつけられない。
【固有スキル】
黄金律(偽):A
他人から金品を巻き上げる能力。
国家予算だろうが思いのまま。
カリスマ:EX
神々すら魅了する求心力。
ただしあくまで人間としての魅力であって女性としての魅力ではない。
本流:B
とある神を殺す為に受け継がれてきた浄化の業火。
正統後継者ではないため十全には使えないが、神性を持つものにとっては十分脅威的と言える。
【宝具】
???

第一話
【CLASS】セイバー
【称号】エロ勇者
【真名】長谷部 翔希
【性別】男性
【身長】高い
【体重】細マッチョ
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運E- 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:A+
騎乗の才能
バイクを手足の如く操り、超人的な走りが可能。
生物に乗れるかは不明。
【固有スキル】
直感:B
常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
無窮の武練:A
ひとつの時代で(純粋な人間に対して)無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
豪剣:―
とある神を殺す為に受け継がれてきた剣技。
しかし我流で剣を学んだため持っていない。
仮に持っていたならば、神性を持つ相手に対して天敵と言える程のアドバンテージを得る。
【宝具】
『黒の剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
折れず、曲がらず、揺るがない鋼の信念を持つ者のみが振るうことを許された聖剣。
かつて神の系譜である鬼に対して振るわれ、以後翔希の愛剣となる。
防御不能の斬撃を放ち、翔希の耐久を1ランクアップさせる。


第二話
【CLASS】アサシン
【称号】クーガーおじさん
【真名】クーガー
【性別】男性
【身長】デカい
【体重】ゴリマッチョ
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具A++
【クラス別スキル】
気配遮断:―
宝具による影響で失われている。
【固有スキル】
神性:E
視姦魔人の使徒。
本人はあまり好ましく思っていない。
魔眼:A+
視姦魔人の使徒になったことで得た疑似的な視覚。
究極の気配察知。クーガーに対して隠れるという行為は意味を成さない。
心眼(真):B
修行・鍛錬で培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を見出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
【宝具】
『クーガーおじさん(キリング・クーガー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
悪役を演じ続けた男の人生の具現。
クーガーの姿を直視した者に恐怖心を与え、一定時間硬直させる。
魔力によるものではないため、無効化するには対魔力ではなく同ランク以上の精神防御スキルが必要。

『エーテル結晶』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
葉月の雫が生み出した宝具の中でも傑作と呼ばれる神造兵装。
斬り裂いた対象の魔力を“殺す”
『エーテル結晶』によって付けられた傷はいかなる治癒魔術、再生能力をもってしても『傷を負った状態』にまでしか回復することができない。
ディスペルは不可能で、呪いを破棄するには『エーテル結晶』を破壊するか、使い手であるクーガーを滅ぼすしかない。


第三話
【CLASS】キャスター
【称号】聖人
【真名】アーチェス・アルエンテ
【性別】男性
【身長】高い?
【体重】成人男性くらい?
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運C 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:B
魔術師として自分に有利な陣地を作り上げる。
“砦”の形成が可能。
道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
【固有スキル】
暗黒神の加護:A+++
闇の最高神の加護。
幸運を1ランクダウンさせる代わりにあらゆる精神干渉を無効化する。
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で一国の王としてはBランクで十分と言える。
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、
逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
召喚:A+
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
入念な準備があれば神霊クラスの召喚さえ可能だが、
扱えるかどうかは別問題。
【宝具】
『千切れぬ蜘蛛の絆(アルハザン)』
ランク:EX 種別:固有結界 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
世界で最も愛しき家族。
かつて駆けた城塞都市を展開し、アーチェスに生前仕えた部下達をサーヴァントとして現界させる。
召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の『単独行動』スキルを保有し、
最大30ターンに及ぶ現界が可能。


第四話
【CLASS】バーサーカー
【称号】ラメ入りペ○シマン
【真名】アラン・マクレガー
【性別】男……性?
【身長】伸縮自在?
【体重】不明
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力A+ 耐久E 敏捷A+++ 魔力C 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
【固有スキル】
戦闘続行:A
生還能力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
矢避けの加護:B
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
現在狂化しているので、能力を発揮できない。
【宝具】
『神速連打(セギホノ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ1~50 最大捕捉:1~50人
秒間2万発もの打撃を繰り出す、宝具の域にまで高められた技。
全方位から放たれる拳を防ぐことは不可能である。

『無限再生(アヴェスタ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
全身に散らばった65536個のコアのマイクロ秒単位の相位互換の再生速度による、驚異的な再生能力。
仮に刀剣類で打ち破るのであれば、およそ6千発の斬撃を『ほぼ同時に』食らわせなければならない。


第五話
【CLASS】キャスター
【称号】先読みの魔女
【真名】セリアーナ・ヴァーゼンシュタイン
【性別】女性
【身長】中学生くらい
【体重】内緒なんですーっ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力A+ 幸運A 宝具A
【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。
【固有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
言語理解:B
獣でありながら人語を理解し、話すことが出来る。
本来の姿は獣であるため動物達の言葉も当然のように理解できる。
妖術:A+
極めて高度な妖術の使い手であり、特に魅了、変化等の妖術を得意とする。
限定的だが世界に働きかける事も可能である。
【宝具】
『八尾供養』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
己の尻尾を首級代わりに差し出した逸話の具現。
尻尾を命に見立て、切断することで死を免れる。
実質7回分の命のストックがある。ストックの補充はできない。

『憑依・凶ツ星』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
破滅を招く災厄の具現。
相手に張り付くことで発動。
発動中は自身にBランク相当の気配遮断が自動的に付与され、相手の幸運をE-ランクにまで落とし、戦意を含めたあらゆる気力を喪失させる。
また、伝染病のように効果が広がるため、対軍宝具としての側面を秘める。
憑依に成功すると、ある程度の精神操作が可能。


第六話
【CLASS】ブレイバー
【称号】勇者
【真名】アロンソ・キハーナ
【性別】男性
【身長】不明
【体重】不明
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX
【クラス別スキル】
正義の心:EX
ただの人間が辿り着いた無我の境地。
悪の属性を持つ相手に対して有利な補正が掛かる。
彼の眼から逃れられる悪など存在しない。
【固有スキル】
勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『誰も知らない英雄(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
隔離世に潜む火龍を追い払った逸話の具現。
龍の因子、悪の属性を持つ者が相手である場合、お互いのステータスを入れ替える。

『不屈なる者の武勇伝(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
如何なる強敵を前にしても退くことがなかった伝承の具現。
例え心臓を貫かれようとも、相手を打倒するまで絶命しない。


第七話
【CLASS】キャスター
【称号】魔眼王
【真名】川村 英雄
【性別】男性
【身長】ひょろい
【体重】モヤシ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運EX 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:E
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な“結界”の形成が可能。
道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
【固有スキル】
直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
召喚:EX
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
祈るだけで神霊クラスの召喚が可能であり、
さらに使い魔として使役(?)することが可能。
電子・聖銀・闇の神霊と契約している。
銃の神霊も呼べる?
【宝具】
『億千万の電脳(スカイネット)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
電子の神霊が持つ人類の叡智の結晶。
電脳版無限の剣製とでも言うべき宝具。
だが生み出せるものは刀剣類だけではなく、およそ人類が記憶してきた全てが創造できる。
認識さえしていれば“月”の掌握も可能、かもしれない。

『麗しき聖銀の乙女(エリーゼ・ミスリライト)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
聖銀の神霊が持つ対魔の金属。
自在に形を変える金属は武器にも盾にもなる。
魔獣、怪物、悪の属性を持つ者に対して必ず先制攻撃できる。

『億千万の闇(ロソ・ノアレ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
闇の神霊の完全召喚。
三千世界に亘って存在するあらゆる意味での闇であり、乖離剣によって切り裂かれた世界そのもの。
数ある神の中でも最古にして最強たる存在。闇の属性を持つ聖杯と言える。

『魔眼王の脚本』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
弱者のまま覇者となった逸話の具現。
自らのステータスを相手が第一印象で感じたままに偽装する。
見破ることは不可能であり、対峙する相手にとっては無双の戦士として映る。
だが、実際にステータスが変動しているわけではない。

『ああ素晴らしきこの世界(ヒキニパ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
闇の最高神さえ退ける精神異常。
発動すると自身にAランク相当の精神汚染が付与され、
この状態で会話した人物にCランク相当の精神汚染を付与する。回避するには英雄を論破するしかない。


第八話
【CLASS】アーチャー
【称号】神殺しの巫女
【真名】名護屋河 睡蓮
【性別】女性
【身長】鈴蘭と同じくらい
【体重】黒コゲで読めない
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運B 宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
【固有スキル】
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
本流:A+++
とある神を殺す為に受け継がれてきた浄化の業火。
ここまで来るともはや術者自体が対神宝具の域である。
【宝具】
『炎獄、綿貫き』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
名護屋河の家系に伝わる本流の奥義。
空間を貫き、万象を照らす天照の御前へと罪人を招く究極の浄化。
“第二魔法”に通ずる神殺しの秘技である。


第九話
【CLASS】ライダー
【称号】蛇目シャギー
【真名】マニホルド・エスティ
【性別】男性
【身長】多分高い
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運C 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【固有スキル】
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
神性:C
千手観音菩薩の使徒。
末端ではあるが、アウターとして認められている。
【宝具】
『見えざる手(多管手構造)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
千手観音菩薩の元で会得した蓮華王の御業。
次元の異なる場所から相手に干渉し、一方的な攻撃を可能とする。
伸ばす手とは痛覚を共有しており、傷つけられればダメージを受ける。

『地獄の門を開くもの(ヘルズゲート・アタッカー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
かつてエスティと共に戦場を駆け抜けた戦闘艦。
超電磁鈴蘭を始めとした多彩な武装を施されている。
なお、本来の使用法とは異なるが最も威力の高い攻撃方法は“火船”である。


第十話
【CLASS】バーサーカー
【称号】軍曹
【真名】白井 沙穂
【性別】女性
【身長】女子高生くらい
【体重】同上
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具B
【クラス別スキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
はずなのだが固有スキルによる影響なのか会話が出来る。
しかし会話が成り立つとは限らない。
【固有スキル】
精神汚染:B
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。
生前受けた改造によって1ランクダウンしている。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
魔眼:B
霊視能力。
同ランクの気配遮断を無効化する。
【宝具】
『今月今夜』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
とある神を殺す為に長谷部の家系に伝わっていた名剣。
刃が相手を切り裂いたという結果の後に 斬撃を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。
『今月今夜』を回避するには敏捷の高さではなく、『今月今夜』の発動前に運命を逆転させる能力・幸運の高さが重要となる。

『神を切り裂く人類の灯火(レーザー)』
ランク:B 種別:対神宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人
右目に内蔵された人類の叡智の結晶。
剣神を討ったことで神殺しの概念を持つに至った。
出力を調整すれば対軍宝具としても使用可能。


第十一話
【CLASS】アぺイロン
【称号】居澱、超越者
【真名】伊織貴瀬
【性別】男性
【身長】高い
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力A 耐久E 敏捷C 魔力EX 幸運E- 宝具EX
【クラス別スキル】
単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。
狂化:A+
全パラメーターを2ランクアップさせるが、マスターの制御さえ不可能になる。
【固有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
黄金律(偽):B
他人から金品を巻き上げる能力。
人脈を駆使すれば、億万長者も夢ではない。
神性:A+
食欲魔人の使徒であり、視姦魔人によって仕立て上げられた紛い物の神。
新世界を管理するシステム。
邪流:A+++
とある神に押しつけられた呪い。
魔獣、怪物の属性を持つ者に対して絶大な影響力を持つ。
【宝具】
『黒龍(ミッペルテルト)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:1人
最強の幻想種である“龍”
貴瀬に埋め込まれた、あらゆるエネルギーを吸収する特性を持ったスライム。
心臓を貫こうが頭蓋を砕こうが直ぐ様再生するため、事実上殺害不能。
対抗するには同ランクの不死殺しの宝具でなければならない。

【CLASS】ヒロイン
【クラス別スキル】
誘拐:A
ヒロインのお約束。
このランクならば、かなり劇的な誘拐・再会が期待できる。


第十二話
【CLASS】キャスター
【称号】展望階の君
【真名】エルシア
【性別】女性
【身長】女子高生くらい?
【体重】死にたいのね
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷A 魔力A++ 幸運A 宝具B
【クラス別スキル】
陣地作成:―
そんなことは従者の仕事でしょう。
何故私がやらなければいけないの。
道具作成:―
そん(ry
【固有スキル】
魔力放出:A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
いわば魔力によるジェット噴射。
黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。
品格:A
淑女の嗜み。
如何なる状況下に置かれても落ち着いて行動出来る。
【宝具】
『獣の書(666)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
最後の魔王が自らの娘の為に作らせた神造兵装。
古今東西のあらゆる魔術が記されているが、魔導書としての価値はない。
本来の使用法は魔力を籠め、ページ数を唱えることで発動。
後半に向かうほど凶悪な威力を記したページがある。
増幅装置ではなく、所有者の魔力を魔術に変換するフィルターのような宝具。

『幸せ振り撒く愛天使(マジカルプリンセス・トワイライト・エルシアン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
魔法少女のお約束。
認識阻害の概念宝具。
誰にも正体がバレることはない……かもしれない。


第十三話
【CLASS】アサシン
【称号】宮内庁の鬼姫
【真名】長谷部 翔香
【性別】女性
【身長】女性にしては高い
【体重】フルボッコにされました
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具A+++
【クラス別スキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【固有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
宗和の心得:B
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。
豪剣:A+++
とある神を殺す為に受け継がれてきた剣技。
ここまで来るともはや剣士自体が対神宝具の域である。
【宝具】
『袁州虎徹』
ランク:B 種別:対神宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
人を斬り、鬼を斬った忌まわしき魔剣。
神性を持つ者に対し有利な補正が掛かる。
実際には“虎徹”ではなく、虎徹と呼ばれているだけで全くの別物。
しかし、その切れ味は他の追随を許さない。

『豪剣、水無月の時雨』
ランク:A+++ 種別:対神宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
長谷部の家系に伝わる豪剣の奥義。
如何なる防御、回避行動を無効化し、必殺の斬撃で“相手を必ず両断”する。
動作は刀を振り上げ、振り下ろすのみ。


第十四話
【CLASS】ヒーロー
【称号】都市刑事
【真名】柴崎 甲子郎
【性別】男性
【身長】高め
【体重】成人男性くらい
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】
名乗り:A
自らの真名を宣言することで、幸運を除くステータスを1ランクアップ。
このランクならば、判定次第で相手にも名乗らせることが可能。
【固有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
熱血:A
ダメージを受けてもひるまない。
申し訳程度の対魔力もある。
【宝具】
『正義の味方はここにあり(ジャバンスーツ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の鎧。
悪の属性を持つ者が相手である場合、必ず先制攻撃が可能。
打ち破るには、非常に高度なクラッキング能力が要求される。

『悪を駆逐する閃光(ジャバンブラスター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の銃。
1対1の戦闘において、絶対に避けられない光弾。
悪の属性を持つ者が相手である場合、威力が上がる。

『我は悪を否定する(ジャバンソード)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
科学の粋を集めて造られた正義の剣。
相手が犯した罪、不義に応じて威力が増減する。
悪の属性を持つ者が相手である場合、問答無用で威力が最大となる。


第十五話
【CLASS】キャスター
【称号】歌姫
【真名】レミーナ
【性別】女性
【身長】普通
【体重】不明
【属性】中立・悪
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B
【クラス別スキル】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“コンサート会場”の形成が可能。
道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成できる。
楽器程度しか作ることができない。
【固有スキル】
怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
異形:C
背中に収納自在な翼を生やした姿。
空を自由に飛べる他、翼を収納することで水中でも水の抵抗を受けずに活動できる。
呪歌:A
歌を用いた魔術体系。旋律を付けて発することで万物の心に働きかける。
特に人間に対して高い効果を発揮する。
【宝具】
『響き渡る哀の唄(セイレーン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
船を沈める悲劇の歌であり、危機を知らせる悲鳴。
聞いた者の心に干渉し、精神を完全に支配する。
耳を塞ぐ、もしくは精神防御のスキルで抵抗可能。

『勇者を称える応援歌(セイレーン)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
魔眼王との戦いで思い出した音楽への情熱。
聞いた者の全ステータスを1ランクアップさせる。

『歌姫の吐息(セイレーン)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
空気振動による衝撃波。
音程を操作することで特定の場所のみへの攻撃が可能。
歌声の大きさによって威力が変動する。


第十六話
【CLASS】キャスター
【称号】初代魔王
【真名】リップルラップル
【性別】女性(ホムンクルス?)
【身長】幼女
【体重】軽い
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運A 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“神殿”を上回る“大神殿”を形成する事が可能。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成できる。
燃え盛るゴミ専用のゴミ箱を作ることが可能。
【固有スキル】
高速神言:A
呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
大魔術であろうとも一工程(シングルアクション)で起動させられる。
現代人には発音できない神代の言葉を、神託により授かっている。
召喚:EX
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
幻想種である“龍”を召喚し、使役することが可能。
神性:―
元天界最高位の天使。
だが堕天し、更に魔王として君臨した為完全に失われた。
【宝具】
『猛り狂う龍神の檻(ヘブンズゲート)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
最強の幻想種である“龍”を召喚する錫杖。
火龍、怒龍、飛龍、砂龍、水龍、光龍、黒龍の計7体が登録されている。
しかし、黒龍は貴瀬に埋め込まれているため欠番である。

『血塗れの悪魔(トリニティ・オブ・ミズノ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
打つ、殴る、叩くが三位一体となった魔王の凶器。
同時に3つの軌道で相手を襲う不可避の打撃。
一発でも掠ればタコ殴りにされるまで攻撃が止むことはない。


第十七話
【CLASS】キャスター
【称号】不死王、黄金バット
【真名】リッチ
【性別】男性
【身長】不明
【体重】骨
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力C 耐久E 敏捷C 魔力A++ 幸運C 宝具A+++
【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成する事が可能。
道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
【固有スキル】
召喚:A
精霊と契約を結び、その力の一端を行使する能力。
自らが殺した者の魂を呼び出すことができる。
再生:B
肉体再生能力。
たとえバラバラにされても、組み立て直せば復活することができる。
闇の眷属:A
闇に属する者の特性。
時間が夜であれば戦闘能力が上昇する。
高速神言:A
呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
大魔術であろうとも一工程(シングルアクション)で起動させられる。
現代人には発音できない神代の言葉を、神託ではなく努力と才能のみで会得している。
【宝具】
『進撃せよ亡者の軍団』
ランク:A+++ 種別:対軍宝具 レンジ;1~99 最大捕捉:1000人
リッチと戦い、そして飲み干された数多の死霊兵団。
自らの命のストックとしても使用可能であり、この宝具で倒された者は『進撃せよ亡者の軍団』に加えられる。
対抗するには本体であるリッチを倒すか、全ての霊魂を殲滅するしかない。


第十八話
【CLASS】プリースト
【称号】教皇
【真名】甲斐 律子
【身長】成人女性くらい
【体重】おしおきやー
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具A+++
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では律子に傷をつけられない。
信仰の加護:B
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
加護とは言うが、最高存在からの恩恵はない。
あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。
【固有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望と言える。
弁論:A
言葉によって相手の精神を操作する能力。
心から語りかければ、例え一触即発の状態であろうと穏便な話し合いへの移行が可能。
【宝具】
『汝、罪を犯すことなかれ(ミドガルズオルム)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ1~5 最大補足:1人
罪人を討ち据える神罰の鞭。
相手が今までに直接的、間接的に奪ってきた命の数によって威力が変動する。
無実の者には一切のダメージを与えられないが、一人でも殺しているのなら絶対に回避不可能。
十三人以上殺しているのなら、その威力はもはや一撃必殺級である。


第十九話
【CLASS】アサシン
【称号】蛇
【真名】マヒロ・ユキルスニーク・エーデンファルト
【身長】高校生くらい
【体重】同上
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++(E) 幸運B 宝具B
【クラス別スキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【固有スキル】
芸術審美:B
芸術作品、美術品への深い造詣。
芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、高い確率で真名を看破することができる。
擬態:A
身分の詐称。
一般人として振る舞う事ができる。
弁論:A
言葉によって相手の精神を操作する能力。
一言で相手を逆上させることができる。
【宝具】
『駆け抜ける自由の象徴(ゼンラーマンZ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:― 最大補足:1人
敵軍犇めく要塞から無傷で生還した逸話の具現。
耐久をE-ランクにまで落とすことで、自分に降りかかるあらゆる攻撃、災難、事象を回避する。
顔に装着された仮面を剥がすか、股間を強打することで解除できる。


第二十話
【CLASS】セイバー
【称号】獅子心王
【真名】リシャール・イアン・ラーズグリュン
【性別】男性
【身長】高い
【体重】それなり
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力B+ 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではリシャールに傷をつけられない。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【固有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
矢避けの加護:B
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
奇襲:A
一時的に単独行動スキルを取得し、相手を襲撃することが可能。
Aランクならば、例え相手が“神殿”内に潜んでいたとしても攻撃が可能である。
【宝具】
『獅子王の誇りは民草の為に(ライオンハート)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:1人
祖国と民を護ると決めた王子の誓い。
アビスゲージ、ロメオジュリエッタなどと並ぶ名剣。
マスターの命が危機に晒されたとき、叩き折ることでマスターを護る救命宝具である。


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