放射能の研究グループを作ろうと思っています! チェルノブイリ事故と甲状腺ガンについて
当地でも農業者を中心とする放射能除染研究会のようなものを作ろうとしています。
これは測定のみで終わるものではなく、むしろトータルに放射能を学び、いかにして私たちに降りかかった千年に一度の大災厄である放射能から農業を護ることを目的としています。
健康な大地を取り戻していくかを考えるグループです。講師をお招きして連続公開講座を開催し、合わせて農地の除染や測定のワークショップも考えています。
福島県や茨城県の農業者との交流も念頭においており、お互いの情報と技術の交換を予定しております。
来春くらいまでにまとめのシンポジウムが開ければいいのですが、まだなんとも海のものとも山のものともといった段階です。具体的には来月冒頭から開始したいと思っています。
さて、欄外のようなコメントを頂きました。チェルノブイリの健康障害についてです。
分かる範囲でお答えします。チェルノブイリ事故後20年目の節目の2006年に、WHOの調査がなされました。
事故当時、18歳未満だった子供の甲状腺ガンの発生人数は約6000(*約4800人の異説あり)で、15名が死亡しています。
事故処理作業員、高線量汚染地域住民、避難者の総計60万人の成人においては、ガン死亡率は数%目(*5%以下という説あり)と予測されました。
乳児死亡率の統計は、86年から89年まで下がり、93年から再び高くなっています。そしてまた再び下降する曲線を描いています。この推移から体内被曝による乳児被曝との相関関係は明らかになりませんでした。
さて、もっとも心配されるのはチェルノブイリでも大量に発生した甲状腺ガンです。これは爆発初期の放射性ヨウ素によるものです。
チェルノブイリで大量に子供の甲状腺ガンが出た原因は、放射性ヨウ素を含んだ被曝初期のミルクを供給してしまったことによるものです。これは被曝した牧草からの移行によるものとされています。
ヨウ素は、セシウムよりある意味危険だと言われています。というのは、セシウムが全身の筋肉に拡散していくのに対して、ヨウ素は甲状腺の一カ所にのみ集中的に蓄積されるからです。甲状腺はホルモンを分泌するためにヨウ素を必要としているために、甲状腺に放射性ヨウ素が溜まってしまうわけです。
チェルノブイリ被爆地周辺で起きた大量のガン患者は、この放射性ヨウ素が原因の8割まで占めています。
事故当時のベラルーシの被曝した人の平均甲状腺の線量は平均で1グレイ、最大で50グレイです。
一方、福島はセシウムの降下量は多いものの、放射性ヨウ素は5ミリグレイでした。単純な比較ではチェルノブイリの1000分の5にとどまるわけです。ただし、最大線量で30グレイの方もおり、定期的な診断が必要です。現在、千葉の放医研でのホールボディカウンタで診断しているはずです。
私見ですが、おそらくは数千人規模の甲状腺ガンは発生しないのではないかと思われますが、予断を許しません。今後5年、10年の注意深い観察が必要です。
また、日本人は、世界でもっとも海草を食べる民族ですので比較的甲状腺ガンになりにくいとも言われています。
だからというわけではないのでしょうかが、チェルノブイリでも、子供を中心として安定ヨウ素剤が緊急配布されなかったことが小児甲状腺ガンの原因になりましたが、日本政府はこの教訓を生かさずに安定ヨウ素剤を備蓄しながら配布しませんでした。
セシウムとガンの相関関係については寡聞にして分かりかねます。今のところ、チェルノブイリではセシウムによるガン発生との相関関係は有意なデータがないように思えますが、確たることは申し上げられません。
だからといってセシウムは安全だ、などと言うつもりはいささかもありませんので、もしご存じでしたら、ご教示ください。
■写真 田園を見渡すお墓には彼岸花と柿が盛りです。
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こんにちは、福島かその周辺で農業をされている方とお見受けしますが、放射能についてとても勉強されているようなので質問させてください。
ネットであれこれ調べたものの、疑問が残った点です。
政府その他の発表した人が居住する福島原発周辺地域汚染の線量は、チェルノブイリの人が人が居住する原発周辺地域の汚染量に比べても決して少なくないようです。数千万ベクレルなどとあります。
しかし、福島の農作物も基準値以下のものが多くありでたくさん出荷されております。そして、チェルノブイリの時も、農作物の基準値は一応設けられていたようです。
ではなぜ、チェルノブイリの時はその後避難した周辺住民にも膨大な数の癌患者が出たのでしょうか?皮肉とかではなく、私は政府や学者の言うことは信用できると思っております。
何かチェルノブイリと違う要因や状況があってのことなら、ぜひ知りたいのです。彼らは検査していない森のきのこを勝手に食べていた人々だとか、実は出荷規制がちゃんと行われていなかっただとか。
あるいは、福島同様のことが行われ、低線量だったはずなのにあれだけの癌患者が出たのでしょうか。
もし何かご存知でしたら、ご回答いただければ幸いです。
HN 東京在住
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コメント
失礼ながら、東京在住様はあまりに馬鹿馬鹿しいゼロリスク主義でしょうか?
せめてwikiのチェルノブイリ読んだのでしょうか?
はたまた武田邦彦さんや緑豆信者ですか?
最も危険に晒されているのは、福島と隣県で農業を営む農家さんです。
農業の現場からはありえませんよ。
現地農家のブログに説明を求める前に、ブログ主さんのプロフィールや、過去の記事を少しは読んで下さい。(ついでに震災直前まで『御用学者』だった商売人の武田邦彦の過去も)
必死で神経を磨り減らしながら、様々な圧力に耐えて「測定と除染」に試行錯誤しつつ、前に進もうとしています。
ヨウ素はともかく、チェルノブイリの放射性セシウムに関しては、データも学術的知見がバラバラです。
甘いと言われるIAEAで4000人の被曝発癌。
これがカルトの緑豆だと60万人以上になります。
あまり荒れる疑問は求めませんが、戦うというなら結構ですし、徹底的にお相手しますよ。
常識的で現実的な仲間は沢山いますから。
投稿: 山形 | 2011年10月18日 (火) 10時18分
山形さん。言い過ぎです。東京在住さんは紳士的な対応をなさっています。
投稿: 管理人 | 2011年10月18日 (火) 11時02分
管理人様から「過激すぎるよ」と、警告うけました。
なので、しばらくはおとなしくしますが、いつでも臨戦体制です。
投稿: 山形 | 2011年10月18日 (火) 11時07分
濱田様、皆様お久しぶりです。
先日は失礼致しました。
山形様、私には東京在住様はゼロリスク論者とは感じられません。
政府の言う事は信用できると仰ってますから、低線の放射能なら影響は少ないと認識されているのだと思います。
自分が納得できていない部分の納得できる何かを探されているのだと
その確認を行っている途中でこちらにたどり着いたのではないかと感じます。
日本人には、「理解は出来ても納得できないと受け入れない」と言う気質を持つ者が欧米、海外に比べて多いと言います。
「言いたいことは分かるけどなんとなく嫌」とか「嫌だから嫌」みたいな感じでしょう。
特に今回のゼロリスク論者に関してはそれが顕著に現れています。
「放射能は嫌、それを少量でも受け入れようと言う考えも嫌、そう言った考えを持った者には攻撃する」
ゼロリスクの考え方も一定の理解は出来るんですが私には納得は出来ないですね
投稿: 種子 | 2011年10月18日 (火) 12時10分
はじめまして。いつも拝見しております。
東京在住さんの疑問ですが、ここ半年勉強し、私なりに考えたことを横からですがコメントさせて頂きます。
チェルノブイリ原子力発電所事故においても食品の規制は設けられ、避難もしたという話ですが、こちらの管理人さんが以前書かれていたとおり、その規制は今の日本の暫定基準値よりも一桁高いものでした。
たとえば、野菜で3700ベクレル(セシウム)とか。
http://konstantin.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-b878.html
↑こちらのブログに、旧ソ連の基準値の推移が掲載されています。これを見ると、とても高い数字になっています。
また、事故直後のヨウ素の基準値は、牛乳で3700ベクレルでした。
http://www.nsc.go.jp/hakusyo/S61/1-2-1.htm
↑こちらのページに牛乳のヨウ素汚染のグラフが出ています。単位はマイクロキュリーになっていますが、1マイクロキュリーは、37000ベクレルです。規制値は0.1マイクロキュリーで、事故から2~3日で1マイクロキュリー=37000ベクレルの牛乳が観測されたとあります。
また、森のきのこやベリー類と言ったものは、もっとも汚染されやすい食材と言われていますが、「自分と子どもを放射能から守るには」というベラルーシのハンドブックの翻訳本によりますと、森のベリーときのこはベラルーシにおける人気食材だそうです。このような食材や、森の野生動物を食べていた子ども達の内部被曝の数字が多いと、この本には紹介されていました。
ということは、情報が周知されていないか、あるいは、周知されていても他に選択肢がないのかもしれません。
チェルノブイリ支援に赴いた松本市長の菅谷氏は、自給自足のベラルーシでは、避難先で収入が少なく、結局、汚染地帯に残ったおじいちゃんおばあちゃんの送ってくれる食料を、父や母、そして子どもが食べざるを得ないという例を雑誌記事で述べていましたから。
日本とチェルノブイリで違う点はこれだけありました。日本でも野生のきのこが危険だと認知されつつあり、牛乳はクーラーステーション毎に管理され、淡水魚の危険も早くから指摘されています。
多くモニタリングを行うことで、どうか日本では健康被害がなるべくなら出ないようにと私は祈っております。
私たちがスーパーなどで購入する作物は非常に低い数値で推移していると管理人さんも説明していらっしゃいますから。
ですが一方、セシウムは粘土に固着するということは、私たちに食料を作って下さる農家の皆さんがセシウムを含んだ土を吸い込むのではないか?と危惧します。
これは、都会に住む私たちはどのように取り組めばいいのか、私には今のところ良い考えが及びません。
私たちがスーパーで買う食材は安全なのに、それを作って下さる方々が健康を害するようなことがあってはいけないと思うのですが…
長々と失礼致しました。
不足や補足があれば、お願い致します。
投稿: みなみ | 2011年10月18日 (火) 13時09分
福島から遠く離れた北海道十勝でも、地元新聞によれば、米の卸会社が「福島県産」のコメを仕入れても売れないだろう・・・と言う事で、仕入れを控えている・・との記事がありました。
また、北関東や東北の牛肉が集まる東京枝肉市場でも、低迷が続いています。
今回の放射線以前の「食中毒」から始まった枝肉価格の下落は、今なお回復していない状況にあります。
(大阪市場の方は東京市場より高めで推移)
何をどうしたら良いのか、どうすれば買って食べてくれるのか・・「出口の無いトンネル」に入り込んだ状況です。
こんな時、このようなブログを通じて情報交換し、理解者を一人でも増やしていく地道な行動しか手は無いのかな・・・と自問自答しています。
投稿: 北海道 | 2011年10月18日 (火) 13時42分