1.中学代数の学び方


● 「文字の取扱い方・指数法則」

 最初の難関ですが,これについては,
  1) 基礎的な感覚を身につけること(3の-2乗=1/9 等の感覚)
  2) 多くの練習をこなし,身体で覚えるくらい練習すること
の2点が重要です.1)については塾に来れる人は教室で,2)については家で徹底的に練習して下さい.練習量が重要なので計算練習を怠らないように注意しましょう.(計算練習には「中学数学計算練習」(数理科学研究会)が役に立つと思います.)


● 「1次方程式・連立1次方程式」

 中学範囲の方程式の学習においては,
  1) 簡単な方程式を解くこと
  2) 文章でかかれた内容を方程式で表現すること
の2点が重要です.1)については,中1の間は論理的なことはそれほどうるさく言わないで,とにかくスピーディーに解く力をつけることが重要です.スピードは重要ですから十分に練習を積む必要があります.2)については,授業で簡単に学び,少し練習して「こつ」をつかめば大丈夫だと思います.


● 「平方根」

 平方根の学習では,
  1) 定義を含めた理論的なこと (無理数の定義,ルートと平方根の違いなど)
  2) ルートを含んだ式の扱いに習熟すること
の2点が重要です.
 1)は理論的であるため,中学生には苦手な人が多いようですが,授業をしっかりきいてもらえれば短期間で自然と身につくはずです.数理科学研究会のカリキュラムでは,このように苦手な人の多い概念的な事項については講習を含めて何回か繰り返すようになっています.2)については十分な計算練習が必要です.


● 「式の展開」
 
 式の展開(多項式のかけ算)の学習では,
  1) 括弧をはずすことができること
  2) 簡単な公式を覚え,それを使った素早い計算ができること
の2点が重要ですが,教室で基礎を学んで,しっかりと練習すれば誰でもできるようになります.ただし,公式を利用する練習は意識的に行う必要があるので注意して下さい.
 数理科学研究会では,中学1年の最後の春休みに高校数学に入りますが,そこでは,
  3) 多項式の掛け算は「たたみこみ」である
ことに気づいてもらうように指導し,多項式の掛け算を「暗算」でできるようにします.


● 「因数分解」 ―中学代数最高の山―

 この分野の学習は,暗記がある程度必要になってくるということもあり,独学は難しいと思います.また,指導者がいても,本来学習者自身で考えて導き出さなければならないことを指導者に求めてしまって,自分は公式だけを暗記してしまってうまく計算できないということになりかねません.「因数分解」を学ぶときに大切なのは,
    1) 基本的な公式の理解と暗記
    2) 基本的な公式の運用
の2点であり,1)については必ず適切な指導者について学んで,「式をどのように読むのか」を指導してもらうのがよいと思います.たしかに,やみくもに演習を積んだとしても中学範囲の問題レベルならできるようになると思いますが「なぜ,そのように考えるのか?」という点で大きな間違いをして,将来困ったことになってしまう人が少なからずいます.2)については徹底した演習を行う必要があります.
 数理科学研究会 では,夏休みに「タイル」を使って多項式の展開・因数分解という発想になれるとともに自分自身で公式を発見する講座があります.その後「講義」,「中学数学計算練習」で徹底練習します.「因数分解」の理解は,高校数学以後の勉強に大きく影響しますから,何百題といった練習問題をこなし,何も考えないでも式変形・因数分解できるようになることが重要です.「中学数学計算練習」には500題の因数分解の練習がありますが,それでも不安があれば,「因数分解」(昇龍堂)等の参考書で補充するとよいと思います.


● 「2次方程式」 ―中学代数第2の山―

 2次方程式は今後の数学の学習においても非常に重要なものです.しかし,やや発展的な部分(「解と係数の関係」の応用など)を除けば,学習する内容は非常に簡単です.「因数分解による解法」,「平方完成による解法とその一般化である解の公式」の2点のポイントのみ確実にしておけば十分です.


● 「関数とグラフ・1次関数」
    
 関数については,中学・高校数学では,
  1) 「関数の概念」の理解
  2) 簡単な関数のグラフ
  3) やや複雑な関数の振るまいの解析
  4) 関数の応用
を扱います.このうち中学数学では,1)の初歩,および,2)を1次関数と簡単な2次関数について考えていくのですが,この部分でさえ苦手な人が非常に多いようです.近年ではレベルの低い大学生の指導者などにもありがちな,「関数」と「関数の表現式」の勘違いなど,「関数」という概念が理解できていない人がとても多いようです.
 この分野については,適切な指導者から,「関数とは何か?」,「関数を理解するというのはどういうことか?」,「グラフをかくということはどういうことなのか?」ということをしっかりと説明してもらう必要があります.また,これらをしっかりと手にとるように理解しておけば,応用するときに,「何をどうつかえばよいか」がはっきりと見えてきます.したがって,学習上大切なのは,
  1) 関数の概念の基礎を習うこと
  2) 簡単な関数のグラフの書き方に習熟すること
の2点となります.
 1)については,しっかりとした説明を書いた参考書はほとんどありませんから,適切な指導者から直接習うしかないと思いますが,2)の練習については,中学数学は関数についてやや中途半端なので,「中学数学計算練習」他で練習した後,高校数学でしっかりと学ぶのが結局は良い方法になると思います.


2.中学幾何の学び方

● 「図形の名称・合同・平行について」

 小学校では,「正三角形」といえば,「3辺の長さが等しい三角形」としても,「3つの角の大きさが等しい三角形」としてもよかったのですが,中学では前者を正三角形の「定義」として,もう一方は「定理」として証明すべきものとなります.あまりうるさいことは言いたくありませんが,中学の幾何では,「なんとなくこんな感じ」というのでは理解したことになりません.最低限,考えたことを明確な言葉と論理で表現することが重要なのです.そのために,基礎的な「用語の定義」,「定理」だけは的確にしておく必要があります.
 数理科学研究会では授業での演習や復習テストを通じて基礎的な「用語の定義」,「定理」の暗記を徹底して行いますが,不安がある場合は
    「新Aクラスの幾何」
    「A級中学数学問題集1,2,3」
等で復習しておくとよいと思います.


● 「中点連結定理」

 三角形の内角の和や三角形の合同条件など小学校で学習した内容の論理的確認を終え,中学生らしい幾何として最初に出てくる定理が「中点連結定理」です.この頃になると,「幾何っていうのはこういう勉強なのか!」という感覚が身についているでしょうから,大切なことは
  1) 中点連結定理の正確な理解
     (中点連結定理の「逆」と混同しないこと)
  2) 中点連結定理を使った証明問題の論理的解答の書き方を学ぶこと
の2点となります.


● 「線分長・面積について」

 線分長・面積は中学の幾何ではやや特殊な位置を占めていますから,論理性にはあまり気をとられずに,計算できるようにすることを第一に考えて学習していくとよいと思います.(実は面積の正式な定義は大学の理学部数学科以外では行わない!) したがって,
 1) 論理的な注意点については授業にまかせる.
   (メネラウスの定理の証明では補助線は本質的なものではないなど)
 2) しっかりと問題演習をして図形に親しむ
という方針で学習するとよいでしょう.よく,「補助線の引き方がわからない!」という言葉をききますが,この分野については,いくつかの基本的な「補助線の引き方」の方針があります.「補助線は何のために引くのか?」ということを理解する必要があるわけです.この分野の演習は高校入試用の数学においても非常に重要ですから,興味のある人は
   「図形のエッセンス」(東京出版)
   「図形の演習」   (東京出版)
等で演習すると良いと思います.(ただし,論理性にはそれほど気をとられずに,算数と同じように計算練習すれば十分です.)


● 「三角形の五心について」

 中学の幾何は「三角形と円の論理的研究である」と言っても過言ではありません.その点では,この分野は中学数学の総決算の1つとも言えます.高校になってから「外心とは外接円の中心と定義する.」というわかったような嘘をつかないですむようにしっかりと学習して下さい.(外接円の存在と一意性が自明ではないという欠点があり,たいていの場合,この定義は採用しません.) この分野については高校以後にときどき用いるのに,参考書等にまとまってのっていないので,授業とテキストをよく復習して下さい..


● 「三平方の定理」 ―中学幾何で最も有名な定理―

 三平方の定理には100個以上の証明が知られているといわれますが,現在は簡単な証明で学習するのが普通です.したがって,三平方の定理を使っていろいろな問題を解けるようになることを目標に学習していくのが良い方法です.三平方の定理は高校以後の数学でもずっと使われる大切な定理ですが,特に深い応用があるわけではないので,授業で扱う問題をやっていれば十分です.


● 「円」 

 中学・高校の数学では,「円とは平面において定点からの距離が一定の点の軌跡である」と定義します.「一定の曲がり方の図形」であるというイメージを忘れ,この定義だけを使って考えることによって,「円周角一定」,「定円に内接する四角形の対角の和が180度であること」,「接弦定理」などがたちどころに導かれます.
 これらの定理は,証明よりも使えるようになることが重要です.たとえば,「円周角一定」と言う言葉のこころは「円周角は動かしも変わらない」ということなのがちょっと演習してみればすぐにわかってきます.
 そして,単独の円の理論が終わると,すぐに現れるのが,「点と円の位置関係」(方べきと方べきの定理),「2円の位置関係」です.これらについても証明は何も難しくないので授業とテキストでしっかりと復習すれば十分です..


● 「立体図形」 

 「立体図形は苦手だ.」とう人は非常に多いようです.しかし,中学・高校範囲の幾何では,小学校で扱ったような高度な空間認識能力を要求される問題はほとんどありません.大半が,「断面」や「展開図」などを考えて「平面図形」の問題として考える問題なのです.
 「三平方の定理」などを使って図形量を計算できれば十分ですから,授業で学んだことを確認しておけばよいと思います.


● 「作図問題」 

 作図には,
  1) 定規とコンパスによる作図可能性を考える
  2) 定規とコンパスを使って作図する
という2つの意味があります.
  中学範囲の数学では,2)を少し扱いますが,「作図の方針を考える」ところから「作図したものが答になっていることの証明」までの間には,中学幾何のほとんどの内容が含まれているといっても過言ではありません.したがって,いまのうちは「作図を楽しむ」という気持ちで理解しておけば十分です.数理科学研究会では,中学範囲の作図問題については軽くふれるのみとします.