2011年08月03日
安愚楽牧場と馬産の差異に見る透明性について
論文みたいな長いタイトルで、ごめんなさい。
安愚楽牧場の破産に関する追記です。このネタに触れるのは最後なので、透明性について掘り下げましょう。
多くのブログを見ても、情報が不透明だとか、こんな高利回りはおかしいという点からの批判は多いものの、競馬の知識を応用したのは無かったので、新鮮味があったようです。
ということで、競馬の馬生モデルで考えたら、透明性に関しても説明がつくことを立証しましょう。
(この畜産投資が一種の詐欺ということは、ひとつ前の記事で答え合わせ済みなので参照のこと)
http://blog.livedoor.jp/aoidool/archives/51394807.html
このスキームの問題点は一言で言えば・・・
「母牛が出産前に死亡したら掛け捨て&受胎しなかったら飼育料を払うだけで利回りが急低下する」
の二点です。
それを踏まえて、投資家が損失を被る要因を掘り下げてみます。
・投資家(甲)は、牧場(乙)が所有する繁殖用メスの黒毛和牛の共有持分1/10を買受け、その代金として30万円を支払う。&繁殖用メス牛の飼育を牧場(乙)に委託。
・仔牛を出産した場合は、仔牛の持分を投資家(甲)は牧場(乙)に譲渡。
・その対価、年間34,000円を投資家(甲)得る。実際の手取り金額は実際に飼育委託費25,000円を引いた9,000円。(34000−25000=9000)
・契約満了時には、投資家(甲)は牧場(乙)Aに対し、最初に得た繁殖用メス牛の共有持分を売却する。売却額は30万円。=元本の回収。
<ケース1>
母牛が出産前に死亡(−30万)
<ケース2>
母牛が受胎しなかった(1回につき−2万5000)・・・三年で利回りが0.3%程度に。
<ケース3>
仔牛がセリで売れる前に死亡(1回につき−2万5000)・・・この場合、譲渡益が投資家に入るかもしれませんが、食用になる前の段階で死んだので、投資家は儲かりますが牧場が損失を被る可能性がある。
<ケース4>
等級が低いC1〜C5の仔牛が生まれた(売却価格が34000円を下回る?)・・・この場合は、またしても牧場が損失を被ります。投資家に払った34000−セリでの価格分を。
<ケース5>
等級が低いC1〜C5の仔牛に育った(売却価格が34000円を下回る?)・・・この場合も、またしても牧場が損失を被ります。投資家に払った34000−セリでの価格分を。
生まれつき等級が決まるとは思えませんので、競馬における幼駒の育成、競馬では育成専門の育成牧場が存在すつ)あるいは野菜や稲のように天候不順によって、うまく育たないことも十分考えられます。セリで音が付くまでは、どうなるかは分からないのです。それさえも例えA5に育っても今回のセシウム騒動のように価格に変動が生じますしね。
まとめると
ケース1〜3は野菜なら種イモや苗が腐ったパターンです。競争馬なら死亡。
ケース4〜5は野菜ならサイズが小さいとか不揃いパターンです。競争馬ならレースで走らなかった。
というか、そもそも等級によってセリで牛の価格変動するはずなのに、一定額34000円に固定されてることは、変じゃないですか?一体、何を基準に算出した価格なのか疑問です。普通なら、セリで売れた価格を払うか、34000円を最低等級の底値として、それにプラスした金額を支払うのが真っ当な市場原理のはず。
<和牛格付け 参考資料>
http://www.marusefoods.com/kakutuke.html
<和牛価格の不安定さ 参考資料>
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001107220001
そもそも仔牛の持分を譲渡して、9000円(利回り3%)って変じゃない?
和牛は最上級のA5で1キロあたり2000円前後だそうですから、A5等級ので売れたとしても、5キロにしか満たない数字ですよ。和牛の一頭買いなんてしたことないけど、9000円じゃ買えないでしょ。オージーでも。
34000円と考えても17キロにしかなりません。全部が食用にならないとは言え、肥育農家に転売しても300キロになってるんですよ?
<牛の一生 参考資料>
http://www.id.nlbc.go.jp/consumer/cow/cows_life.html
仔牛でも30キロだから、68000円は投資家が受け取らないと不自然でしょ。不当に安い譲渡価格と言えます。
JA京都でもメスの仔牛の平均体重が279キロで平均約38万5000円。
<JA全農協市場成績表 参考資料>
http://www.kyochiku.com/sysdata/pdf/20110608koushiiti.pdf
そう考えると、安愚楽牧場の不透明さが際立ちます。以上のことを踏まえて競馬ならどうかを考えてみましょう。
こちらは、驚くほど透明性が高いです。まずは参考に競走馬の一口馬主(キャロットクラブ)を見てみましょう。
https://carrotclub.net/
競馬ファンには常識ですが、父馬と母馬がちゃんと公開されています。この幼駒の両親は〜です、と明示されている。また、レースへの出走予定も出走結果もサイトに記載されています。因みに会報でもそれは告知してくれますけどね。
勿論、牧場見学で愛馬を見ることも、愛馬の近況も幼駒の時から報告してくれる。
ここまでで、安愚楽牧場がどう投資家に情報公開すべきかは理解できたことでしょう。
つまり、母牛が誰で父牛が誰で、どのくらいまで成長したか(和牛格付けを含む)を一口馬主クラブのように報告すればいいのです。
なんせ
<牛の個体識別検索サービス>
http://www.id.nlbc.go.jp/top.html
上記のシステムを用いれば、本当に自分の愛馬ならむ愛牛が「実在するのか」調べることが可能です。
競争馬でいう血統表みたいなものです。仔馬は名前が付くまでは母馬の〜と呼ばれます。
今年、生まれたダイワスカーレットの子供なら、ダイワスカーレットの11。母馬名+西暦の下二桁。
実際に牛の個体識別検索サービスで自分の仔牛を確かめた投資家は、何人いるのでしょうか?
また本来なら、このシステムについて安愚楽牧場は投資家に開示する義務があるでしょう。
愛牛は実在するのか? も確かめずに牛肉が貰えるだとか、利回りが3〜6%と聞いて、満足しているような人間は投資家失格もさることながら、愛馬の活躍に胸を踊らす一口馬主に劣る。
この程度のリサーチを怠る奴は、ジュリアン・ロバートソンに言わせれば「バカが投資家気取り全裸で歩いている」と冷笑されるレベル。
金だけ出せば、後は牛肉が送られてくることと利回り計算しか出来ないから騙されるんだってこと。多少でも自分の牛に愛着があれば、こんなことにはならなかった。
出直してこい!!!
安愚楽牧場の破産に関する追記です。このネタに触れるのは最後なので、透明性について掘り下げましょう。
多くのブログを見ても、情報が不透明だとか、こんな高利回りはおかしいという点からの批判は多いものの、競馬の知識を応用したのは無かったので、新鮮味があったようです。
ということで、競馬の馬生モデルで考えたら、透明性に関しても説明がつくことを立証しましょう。
(この畜産投資が一種の詐欺ということは、ひとつ前の記事で答え合わせ済みなので参照のこと)
http://blog.livedoor.jp/aoidool/archives/51394807.html
このスキームの問題点は一言で言えば・・・
「母牛が出産前に死亡したら掛け捨て&受胎しなかったら飼育料を払うだけで利回りが急低下する」
の二点です。
それを踏まえて、投資家が損失を被る要因を掘り下げてみます。
・投資家(甲)は、牧場(乙)が所有する繁殖用メスの黒毛和牛の共有持分1/10を買受け、その代金として30万円を支払う。&繁殖用メス牛の飼育を牧場(乙)に委託。
・仔牛を出産した場合は、仔牛の持分を投資家(甲)は牧場(乙)に譲渡。
・その対価、年間34,000円を投資家(甲)得る。実際の手取り金額は実際に飼育委託費25,000円を引いた9,000円。(34000−25000=9000)
・契約満了時には、投資家(甲)は牧場(乙)Aに対し、最初に得た繁殖用メス牛の共有持分を売却する。売却額は30万円。=元本の回収。
<ケース1>
母牛が出産前に死亡(−30万)
<ケース2>
母牛が受胎しなかった(1回につき−2万5000)・・・三年で利回りが0.3%程度に。
<ケース3>
仔牛がセリで売れる前に死亡(1回につき−2万5000)・・・この場合、譲渡益が投資家に入るかもしれませんが、食用になる前の段階で死んだので、投資家は儲かりますが牧場が損失を被る可能性がある。
<ケース4>
等級が低いC1〜C5の仔牛が生まれた(売却価格が34000円を下回る?)・・・この場合は、またしても牧場が損失を被ります。投資家に払った34000−セリでの価格分を。
<ケース5>
等級が低いC1〜C5の仔牛に育った(売却価格が34000円を下回る?)・・・この場合も、またしても牧場が損失を被ります。投資家に払った34000−セリでの価格分を。
生まれつき等級が決まるとは思えませんので、競馬における幼駒の育成、競馬では育成専門の育成牧場が存在すつ)あるいは野菜や稲のように天候不順によって、うまく育たないことも十分考えられます。セリで音が付くまでは、どうなるかは分からないのです。それさえも例えA5に育っても今回のセシウム騒動のように価格に変動が生じますしね。
まとめると
ケース1〜3は野菜なら種イモや苗が腐ったパターンです。競争馬なら死亡。
ケース4〜5は野菜ならサイズが小さいとか不揃いパターンです。競争馬ならレースで走らなかった。
というか、そもそも等級によってセリで牛の価格変動するはずなのに、一定額34000円に固定されてることは、変じゃないですか?一体、何を基準に算出した価格なのか疑問です。普通なら、セリで売れた価格を払うか、34000円を最低等級の底値として、それにプラスした金額を支払うのが真っ当な市場原理のはず。
<和牛格付け 参考資料>
http://www.marusefoods.com/kakutuke.html
<和牛価格の不安定さ 参考資料>
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001107220001
そもそも仔牛の持分を譲渡して、9000円(利回り3%)って変じゃない?
和牛は最上級のA5で1キロあたり2000円前後だそうですから、A5等級ので売れたとしても、5キロにしか満たない数字ですよ。和牛の一頭買いなんてしたことないけど、9000円じゃ買えないでしょ。オージーでも。
34000円と考えても17キロにしかなりません。全部が食用にならないとは言え、肥育農家に転売しても300キロになってるんですよ?
<牛の一生 参考資料>
http://www.id.nlbc.go.jp/consumer/cow/cows_life.html
仔牛でも30キロだから、68000円は投資家が受け取らないと不自然でしょ。不当に安い譲渡価格と言えます。
JA京都でもメスの仔牛の平均体重が279キロで平均約38万5000円。
<JA全農協市場成績表 参考資料>
http://www.kyochiku.com/sysdata/pdf/20110608koushiiti.pdf
そう考えると、安愚楽牧場の不透明さが際立ちます。以上のことを踏まえて競馬ならどうかを考えてみましょう。
こちらは、驚くほど透明性が高いです。まずは参考に競走馬の一口馬主(キャロットクラブ)を見てみましょう。
https://carrotclub.net/
競馬ファンには常識ですが、父馬と母馬がちゃんと公開されています。この幼駒の両親は〜です、と明示されている。また、レースへの出走予定も出走結果もサイトに記載されています。因みに会報でもそれは告知してくれますけどね。
勿論、牧場見学で愛馬を見ることも、愛馬の近況も幼駒の時から報告してくれる。
ここまでで、安愚楽牧場がどう投資家に情報公開すべきかは理解できたことでしょう。
つまり、母牛が誰で父牛が誰で、どのくらいまで成長したか(和牛格付けを含む)を一口馬主クラブのように報告すればいいのです。
なんせ
<牛の個体識別検索サービス>
http://www.id.nlbc.go.jp/top.html
上記のシステムを用いれば、本当に自分の愛馬ならむ愛牛が「実在するのか」調べることが可能です。
競争馬でいう血統表みたいなものです。仔馬は名前が付くまでは母馬の〜と呼ばれます。
今年、生まれたダイワスカーレットの子供なら、ダイワスカーレットの11。母馬名+西暦の下二桁。
実際に牛の個体識別検索サービスで自分の仔牛を確かめた投資家は、何人いるのでしょうか?
また本来なら、このシステムについて安愚楽牧場は投資家に開示する義務があるでしょう。
愛牛は実在するのか? も確かめずに牛肉が貰えるだとか、利回りが3〜6%と聞いて、満足しているような人間は投資家失格もさることながら、愛馬の活躍に胸を踊らす一口馬主に劣る。
この程度のリサーチを怠る奴は、ジュリアン・ロバートソンに言わせれば「バカが投資家気取り全裸で歩いている」と冷笑されるレベル。
金だけ出せば、後は牛肉が送られてくることと利回り計算しか出来ないから騙されるんだってこと。多少でも自分の牛に愛着があれば、こんなことにはならなかった。
出直してこい!!!