中学数学は
     1. 代数 ・・・ 数や式の計算を扱う分野
     2. 幾何 ・・・ 図形を扱う分野
の2つに分けることができます.
 

1.代数と幾何はどちらが大切か?

 高校以後の数学ではほとんど幾何は出てきませんから,将来使うという意味では「代数」の方が大切だと思います.しかし,幾何がどうでもよいというわけではありません.幾何では,小学校の算数ではなかった「定理・証明」という「論理的思考法」を学びます.たとえば,小学校では,「正三角形」といえば,「3辺の長さが等しく,3つの角が等しい三角形」といってもよかったのですが,中学の幾何では「3辺が等しい三角形」のことを「正三角形」と決めて,「3つの角が等しい三角形」は正三角形かどうか確かめないといけないことになるわけです.このように,これまで「当然のこと」と思っていたことを「論理的に証明する」ということをはじめて学ぶのが幾何学です.つまり,中学の幾何では,「図形に習熟すること」と「論理的に考えること」の両方を学ぶ必要があるわけです.
 「論理的に考える」というと難しい感じがすると思いますが,簡単にいえば,ルールブックに書いてあるルールだけを使って考えることです.この点が「面倒だ」とか「当たり前のことを何で論証しなきゃいけないんだ」と感じる人が多いようですが,なれてくれば,順序だててルールを適用するだけですから,それほど難しいものではありません.
 一方,「図形に習熟する」にはどうすればよいのでしょうか? 数理研では多くの人は「論理的に考えること」と「図形に習熟すること」を同時にやろうとしていることに問題があると考えています.「図形がどうしても苦手」という人もいるでしょう.別に急ぐ必要はないのです.幾何の授業のときにもしわからないことがあれば,自分で何度でも図をかいて自分なりの論理(?)で説明してみて下さい.それを先生に説明してくれれば,「どこに問題点があるのか?」を指摘することができます.そうしているうちに,自然と「図形に親しむこと」ができます.
でたらめな推論であろうと,とにかく図形をかいて,自分で考えてみるということを積み重ねれば,自然と図形に習熟していくはずです.

 数学があまり得意でないという人は,まずは代数を重視して,塾でやっている内容をしっかりと練習すること.そして,幾何がどうしても苦手という人はとにかくじっくりと図形に親しむようにしてみましょう.


2.中学数学の「山」

 中学数学にはいくつかの山があります.代数と幾何にわけて考えると
   代数 ・・・ 平方根,因数分解,2次方程式
   幾何 ・・・ 三角形に関するさまざまな証明,三平方の定理,円の性質
となります.ただし,どの分野もポイントをしっかりと理解して,十分に演習をつめば心配するほどのものではありませんし,数理科学研究会では最大のやまである「因数分解」の指導法に関しては特別な教材を用意してあるので,過去に「わからなくなってしまった」という人はほとんどいません.


3.中学代数の道案内

 代数は,文字式・1次方程式・1次不等式・連立方程式・・・ とありますが,これらは算数でやった内容を「文字式」を使って数学的にやりなおすだけなので,それほど難しいものではありません.算数にはなかった,「平方根」,「因数分解」,「2次方程式」のところこそしっかりと学習する部分です.

   正の数と負の数・文字式の基本・比例式の扱い方
       ↓
   1元1次方程式・連立方程式
       ↓
   1次不等式
       ↓
   式の展開と乗法公式
       ↓
      平方根
       ↓
   因数分解
       ↓
   2次方程式
       ↓
   1次関数・2次関数・座標平面における図形


4.中学幾何の道案内

 中学の幾何では算数にはなかった「定理」や「証明」といった思考方法が必要になります.したがって,最低限これらの考え方を理解していく必要があります.しかし,もっと重要なのは基本的な図形に平素から接していることです.「定理」や「証明」は図形の理解を体系的にするための1つの方法にすぎないのですから,調べるべき対象である図形に日頃から慣れ親しんでおくことがまず第1に重要です.
 その上で,重要な定義・定理いくつかのみを覚えて,あとは自分で導いていくという学習態度が重要なのです.参考書などには多くの定理を羅列してあるものが多いようですが,これは,「何が基礎(幹)で,何がそこから導かれる(枝葉)のか」ということをわかりにくくしているだけなので,たいていの人にとってははあまりよいものではありません.

 中学の幾何は,一見多くの内容が盛り込まれているようにみえますが,大さっぱにいえば,「三角形」と「円」の2つの図形を調べているだけということがわかります.(四角形は三角形の組合せ,立体図形は断面,展開図などを考えています.) 三角形に関するさまざまな定理の証明のみを徹底して理解し,その上で三平方の定理,円の簡単な性質がわかれば中学数学は卒業です.
 数理科学研究会の整理された教材を学んで,中学幾何がいかにコンパクトにまとまった理論であるのかを実感してほしいと思います.

  定理と証明
     ↓
   三角形
     ↓
   四角形
     ↓
   中点連結定理
     ↓
   面積と面積比・線分比とその移動
     ↓
   相似と相似比・面積比
     ↓
   三平方の定理
     ↓
   円とその性質
     ↓
   立体図形