2011年8月19日 23時24分 更新:8月20日 1時22分
米欧経済の減速懸念が強まる中、19日のニューヨーク外国為替市場は円相場が急騰し、一時1ドル=75円95銭を付け、東日本大震災直後の3月17日に付けた戦後最高値(76円25銭)を更新した。世界経済の先行き不安から、資金の逃避先として円が一気に買われた。市場では「今後も円相場は高値水準で推移する」との見方が多い。日本経済への衝撃緩和に向け、政府・日銀は円売り・ドル買いの市場再介入や追加金融緩和の検討に入った。
19日の外国為替市場は、市場予想を下回った4~6月期の欧州連合(EU)の実質域内総生産(GDP)や、経済指標悪化が相次ぐ米経済の後退懸念を背景に一気に高騰。東京外国為替市場の円相場は、一時1ドル=76円38銭、続くロンドン外国為替市場で一時1ドル=76円31銭まで円高が進み、ニューヨーク市場で19日午前(日本時間19日深夜)に戦後最高値を突破した。市場では「欧米の景気減速懸念が払拭(ふっしょく)されない限り、円高圧力が続く」との見方が強い。ニューヨーク市場は午前11時現在、76円20~30銭と前日午後5時比32銭の円高・ドル安。
19日には米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が、財務省の中尾武彦財務官がインタビューに「しょっちゅう市場介入するつもりはない」と発言したと報道。介入警戒感が後退した。
円相場はギリシャ債務危機の再燃を受けて7月中旬に80円台を突破し、今月1日のニューヨーク市場で一時1ドル=76円29銭を付けた。政府・日銀は4日、急速な円高を是正するため円売り・ドル買いの市場介入を実施。介入前に1ドル=77円10銭近辺で推移していた円相場は一時1ドル=80円台まで急落した。
だが、翌5日には米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが米国債を最上級の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段階格下げ。市場の混乱を抑えるためG7(先進7カ国)は8日の緊急電話協議で「協調行動をとる」ことで一致したが、具体策が盛り込まれず、欧米アジアの主要市場で世界株安連鎖が起きた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が9日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で13年半ばまで超低金利政策を長期間続ける姿勢を示したこともドル売り・円買いを加速させた。欧州の債務危機も深まり、投資家のリスク回避の動きから消去法的に円が買い進まれる流れとなっていた。
日本の産業界からは急激な円高による業績への悪影響を懸念する声が上がっている。日銀は4日の為替介入に合わせ、国債などの資産を買い入れる基金の規模を40兆円から50兆円に増額する追加金融緩和策を発表した。【ワシントン斉藤信宏、井出晋平】