彼女は其処にいた。
生前において破格の偉業を成し、世界に認められた者達だけが立ち入ることを許された場所。
時間、空間、概念。あらゆる全ての要素から隔絶された聖域―――英霊の座。
其処に彼女はいた。
彼女は王であった。
神々に認められし魔王にして、救済の象徴たる聖女であった。
そんな万能とも言える彼女には叶えたい夢があった。
世界平和。
誰もが幸福を甘受し、誰もが幸福に笑っていられる暖かな世界が欲しかった。
一度はその願いは果たされた。けれど。
力を手放したことで、世界は自分の言うことを聞いてくれなくなった。
ならば再び世界をこの手にせんと開いた戦いでは、自らの弱さを指摘され、盟友たる勇者によって討ち倒された。
………叶えられなかった願いは楔となり、彼女は英霊となった。
そして、遠く離れた彼の地にて。
あらゆる願いを叶える聖杯は、とある少年の従者として―――彼女を選んだ。
衛宮士郎は追い詰められていた。
喉は極度の緊張でからからに乾き、穿たれた筈の心臓はまるで張り裂けんばかりに鳴り響く。
荒い息を止められぬまま、あっさりと圧し折られたポスターを迫りくる蒼い死神に向かってがむしゃらに投げつける。
当然、手榴弾のように爆発するわけでもないそれは、男の振るった槍によって煙を払うよりも容易く弾かれる。
叩きつけられる殺気。身体が自分の物ではないかのように、凍りついて動かない。
「悪いな、坊主。見られたからにゃ確実に死んでもらうしかねえんだ」
身体から吹き出す殺気とは裏腹の、まるで友人に語りかけるような軽口。
だが、その内容は決して軽々しいものではない。
冗談のつもりなどさらさらないのだろう、現に先ほど自分は確かにこの男に殺されたのだから。
自分は、ここで終わるのか。
誰も救えないまま、ここで死ぬのか。
正義の味方になれないまま、ここで死ぬのか。
悔しさが止めどなく溢れる。無力な自分を呪いながら、せめてもの抵抗として目の前の男を射殺さんと睨みつける。
「ハ。魔術師にしちゃ良い目をするじゃねえか。………もしかしたら、お前が7人目だったのかもな」
呟き、男は紅い槍を構える。
今度こそ士郎の息の根を止めるべく、たっぷりと槍の穂先に殺意を乗せて。
だが。まるでその運命を引き裂くように、土蔵の床に刻まれていた術式が眩い閃光を放ち始める。
「バカな、これは―――召喚だと!? まさか本当に7人目だったか!?」
驚愕する男に向かって、溢れ出る光の中から『何か』が飛びかかる。
「くっ!」
男は砲弾の如く突貫する『何か』を槍で弾き、険しい表情のまま凄まじいスピードで土蔵の外へ後退する。
士郎はそんな一連の流れを茫然と眺めていた。
光から出てきた『何か』が振り返る―――人だ。背丈は自分と同じか、少し低いくらいだろうか。
それは少女だった。
光をそのまま閉じ込めたかのような純白のドレスを身に纏っていた。
闇をそのまま塗り固めたかのような漆黒のマントを身に着けていた。
だが、そんな派手な衣装よりも目を引くのはその瞳。
鮮血よりも尚紅いだろうその眼光は、睨まれているわけでもないのに思わず後ずさってしまいそうなほどの威圧感を与えている。
少女は士郎の姿を認めると、二ヤリと口元を歪ませ言葉を放った。
「初めまして。貴方が私のご主人様………で、いいのかな?」
―――運命の物語に、偉大なる王が降臨する。
そんな訳で我らが聖魔王陛下が参戦なさいました。
ええチートです。公式です。ステータスどぞ。
【CLASS】ファイター
【マスター】衛宮 士郎
【真名】名護屋河 鈴蘭
【性別】女性
【身長】女子高生くらい
【体重】血で汚れていて読めない
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷B+ 魔力A+++ 幸運A 宝具???
【クラス別スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では鈴蘭に傷をつけられない。
【固有スキル】
???
【宝具】
???
セイバーと呼ぶには得物がちっさ過ぎるんじゃないかなと思いイレギュラークラスになって頂きました。もともと鈴蘭のじゃないし。
鈴蘭はたぁくん狙いだと思ったんだけどなー
ああ、挑戦的な笑みを浮かべながら翔香さんと睨み合う鈴蘭が見たい