2011年03月14日 (月)

避難生活で気をつけることは?

東北関東大震災を受けて、多くの方が避難所での生活を余儀なくされています。

避難所での生活は特に高齢者にとって過酷なものとなります。災害時の看護の専門家である兵庫県立大学看護学部の松岡千代准教授の研究チームは、阪神・淡路大震災の教訓を生かして以下のようなパンフレットを作成しています。

このパンフレットはインターネットでも公開するとのことですが、避難所で過ごしている多くの高齢者のケアは一刻を争う事態ですので、松岡准教授のご許可をいただき、内容を転載させていただくことにしました。多くの人に読んでいただきたいと思います。

快くご許可いただきました兵庫県立大学の松岡千代准教授に御礼申し上げます。

 

被災後に避難所で生活される高齢者とご家族の方へ

災害からの復興に向けて

―避難所での健康と生活―

 

兵庫県立大学大学院看護学研究科

21世紀COEプログラム

 

高齢者の皆様にとって、避難所での生活は、様々な不自由がある一方、周囲への気兼ねや遠慮から、我慢をしてしまいがちになります。さらに災害後の疲労やストレスが重なることで、健康を損ないやすくなります。

このリーフレットは避難所で起こりやすい健康上・生活上の問題と、その対処方法をまとめました。災害からの復興に向けて、このリーフレットを役立てていただければ幸いです。

 

パンフレットは以下のアドレスからもご覧いただけます。

http://www.coe-cnas.jp/group_senior/manual/pdf/senior_hinanjyo.pdf

また上部サイトでも詳しく解説されています。
http://www.coe-cnas.jp/

 

◆食事について◆

・普段と同じぐらいの量

・栄養があって食べやすいもの

(バナナ、栄養補助ゼリーなど)

・タンパク質(魚や豆など:缶詰・レトルトでよい)

を食べましょう

・食事の量が多すぎるときは無理に食べない

※食欲がないときは、梅干し・のり・漬け物などを差し入れてもらいましょう

注意!

・食欲がない、やせた、下痢が続く

・入れ歯の具合がわるい

・治療食(糖尿病食、腎臓食など)を食べている

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

 

◆トイレについて◆

・普段と同じくらい水分をとりましょう

・トイレを我慢しないようにしましょう

(尿パットは、もしもの時に安心です)

・便秘予防のため、できるだけ身体を動かしたり、野菜・果物類があれば積極的に食べましょう

注意!

・尿や便の量、色が普段とちがう

・からだがだるい、口や肌が普段より乾燥する

・何も考えたくない、ボーッとする

・足や顔などがむくむ

・お腹がはる、おならばかり出る

・トイレまで行くのが困難、トイレが使いにくい

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

 

◆からだの清潔と感染予防◆

・手洗いや手の消毒剤で手を清潔に!

・うがいをこまめにしましょう

・歯磨き、入れ歯の手入れを朝・晩する

※口の洗浄液は有効です

・「おしも」はできるだけ毎日ふく

※ぬれティッシュ、おしりふきを利用しましょう

・普段からマスクをする

・一人で着替えや身体が拭けないときは、周囲の人に応援を頼みましょう

・避難所で入浴する際は、転ばないように気をつけましょう

注意!

・吐き気、おう吐、下痢、腹痛など、食あたりのような症状がある

・発熱、のどの痛み、せき、たん、鼻汁、頭痛、関節痛・筋肉痛などの風邪の症状がある

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください。

 

◆健康について◆

・避難所の「健康相談」や「仮設診療所」を利用して、定期的に健康をチェックしましょう

注意!

・飲んでいた薬がない

・治療やリハビリが受けられない

・身体の不調やストレスを感じる

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

 

◆運動について◆

・同じ姿勢をとり続けないで、こまめに体を動かしましょう

※特に足首を動かす運動は大切!

・できるだけできることは自分でしましょう

・散歩や体操をする

・外出する機会をつくる

注意!

・足が腫れる、痛みがある、色が変わる(紫)

・骨、関節などの痛みがある

・避難所の中で危険な場所がある

・杖やめがね、クツなどがない

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

 

◆気持の落ち込みについて◆

・避難所内で顔なじみ・話せる相手を見つける

・思いや悩みを一人でかかえこまない

注意!

・眠れない

・不安、イライラ、焦り、孤独感がつのる

・気持ちを立て直せない、何もする気がおきない、涙が出て止まらない

・身体の不調(頭痛、胃腸の不具合、だるさなど)が取れない

・つらい気持ちや悩みを話せない

・避難所の環境や周囲の人間関係などで困っている

※このような場合は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

 

ご本人とご家族の方へ

―「せん妄」と「認知症」について―

 

被災による心身の疲労や急激な生活環境の変化は、認知症(痴呆)の悪化や、「せん妄」といわれる、認知症の症状に似た一過性の脳障害をもたらす恐れがあります。

避難所生活においては、これらを予防することや、早期に変化に気づくことが大切です。

「認知症の悪化」や「せん妄」の予防につながる関わり方

・声かけや会話を多くする

・本人の不安や気がかりを良く聞く

・おだやかな態度で接するようにする

・できるだけ今までの生活と同じような規則正しい生活を送れるようにする

・時計やカレンダーを置いて、日時の感覚を保つ

・昼間は、日光にあたる、散歩や軽い体操などを行って、睡眠リズムを整えるようにする

・落ち着いた生活環境を整えるようにする

※周囲と少し離れた生活スペースをみつけるなど

注意!

・時間、場所、状況が分からない

・もの忘れの症状が見られる

・夜眠らない、昼と夜が逆転する

・落ち着かずウロウロする

・身の回りのことが急に出来なくなる

・口数や活動量が極端に減った

※このような気がかりな様子があるときは、避難所の世話係や、保健・医療スタッフに早めに相談してください

 

 

投稿者:かぶん |  投稿時間:16:34  | カテゴリ:取材エピソード
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コメント(3)

地震関係の放送では、スタジオ内の画面が多すぎます。もっと、被災者の安否の情報を現場からインタビュウして姿を一瞬でも映せば効果とおもいます。これはテレビしかできないことだとおもいます。

投稿日時:2011年03月16日 09:35 | 大沼 武

未曾有の大災害に心を痛めながらも、何もできない自分です。
避難所に灯油が不足して暖房ができない、との報道が多くなっています。現場で実行可能かどうか分かりませんが、次のようなことは考えられませんか。
たき火で「おき火」をつくり、応急的な火鉢も(空き缶などで工夫して)作って、屋内に持ち込むことはできないのでしょうか。
食事も十分でない時の寒さは、本当につらいでしょうが、頑張ってください。

投稿日時:2011年03月16日 19:54 | 木村清順

海外在住の為、今回の震災には大きな衝撃を受けると共に、無力感を感じています。
しかし、UstreamのNHKニュースを通し、現地の情報を得る事が出来き、一喜一憂しながらも、徐々に事態が進展している事を知り、安堵する事もある毎日です。
避難所生活に関する今回の提案は非常に現実的・実際的で、こうした情報が被災者の方々に届くよう、願って止みません。
報道で垣間見る避難所の様子は、皆さん寝ているか、座っているかで、勿論、体力、気力共、限界とは言え、決して健康的と言える状況ではないようです。
毎日の食事にも事欠き、余震・原発事故の恐怖で、現在の自らの健康に気を配る心の余裕はなかなかないと思います、また季節外れの寒さも続いており、屋外に出るのを難しくしていると思います。
しかし、そのような環境だからこそ、各避難所の責任者の方々は、せめて一日に一回か、二回、避難所でラジオ体操のような簡単な運動を組織し、生活に組み入れる事で、被災者の皆さんの生活に少しの彩りと「はり」をもたらす事が出来るのでは・・と思います。
震災発生以降、不断の努力で奮闘される全ての関係者の皆様のご尽力に深く感謝申し上げます。
帰国が叶いました折には、復興の為、自分に出来る事をしようと思います。

投稿日時:2011年03月20日 06:32 | 久保順子

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