数学の美しさとは



数学の美しさとは何でしょうか? 

それは三角関数のグラフの形がきれいかどうかなどということではありません.

数学という「人工物」が,あたかも宇宙がはじまる前からそこにあったかのような

あの完璧なまでの調和のことです.


それはあまりにも美しく,わたしたちはしばしば数学が「人工物」であることを忘れてしまいます.

1+2+3+・・・は無限大になる.1+1は2に「決まっている」というのは,数学が人工物にすぎない

ということを忘れた大きな誤解です.そういうルールの数学もあるというだけなのです.



いまから250年ほど前の1749年に,オイラーは 1+2+3+・・・=−1/12 という式を発見しました.

解析接続を使ってこの式の意味づけをするのには約100年の歳月とリーマンの天才を待つ必要が

あったといいます.この式はわたしたちが中学や高校で習う式とは全く違う世界の数学です.

それでは意味のないものなのでしょうか? そうではありません.オイラーが1772年に発見した

1+8+27+・・・=1/120 という式は,その後インドの数学者ラマヌジャンに再発見された後,

1997年には物理学におけるカシミール効果の実験の説明につかわれています.

つまり,これまでわれわれの知らなかったような数学も存在して,しかもそれがこの宇宙で現実に

おこっている現象のモデルとなっているのです.

思えば近代代数学の祖ガロアが 1+1+1=0 などの式を使って5次以上の方程式に代数的な

解の公式がないことを発見したのは200年ほど前のことでした.



わたしたちが現在みている数学は,数学という大きな宇宙のほんの一部なのだと思います.

隠れて見えない部分の実在を感じ,それをなんとか見えるようにすることこそ,数学をやるという行為

なのではないでしょうか? そして,その発見は,現在われわれの理解することのできる数学,

真の数学からみればほんの一部の数学にすぎないものから,「美」や「調和」への探究心によって

発見されてきているという歴史的事実に,私は感動をおぼえざるをえないのです.  (by N)



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