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『創造と環境』 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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クリエイティブな仕事をしている某組織に入った瞬間から、そのクリエイターは「歩」から「成り金」となって才能を輝かせるが、高給に魅かれてその組織を出た瞬間から「歩」に逆戻りしてしまうのはなぜか…を40年前から何度もニューヨークへ出向き、その組織躰の当事者たちにインタビューしまとめて1969年に上梓したのが表題の著書です。

「クリエイティビティについて、その環境について、語りあいましょう。」

2008-09-30

[効果的なコピー作法](2-4)


少数の常連の方々から、身にあまるほど、たくさんの★★★をいただいていますが、その30倍から50倍の方は、せっかくアクセスしてくださっても、おはげましの痕跡をお残しにならないので、不安もちょっぴり高まってきています。「やはり、45年前の思案は、もう参考にならないか」と。




>>[効果的なコピー作法]目次


コピー・フォーマット


f:id:chuukyuu:20080417031857j:image:w450

小さいことが理想.


私たちの小さな車は、最近では、さほどもの珍しくなくなりました。

12人以上もの大学生が押しあいへし、つめこみ競争をすることもなくなりました。

給油所の者がガソリンの注入口を訊いてうろうろすることもなくなりました。

車の外形に目を丸くされることも---ね。

じっさいのところ、私たちの小さな車はリッターあたり11km走るなんてことを信じない人も---。

そう、オイルも5クォートじゃなくて5パイントです。

ええ、不凍液もいりません。

タイヤmも64,000kmはもちます。

ですから、私たちの経済車になされば、こういったもろもろは思案の外になるのです。

あ、駐車スペースは狭くてもいけるし、車の保険更新料も少くてすむんです。修理代も安いんです。車を下取りに出して新車になさるときもお得です。

考えどころですよね。


【chuukyuu注】へッドラインは変わらず、1年後の新ボデイ・コピーAです。さらに新しいBもいずれ掲示します。




Think small.


Our little car isn't so much of a novelty any more.

A couple of dozen college kids don't try to squeeze inside it.

The guy at the gas station doesn't ask where the gas goes.

Nobody even stares at our shape.

In fact, some peop-Ie who drjyamu Ii ttle flivver don't even think 32 miles to the galIon is going any great guns.

Or using five pints of oil instead of five quarts.

Or never needing anti-freeze.

Or racking up 40,000 miles on a set of tires.

That's because once you get used to some of our economies, you don't even

think about them any more.

Except when you squeeze into a small parking spot. Or renew your small insurance.

Or pay a small re'pair bill. Or trade in your old VW for a new one.

Think it over.


コピー・プラットフォームと似たような用語に、コピー・フォーマット copy format という用語があります。

コピー・フォ-マットというのは、一貫した広告キャンペーン、またはシリーズ広告キャンペーンに関連して、そのコピー部分の外見的構造(見ばえ)を基準化しておくことです。

たとえば、フォルクスワーゲンの引例のすべて,そして、ここには引用しませんでしたが、ほかの100点近い(当時での数)広告などを詳細に見てください。

chuukyuu(注)このブログ全体に引用したビートルの作品例だけでもすでに100例を超えています。トップページ左フレームの[カテゴリー]の「DDBの広告」クリック。その中から「VWビートルの広告」を選択---でご覧になれます。


まず、ヘッドラインが総体に簡潔で、暗示的で、力強いことにお気つきでしょう。これは有名なシンプル・へッドライン「Think small(小さいことを考えよ 意訳して、小さいことが理想)」 以来、VWの基準となっている特徴です.「Think small.」や「Lemon」などと「検査同数」とではコピーライターが違うのです.

「Think small.」はかつてDDBにいたことのあるJ.ケーニグ Julian Koenig氏書いたもので、「Lemon」はケーニグ氏とR.セルドン R.Seldan氏の共作、そして「検査回数」はR.レブンソン Robert Levenson氏が担当したものです。

それにもかかわらず、似ている、ということは、そういうコピー・フォーマットができているから可能なのですね。

ヘッドラインだけではありません。ボディ・コピーの特徴的な短いセンテンス、意表をつく第1パラグラフ、実証的な展開、そして最終パラグラフのウィット---いずれも、統一されているように見えます。

つまり、コピー・フォーマットが明文化されていると見ていいでしょう。


>>[効果的なコピー作法]目次


chuukyuu補】「Think small.」は、VWビートルのキャンペーンが立ち上げられた1959年から半年ほど経過したころ、小さな経営誌へ出稿する広告を考えていたケーニグ氏が、仕事を終えて郊外の自宅へ帰宅するためにマンハッタン中央駅から列車に乗ると、同じコンパートメントの向かいに座ったビジネスマン風の男が雑誌を折り返して読んでいた。こちら側に見えている記事のヘッドラインが、当時、米国のビジネス世界でもてはやされていた「Think big.」をあしらったものであった。

瞬間、ケーニグ氏の頭にVWの姿態と「Think small.」がひらめいたという伝説があります。

ま、クリエイターには、完全な自分時間はないという示唆かもしれません。

しかし、20世紀最高の広告がのそもそもは、小さな専門誌のための広告だったとわかると、どんな広告もおろそかにはできません。米国VW社とDDBは、その後、「Think small」のヘッドラインはそのままで、ボディ・コピーの書き出しを変えた広告を『ライフ』誌ほかに出稿,「Think big」がいいことと信じていた米国人に強烈な衝撃と反省をきっかけを与えたというのが真相なんです。『ライフ』誌などに載った変形「Think small.」はまたいつか、ご紹介します。


【chuukyuuのおすすめ】

>>クローン氏の記事スタイル・レイアウト・フォーマット


第2章を終わります。ちょっとお休みをしてから第3章を引きます。あすからは、お酒好きお待ちかね(?)のシーヴァス・リーガルのキャンペーンにします。

2008-09-29

[効果的なコピー作法](2-3)

こういう形式的なことが好きなコピーライターは多くはありません。「そんなことは、きちんと頭の中にしまってあるよ」って言いがちです。が、新しいチームに仕事をゆずりわたすことだったあります。あなたが有能であればあるほど、次の仕事が期待されるので、あなたは、つねに新期開拓者になる運命なのですから。



>>[効果的なコピー作法]目次


(第2章 コピーのプラン 第3節 コピー・プランのつづき)

臨時に、テーマの検査を、ちょっと異なった視点からあつかった1点のを挿入します。


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どの新車も、少し使われて出てきます。


フォルクスワーゲンにぴったりの道路は、でこぼこ道です。障害がいっぱいの道です。

それをうまく乗り越えるものもあれば、失敗してしまうものもあります。

うまく乗り越えた車は、8,397人の検査員の手で綿密に点検されます(このうち807人が気むずかしい女性検査員です)。

16,000もの異なった点検を受けます。

特別につくられてテスト台の上で、5kmの走行テストを受けます。

すべてのエンジンが使いならされます。

すべてのトランスミッションも。

製造ラインから引き抜かれて行くかぶと虫もたくさんあります。それらの使命は、売られることでなく、テストを受けることです。

漏れないかどうかを確かめるため、水の中を通します。

サビないかどうかを確かめるため、ぬかるみの中、塩の中を通します。

手動ブレーキ、クラッチのテストのため、山を登らせます。

乗り心地のテストのため、強風トンネルを通し、6種類の道路状況の上を走らせます。

トーション・バーか゜うまくねじれるかどうかを確かめるため、100,000回もねじります。

鍵穴からこわれてこないかどうかを確かめるために、鍵を25,000回も回します。

そういったことが次々に行われるのです。

毎日、200台のフォルクスワーゲンがハネられています。

きびしい検査です。


さて、きのうの【例・7】のチョークで車体いっぱいにチェック・マークを描いた広告のコピーをつくったライターの立場を推測してみましょう.


彼の手もとに回ってきている広告企画書は、たぶん、こんなふうな箇条書きか、これをもうすこし詳しく解説したものであったと思います。

(1) VWは正直な車であることを強調するため、工場における厳密な検査システムを周知させる。

(2) VWは米国的大型乗用車の客層とは異なった虚飾とゼイタクさに心理的抵抗をもつ、中産階級以下の知識層を中心とした客層に主として売りたい。

(3) したがって、年ごとの無意味なモデル・チェンジをして、客の経済的負担をかえりみないような愚かな政策をとらないことを強調したい。

(4) しかし、必要な改良は、年式とは無関係に即刻行なっていることを啓蒙する。

(5) にもかかわらず、価格は据え置きで、しかも割安であることを強調する。

(6) しかも、中古車も新車価格なみで奪い合いになっていることを啓蒙する。

(7) サービスが徹底しており、どの年式のものの部品も完全に揃っており、かつ、その交換時間はとても短かく、しかも部品価格が安いので、客にとって有利であることを確約する。

(8) 米国においてはなじみのうすい、空冷式エンジン、およびリア・エンジン方式の有利性につき徹底的に啓蒙する。etc.

といったものではないかと推測します。つまり、これが広告の目的であり、これは、VW社の運営方針から生まれ、米国市場というマーケットに適するようにプランニングされたはずです.

こうした企画を手にしたコピーライターはどうしたか。

彼はまず、この企画書のいくつかの項目をバラバラに解き放して、 1つの広告には、そのうちの幾項目くらい盛り込めるか検討します。そして、その組み合わせをつくります。コピー・プラットフォーム copy platformをつくるわけです。

つぎに、その組み合わせた項目の中で、それぞれの広告で主題とすべき項目を決めていきます。


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なぜ、この鼻がずんぐりしているかって?


VWは、エンジンが車の後部にはいっているので、長いフロント・フードを必要としないのです。

これが、あなたに、長鼻の車にまさる2,3の利点を提供できるユエンなのです。

鼻が短いと、短い車ができるのが道理ですね。

そこで、あなたは、車が混んでいてもすり抜けられますね。また小さな駐車場所への出入りも自由ですね。

そういう時にフェンダーをかするようなことも、全くなし。なぜって、VWの短いフードなら、道路での鼻の下がよく見えるからです。

問題はこうです。VWに関するかぎり、そうあるにはすべて理由がある---改良も含めてね。

あなたが、何年間もVWに乗っていらっしゃらないかぎり、この車のフル・シンクロメソシュ・トランスミッションのことはおわりにならないかもしれませんね。

また、私たちのエンジンが、より完全でより強力になったことも。

そのほか、3,012ヶ所の内部の改良のことも。

外観についてだけいえは、VWは同じに見えますが、その内部は変わっているのです。

VWがあまり値下がりせず、くる年もくる年もスタイルを変えていない理由もここにあります。

鼻を含めてすべてのことが。


「なぜ、この鼻がずんぐりしているかって?」の場合は、(2)の米国的大型乗用車の虚飾とゼイタクと、(4)の必要な改良は即刻行なう---といった項目をミックスしてテーマとしてるハズです.


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この方は、33年後にかぶと虫を手に入れました。


1台目のフォルクスワーゲンを買うのに、33年間もお待ちになる方がめったにいらしゃらないのは、私たちにとって幸いなことです。

けれども、アルバート・ギリスさんはお待ちになったのです。多分、いつも正しい考え方をしていらっしゃったのでしょう。ギリスさんの場合、33年間、新車の必要がなかったのです.

ギリスさんと1929年A型フォードとは、お互いにうまくやってこられした。

ギリスさんは、修理をご自分でなさり、夜中にタイヤを直すためにジッキを持ちだしたこともありました。

去年、新車が必要になったとき、出かけていってフォルクスワーゲソお求めになりました。

「長持ちするって聞いたので」とギリスさんは説明しました。

ギt)スさんはVWが好きなんでしょうか?

彼は78歳の治安官。せっかちな判断はしません。

「お宅の検査員はまったくよく検査しますね」ギリスさんが言ったのそれだけ。

けれども、ギリスさんは、奥さんと54回めの結婿記念日に旅行をしたとつけ加えました。

お2人は10,800km走り、ガソリン代62ドル、オイル代55セントを払ったそうです.

「オイル焼けするかもしれないとは思わなかった」そうです。


「この方は、33年後にかぶと虫を手に入れました」の場合は、(1)の検査システムと、(2)と(8)の空冷式エンジンの経済性の項目をミックスしているハズです。

W・ダンの目的の種類からいえは、心理的目的の(ロ)、(ニ)、(ホ)、(-)、(チ)、(リ)、(ヌ)に関係し、M・デポーの広い層を相手とした間接的広告をつくることを目的としています。

しかも、その目的達成のための手法としては、じつに申し分がありません。

ボディいっぱいにチョークで印をつけた、 「VWの検査回数」の広告にしても、車の前部だけがあって全体を見せない「ずんくりした鼻」の広告にしても、視覚的に読みも手の目を止め、かつヘッドラインが興味深い書き方で、しかも謎めいているので、読み手はついボディ・コピーに誘いこまれてしまいます。広い層を相手とする広告は、リーダシップを高めるコピー・テクニックを用いなければなりませんが、この2点の広告は、その責めをりっぱに果たしているといえましょう。

さて、私はいま、 コピー・プラットフォームという言葉を使いました。日本では耳なれない用語ですが、コピー・ライテイングの上から、大切な用語です。

コピー・プラットフォームというのは、広告の目的書や企画にしたがってコピーライターが作成しなければならない表で、製品利便(ベネフィット product benefits)を製品特質(アトリビュート productattributes)で証明した、 コピーの貸借対照表とでもいいましょうか.

フォルクスワーゲンの例でいいますと、「検査回数」と「不良品」のヘッドラインおよびコピーは.


製品利便 ┃ 製品特質
不良品をつかまされる不安がまったくない ┃ 徹底した検査システム(具体的事実)
長持ちする(維持数が少なくてすむ) ┃ 入念な仕上げ(具体的事実)
売るときに有利 ┃ 中古価格が高い
現在乗っている車が旧型ににならない、
したがって肩身のせまい思いをしないです
 ┃ 外観のモデル・チェンジは20年間していない

といった、コピ−ライターのつくったコピ−・プラットフォームによっていると想像されます。

コピーライターは、 コピーを書きはじめる以前に、 コピー・プラットフォームを作成しておくと便利であるばかりか、1つ1つの広告が、ワーゲンのいくつもの広告のように、制作する時期が異なっても、同じ基調のコピーを書くことができるので、印象の積み重ねがきき、有効です。


【第2章は、明日の[コピー・フォーマット]の項で終わります。】

2008-09-28

[効果的なコピー作法](2-1-2)

広告には、タブー(禁句)といわれている言葉がいくつもあります。クルマだと、欠陥車、整備不良、廃車(敗者)、手抜き、手ぬかり、酒酔い運転、暴走族、エンスト---一般的には、不良品、負け犬、落選、談合、買収、賄賂、虚偽、醜悪、泥酔、老廃、暗殺、墓場、お化け---などなど。VWの「Lemon」は、このタブー語を真正面からとりあげたから大成功しました。ま、ゲームとして、上記の禁句を逆転させるには、どんな絵をつければいいかを考えてみるのも、日曜日をきびしく過ごす、一策かも。




>>[効果的なコピー作法]目次


(第2章 コピーのプラン 第1節 広告の評価のつづき)


あなたは、この広告のほかに、フォルクスワーゲンの広告をごらんになったことがありますか? 

その広告には、どんなことが書いてありましたか?

また、 どんな写真が使ってありましたか?

f:id:chuukyuu:20080928061139j:image:rightこのほかにVWの広告をお読みになっていないのでしたら、拙編著『フォルクスワーゲンの広告キヤンペーン』(美術出版社刊 1963)をお読みください。VWのキャンペーンが始まってから1963年春までの、ほとんどの広告を紹介しています。

さて、それらの広告とこの「不良品」の広告とは、どこでつながっていますか?

じつは、 このフォルクスワーゲンの広告は、いままで米国の雑誌に載ったものとしては、13番目にあたります。そしてそのうち、この「不良品」と同じテーマをメインに据えた広告は、10点以上あります。

また、この厳しい検査・すぐれた品質をサブ・テーマとした広告が、やはり10点近くあります。

もちろん、視覚的な表現はまったく異なっていますが。

ご存じのように、フォルクスワーゲンが米国に上陸したのは、1949年です。その前に、技術者たちが送りこまれて、サービス・ステーションが設けられ、「車があってサービス(修理体制)があるのではなく、サービスがなければ車がない---というのが当社の建前です。車に故障が起きたとき、当社独特のパーツがなかったり、修理費が高くつくようでしたら、車の代金をお返しします」

(田口憲一さん『VW世界を征服す』新潮社刊)というPRをやりました。

そして1959年、米国VW社とDDB社とのあいだに取引きが開始されました。

新しいアカウント(取引勘定)が決まると、そのグループの全メンバーがクライアント(依頼主)をたずねて商品についての十分な知識を得るというDDB社のやり方に従い、彼らはドイツのヴォルフスブルクにあるVWの工場で、つぶさに製品を研究しました。


そして、「VWは正直な車である」というセリング・プロポジション selling proposition (販売命題)を決めたのです。

DDB社のバーンバック社長はこういっています(A speach by William Bernbach, AAAA. 1961)。

もし私たちが、「フォルクスワーゲンは正直な車です」という言葉の上に、十分なお金を積むことができたなら、そのお金の重みだけで大衆の心にその文句を焼きつけることができただろうと思います。しかし私たちには、それだけの時間もお金もありませんでした。私たちは、同志クリエイティビティ(creativity)にご登場を願わなければなりませんでした。私たちは、人びとをギョッとさせ、決して忘れられないようなやり方で、私たちの利点を直ちに気づかせなければなりませんでした。これが、クリエイティビティの真の機能です(中略)。

あなたは、 「不良品」という見出しで、ただ1台の車を示しただけの広告を覚えていらっしゃるでしょうか? 車の欠点を摘摘して、いまや伝説にさえなっている広告だということはご存じでしょう。

しかし、これは、それゆえにこそ、これは正直な車であるということを、証明するために使われたのです。というのは、それがドアのどこかに目に見えないいようなカスリ傷があるというので、この車を不良品だといったのは、VWの非情な検査員だったからです。

私たちがただ、 「すべてのVWはきびしい検査をパスしなければなりません」といったと想像してみてください。不良品という一語の見出しのクリエイティブな一撃であらわされたのと同じことを主張するのに、どれほど数多くの広告と、どれほど多額の金がかかるとお思いになりますか?

しかし、読者に語りかけるのは言葉や写真だけではありません。紙面には感じや調子があります。そしてこの2つは、VWの広告で、レイアウトは非常にシンプルでわかり易く、清潔です。活字はクラシックで、装飾的ではなく、コピーの文体は機能的で、直哉です。主語、動詞、目的語です。

正直という私たちのセリング・プロポジションを、できるだけ早く、できるだ強いインパクトで消費者に届かせるために、すべてのことが心理学的にクリエイティブに行なわれています。


これで、「不良品」という広告、そしてこれと同類の広告の目的とするところがおわかりいただけたでしょう。

1つの広告を見た場合、その広告が何を目的として作られているか。その広告とキャンペーン全体とのつながりはどうやってつけてあるか。また、広告主の総体的なマーケテイング戦略とどうつながっているかを判定してからでないと、その広告の評価は下せない、という自明のことを、もう一度確認しておきたかったからです。


広告の目的

しかし、逆にいいますと、この広告評価のやり方は広告のプランニングの手順にもあてはまります。

広告のプランニンクは、広告の目的を決め、その目的を達成するためにもっとも効果的と思われる各種の手法を決めることです。

ここでいう広告の目的とは、ジョン・E・ケネディ John E. Kennedy の「印刷した販売術」つまり, 「売る」ことはありません。「売る」ことは、企業の活動の目的ではあっても、広告の日的というには、あまりに狭義すぎます。「売る広告」としては、通信販売用のカタログがわずかにそれに当たります。

M.ワイズマン Mark Wiseman は、「買いものの下ごしらえをすること」といっています。これも、買い手の側に観点を置いた点はいいとしても、漠然としすぎています。

D.B.ルーカス D. Lucas とS.H.ブリツト S.H.Britt は、「商品やサービスを売ること、あるいは売りやすくすること」といっていますが、これも、一方的すぎます。

広告の目的にはさまざまな種類があってねひと口ではいいきれないはずでする効果的なコピーを書くためには、そのさまざまな種類を心得ていて、それを達成するための手法を用いなければなりません。


広告の目的の種類について、W.ダンはつぎのように分類しています。

(W.S.Dunn "Advertising Copy and Commuication" CAPT.5 Copy objectives, 1956)


1.心理的目的 Psycological objectives

  広告される製品やサービスの新しい使いみち、または新しいアイデアを消費者に教えること。

  製品を消費者がうける大きい利便にむすびつけること。

  その製品を使えば、何かイヤなことがなくなるということを知らせること。

  ひろく認められている人物、またはシンボルに製品を結びつけること。

  消費者が共通にもっている念願、または理想に製品を結びつけること。

  独自なもの、または異常なものに製品をむすぴつけること。

  前に用いられたアイデアやスローガンを消費者に思い出させる。

  その製品やサービスが、どのように基本的欲求を満足させるかを示すこと。

  消費者の無意識欲求を利用すること。

  消費者の態度と戦うこと。


2. 行動的目的 Action objectives

  その使用回数をもっとふやすよう消費者を勧誘すること。

  製品の取り換え回数をふやすため。

  オフ・ンーズソに、消費者がその製品を買うようにすすめること。

  ある製品の代わりに別のものを消費者に使わせること。

  ひとりの人に訴えて、その人から他の人へその製品を買うよう影響さすこと。

  製品の試用を消費者にすすめること。

  消費者がその製品を名指して買いにくるようにすること。

  サンプルその他の提供物の問い合わせをとる。

  人を店へこさせること。


3. インスチチューショナルな目的 Institutional objectives

  会社が公共心に富んでいることを示すこと。

  従業員関係をよくすること。

  株主の会社にたいする信頼を増すこと。

  全社が業界のパイオニアであることを大衆に得心させること。

  従業員を会社に引きつけること。

  会社の製品またはサービスが広範囲こわたることを示すこと。


4.マーケティングの目的 Marketing objectives

  その種の製品にたいする基礎的な需要を刺激する。

  その製品にたいする選択的需要を確立する。

  自社販売員や熱意をもやさせること。

  自社の製品を拡売するように小売店を励ます。

  自社製品を仕入れる小売店をふやす。


これらの目的は、単独で広告の中に提示されることもあれば、いくつか組み合わせて提示されることもあります。


また、M.デポーは広告の目的を定める順序として(注)

(1) 相手のようすを心にえがく。

(2) 製品を中心とした目的か、会社を中心とした目的かを決める。

(3) 広い層を相手とするか、相手を限るかを決める。

(4) 直接に行動をうながすか、間接的な広告にするかを決める。

(5) どんな心理的反応を求めるかを定める。

としています。

(注)M.Devoe "Effective Advertising Copy" Part 3, What is this ad supposed to accomplish?" 1956


■ コピー・プラン


広告の目的を決める企画会議に、つねにコピーライターが出席するとはかぎりません。また、かりに出席したとしても、その発言権が大きいとは限りません。

コピーライターが広告の目的に関係するのは、その人の実力にもよりますが、だいたい、その実施面、つまり制作会議からであると考えた方がよいでしょう。

もっとも、経営者に信頼のあついライターなら、企画会議で彼の意見をつねに採用されたることもありましょう。早く、そうなりたいものです。

しかし、コピーライターは。決定した広告の目的を具体化する役割りについて責任をもつのですから、すべての広告の目的についての知識を所有しており、かつ、それを伝達し、達成するための手法をマスターしていないければなりません。


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フォルクスワーゲンの検査は、こんなに何回も行われます。


これらは、私たちの小さな車が、工場で受けなければならない「オッケー」の一部です。

(オッケーとノーを区別するのは簡単。ノーの一つをあなたはすでにご覧になりましたね)

私たちは、ノーというためのものを見つけるだけのために、5,857人もの人間に給料を払っているのです。

それでも、ノーは、ノーです。

ブラジルからの見学者で、屋根がへこんででてきたらどうするのかとお尋ねになった方がありました。

へこみはハンマーでたたき出せますね。

そこで私たちがやったことが、少し驚かせたようです。

ボディを打ち砕いてスクラップ置場へ放り出してしまったのです。

天井の内張りのでき。

ドアの支柱の仕上げ。

最終検査だけとっても、VWは、1票の反対票もなしに342の点検を通過しなければなりません。

50台のうち1台は通過できないでいます。

けれどもあなたは、首尾よく通過した車だけをご覧になっていますよ。


たとえば、フォルクスワーゲン広告、「フォルクスワーゲンの検査は、こんなに何回も行なわれます」を見てください。

これは、「不良品」という広告をさらにわかりやすく表現してみせたものです。VWの広告の

コピー・スーパバイザーであるR・レブンンソン氏の話によると、「VWは同じ広告を2度使わない。なぜなら、その次には、もっといいものができると考えているからだ」(注)といっていますが。

「不良品」のほうは1960年5月18日号の『ライフ』誌に載ったもので、「検査」のほうは1963年8月18日号の『ルック』誌に載ったものだということがわかると、レブンソン氏の言葉もうなづけます。


f:id:chuukyuu:20080928061338j:image:right:w110chuukyuu補】VWビートルのキャンペーンについて、図版入り数冊の本を上梓したのは、もう、30年前後も前のことです。心酔に近い状態だったので、2つのことを見逃がしていました。

1つは、広告のすばらしい効果のせいで、ビートルは、デリバリー(配車)までに発注後4ヶ月待たされていました。その間、注文者に「自分はいい買い物をしたんだ」と信じさせつづける目的を広告がもっていたこと。

も1つは、ビートルの米国でのシェアは、乗用車としては3%から5%の少数派だったこと。多数派だったら?

それはともかく、「フォルクスワーゲンの検査は、こんなに何回も行なわれます」は、見えないものを見せるという、視覚的に置き替え---一種の錯覚を利用しています。それが見事ですね。

こちらは、「Lemon」の検査を、もっと衝撃的なもので見せています。


f:id:chuukyuu:20080809024955j:image

VWはいつも工場で小さなトラブルに巻きこまれています。


このがらくたは、フォルクスワーゲンになるべく進んでいたときに、石の壁にぶっつけられてしまってできたものです。

きびしい検査員がそうしたのです。

彼らは、生産ラインからチェックした部品を抜き出して、20台分の車、あるいは貨車2両分のスクラップをつくりだしています。

各工程でフォルクスワーゲンを文字通りバラバラにしてしまう検査員が何千人もいるのです。

フェンダーに小さなひっかき疵があれば、彼らに大きな疵つけられてしまいます。

バンパーに小さな切り傷があってもぶっつけられてしまいます。

10人の作業員がやったことを、1人の検査員が台無しにしてしまうのです。そして塗装段階では、1台のVWの点検に8人の検査員があたっています。

とはいえ、この検査の仕事があるのは、作業がルーズに行われているからではないのです。

VWをつくる人たちは、十分に注意してやっています。検査員がそれを完璧に仕上げるのです。


f:id:chuukyuu:20080412031702j:image

こんなにたくさんの人がフォルクスワーゲンを検査しているんですよ。



あなたの車と新しいフォルクスワーゲンの間にある障害物はたったの二つ。

1,799ドル

そして、1,104人の検査員

値段のほうは、あなたの問題。

すべてのフォルクスワーゲンフォルクスワーゲン工場を出る時に、オッケーをくだす検査員の人数は私たちの問題。

1人の人が私たちの工場の一人前の検査員になつてしまうと(それには3年かかりますが)、彼はちょっと違った人間になつてしまうのです。

つまり彼は、車の製造に関するどんな決定でも、そっくりくつがえしうる権限を手にするのです。

(この写真の中のだれか1人が「ノー」というと、そのフォルクスワーゲンフォルクスワーゲンでなってしまいます)。

VWのどんな部品も、最低3回は検査を受けます。ということは、1台の車が工場からあなたの手に渡るまでには、合計で16,000回の異なった検査を通りぬけなければならないということです)。

いいですか、16,000回ですよ。

こんなふうにして、私たちは1日に平均225台のかぶと虫を失っています。

これで、あなたの注文したフォルクスワーゲンの新車が思ったよりも手間取ったとしても、理由はもう、ご納得いきましたね。

早くつくれないのではないのです。

きちんとつくろうとすれば、そんなに早くはつくれないということです。


ビートル・キャンペーンも10数年目に入った1970年代、VWのクリエイティブ・チームのだれかが、製品のすぐれた品質の訴求に力点を置くようになった---といった意味の発言をしていました。

生産車種が、ラビットとかゴルフなどに広がったので、先行のビートルの広告で、それらの車種にも好印象をおよぼす、検査とか品質を訴求るようになったのでしょう。


明日に続く


>>[効果的なコピー作法]目次


参考『かぶと虫の図版100選』テキスト

2008-09-27

[効果的なコピー作法](2-1)

しょっぱなにも書きましたが、46年前、chukyuuが32歳から33歳のときに忖度した結果のものです。ま、46年後のいま読みかえして、幼さは感じますが、古さはさほどに覚えないといったら手前味噌でしょうか。あと、20年後に読み返すとどうかな---と苦笑しながら、アップしています。

(PCの調子のおかしいの、直りました。インターネット・エクスプローラーVer.7に hatena が対応していなかったみたい。Ver.6へ戻したら直りました。進みすぎると周囲がついてこれません)。




>>[効果的なコピー作法]目次


第2章

コピーのプラン


コピーをプランすることは、広告そのものをプランする

ことでもあります。広告のプランニングは、広告の目

を決め、その目的を達成するためにもっとも効果的と

いわれる各種の手法を決めることです。

その手順は? どんな方法で? この章では、世界一の

キャンペーンといわれる、フォルクスワーゲンの広告を

例にして解説。とくに「コピー・プラットフォーム」「コピー・

フォーマット」という用語は、日本初登場。




【例・6】

f:id:chuukyuu:20080927032729j:image


あなたが車メーカーの経営者だったとして、こんな広告、O.K.なさいますか? 


ほとんどの自動車メーカー--- というより、この場合、ほとんどの広告主は、このような広告に近寄ろうとはなさいませんでした。

ネガティブすぎる、大胆すぎる、というわけです。

フォルクスワーゲンは、そうは考えませんでした。

彼らは、工場での検査についての話を人びとが読み、そして信じるようにするための、かなり驚くべき要素をこの広告がもっていると私たちが考えたのに同意したのです。

ただのトリックやギミックではない話そのものから何かがにじみでてくること。

ごらんのとおり、その何かを、私たちは出すことができました。

この広告の成功とは別に、それから全般的なフォルクスワーゲンの広告とも別に、こういう考え方もあるのです。

正しいアイデアを持つ広告代理店は、正しいクライアントをひきつけるものだということです。


Esquire 1963年8月号


広告の評価


私たちは、まい日、たくさんの広告に接します。

で、職業柄、ついつい、「ナカナカ楽シイ広告ジャワイ」とかね「クダラナイ広告ジャナ」とか思ったり、つぶやいたりします。

しかし、何が楽しくて、何がくだらないのか、その基準についてはあまり深く考えないものです。(ほとんど、自分の感性で即断しているといってもいいのでは---)そういったインスタント採点法も1つの広告の見方かもしれませんが、それでは、自分は納得できても、ほかの人を納得させるには、いささか貧弱な論拠でしょう。

さて、(例・6)のドイル・デーン・バーンバック(Doyle Dane Bernbach)広告代理店の自社広告があります。

1963年8月号のエスカイヤ誌に載ってっていたものです(chuukyuu補:推察ですが、媒体側が謝礼としてスペースを提供したのでしょう)。

このドイル・デーン・バーンバック(DDB)社は、米国の広告代理店の中で第19位(1962年)の会社ですが、私のもっとも好きな代理店の1つです。

ところで(例・6) の広告は、同社が創造したフォルクスワーゲン・ビートルの広告キャンペーンの中の1つで、有名な「不良品」というのを引きあいに出して上記のように主張しています。

では、このDDB社の広告に引用されているフォルスワーゲンの広告を読んでみましょう。これは、1960年4月11日号のライフ誌に載ったものです。



【例・7】

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不良品


このフォルクスワーゲンは船積みされませんでした。車体の1ヶ所のクロームがはがれしみになっているので、取り替えなければならないのです。およそ目につくことがないと思われるほどのものです。

が---クルト・クローナーという検査員が発見したのです。

当社ヴォルフスブルクの工場では3,389人が1つの作業にあっています。フォルクスワーゲンを、生産工程ごとに検査するために、です。 (日産3,000台のフォルクスワーゲンがつくられています。だから車より検査員の方が多いのです)。

あらゆるショック・アブソーバがテストされます(部分チェックではだめなのです)。 ウインドシールドもすべて検査されます。何台ものVWが、とうてい肉眼では見えないような外装のかすり傷のために不合格となりました。

最終検査がまたすごい!  VWの検査員は1台ずつ車検台まで走らせていって、189のチェック・ポイントを引っぼりまわし、自動ブレーキ・スタンドへ向けて放ちます。それで50台に1台のVWに対し、「ノー」をいうのです。

この細部にわたる準備が、他の車よりもVWを長持ちさせ、維持費を少なくさせるのです (中古VWが他の車にくらべて高価なワケもこれです)。

私たちは不良品をもぎとります。あなたはお値打ち品をどうぞ。




Lemon.

This Volkswagen missed the boat.

The chrome strip on the glove compartment is blemished and must be replaced. Chances are you wouldn't have noticed it; Inspector Kurt Kroner did.

There are 3,389 men at our Wolfsburg factory with only one job: to inspect Volkswagens at each stage of production. (3000 Volkswagens are produced daily; there are more inspectors than cars.)

Every shock absorber is tested (spot checking won't do), every windshield is scanned.

VWs have been rejected for surface scratches barely visible to the eye.

Funktionsprufstand (car test stand), tote up 188 check points, gun ahead to the automatic brake stand, and say "no" to one VW out of fifty.

This preoccupation with detail means the VW lasts longer and requires less maintenance, by and large, than other cars. (It also means a used VW depreciates less than any other car.)

We pluck the lemons; you get the plums.


ごらんになり、お読みになって、あなたはどんなふうにお感じになりましたか?

気が利いている? 大胆? 楽しい? おもしろい?

どちらの広告がですか? DDB社? それともフォルクスワーゲン

どちらでも結構ですが、いまは、VWの広告のほうを、もうすこし考えてみましょう。


明日につづく




f:id:chuukyuu:20070810045030j:image:rightchuukyuu補】最近のことです。

”Helmut Krone. The book.

Graphic Design and Art

Direction (concept, from and

meaning) after advertising's

Creative Revolution."

とおそろしく長々と題した本を手にいれました。

サイズ:35cm×24cm 厚さ268ページ 

万に近い値段でしたが、旧友の消息を聞いたような感じで購入しました(広告関連のものはすべて美大の図書館へ寄贈したのに---)。

クローン氏(1925〜1996)は、フォルクスワーゲン・ビートルの記事ページ・スタイルの有名なレイアウト・フォーマットを作ったDDBの幹部アートディレクターです。

「このフォルクスワーゲンは船積みされませんでした」をへッドライン(見出し)にしたラフスケッチを個室の壁ボードに掲示して眺めていました。

そこへ、旧友の女性コピーライター---ミズ・リタ・ワーグナーが入ってきて、壁を一瞥、

「あら。レモンね」

って呟いたのです。

クローン氏はとびあがって喜びました。

新しいヘッドラインが生まれたのです。短くて、パンチがきいてて、記憶に残るへッドラインの誕生です。

記憶に残る---といいましたが、広告史上、記録に残るヘッドラインでもあります。

46年後のいまだからいえるのでが、それまでの名ヘッドライン(キャッチ・フレイズ)とされていたものは、ほとんど、Why, Who, When, Where, How---で始まっていました。いわゆる、通信販売用のヘッドラインです。

それが、たった1語の「Lemon」ですからね。

46年後のいま、ぼくは「コピー作法」に「シンプル・フレイズ」という1章を加えるべきだったと後悔しています。「不良品」を見ていて、気がつかなかったのです---「若書き」の失敗例です。

もっとも、「若い時の恥は、恥じゃない」ともいいますが。「人は、失敗から学んで成長する」とも。「後悔から学んで---」だったかな?


【chuukyuuのおすすめ】

>>クローン氏の記事スタイル・レイアウト・フォーマット

>>「レイアウトを語る」ヘルムート・クローン氏 インタヴュー

2008-09-26

[効果的なコピー作法](1-4)

いつ頃から、「キャッチ・コピー」という奇妙な和製英語が流行ることになったのか。最近では、記者が新聞記事の中でも、広告の「決め言葉(キャッチ・フレイズ)」をさして使うようになってきている。嫌な造語だ。察するに、印刷媒体のそれにはヘッドライン(見出し)、サブ・リード(小見出し)というきちんとした用語があり、つづいてボディ・コピー。ところがTV-CMの「決め言葉」のいいまわしに困ったか、「キャッチ・コピー」。キャッチ・ガールを連想させる下卑た語感。新聞記者が自分の新聞のヘッドラインを「キャッチ・コピー」と呼んでいるのは見たことがない。あの人たちはやや揶揄的に使っている。この稿では、きちんと「ヘッドライン」で通した。




>>[効果的なコピー作法]目次


読者をメイン・コピーにひきずりこむ]---のつづき

(承前)これは、簡単なようで、その実、非常にやっかいなテクニックなのです。

テーマは、その広告のヘッドラインとメイン・イラストレーション、ボディ・コピーの第1節と最終節にくっきり表わしておかなければ、読者に明確に伝わらないという原理があります。S&Wの広告を参考例にあげたのは、この点が実にうまいからです。

f:id:chuukyuu:20080925025435j:image:right:w250もう一度、「大きな魚は逃がしてやります」の広告を見てください。そして、ボディ・コピーを読んでみましょう。

ヘッドラインからメイン・イラストレーション(この場合は写真)、 そしてボディ・コピーが、 マグロの缶詰は小さい魚を詰めたのがおいしいというテーマ・アイデアで統一されて、全然乱れていません。

この、マグロの缶詰の分だけではありません。シャケの広告も、トマトの広告も豆も、みんなそうです。まるでコピー作法の手本のような広告なのです。

ヘッドラインでテーマ・アイデアを提示することと、ボディ・コピーにまで読者を誘いこむための余地を残しておくという、一見矛盾したように思えるテクニック上の問題は、 ライター個人の熟達した判断がその調和を保たせます。

いずれにしても、この、読者をメイン・コピーにひきずりこむというヘッドラインの機能をりっはに働かせるためにも、「そこには何か自分のためになることが書かれてありそうだ」と読者に思わすような、その製品から消費者が受ける利便にもとづいたテーマ・アイデアを提示するのが常道です。

f:id:chuukyuu:20080923032718j:image:right:w65f:id:chuukyuu:20080924024006j:image:right:w65f:id:chuukyuu:20080925025434j:image:right:w65


ヘッドラインの種類

多くの人が、それぞれの基準を立ててへッドラインを分類していますが、そのほとんどが、たんに様式化するにとどまっています。

たとえばH・ロンソソの"Advertising dictionary of selllng words、 phrass and appeals"は、 実際に使用されたものを数年分採集して再分類していますが、各製品ごとに一般的アピール(general appeals)と個別的アピール(specirfilc appeals)という項目を立てて、それぞれの製品に即した細分類を行なっています。

飛行機旅行の項を例によると、一般的アピールでは、気分、タイプ、サービス、風景、経済性、その他に分かれており、個別的アピールには、スピード、スケジュール、設備、食事、安全性があげられています。

W・ダンは、


(1) ニュース性のヘッドライン   news headline

(2) 好奇心に訴えるヘッドライン  curiousity headline

(3) 感情に訴えるヘッドライン   emotional headline

(4) 指示的なヘッドライン     directive headline

(5) ヘッドラインなしの広告    no headline


というふうに分類しています。

ただし、彼は「広告人の多くは、ヘッドライン・コピーやその他の広告要素を分類するのをエセ精密」とあざ笑っています。

私も「ヘッドラインの形態的分類を省きたいのですが、ヘッドラインの種頬を頭に入れておくと、ライターがコピーの行き方をまとめるのに役立つことが多い」と断わり書きもしています。


またM・デポーは、へッドラインの分析は「内容または主題を基準にする方が役立つ。なぜなら、ヘッドラインがいっている内容は、それがどのようないい方をしているかよりも、効果に影響することが知られているからである」と、ヘッドラインの様式的分類を批判して、内容を基準にしたというヘッドラインの主たる種類を5つ挙げ。それぞれの効果を解説しています。

それによると、


(1) 製品の利便を主とした、商品名なしのヘッドライン

  product benefits

(2) 製品の特質にもとづいた、商品名なしのヘッドライン

  product attributes

(3) 製品の利便を主とした、商品名入りのヘッドライン

(4) 製品の特質にもとづいた、商品名入りのヘッドライン

(5) ヒューマン・インタレストなヘッドライン


となっています。そして、


(1)の「製品の利便を主とした、商品名なしのヘッドライン」の効果を、ボディ・コピーを読ませようとするときにもっとも強力であるが、競争的に弱いと指摘しています。

(2)の「製品の特質にもとづいた、商品名なしのヘッドライン」はいちばん力の弱いヘッドラインだときめつけていますが、その製品が非常に興味のあるものならば、このタイプのヘッドラインも利用価値があるともいっています。

(3)の「利便を主とした、商品名入り」は、(1)のタイプと同様に興味をひく力があり、現在の使用者を選び出すが、非使用者はヘッドラインから先を読もうとする刺激をうけないだろう、といっています。この種のヘッドラインが適切なのは、広告内容が単純で、ボディ・コピーを重視していない場合、また、(1)のタイプのものを競争的に強くしたい場合だ、ともいっています(ただし、銘柄名が広告のなかでよく目につく場所においてある時には無用のテクニックです)。

(4)の「特質にもとづいた、商品名入り」は、(2)と同様に興味をひく力が弱い上に、現在の使用者さえ興味を覚えないといっています。

(5)の「ヒューマン・インタレストなヘッドライン」については、人間の興味をひく広範囲な内容をもっていなければならず、それは、人の心に訴える力があり、何かの思想か、満足を約束するかを示唆しなければならないといいます。恩恵というのは「読むことからくる」恩恵です。つまり、コピーの残りを読めば何かが得られると読者が期待することです。


S&W缶詰の広告例で、このタイプのヘッドラインに近いのは、「大きい魚は逃がしてやります」でしょう。

このへッディングは非常に直接にS&Wマグロ碓語のよさを指示していながら、表現はヒューマン・インタレスト性が強く、しかも、遠まわしでない点がめずらしいコピーです。

とにかく、へッドラインをどんなふうに分類しょうと、そのことから創造的なモメyトは何も生まれてきません。

例にあげた「大きい魚---」にしたところで、実際のところ、W。ダンの分析法を用いても、M。デポーの分類にしたがっても。、ひと筋縄にはいかないのです。

ヘッドラインのテクニックには、まだまだいろんな問題があります。

動詞を入れると訴求力が強くなるとか、命令型のへッドラインは危険を伴なうとか、質問型のヘッドラインは、読者が簡単に答えられないような問いにしておくとボディ・コピーが読まれる確率が高いとか、未来型のヘッドラインは弱いとか、いちいち数えあげたらきりがないほどあります。

しかし、型式に属することは、じつはさほど重要ではありません。初心者には研究の手順を、べテランには知識と経験の再整理の意味しかないといってもよいでしょう。

へッドラインのテクニックで大切なのは、何を、いかにいうかの、「何を」を決めることです。

しかもそれはいままで、テクニックと考えられないで、プランニングの問題とされていました。つまり。広告の目的とされていました。しかし、ヘッドラインの作り方の見地から、この問題を検討してみると、また変わった考え方が生まれてきます。


(この章 了 >>第2章)


>>[効果的なコピー作法]目次

2008-09-25

[効果的なコピー作法](1-3)

故・向井 敏くんは[雌伏20年]の中で英才、駿馬、傑物、才媛が輩出した1960年代の米国広告界を「黄金の10年 Golden Decade」と凝縮してみせました。『効果的なコピー作法』はその「黄金の10年」を掬いとってみた記録です。日本の広告クリエイティブが、国際的視野でみて「黄金の10年」になることに資することができれば、もって瞑すべし。

【chuukyuuからのおせっかい】そうそう、これは、多摩美大のグラフィック科の学生への講義テキストでもありました。コピーライターの初心者の方、アートディレクターとの共同作業の足しに、その友人にもおすすめになってみてください。




>>[効果的なコピー作法]目次


第1章 ヘッドライン ■マス・オーディエンスの中から見込み客を選びだす−−−のつづき


【例・4】

f:id:chuukyuu:20080925025435j:image

大きな魚は逃がしてやります。


小さなマグロは、まるで小羊や、小さな豆や果実の芯のように柔かいものです。ですから、S&Wは、大きな魚を決して缶詰に使いませんし、あなたがS&Wの缶をあけると、きっと、汁の多い若いマグロが入っています。もし捉えた魚がみんな大きかったら? S&Wは缶詰にしないだけです。なぜって、それが完璧でなかったら、S&Wは缶に詰めません。


【例・5】

f:id:chuukyuu:20080925025434j:image

S&Wの一粒の豆の苦難。


それは、"完璧"という特別種で、

大いなる中西部の豊かな土壌で育ち、

若いうちに刈入れされた豆であらねばならないのです。

甘い皮の柔かさをテストされ、

その若さを当社の円熟度計で証明され、

砂糖のような甘さをわが社の熟練者に味見されなければならないのです。

すべての点で完璧なら、その豆はS&Wのラベルを獲得します(これって責任重大といえますよね)。

しかし、それが完璧でなかったら、S&Wは缶に詰めません。


(承前)ここに、誤解されやすいテクニックがあります。

S&Wの例でいいますと、(例・2)「S&Wは、大粒の50ヶの桃から5ヶだけを厳選して、あとは捨てます」と「S&Wの一粒の豆の苦難」のようなヘッドラインに関して起こることですが、銘柄名、社名をヘッドラインに入れると、明確性と特定性がすぐれて、見込み客を選びだす力が強くなるのではないか、という誤解です。

このテクニックは、明確性とか特定性とはあまり関係のない、いわゆる識別手段です。

識別のたのテクニックであるなら、へッドラインに銘柄名や社名を入れなくても、パッケージング、ロゴ logotype で十分に果たせます。

はじめのシャケの広告でも説明したように、まっ先に目に飛びこんできたのは「ギラギラうろこを光らせたシャケと、それに巻かれたS&Wのラベルでした」

識別手段は、ヘッドラインのテクニックとしてよりも、 レイアウトのテクニックの方により比重がかかっていることを承知しておきまょう。


読者をメイン・コピーにひきずりこむ


広告コピーの機能の中に、説得という働きがあり、これは主としてボディ・コピーが担当します。

したがってヘッドラインやメイン・イラストレーションがストッパーとしての役目を果たし、目をとめた読者をボディ・コピーに誘いこまなければなりません。

S&Wの例では、はじめの「私たちは、塩を加えるだけ」とか、「大きな魚は逃がしてやります」などは、比較的その力が強いでしょう。

この例の場合は、へッドラインが暗示するナゾを解明してみたい、という気持ちが起きるからです。

ここまで読者にナゾをかけるのには疑問がないでもありません。コピーライターの期待どおりに、読者が反応するかどうかわからないからです。

でも、この例は、テクニック上の1つの教訓を示しています。すなわちヘッドラインでは、その広告テーマのすべてを公開してはいけないという原理の正しさです。

ヘッドドラインで、その広告のテーマをすべて述べてしまうと、読者はそこで了解して、ボディ・コピーを混まないでページをくってしまいます。

これは、簡単なようで、その実、非常にやっかいなテクニックなのです。


以下、明日につづく


>>[効果的なコピー作法]目次




きょう、縁あって、お読みくださった、あなたの星・ご好意のしるし★を、残していってください---

45年も前に書かれたとはもおもえない」「分かりやすい」「DDB精神、もっとしりたい」」「アドバタイザーの担当の人も読んでほしい」とお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→。 避暑地の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。

2008-09-24

[効果的なコピー作法](1-2)

f:id:chuukyuu:20080924024005j:image:right拙著『効果的なコピー作法』は、『ブレーン』誌に昭和37年(1962)10月号から同38年9月号まで、毎号1章ずつ連載されました。連載終了後ただちに12月15日刊行。第3刷までいったのかな。それから20年後の1983年4月30日に復刻されました。復刊本の末尾に、目キキの向井敏くんが『雌伏20年』と題した評価エッセイを書いてくれた(このブログ内で 向井 敏 あるいは 雌伏二十年 で検索してみてください)。そのとき、畏友・河田卓氏が『電通報』に書き留めてくださったエッセイ「chuukyuuという人の”効果的なコピー作法”という本。面白いですわ」「若い女性コピーライターからそんな話を聞いた」と。ぼくはすでに広告界からの、ひそかな、引退をきめていたのです。それからまた25年経って、2度目の復刻ともいえるブログへの再録。こんどは印税のない復刻です。のこしておくための自前復刻。(写真は20年後に復刻された軽装版)




>>[効果的なコピー作法]目次


第1章 ヘッドライン ■注意を引く のつづき


前回のシャケ缶の広告例でもおわかりのように、読者の注意をひくには、ヘッドラインか、イラストレーション(写真や挿絵など)か、あるいは、その両方の協力で行ないますが、このS&Wの例は、第3番めにあたります。

できるなら、第3番めの方法を用いるのが柑族得策でしょう。

ところで、注意をひきたい読者には、2つの種類があります。

1つは、見込み客であり、もう1つは、一般読者です。

どちらの種類の読者を対象とするかほ、その広告の目的によりますが、それによって、ヘッドラインのテクニックは大きく違ってきます。

というのは、注意を維持するのは興味であり、興味は人によって異なるからです。その製品の愛用者や有望な見込み客であると、その製品から受ける利便を明示、または暗示するヘッドラインに興味をもつといわれています。

一般読者を対象とする場合には、いわゆるヒューマン・インタレスト(human interest) 性の高いヘッドラインが有効とされています。

この考え方は、製品には、その製品が本来的にもっているプロダクト・インタレスト・バリュー(product interest value) の高低という観点から論じられることが多いようです。

プロダクト・インタレストというのは、E.バクストソによると(注3)、

「補助的な力を借りずにその製品が本質的にもっている注意をひく性質のことだ。約言すすれば、その製品がもつ、手を加えないナマの魅力である」

(注3)E.F.Buxton "Product Interest as a Factor in Advertising Impact"


どういうことかというと、たとえば、男性は乗用車と味調味料のどちらにより興味を示すかといえば、明らかに乗用車ということになります。こういうにふうに、製品にたいする興味の相対的度合いを、男女別にそれぞれ測定し、広告のプランニングの段階で役立たせようという意見です。

今、広告しようとしている割品のプロダクト・インタレストが高いものであれは、なるべく製品にかかわる素材から広告のテーマをみつけ、それをヘッドライソでも扱えばよいし、もし、その袈品のプロダクト・インタレストが低い場合には、人的興味を付加した、いわゆるヒューマン・インタレストのある広告をつくって読者の興味をひくほうがよい、というテクニックが生まれてくるのです。

ただし、この議論にも盲点があります。というのは、その広告を、なるべく多くの読者に読んでほしいという考え方の上に組み立てられているからです。一般的にいって、なるべく多くの読者の注意をひきつけなければならない役目を背負わされた広告は、少ないものです。

たとえば、補聴器のようなものは、E.バクストンーンの、ブロダクト・インタレスト表では、男性の部で最低に位置しています。

だからといって、この製品の広告をつくるときに、ヒュ一マン・インタレストな広告にするかというと、そんなバカなことはないので、この場合は、難聴に悩んでいる本人とその家族や友人(その数が少数でも)の注意を確実にひけばいいのですから。

としますと、この広告では、補聴器を使用することによって受ける利便、またはその補聴器の特質を範調すべきでしょう。


マス・オーディエンスの中から見込み客を選びだす

前項でいいましたように、広告は、その媒体の全読者にネライをつけるというものではありません。

そんなことはあり得ないことです。全ページ、有用にして、有益な情報と知識で充たされている雑誌や新聞であっても、すべての記事が全読者に完全に読まれるとはいえないでしょう。

記事であれ、広告であれ、「読者の目と心は、一瞬のあいだに、見るもの、読むものと読まないものを区分けする」とはじめに書いたいたことを思いだしてください。

「一瞬のあいだ」に、読者が「これは自分に話しかけている」と判断する素質を、ヘッドラインの中に盛りこんでおく必要があります。

その素質とは、明確性であり、特定性でしょう。


【例・2】

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これらのトマトは、厳密に飲用です。


私たちは、シチュー用のトマトと、飲用トマトとを区別しています。優良缶詰業者の中には、おなじ収健のトマトを詰めるところが多いようです。いいトマトをシチュー用にまわし、残りをジュース用にします。実際的な、気のきいたやり方です。私たちのやり方は、非実際的です。カルフォルニア ・トマトをジュース用に育てます。トマトが柔かく、果汁がたれるほどに熟すまで、待ちます。ずっと気苦労とお金のかかるやり方です。しかし、それがS&Wのやり方です。それが完壁なジュース用トマトで完璧なトマト・ジュースをつくる唯一のやりだと、私たちは考えます。それが完堕でなかったら。S&W は缶に詰めません。


S&Wの例でいうとのトマト・ジュースの、

「これらのトマトは、厳密に飲用です」

はそのいい例でしょう。

イラストレーション(写真)も明確ですが、このヘッドラインは, トマトジュースを愛飲している人びとの目と心をとらえるだけの力をもっています。

かりに、このヘッドラインのかわりに、「新鮮なトマト」とか「おいしいジュース」とかのことばを使ったとしますと、意味が広すぎて一般的になります。


これにたいして、反論がないでもありません。広告する製品が万人向きのもの、たとえは歯みがきとか石けんとかであると、全読者が見込み客であるから、全読者の注目を集めたいのだという意見です。

正しい意見のようですが、まず、不可能に近い試みです。

広告は、いろんな要素から構成されており、その広告を見る読者の条件もみんな違います。

その製品が、すべての読者の悩みを解決するだけの強力な利点---歯みがきの例でいいますと、「歯を白く美しくして、虫歯を防ぐ」というようなことになりましょうが---をもっていたとしても、その広告の構成要素の1つであるイラストレイションに若い女が扱ってあれば、それ以外の年齢層は「これは自分のことではない」と早合点するかもしれませんし、読者の中には、すでに今使用中の歯みがきで満足して人がいるかもしれませんし、「私の歯は白い」と信じているかもしれませんし、「歯を白く美しくして、虫歯を防ぐ」という利点は、他の同種製品もそなえている利点かもしれません。

「万人向きの製品を売る会社でさえ、各個の広告では特定のグループにネライを定めることが多い。たとえは、あるソフト・ドリンクのメ-カ-は、ある広告では主婦をひきつけようとし、別の広告ではサラリーマンに訴えようとしている」(W.ダン)

ここに、誤解されやすいテクニックがあります。


f:id:chuukyuu:20080924024007j:image


大粒の50ヶの桃から、S&Wは5ヶ厳選します。


最高というだけでは十分ではありません。種ばなれが完全なこと。大きなsun・goldで、まるくて、太っていることが、 S&W の選ぶ桃の絶対条件です。しっかり実がつまっていて、汁が多くって、甘美であることはもちろんです。この基準にかなう桃は、そう多くはありませんが、S&Wのラベルが貼られるのは、そうして選ばれる少数の桃です。私たちはこの要求をかなえようと思っています。S&Wはそれが完壁でなかったら、缶に詰めません。


以下、明日につづく


>>[効果的なコピー作法]目次




きょう、縁あって、お読みくださった、あなたの星ーご好意のしるし★を、残していってください---

45年も前に書かれたとはもおもえない」「分かりやすい」「DDB精神、もつとしりたい」」「アドバタイザーの担当の人も読んでほしい」とお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→。 避暑地の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。

2008-09-23

[効果的なコピー作法](1) はじめに

f:id:chuukyuu:20080923125640j:image:rightいつか、お約束したとおもうのですが、45年前の1963年に上梓した『効果的なコピー作法』(誠文堂新光社)を、Web上で復元してみます。[はじめに]にも記していますが、当時は誠文堂新光社からでていた業界専門誌『ブレーン』誌に1年間連載したものをまとめたものです。chuukyuu、32歳から33歳にかけての思案で、いま見ると〔若書き〕の憾はいなめません。この執筆中に、山城隆一先生の偶然の口ぞえで『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(美術出版社)が自著第1号として世に出ました。『効果的なコピー作法』はしたがって第2号。[若書き〕は〔若恥〕に通じますね。




はじめに

まず、この本の読み方について、お願いしておきます。

第1章---第2章---第3章---という順にお読みいただく必要はありません。どの章から読みはじめても、ちゃんとわかるようになっています。

しかし、どの章をお読みになるときも、各章のはじめに引用してある広告を、コピーの訳をすっかり頭に入れてから、本文をお読みいただきたいのです (広告制作法を学ぶルールでもあります)。

この本は、昭和37年(1962)10月号から38年(1963)9月号までの『ブレーン』誌に連載した原稿に手を入れたものです。

ブレーン誌の編集部からの注文は、「コピーの初歩的テクニックを---」ということでしたが、たったひとつの広告原稿に、何百万、何千万円という大金が注ぎ込まれるこの世界に、アマチュアリズムが許されるはずがありません。

そこで、私は、今日のアメリカで成功しているいくつかの広告キャンペーンを紹介しながら、その広告が秘めている成功の要素を拡大してご覧にいれるやり方をとりました。

すでに広告界の神話と化している広告キャンペーンについては、故意に触れませんでした(もっとも今ごろ、そうした伝説的広告を引用しても、現代の若い人たちには、まず、その衣装の古めかしさが目について、老人の繰りごとと思われるのが、オチでしょう)。

また、神話の解説者たるには、私は若すぎ、血の気が多すぎるようでもあります。この本に、在来の類書と確然と異なるところがあるとすれば、それは、広告というものが、その広告を制作した広告代理店の創造哲学によって大きく左右されるという、 まことに現代的なテーマを発見したことだと、ひそかに自負しています。

こうしたアプローチが、本稿がブレーン誌に連載中に、コピーライターをうわまわる数のアート・ディレクター、企画マンの支持を得たといえます.また、アメリカでも有数の創造的な広告代理店---ドイル・デーン・バーンバックDDB)社、パパート・ケーニグ・ロイス(PKL)社、オグルビー・ベソソン&メイサ−社を、日本に紹介することができたのも、このアプローチによります。

この小著が完成するについては、引用の広告を創造した米国のクリエイターたちの並々ならないご好意、ブレーン連載中から変わらぬ激励を下さった宮山編集長、坂本次長、三宅明、東谷昇の4氏、および資料整理の労をとって下さった小池一子さん、木田宏子さん、林宏樹氏などのお力によるところが大きいと思います。


昭和38年10月11日  

chuukyuu




第1章


ヘッドライン

「広告効果の50%から75%がヘッドラインの力による」

といわれるぐらい重要な役目をもつヘッドライン。

それだけに、コピーライターが多くの時間をかけ、

苦心するのも当然です。

類書の常識を破って冒頭にこの章を置いたのも、こうした理由からです。

引用したS&W缶詰の広告は、米国でもっともっとも創造的な代理店ドイル・デーン・バーンバック(DDB)よってつくられたものです。



【例・1】

f:id:chuukyuu:20080923032718j:image


The only other thing we add is salt.


Our salmon don't need oil added to make them temptingly juicy. They're born that way. Became we hold out for a special plump type of salmon those robust specimens who swim up the longest rivers north of Puget Sound. What if there aren't enough of these choice Long River Bluebacks? We wait patiently till next year. Because if it isn't perfect, S&W won't pack it.


ヘッドラインの機能

広告史上で、人びとに語りつがれている広告というのは、そのほとんどが、へッドラインによって覚えられているといってよいでしょう。試みに、あなたが好きだった広告のひとつを思い浮かべて、その広告について、友人のだれかに話すとして、まず初めに口に出る言葉は---やっぱり、ヘッドラインでしょう。

それだけに、「広告効果の50%から75%がヘッドラインの力による」(注1)という意見もあるくらいです。

またコピーライターは、ボディ・コピーを書くよりもヘッドラインを書くのに、ずっと多くの時間をかけるといわれるのも、ヘッドラインの重要さからすれば当然でしょう。

現代の読者は、読まねはならぬものをたくさんもっています。その中には広告は入っていません。広告は、たまたまそこにあり、読者の注意をひいたから読まれるにすぎません。読者の目と心は、一瞬のあいだに、見るものと見ないもの、読むものと読まないものを区分けするのです。この一瞬のあいだに、ヘッドラインの機能が働くのです。

また、ヘッドラインがうまく読者の注意をひきつけても、読者がその広告のはじめから終わりまで、順序よく熱心に読むとは限りません。ヘッドライン・リーダー(headline reader)と呼ばれる、いわゆる見出しだけを読みとってすべてを了解してしまう読者も多いのです。


こうしたさまざまな情況から、ヘッドラインが達しけれはならない機能としてW・ダンは(注2)

(1) 読者の注意をひくこと

(2) マス・オーディエンスのなかから見込み客を選びだすこと

(3) 読者をメイン・コピーにひきずりこむこと

(4) あるときには、消費者に働きかけて行動させる

という役目全部を果たすこととしています。

もちろん、ヘッドラインはたくさんの役目を背負っています.それらの役目は、その広告の目的によって決められます.

(注1)M.DeVoe "Effectiv Advertising Copy" Part 16, Writing an effectiv hesdline.1956

(注2)注2)W.S.Dunn "Advtertising Copy and Comunication" Capt8, Headline


注意をひく

さて,1962年4月16日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に載ったS&Wのシャケ缶詰の広告【例・1】を読んでみましょう.

f:id:chuukyuu:20080923032718j:image:left:w200

わが社は、塩を加えるだけ

私たちのシャケは、油を加えて汁気をたっぷりにする必要はありません。特別に丸々と太ったシャケですから。この健康なシャケは、毎年PugetSoundの北にある長い川をのぼってきます。もし長いBluebacks川で、選ばれたシャケが思うようにとれなかったらどうするかって? 私たちは、来年まで辛棒しますよ。なぜって、それが完璧でなかったら、S&Wは缶に詰めません。


『ニューヨーク・タイムズ』紙のページをめくっていると、まず、ギラギラうろこを光らせたシャケと、それに巻かれたS&W のラベルが目に飛びこんできます。その衝撃力があまりに強いので、 日をそらすよりも、目を止めて見る方がラクです(読者の目を止めさすテクニックに2つあります。1つは、そこには何か自分のためになることが書かれてありそうだと思わすのと、S&Wのように、目をそらす努力をするよりも見てしまった方が精神衛生上よいと思わすような強い衝撃力の視覚表現を用いるやり方です)。


そこで、私は、この広告に目を止めます。

S&W のシャケ缶の広告であることは、魚に巻かれたラベルを見た瞬間にわかっています。


わが社は、塩を加えるだけというヘッドラインを読みます。

意味が即座に読みとれません。なんでも、シャケ缶の味のことをいっているらしいとはわかりますが---よくわかりません。

そのままやめてしまうのはシャクだし, クイシンボウの私のことゆえ、何かおいしいことにかんするニューズでも書かれているかもしれないではないか、ボディ・コピー量もそう多くはないし---などと一瞬のうちに判断して、最初の1行を読んでみます。


以下、明日につづく


>>[効果的なコピー作法]目次

[効果的なコピー作法]目次

f:id:chuukyuu:20080923125640j:image:left:w100f:id:chuukyuu:20080924024005j:image:left:w100『効果的なコピー作法』

1963.12.15発行 誠文堂新光社(左)

1983.4.30発行 誠文堂新光社(右)


■はじめに


第1章 ヘッドライン

f:id:chuukyuu:20080924024006j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20080923032718j:image:right:w60■ヘッドラインの機能

■注意をひく(1) (2)

■マス・オーディエンスの中から見込み客を選びだす(1) (2)

■読者をメイン・コピーにひきずりこむ(1) (2)

■ヘッドラインの種類


第2章 コピーのプラン

f:id:chuukyuu:20080821032938j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20080927032729j:image:right:w60■広告の評価(1) (2)

■広告の目的

■コピー・プラン(1) (2)

■コピー・フォーマット


第3章 コピーのテーマ

f:id:chuukyuu:20081009025951j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20081008032830j:image:right:w60■中心テーマ

■テーマの働き

■テーマの展開

■テーマの発見

■シリーズのテーマ


第4章 コピーの視覚化

f:id:chuukyuu:20081125031831j:image:right:h83f:id:chuukyuu:20080220063016j:image:right:w60■ライターの視覚化能力

■視覚化の方向

■視覚化の方法


第5章 コピーの流れ

f:id:chuukyuu:20090112060120j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20090113021836j:image:right:h81f:id:chuukyuu:20070717072312j:image:right:h81■コピーの流れ

■[流れ]のタイプ

■シリーズ広告の[流れ] (補1) (補2)


第6章 セリング・ポインツ

f:id:chuukyuu:20090214035756j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20090215035309j:image:right:h85f:id:chuukyuu:20090216023219j:image:right:h85■レジスター賞(1) (2)

■セリング・ポインツの意味

■コピー・プラットフォーム(1) (2)


第7章 コピーと調査

f:id:chuukyuu:20080719024555j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20080718032236j:image:right:h84f:id:chuukyuu:20080720075606j:image:right:h84■ハサウェイの神話

■調査重視

■調査の陥穽

■調査の一面性


第8章 コピーのユーモア

f:id:chuukyuu:20071127044011j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20090519040711j:image:right:h101f:id:chuukyuu:20090508023221j:image:right:h101オーバックスの広告

■ユーモアのある広告

■ユーモア広告

■ギミックとガジット

■ライターの年齢


第9章 コピーの強調

f:id:chuukyuu:20071222040925j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20071221063220j:image:right:h75f:id:chuukyuu:20071219033618j:image:right:h75■PKL社の哲学(1) (2)

■主役の登場回数

■強調の理論

■まず、知れ


第10章 コピーの長さ

f:id:chuukyuu:20090227054418j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20090228022021j:image:right:h80f:id:chuukyuu:20090301024558j:image:right:h80■一通の手紙

■NY=ADC展の評(1) (2)

■電文コピー

■長いコピー

■長短論議


第11章 コピーの信頼

f:id:chuukyuu:20080207032207j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20080208100852j:image:right:h94■企業広告

■共感と信頼

■テクニック

■コピーと絵


第12章 銘柄の区別

f:id:chuukyuu:20071220080248j:image:right:w60f:id:chuukyuu:20090313141631j:image:right:h80f:id:chuukyuu:20090314030736j:image:right:h80■ ある受賞

■ 銘柄競争

■14のテクニック

■創造性が解決


番外

復刊版あとがき「雌伏二十年」向井敏

新しいコピーの誕生へ『効果的なコピー作法』の読まれ方 河田卓(『電通報』1983.06.09号「広告文化欄」より)

2008-09-22

(289)DDBの本、あれこれ


新書版の新著『クルマの広告』(仮題)の11月初旬をめざして上梓のあれこれをすすめていることは、すでにご報告しました。おもわぬ障碍が発生しました。「巻末解説」の形の11ページ分の原稿をCD渡しで指定どおりに仮組みしてもらったら、なんと、31ベージにもなったのです。21日の土曜半日、ゲラの3分の2に、[トル][ツメ]の朱を入れ、宅急便で送り返しました。せっかく書いたので、陽の目をみることもなくなった、元稿31ページ分を記録しておきます。


巻末解説に代えて---。


「40数年前のものを、なぜ、いまごろ?」

えっ? いくつかの図版をご覧になって、「面白いね」ってお感じになったのではなかったのですか?

40数年前にぼくが感じたのも、それだったのです。だから、10数年間、集めつづけたのです。

そのころ、ぼくは、現役バリバリのコピーライターでした。

(東京コピーライターズクラブから「名誉の殿堂」入りをさせていただいてもいます。コピーライターの生ける化石ってわけ)。

40数年前には、コピー・ライティングのいい手引書もありませんでした。

そこで、神田の古書店をめぐって『ライフ』誌や『ニューヨーカー』誌をごっそり買いこんで、夜な夜な自分が気に入った広告を切りぬき、独習したものです。

この方法が、よい広告を選ぶもっとも簡便かつ有効な方法であったことは、のちに知りました。もうちょっとあとでお話しします。

切りぬいた広告で、どんどんたまったのがVWビートルの広告でした。切りぬくたびに興奮したものです。

ビートルの広告の第一陣は、『ライフ』誌の1959年8月1週号に載りました。この本の[あれこれ]ブロックのトップ(000ページ)のものです。


【参考】

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フォルクスワーゲンは変わるでしょうか?


答えはイエスです。

フォルクスワーゲンは、1年を通じて間断なく変化しています。1959年だけでも80ヶ所も変わりました。

しかし、どれも目には見える変更ではありません。私たちは、はやりすたりをよいことだとは思っていません。

私たちは変更のための変更などはしません。

この勇ましくて小さなフォルクスワーゲンの外形は今後もずっと変わらないでしょう。不恰好なししっ鼻も、ずっとこのままでしょう。

この車は優秀ですが、さらによいものにするような方法を、私たちはいつも探しています。たとえば、ドレイン・プラグに永久磁石を取り付けました。金属粉はこの磁石にくっついてしまうので、オイルの汚れが防げます。

シフトは、いうまでもなく、世界中でいちばん優秀です。しかし私たちは、これをもっと滑らかにする方法を発見しました。クラッチ・プレートに特殊鋼のバネをつけたのです。

フォルクスワーゲンは過去11年間という歳月以上に変化しています。しかし、その心臓や外形は変わっていません。

VWのオーナーは何年も乗りつづけています。自分のVWが新車とほとんど同じ価値があることをご存知なので、安心していられるのです。


【注】『ライフ』誌1959年8月第1週号掲載のDDB制作キャンペーン第1号の広告


古雑誌だったとはいえ、第一陣のものから切りぬいていたわけだから、目をつけたのは、かなり早かったといえましょう。

ということは、図版の収録順序は発表順ではなく、主題ごとということです。

VWビートルのこのシリーズは、20世紀最高の広告キャンペーンと、米国ほかで評価されています。

それまでの広告の常識を一変させたからです。


「つくったのは、どんな人なの?」

それそれ、人がもっとも興味を覚えるのは、人なんです。

ぼくも、VWビートルの広告をつくっている人に強く興味をおぼえました。

米国の広告業界紙で、つくっているのが、DDB(ディー・ディー・ビー)---正確にいうと、ドイル・デーン・バーンバック社---だと分かりました。

ニューヨーク市で1949年6月1日に創業した、まだ、小さな広告会社でした。

バーンバックさんが社長兼制作部の責任者でした。

バーンバックさんは、いまでは、このVWビートルのキャンベーンのほか、広告革新にもっとも貢献した人として、尊敬されています。

ご興味が湧いたら、インターネットで、William Bernbach で検索なさってみてください。

創業当時---ということは半世紀も前ですが、広告は千三つ---とまではいいませんが、誇張のしすぎ、あるいは虚偽に近い訴求をするものもあり、疑いの目で見られることが少なくはなかったのです。

そんなとき、バーンバックさんは、正直な広告をつくるために、自分たちの会社を興したのでした。

会社は大きくならなくてもいい---大きくなろうとすると、依頼主におもねった広告をつくらなければならなくなることもある---そうまでして、会社を大きくすることはない、と考えていました。

これも、純粋さを愛する若い人たちの目標になりました。

広告主の中には、バーンバックさんの考え方を好む経営者もいました。

そんな依頼主のために、バーンバックさんたちは、清潔で、正直で、かつ人の興味を引きつける広告づくりをつづけたのです。

それが、VWビートルとDDBが結びつくという幸運になりました。

VWビートルとDDBの幸運ばかりではありません。

ぼくは、ビートルのシリーズから、広告の本質を学びました。

あなたも、この本の図版で、広告には信用していいものもあるとお考えになったのではありませんか?

読者---消費者も、あなたと同様、この広告が出るたびに、パーティで話題にしました。

キャンペーンが始まって1年目には、S・ベイカーという著名な広告評論家が称賛文を書きました。

「今では知らない人のいないVWの広告は、自動車の歴史をつくった。小さいことを理想とする人びとに対して、この車は、生産が追いつかないぐらいの速さで売れた。

また、VWの広告は、広告の歴史もつくった。米国VW社が称賛しただけではなく、今では、すべてのコピーライター、すべてのアートディレクターがこの広告を崇拝している」(『アートディレクション』誌 1960年8月号)

「小さいことが理想 Think small」は、[シンプル・フレイズ]ブロック(000ページ)に掲載しています。エピソードはのちほど。


【参考】

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小さいことが理想

きっちりつめたら、ニューヨーク大学の18人の学生がサン・ルーフVWに乗れました。

フォルクスワーゲンは、核家庭向きに考えて大きさが決められています。おかあさん、おとうさん、 それに育ちざかりのこども3人というのが、この車にふさわしい定員です。

エコノミイ・ランで、VWはリッターあたり 平均21km強の記録を出しました。あなたには、ちょっと無理な数字です。プロのドライバーは商売上のすてきな秘けつを持っているんですから(お知りになりたい? ではVWBox #65 Englewood, N.J.へお手紙を下さい)。 ガソリンはレギュラー、また、オイルのことは次の交換時期までお忘れください。VWは在来の車より全長が4フィート短くできています。(とはいっても、レッグ・ルームは同じくらいあります)。 ほかの車が混雑したところをぐるぐる巡りしている間に、あなたはほんの狭い場所にも駐車できるんです。

VWのスペア部品は格安です。 新しいフロント・フェンダーは(VW特約店で)21.75ドル、シリンダー・ヘッドは19.95ドル、品質がよいのでめったに必要とはしませんが。

新しいフォルクスワーゲン・セダンは1,565ドル、 ラジオ, サイド・ビュー・ミラーのほか、あなたがほんとうに必要なものは全部ついています。

1959年には12万人の米国人が、小ささを考えてVWを買いました。ここのところを考えてみて下さい。



バーンバックさん自身の言葉で---

DDB創業20周年の同社の社内報に載っていた、バーンバックさんへのインタヴューから、このあたりの感じを読み取ってください(『DDBニュース』1969年6月号より)

問「DDBの成功以後、〔クリエイティブな広告代理店〕と称して、2人あるいはそれ以上のクリエイティブ分野出身の人物をトップに据えた広告代理店が創業していますね。20年前にあなたが同じようなふうに創業さなっていたら、どうなっていたでしょうね? 」

バーンバック「私の場合は、私がうまく処理できない分野のことを受け持ってくれたパートナーがいたおかげで、とても得をしてきました。

もし、私自身が経営していたり、クリエイティブ分野の人と組んでいたら、この広告代理店はきっと破産していたでしょうね---クリエイティブ面では成功を収めていたとしても、破産していたとおもいますよ。

マックスウェル・デーンとネッド・ドイルが財政面をしっかり見てくれました。

この2人が一致協力してくれ、そして私たちのクリエイティブな仕事ぶりを効果的にしてくれたのです。

私が制作という仕事そのものに専念できたことそして2人のパートナーが、広告というものに対する私の目的を自由に追求させてくれたことを、私はいつも幸運と思ってきました。

私は異常視されることなく広告哲学を発展させることができました」

問「その哲学が、この20年間、変わることなく続いたとおっしゃるのですね。では、その哲学を要約していただけますか?」

バーンバック「じつに簡単明解なことです。2つの部分から成っておりましてね。

第一は、売ろうとしている商品についていわなければならない重要なことを発見すること---です。その商品が、競争商品に立ち向かえるだけの優秀性、あるいは相違点を真剣に追求すること---です。

それがない場合には、クライアントと相談してそれをつくるのです。私たちは、何度もそうやってきました。偉大なコピーライターの一人がこういっていますね。

『いうべきことがあったら、よりよいことがいえる』

私たちは、常にいうべきことを捜し求めます。私たちが創業した当時は、いうべきことを見つけたら、それで仕事は終わったと考える代理店がほとんどでしたが、私たちの信念はそうではなくて、その段階だと、仕事は始まったばかりだとしかいえないと考えていたのです。

そこで、私たちの広告哲学の第二の部分はこうなります。

いうべきよりよいことを発見したら、それが記憶され、行動を起こさせるように、覚えやすく、芸術的で、説得力のあるいい方をしなければならない---ということ。

私たちは、それを独創的で、新鮮で、想像力を豊かに表現する方法を捜し求めます。前にも使われたようないい方をしたのでは、せっかくの衝撃力を台なしにしてしまうことになります。

私たちは、このような哲学を持って会社を創設したのです。それは哲学というよりも、強い確信でした。ですから、広告には規律ある芸術的手腕の完全な意味づけをやったのはDDBだと私は断言できます。

もちろん、芸術的手腕なるものは、非常に測りにくいものです。手に触れて感知することのできないものです。

しかし私たちは、この測りにくく感知しにくいものを使って、クライアントのお金に最高の衝撃力を与えること---すなわちアイデアで売るといった、得心の行く仕事をしてきました。

たぶん、現代では、それは前にも増してずっと感知しやすく、測りやすいものになってきています」



VWビートルがDDBへたどり着いた経緯は---

1958年11月中旬、VWドイツ本社のノルトホフ社長が米国で休暇を過ごすために、ニューヨークのアストリア・ホテルに宿をとりました。パーク・アベニューに面した由緒ある高級ホテルです。

60歳の氏は、薄いブロンドの髪と温和な口調でインタヴューに応じました。デトロイトのコンパクト・カーに対するVWの施策を期待していた記者連に向かって、

「『マイ・フェア・レディ』と『ウエスト・サイド物語』をブロードウェイで観ました。どちらかというと、『ウエスト・サイド物語』のほうが好きです。モダンで、私にもよく理解できました」

ノルトホフ社長は、ドイツへ帰国するや、翌春早々に、米国VW社の総責任者として、のK・H・ハン氏を送り込みました。生粋のオーストリア人で、まだ30代半ばの若さでした。

着任早々、ハン氏は、新しい広告代理店を物色し始めました。

ソニーの盛田副社長(当時)から聞いたところによると、ハン氏は1年分の雑誌・新聞をめくって、自分が気に入った広告をどんどん切り抜き、それらの広告をつくった広告代理店を秘書に調べさせたと。

切り抜かれた広告の70%がDDBによってつくられたものでした。

こうして、20世紀最幸なカップルが生まれました。

両者をとり持ったのは、VWの有力ディーラーの社長だったといわれています。かつてDDBがこのディーラーのために仕事をしたことがあったのだそうです。

人間、個人的にもビジネス上でも、人とのつき合いがいかに大切か。

とにかく、DDBは米国VW社に求められたのです。DDBから米国VW社へ頼んだのではないのです。

ということは、あるていど、DDB側にクリエイティブの自由があるということです。もちろん、大人同士のビジネス社会のことですから、ゆずりあいがあるのは当然です。


DDBのVWチームは、ドイツのVW工場へ

バーンバックさんは、VWチームを編成しました。

アート(ビジュアル)面の責任者にヘルムート・クローン氏、コピーの責任者にジュリアン・ケーニグ氏が指名されました。DDBの制作部でも幹部級の2人です。

2人とバーンバックさん、それにチームの何人かが、ドイツの工場へ飛び、見学とレクチャーを受けました。広告クリエイターにとって必須のことです。

例示した図版の三分の一のアイデアは、この時の生産工程の見学とレクチャーから発想されています。

(あとの三分の一は、ドイツ本社と米国VW社をはじめ各地ディストリビューターやデイーラーのハウス・オーガン(社内報)から。のこりはクリエイターの人生経験から)。

その時のことを、あるスピーチで、バーンバックさんがこう話しています。

「私たちがこの広告を引き受けた時、最初にしたことはドイツのウルフスブルクにある工場で多くの時間を費やすことでした。

技術者や製造陣、幹部連や流れ作業の作業員などと話し合って数日を過ごしました。溶けた金属が固くなってエンジンになるのといっしょに歩き、そして、すべての部品が最後に定められた場所に納まるまで歩きつづけました。

最後に、一人の人がハンドルをとって、生まれたばかりのかぶと虫に最初の生命を吹き込み、それがはじめて動き出すのを見ました。

私たちは、フォルクスワーゲンの造り方をすっかりのみこむことができ、テーマを何にすべきかを知ったのです」

それは、「これは正直な車だ」ということでした。


「未亡人を、たくさん、つくってくれ」

バーンバックさんの基本命題を受けて、クローン氏がやったことは、まず、キャンペーンの視覚的フォーマットをつくることでした。当時は、テレビ・コマーシャルではなく雑誌広告が主体でしたから(日本と異なり、新聞ではなく、米国では雑誌が全国媒体なのです)。

つくったのは、いわゆる、記事スタイルのフォーマットでした。

正直で信頼できる車---なら、広告スタイルでなく、記事スタイルの誌面づくり、というわけです。

誌面の上三分の二がイラストレイション(写真と絵のことです)、その下にへッドライン(見出し)とボデイ・コピー(本文)。

(へッドラインのことを、キャッチ・コピーという人もいますが、和製英語もいいところです。たぶん、テレビCMのきめ言葉の呼び方に困ったすえの造語でしょう。新聞の見出しを、新聞記者はキャッチ・コピーと自らいいますかね。キャッチ・ガールっぽい造語で、嫌ですね)。

クローン氏は、そのボデイ・コピーのいくつもの文節末尾をカミソリで切り捨て、ケーニグ氏に示し、

「グレイ・マスじゃなく、ガードルードの詩のように、ウィドウ(未亡人)を多くつくった文章を書いてくれ」

未亡人というのは、文節末尾の空白のことです。日本の印刷関係者は「クワタ」と呼んでいます。

美術大学でのデザイン学生のクラスで、卒業後までこの未亡人をおぼえさせておくために、

「Merry widow って歌もあるんだよ」

そしたら、生意気ざかりの学生が、

「北斎にも、[色ごのみの後家]って題した春画がありますね」

さいわい、美術大学にくるような女子学生はお嬢さんぶりませんから、ことなきを得ました。

じつは、図版の英文の未亡人に目をとめていただきたかったのです。

40数年前の配慮ですが、未亡人が多いほど、読みやすい文章になっていますね。

これって、ブログの文章にぴったりでしょう?

すでに、やっていらっしゃいますよね?

ぼくのこの文章の、文節ごとに行間をあけた文章も、ブログで使っている書き方なんです。

主語・述語・目的語の短文のつながり

クローン氏のインタヴューも『DDBニュース』 (1968年8月号)から引用してみます。

問「あなたが広告の外見を変えたのはフォルクスワーゲンの広告でしたし、コピーの置き方も変えられましたよね」

クローン「ええと、まず、こういわせてください。ぼくは、VWビートルについて自分たちは新しすぎていることをしている、と強く感じていました。もちろん、ぼくもあの広告に三分の一の貢献はしていたのですが---。

それで、3本の広告をつくりあげると、意気消沈してセント・トーマス島へ出かけて休暇を過ごし、2週間して戻ってきました。

すると、ぼくはスターになっていたのです」

問「三分の一の貢献とおっしゃいましたが、半分じゃないんですか?」

クローン「ぼくが三分の一、バーンバックさんが三分の一、コピーライターのケーニグ氏が三分の一ということです (注:ケーニグ氏は、VWのキャンペーンのスタート後、早ばやとDDBを退社し、自分たちの代理店を創設した)」

問「バーンバックさんが貢献したということは、どういう意味で?」

クローン「主として、ぼくをほかの仕事から解放してくれたということで。また、簡潔に、明確に、バーンバックさん独特の魅力を加えて、語るという全体のコンセプトですね。それを車に適応したということ以外には、フォルクスワーゲンの広告アイデアは、とくに新しいとことは何もありません」

クローン氏は別なところで、バーンバックさんの功績を、主語・述語・目的語の短文でボディ・コピーをつなぐことを指示してくれたとも告白しています。

これも、ブログの文章を正確に、分かりやすくするコツの一つですね。


〔クリチック〕はVWビートル調

最初のコピーライターのケーニグ氏が、はやばやと退社していったことはすでにお話ししました。

後任に抜擢されたのが、VWのカタログのコピーを担当していたロバート・レブンソン氏でした。高校の教師からコピーライターに転向した人です。

このレブンソン氏のインタヴューが創業30周年記念の『DDBニュース』(1979年7月号)に載っていました。

ついでなのでつけ加えておきますが、掲載図版のコピーは、こほかに10人近いコピーライターの手になっています。区別がつきにくいですが。

ぼくは、ケーニグ氏の分だけはわかります。〔クリチック〕---東欧ユダヤ系の俗語で「捨て科白(ぜりふ)」とでも訳しておきますか---がほとんどないのです。掲載した図版の多くの最終行がこれにあてられています。

問「VWの広告の創始者ではありませんね?」

レブンソン「ええ。それに私にはとても追い抜けなかった広告がたくさんありますよ。[小さいことが理想]、[不良品]とかをどうやったら追いぬけますか?

でも、声とかボキャブラリーの調子は、私が手を染めてから少し鋭くなったとは思います」

問「あなたがなさっている『親愛なるチャーリー』のアプローチについて説明してください」

レブンソン『ここ数年、ぼくはコピーで行き詰まった人びとに『親愛なるチャーリー』から始めるよう示唆してきました。

ぼくが彼らにいっているのは、こういういうことなんです。

君たちが話しかけているのは、その製品については君よりもうといが、じつに聡明な友人だと思いこめ。それをし終えたら、『親愛なるチャーリー』なる冒頭の一行を抹殺しろ、そうすれば少なくともとっかかりはできるだろうと。実際、白紙から始めるよりずっといいんですよ。絶対に失敗しません」

問「〔クリチック〕は?」

レブンソン「〔クリチック〕は多分大きなミスでした。ひどく誤解されました。

でも〔クリチック〕はVWだけで使ったコピーでした。VWには向いているようでした。

人びとは、あの一連の最終行をおぼえてくれて、『他の車は変わり続けて、同じまま。VWは同じままで、変わり続ける』なんか、ぼくが今まで書いたどの文より反響が多かったですね。

揶揄っぽい言いまわしか、滑稽なエンディングづくりという仕事が始まったという感じです。

広告業界には、意味があろうとなかろうと、とにかく笑いでしめくくらなければ仕事をしたとは言えないなんて感じる人も出る始末。

以来、文の脈絡とは全く何の関係もないくだらないジョークでしめくくるコピーが続出しました」

いまの日本のテレビ・コマーシャルの〔捨て科白〕や奇妙な身ぶりもそうでなかったらいいのですが。


[小さいことが理想]、[不良品]ができたエピソード 


レブンソン氏も「まだ、追いぬいていない」と告白している、20世紀につくられた広告の世界的傑作---[小さいことが理想](000ページ)と[不良品](000ページ)の広告ができた裏話を。

DDBがVWの広告をつくりはじめた初期のころ、コピーライターのケーニグ氏は、小さな経済誌の載せるための広告のアイデアをたてる仕事をかかえたまま、列車で帰途につきました。

同じコンパートメントの向いの席のビジネスマン風が、丸めて読んでいる雑誌の記事の表題に、当時(50年前)のビジネス界の合言葉「Think big (でっかく考えよ)」が書かれてありました。

米国人は Think big と浮かれている。VWは小さい---Think small だ。

翌朝、そのへッドラインをクローン氏にわたすと、かぶと虫の写真をうんと小さく、誌面の左上においたビジュアルをつくりました。

「でっかいことはいいことだ」が常識みたいになっていた米国人は、この広告から強烈な衝撃を受け、心ある人たちは反省し、生活態度を変えはじめました。

もっともすぐれた広告は、読み手の人生観を変える力をもっているのです。

いいブログというのも、アクセスしてくださった人の考え方に影響を与えます。

[Lemon レモン]---[酸っぱい]---[腐りかけている]---[不良品]となるのでが。

当初、この広告のヘッドライン(見出し)は、ボディ・コピーの一行目に置かれている「このVWは船積みされませんでした」だったのです。

クローン氏は、そのスケッチを個室のボードに張って検討していました。そこへ、友人の女性コピーライターが挨拶にきて、チラリとスケッチに視線をやり、

「あら。レモンね」

女性だけに、食品売り場で新鮮か否かのチェックに馴れていました。

狂喜したのはクローン氏です。世間の人たちの使っている言葉を捕まえたのですから。

「レモン」というヘッドラインだから、この広告が生きてくるのですね。

【参考】

f:id:chuukyuu:20071002055447j:image:left


不良品。


このVWは船積みされませんでした。

車体の1ヶ所のクロームがはがれ、しみになっているので取り替えなければならないのです。およそ目につくことがないと思われるほどのものですが---K・クローナーという検査員が発見しました。

当社のウルフスブルグの工場では3,338人が一つ作業にあたっています。VWを、工程ごとに検査するために、です。(日産3,000台のVWがつくられています。だから車より検査員の方が多いのです。 )

あらゆるショック・アブソーバーがテストされます(部分チェックではだめなのです)。ウインドゥ・シールドもすべて検査されます。何台ものVWが、肉眼ではとうてい見えないような外装のかすり傷のために不合格となりました。

最終検査がまたすごい! VWの検査員は1台ずつ車検台まで走らせていって、188のチェック・ポイントを引っぱりまわし、自働ブレーキ・スタンドへ向けて放ちます。それで50台に1台のVWに対して「ダメ」をだすのです。

この細部にわたる準備が、他の車よりもVWを長持ちさせ、維持費を少なくさせるのです。(中古VWが他の車にくらべて高価なワケもこれです)。私たちは不良品をもぎとります。あなたはお値打ち品をどうぞ。



こんな幸運な例は、毎日のブログにはなかなかやってきません。でも、この例をしっているだけで、捕球のチャンスを逃さないですむかも。



「シリーズは効果をあげたのですか?」

DDBによるVWビートルの米国での広告は、1959年から17年間つづいたのですが、数字は、残念ながら、10年分しか手元にありません。ま、それだけでもご覧ください。ビートルが売れた台数です。

1959年   84、677台

1960年  112、027台

1961年  148、340台

1962年  167、019台

1963年  209、797台

1964年  251、806台

1965年  288、583台

1966年  296、624台

1967年  314、343台

1968年  423、008台

この実績を、どう評価するかは、あなたの人生基準いかんです。

自分に甘く、他人に厳しいのは、世の常ですから。

「なのに、どうして、ビートルは空冷式リヤ・エンジンを止めたの?」

申し訳ない。ぼくは、DDBの人間でもないし、ましてや、VWとは過去・現在、まったく関係をもったこともありません。

単に、DDBの広告を独習の教科書にしてきただけなんです。

2008-09-21

(288)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(14)

DDB30周年(1979)シリーズは、とりあえず、これで終わります。バーンバックさんの基調スピーチから始めました。しめは、重役会会長兼チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(取締役会長)のジョー・ダリー氏。この人はアカウント部---クライアントとの折衝部門育ちの人です。手紙のやりとりはしょっちゅうしていましたが、直接会話したのは、日本の広告事情を説明したときでした。どうして、コピーライターにすぎないぼくが、DDBのクリエイティブのことを調べるのか、不思議だったんでしょうね。それで、媒体と広告代理店の日本的特殊な関係を話しました。


祝30周年」「クリエイターを支えている人たちの代表」「すみずみまでDDB精神」」「DとDさんは引退していたんですねとお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→★。 田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。




>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「私たちの数字を作りあげたのは、クリエイティブ・タレントです」

   重役会会長兼チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(取締役会長)

   ジョー・ダリー JOSEPH DELY


:『DDBニュース』のこの号は、あなたがなさったDDBのクリエイティブ・スーパー・スターのプレゼンテーションにヒントを得たものですね。

f:id:chuukyuu:20080921045442j:image:rightダリー:あのプレゼンテーションは、株主総会のために企画されました。

株主総会の主な目的は、もちろん財政報告です。

そして当社のそれは、ずっと健全なものでした。

しかし数字はすべてを言い尽してはいません。DDB野の真の財産は現在ここにいるクリエイティブ・タレントであり、過去に在籍したクリエイティブ・タレントなのです。

私たちの数字を築きあげたのはそうしたタレントたちなのです。

それを私たちの株主にわかってもらうために、ひとつの「チーム」を選び出し、認識してもらうことに決定しました。フットボール・チームの人数か11人なので、たまたまこの11人が選ばれましたが、選ぼうと思えば、さらに11人、またさらに11人を遊ぶことは簡単です。

また11という数字は重宝な数字ですし、私たちにはたしかに11人のスーパー・スターがいるのです。

彼らはDDB、さらには広告界全体に大きな貢献をしてきた人たちばかりです。

あのプレゼンテーションでは、11人のスライドも写し出されました。ミーティングをよりいっそう有意義に、ドラマチックにするため、11人それぞれに各自の気に入った広告(プリントまたはTV)をピックアップしてもらったのです。そしてそれをスライドにおさめました。

そのスライドだけをとっても、偉大な広告の11大スペクタルが出来上りました。

:広告とは財産が毎夜エレベーターで降りていってしまう商売だという言葉を説明してください。

ダリー:11人のスーパースターらは長年、朝とともに再びもどってきたということも留意してください。そして私たちのタレントたちは皆が皆、同じエレベーターに乗っているわけではありません。

ここではわずか11人しかお見せすることはできません。しかし彼らの作品、そして彼らがDDBにもたらした評判がゆえに、この代理店はタレントたちにとって磁石になっているのです。

だから若い新進のスターたちが入ってくるのです。

問:あなたは1949年当代理店の創立6ヶ月後、初めて雇われたアカウントマンですね。アカウントの仕事に対するあなたのアプローチの仕方は変わりましたか?

ダリー:DDBのアカウントの仕事に対するアプローチは変わりました。創造哲学には何の変化もありません。それは広告代理店である私たちのとりでであり、相違点であり、今日の私たちを作りあげているものなのです。

一方、アカウント、マネージメント哲学は変わってきました。この代理店の歴史を半分にわけてみましょう。

前半の15年間は、クライアントが私たちに期待するのはクリエイティブな仕事だけでした。

しかし画期的な広告はクライアントにいつも簡単に売れるわけではありません。私たちにはこうした作品を売れる優秀なアカウントマンが必要でした。

それに彼らは自分の気に入らないからといって、独断でその作品を拒否することも許されませんでした---それはDDBのやり方ではなかったからです。

現在の仕事ぶりを見ていただいても、そうしたあり方が基本になっています。

しかし今では、アカウント・マネージメント・チームは以前以上の技術、情報、リサーチ、マーケティング、メディアなどの---を系統だて、統合合する能力がなくてはなりません。パッケージ製品は特に。たとえば、リサーチをクリエイティブ分野の人びとにも、クライアントにも正確に説明し、理解させなければなりません。

そうすれば両者の波長が合うからです。

たしかに、こうした技術は最初の頃から必要でした。しかし現在ほど不可欠ではなかったのです。

だから私たちの代理店としての熟し方には違いがあったでしょう。それも良い違いが。現在のDDBのアカウント・マネージメント・チームはどの代理店にもひけをとりません。

:前途は期待できますか?

ダリー:もちろん。私たちのこれまでの勢いが止まる気配はまるでないと思います。同じ成長を企んでいますよ。現在のクライアントと直接的なもめごともなく取れる新規ビジネス分野がたくさんあります---特にパッケージ製品に。

私たちにはいろんな新規ビジネスの口がかかり、競合になった仕事は50%以上ものにしています。

そしてもちろん全部とは言いませんが、ほとんどの場合、私たちの現在のクライアントの取扱い高が伸びる可能性があります。事実、歴史的にも私たちの成長の75%が既存クライアントの取扱い高の伸びからきています。

彼らの製品あるいはサービスの売り上げ増をもたらした報酬というわけです。

現在のクライアント・リストを見ると、私たちの未来の発展源となれる確たる理由がたくさん見つかります。

:創立当時からここにいらっしゃる者として、DDB精神はDDBがもっと小さかった頃と同じだと思われますか?

ダリー:DDB精神のエッセンスは変わっていませんね。DDBは今だに仕事をやるのに好都合な場所ですし、非政治的な場所だからです。

またお互いがお互いの才能、タレントを認め合い、その交換をあてにできる場所でもあります。

ここの1000人近い従業員のファースト・ネームをすべて知りたいのは山々ですが、他の人もみなそうでしょう、それは無理です。

しかし、DDB精神を思い出したかったら,あのクリスマス・パーティの日にもどればいい---あの朝、年次会に集まったその瞬間から部屋にはDDB精神が充満していました。しかもそれはバーを開く(全社を開く)前のことだったのです。

私たちは好人物で才能のある人しかいらない。いかに好人物といえ、才能がなければ使えないし、いかに才能に恵まれていても、人物が良くなければ、ほしくないからだ---といった、ビル・バーンバックの言葉は、今だに生きていますよ。

:DDB精神には倫理的なことで知られる会社の仕事をしているという誇りも含まれると思いますが。

ダリー:たしかにそうです。

最近の広告業界の一部の傾向を見ると、その違いがはっきりわかります。私たちは昔から小さなクライアントでも関係が健全でうまくいっていれば、大きいクライアントに乗り換えないという方針を変えずにきました。もちろん関係がうまくいってなければ、話は違ってきます。

しかしそんな方針を曲げなかったおかげで、損をした部分もありますがね。

そしてタバコの広告に対する私たちの姿勢も有名でしょう。

:おかげで・--

ダリー:損もしています。

しかし誇りも私たちのプロフェッショナルな水準と大きな関係があるんです。

私たちはひとつの視点を持ち、その視点を堅く守っており、それをクライアントの利益になるように具現する全社という評判をとってきました。私たちがごうまんさからそうやってきたというかげ口はもう聞かれなくなったと思いますよ。そうじゃないんですから。

そう、私たちは一般的に倫理に忠実な代理店、視点を堅持する代理店として認められていると確信しています。そしてそのために尊敬もされているでしょう。


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2008-09-20

(287)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(13)

週末はアクセスが落ちるから、歯ごたえの強いのを。肩書きのVPに「エグゼクティブ」がついたら「取締役副社長」って意味。「エグゼクティブ」が2つもついてるからって尊敬する必要はないけど、やり手ってことはわかる。1960年代---ぼくがDDBに通ってたころはまだ無名だったみたい。「時代論」は解説にはいいけれど、実態的にはどうだろう? でも、これでDDBが生きた古典になったことはわかる。古典だから、やわい人は敬遠する。あなたのことではないです。


1960年には生まれてなかった?」「1970年は、20歳未満?」「古典は汲めども尽きせぬ」」「なぜ古典なのかが分かってないとねとお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→★。 田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。




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「クリエイティビティは、小さな(少予算の)企業の武器」

   エグゼクティヴVP兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター 

   マービン・ホーニグ MARVIN HONIG


:若い友人がコピーライターになりたいといったら、どんなアドバイスをなさいますか?

f:id:chuukyuu:20080920052801j:image:rightホ一二グ:目立て、人と違ったようになれ。

同じことを人よりよくやればいいと考えるな。

すべての人に---クライアント、アカウント・グループ、代理店---気に入られる広告を作ろうとするな。すべての人には好かれない広告を作り続け---皆んながいいといったら、まず疑ってかかれ。

論争の的になるような広告を作れ---人びとが結局は、「おい、ア一二一が書いたやつを見たか?」と言うようなものを作れ。

若い人には、それが最高の方法でしょう。

そうやって年数を重ねるうちに、自分で、どうやれば一番いいかがわかってきます。

しかし特にここDDBでは、ユニークな広告づくりが最適です。話題の中心になる広告ですね。ボツになるならない、買ってもらえるもらえないとは別に。

とにかくドイル・デーン・バーンバックでは代理店が広告を気に入れば、かなりの評判を勝ち得ることがでるんです。

            

:「ア一二一が書いたやつを見たか?」という言葉には、「(どこそこの広告主)の広告を見たか?」という意味が暗に含まれるわけでしょう? そうするとそれはライターというよりむしろ広告主の注意をひく広告ということになりますね。

ホ一二グ:私が言っているのは、広告代理店内でライターが注意をひくためのことです。

たとえば、その広告はいい広告ではないかもしれない。でもそれがエキサイティングであればそれを強調し、鋭くすることによって、良い広告に変えることができるのです。

しかし平均的な仕事をやって、私なり、他のスーパーバイザーの所へ持って行っても、手のつけようがないわけですよ。

:しかし結局は、消費者に「おい,(あの広告主)の広告を見たか?」と言わせるような広告を作れということでしょう?

ホ一二グ:そうも言えますかね。

でもそうあらねばならないということではありません。ただ私は、消雪者にコマーシャルを見てもらいたい、あるいは雑誌なら、私の広告の所で目を止めて、メッセージをくみとってもらいたいのです。

人びとに歩き回って「おい,(あの広告主の)広告を見たか?」と言ってもらうことに、大きなメリットがあるとは思えません。

ポイントはそんな所にはないのです。

しかし若者の場合は,私たちは広告をよりエキサイティングなものにできる人びとを求めています。広告をよりエキサイティングにでき、消賀者に伝えるべきことを正確に伝え、私たちが言わんとしていることを納得させることができる,そんな人物です。

:パッケージ製品の場合、エキサイティングなほどクリエイティブな広告を作るのは容易ではないと思いますが?

ホ一二グ:今日の様相を見ていると、パッケージ製品でクリエーティブになるには、チャンスというものが大きな力をしめています。

3500万ドルをかけて広告を作る製品のコピーを見つけ、それにあう音楽を買って、まとめ

あげる、というひとつのシステムができあがっている感があるわけです。


f:id:chuukyuu:20080920053929j:image

(このTV−CM、DDBから貰っているけれど、アルカ・セルツァー社がYouTubeを嫌っているようなので---)


たとえばソフトドリンクやハンバーガー・チェーンを例にとると、「とてもおいしい」とか、「とてもいい気分」なんてコピーで、音楽もそれに合わされ、コマーシャルの登場人物はみんな跳んだりはねたりして歌を歌っている。たいていが17歳から24歳までで、みんなとてもきれい---アフリカ系美人、東洋系美人、中にはユダヤ系美人なんてのもあります。そして歌を歌う---同じ文句をくり返し、くり返しね。

今日、クリエイティビティが見られるのは、広告を必要としている比較的小さな会社です。大手はスーパーマン調の映画をやっている。

しかしクリエーティビティは小さな会社の武器なんですよ。いつの世でもね。DDBは大手に対抗した小さな会社の帝国を築いてきました。

大会社のポラロイドでさえ、もっと大きな競争相手があり、ユーモア、魅力を駆使しなければなりませんでした。

そしてジェームス・ガーナ一・コマーシャルが実にみごとな効を奏しました。

1970年代は、クリエイティビティが控え目でした。

でもウエンデイーズのようなキャンペーンを見てください。彼らには3500万ドルもの予算はありませんでした。歌ったり踊ったりする以外に彼らの製品を売る方法を考えなければならなかったわけです。そこでクリエイティブなアイディアに突破口を見つけました。

そしてもののみごとに効果をあげています。

大手にとっては、3500万ドルをかけて文句を考え、歌を歌わせていればいいのでしょう。

しかしそうでない会社が彼らを真似ていたら、大手の手中に陥るだけです。

たとえば、ミラーのビールのキャンペーン(これは非常な成功をおさめ、他社もまねをしているほどです。シュリッツもミラーになろうとしています)。その力、攻撃力を再編成するクリエイティブな方法を見つけようとしないで、真似をしているだけなんですね。

:しかし今では<これまでにいい広告が出つくした感じで、インパクトを与える広告というのは難しいんじゃないですが?

ホ一二グ:いや,ほとんどの広告が似かよってきているんで、もう少し寛容になってくれればかえってインパクトを与える広告は作り

やすいんじゃないですか。1960年代後半より難しいとは思いませんね。


f:id:chuukyuu:20080920053930j:image


:そして広告主の考え方は寛容になってきていると思いますか?

ホ一二グ:ええ。そうなるでしょう。すべてのものは、くり返しますからね。広告界のクリエイティブ・ピープルにとって最も困難な時

期は過ぎ去り、強い者だけが生き残っていますし。

1960年代は、1950年代の反動期でした。50年代はロック・ハドソンの映画、型にはまっ

たアカウントマンの時代でした。

60年代、すなわちビル・バーンバックとクリエイテイブ革命なるものは、その50年代に対する反動---大反動---だったのです。とてもエキサイティングでした。

1960年代末には、クリエイテイブ革命(この言葉は好きじゃありませんが、皆がそう呼んでいるので)は行きつく所まで行ってしまいました。

自分が何をしているかわからずに跳びはねる人びとが現われ、クライアントは彼らに「ドイル・デーン・バーンバック風の広告を」期待する、しかし彼らにはクリエイティブな広告の模倣しかできないといった具合になってしまったのです。

当然、真にクリエイティブな広告というものは決して模倣であるはずがないのです。

それでクリエイティビティという言葉は悪名高くなってしまいました。

そしてこのクリエーティブ革命に不快感を覚えていた人びとは、待ちかねていたように、

「クリエーティブ革命は死んだ」と叫び出しました。

マジソン街のビルの屋上にのぼっていって、叫び散らしたのです。

アンチ・クリエイティブ革命勃発というわけです。

しかし私はそうは思いません。私は最もクリエイティブな広告作りを信じます。

しかし1950年代は毒にも薬にもならない時代があって、だから1960年代に起こったこが革命のようにうつったわけです。そして行きつく所まで行き---。

1970年代は1960年代の反動で、そして今、それも行きつく所まで来た感があります。

現に反対方向への動きがあり、それはこれからも続いていくでしょう。

しかし大会社ですら他の諸々の会社に彼らの広告を模倣されるのにうんざりするようになるでしょう。

彼らはチェックして回り、TVのいい広告のほとんど---彼らが好む広告---が現在彼らが広告づくりに使っているルートと違ったルートからでていることに気づきつつあります。

:DDBと他の代王里店との根本的な違いは何だと思われますか?

ホ一二グ:根本的な違いは、私たちが他より1歩先を行こうと努めていること、満足がいく広告あるいは、コマーシャルだからといっ

て、その広告あるいはコマーシャルで満足していないことです。このさらにつっこんでいく姿勢はこれからもくずされないでしょう。


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2008-09-19

(286)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(12)


このシリーズ(11 昨日分)の前書きで、こんどの新書では帯のコピーまで書くことになった---と告白しました。で、夜中からこのブロクを手がけ、夜があけた06:20分からいつもの散歩に、傘をさして出かけました。歩きながら、いつもの癖で、帯のコピーをあれこれ練っているうちに、とんでもないアイデアがひらめいたのです。古今東西の帯に使われたことのないアイデア。出版社は呆気にとられ、書店の目きき店員さんが喜び、買い手が楽しみ、コストもほとんどかからないアイデア---ま、こんどの版元が前代未聞のこのアイデアを採用したくださるかどうか。あまりに突飛すぎて、尻ごみされそう。さて、きょうのバート・スタインハウザー氏---DDBのアートディレクターの中で、ぼくがもっとも会いたかった人。「ハード・セル」の広告をソフトな感覚でくるめるアートディレクターなんです。そりゃあ、シローイッツ氏とかトウビン氏にも親しくしてもらったけど、DDBでも稀有の才能をもったこの人には会ってみたかった。でも、当時は、コピーライターへの指針を訊きだすことで精一杯だったのです。


この人の多彩ぶり、もっと見たい」「女性を酔わす才能「シーヴァス、好き」ご冥福を祈るとお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→★。 田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。


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「私はいまだに、すべてに初めて挑むような気持ちでアプローチする」

   シニアVP兼ヘッド・アートディレクター

   バート・スタインハウザー BERT STEINHAUSER


:こんなに年数がたっても、まだ熱狂的でいられるんですね?

f:id:chuukyuu:20080919041957j:image:rightスタインハウザー:小さな奇跡ですね---もう23年もDDBにいるのに、まだ自分のすることに興奮している。

ドイル・デーン・バーンバックが当時雇い入れた基準に関係があるんじゃないかな。雇われた人全部が恐ろしくエネルギッシュで、はてしない熱情を持っていました。

そして当時から今までここにいる人たちは、共通していまだにその特質を失わずにいます。

どんな革命にも始まり、きざしはあるもので、私は初めからここの革命に参加していました。私はいまだにすべてに初めて挑戦するような気でアプローチしています。リアルでなければならず、新しくなければならず、楽しくなければなりません。

楽しくなく、良くなければ、誰が見たっておもしろいわけがありません。ありふれた広告をおもしろく見せるのは、ちょっとした魔術です。そして私が自分の白髪の数より多い仕事を与えられてきても、なおかつ、ここで仕事をしているのは原動力があるからです。

ここはいまだにそれができる場所だからです! ビル(バーンバック)が築いた家です。

私はここでいろんな才能を見い出し、開発し、使ってきました。私は写真家であり、ディレクターです。

広告創作活動のあらゆる分野にたづさわっています。

どのパートにもなれるので、実際経験が豊かです。

:革命30年後の変化は?

スタインハウザー:ただ仕事を、「普通のことを普通でなくする」とH.J.ハインツが言っていたように、やり続けているだけです。

最初、私たちは人びとが注目するような画期的な広告を創造しました。

そしたら人びとがコピーし始め、今日ではそれを称して革命と呼んでいます。

しかし当時は、そこまでいくとは全然思いませんでした。

ただ毎日、手元にある問題に答えて仕事をしていただけです。

今日でも同じですよ、ボブ・レブンソンと私がフォルクスワーゲン(注ラビット)の新キャンペーンに着手した時、これからどうそれが展開していくかということは全然わかっていませんでした。


f:id:chuukyuu:20080919041955j:image


ただアイデアを持って始め、進んで行く要所要所でそれを変え続けていっただけです。

そうするうちに、突然人びとの話題にのぽり出したのです。他のクリエイティブ・ピープルもあの仕事をしたがりました。そしてフォルクスワーゲンは5年たった1月に初めてわが国の売り上げNo.1の輸入車となりました。大いに貢献したことは確かです。そして私はそれを誇りに思ってます。

:あなたはハインツとかS.O.S.など、パッケージ製品の広告で知られています。フォルクスワーゲンの場合は勝手が違いますか?

スタインハウザー:いいえ、私にとって、クリエイティビティは---問題を解決することであって、違いはありません。製品の優秀さを語る、あるいは違いを論証することです、

創造的には、フォルクスワーゲンの場合も、製品の優秀さを告げることであり、何の変わりもありません、しかし、車を売れる広告をつくるのは、ずっと難しいでしょう。人は新しいケチャップぐらいなら多少の余分のお金を払ってでも試してみようとしますが、車となるとそうはいきません。

人にドラマチックに、新しいやり方で話を告げるのは---これはたいへんです。

誰もが燃費をとりあげています。どんなにすごい数値を並べたところで、人は見向きもしてくれません。

人びとを感動させる、こちらに注意を向けさせる、これもまたたいへんです。

そしてまだ見つからないにしても、たしかに解決策はあるはずなんです。その探究が---それは車にしろ、パッケージ製品にしろ、何であっても公分母なんです。

:これが解決策だ! とどうしてわかるのですか?

スタインハウザー:第六感です。本能です。

今までにやってきた仕事から、それとわかります。

自分がいいと思ったら、人に意見を求めないでしょう、どうだ、やったぞ、見てくれ、と言いたくなるはずです。

:リサーチに不自由さを感じたことはありませんか?

スタインハウザー:いいえ、私はもちろんですが、DDBのクリエイターの誰も不自由は感じていないはずですよ。


f:id:chuukyuu:20080919041956j:image:left

お父さんに高価なベルトを贈りましょう。


パッケージ製品---「ハード・セル」製品から始まったんで、私はほかの人よりもリサーチにずっと感謝しているくらいです。ひとつの道具だと思うんですよね。

クリエイティビティとは違います。

リサーチを一度食べ、それをはきもどし、クリエーティブな解決策を作り出すということはできません。

I)サーチは、耳を傾ける道具です。

人が何をどう見ているかを教えてくれます。そして物の見方を変えることによってリサーチ結果は変えることができます。

それまでには知らなかった情報を広告することによってね。

たとえば、ケチャップの瓶の底を打つことは、一見否定的に写ります。しかし、そのことでケチャップのぴんが厚いということを見せれば、これは肯定的に変わります。

リサーチの結果は、人びとに新しい物の考え方を印象づければ、変わってきます。しかしリサーチで広告が創造できると思ったら、大間違いです。

:プリテストであなたの好きなキャンペーンがボツになったら?

スタインハウザー:その場合は、真剣に見つめなおして、どうしてテスト結果が悪かったかを見極めます。私が間違っていたかもしれないし。

セールス・メッセージを強くするには創造的にどうしたらいいかを改めて考えさせてくれるかもしれない。

だから私はニールセン・レポートを自分の好きな広告と並べて壁にはっています。私は販売成績を広告のキーファクターだと信じています。私は楽しみのためではなく、売るために物を作っているという事実を決して忘れません。だから、私は結果を見せるのです。

結果が、すべてです。


f:id:chuukyuu:20080227050723j:image:left:h300f:id:chuukyuu:20080227053253j:image:left:h300

ハインツ


f:id:chuukyuu:20070423054232j:image:left:h200f:id:chuukyuu:20070423054101j:image:left:h200


f:id:chuukyuu:20070423053321j:image:left:h200f:id:chuukyuu:20070423053508j:image:left:h200

クレアロール


f:id:chuukyuu:20080919165050j:image

ワシントンD.C. 税関局 法:8962 1965年12月1日公布

米国民は、海外からの帰国時には

ウイスキー1本を無税扱いとする。


子どもはケチャップが大好き。子どもたちによる指名買いも多いとおもう。

決闘


YouTube

D

(アナウンス)西部でも、東部でも、南部でも、北部でも、最ものろまなケチャップです。


クレアロール・ヘア・ダイ

【ジョージとマージ】

YouTube

D

(アナウンス)ご心配なく、ジョージ。新しい自然なブロンド染めは、これまでにつくられたどの毛染めよりもご婦人にあうのです。染め終わったらシャンプーするだけでOK。とても自然に染めあがります。しかも、他と比べものにならないほど長持ちするのです。新しい自然のブロンド毛染めは、もちろんクレアロールの製品です。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


関連記事:

>>DDBのアートディレクター バート・スタインハウザー

>>DDBの女性アートディレクターたちによる、バート・スタインハウザー氏批評

参照:

>>Bert Steinhauser, 73, Art Director for Ad Agency(New York Times)


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2008-09-18

(285)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(11)


きのう(2008年9月17日)新著の原稿99%を版元へ渡しました。1%は帯の「売り文句」とカヴァーの折り返しの袖の「売り文句」と「プロフィール」。元コピーライターなんだから---ということで、編集部の仕事までやらされることに。売れなかったら、元コピーライターが本物じゃなかったってことになって、化けの皮がはがれます。まあ、本が売れる要素はいくつもありますから。その一つはWebで話題が飛ぶってのが、最近では大きいようです。つまり、あなたの責任(笑)。マンガーノ氏には会ったことはありません。ぼくが【DDB紹介[終末宣言]】をしてから、DDBで認められてクリエイティブ・ディレクターになった人ですね。マンガーノ氏が自選にあげているシーヴァス・リーガルのシリーズは、いずれ、あらためて30点ばかり紹介しようかと考えています。


DDB30周年おめでとう」「新しい人と知り合うのは幸福」 「ラングラーのCMも見たい」酒好きなんだ。シーヴァスの広告、早く載せろとお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→★。 田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「消費者が注意をそらしてしまう前に、つかまえねばならない」

   VP兼クリエイティブ・ディレクター  

   マイク・マンガーノ MIKE MANGANO



:偉大な広告づくりは10年前と変わっていますか?

f:id:chuukyuu:20080918044736j:image:rightマンガ−ノ:それほど違っていません。ちょっと難しくなってはいますが。一般的にいうとすれば、クライアントがお金の使い方に前よりも注意深くなってきており、前ほどの自由がありません。前後のリサーチも増えました。10年前に制作されたようなものでも、今日ではその多くがプリテストの段階でポッにされてしまいます。

:そういった制限内で働けますか?

マンガーノ:その中でやっています。ラングラーの場合も、まずリサーチをして---

まず初めに全社について、彼らがどのように思われているか、を知るため---それからその情報に基いてキャンペーンを作りました。そして安全装置のように、再びテストし、結果は全て良と出ました。

リサーチは何を言うべきか---それをどのように表現するかではなく---を見つけるのに役立ちます。

:そうしたことの決定は何に基づくべきでLよう?

マンガーノ:最終的には、判断に頼ります。それが私たちがお金をもらっている理由ですしね。

それでこの代理店は大成功をおさめてきているんですから。VWしかり、ポラロイドしかり。

そして、シーヴァス・リーガル、 ソニーも。これらのクライアントはすべて判断力のあるすぐれたクリエイティブ・ピープルの手で作られたすぐれた広告によって成長し、大きな成功をおさめてきたものばかりです。

f:id:chuukyuu:20080919140128j:image:left:w200シーヴァス・リーガルの会長は、ついに6年めにこの広告を出してもらえることになりました。(全文は末尾)

そこが他の代理店と違うところでしょう。それが売り物なのです。

しかし、3つのコマーシャルの中からテストして最良のをひとつ選ぶと言われたら、3つのすぐれたコマーシャルを作らねはなりません---どれが売れようとです。だからたいへんなんですよ。

:ここ数年の広告はどのように分析なさいますか?

マンガーノ:どちらかと言えば、幾分知的にでなく、むしろ幾分シンプルに、そしてより騒々しくなっているようですね。

シンプルであるように感じますが、消費者が注意をそらす前につかまえるよう強いられているような気がします。

私には消費者は以前より関心が薄れているように思えるんです。

:その変化についてあなたの仕事の例をあげて説明してください。

マンガーノ:そうですね。「Gee--- いいえ、GTEです」というキャッチですが、これはとてもシンプルで、記憶しやすく、学力がなくても容易に理解できます。

10年前だったら、こうは書いてません。もっと知的にやろうとしたでしょう。

:あなたの仕事は変わりましたか?

マンガーノ:異ったアイデアに当時よりオープンになり、融通がきくようになりしたね。

ミスを犯すことに神経質ではなくなりました。

同輩がどう思おうとまったく気になりません。

前には私のイメージというものに非常にこだわっていましたが。

f:id:chuukyuu:20080918044738j:image

これがリッターあたり35.7kmのフォルクスワーゲン

>>Youtube(こちらで映像が見られます)

>>プリント広告とCM解説はこちら


:健全な感じですね。

マンガーノ:健全でしょう。製品のためを考えるようになりましたから。

DDBの広告には特殊な調子、スタイルがあるでしょうか?

マンガーノ:どちらかと言えば、クレバーで意外性がある方でしょう。読者の心をとらえ目立つ何かがあります。以前は目立つ広告の90%がDDBの作品でした。

しかしそれも、皆んながそれをコピーし、DDBにいた人たちがそこら中に散らばった結果、アイデアが広がってきました。

当時はそういう仕事をしてたのは、私たちだけでしたが。

そもそもそれに、バーンバックの革命に、ひかれてこの商売に入ったという人がほとんどです。

当時は第一線のライターがズラリとそろっていました。

私は14年前にスミス&グリーンランドから釆ましたが、私の作品集は5人の大ライターに回されました----デイブ・ライダー、ボブ・レブンソン、ロン・ローゼンフェルド、レオン・メドゥ、そしてビル・バーンバックです。恐しかったですよ。

chuukyuuのおすすめ】上記の大ライターたちとのインタヴューはきょうのこのブログ日記の外・上の窓[クリエイター・インタヴュー]をクリックで読めます。


:今日でも、独自のタレントを育てることができるでしょうか?

マンガーノ:もちろん。私たちが雇っている人びとの95%が才能を持ったビギナーで、ここでその才能を開発しています。私たちはフレッシュなアイデアをさがしています---どんなに異っていようと、どんなふうに思いついたのであろうと。

:コピーライターとアートディレクターのチームがうまくいくかどうか、どうやってわかるんですか?

マンガーノ:前に一緒にやった経験がないと、推測する以外にはありません。最高のチームとなると、やっぱり長年一緒に仕事をしてき、お互いを知り尽くしたチームでしょうね。気楽で、くつろげますから。

大切なのは、何といっても、抑圧のないことです。抑圧を感じたら、何をいって良いか気に病み、口に出せなくなってしまいます。そして、頭に浮かんだことの75%もいいそびれると、うまい考えも逃げていってしまいます。

:とっかかりをつかむのはたいへんですか?

マンガーノ:秘訣はありませんね。ただ仕事し続け、考え続けるだけです。私は何か仕事があると、そのことぽっかり考えていますよ。

真夜中だって---車の運転中だって---そうしているうちにアイデアが生まれてくるんです。

:ラングラーのキャンペーンの場は?

マンガーノ:ジョン・カッギアーノと私は、カウボーイのことばかり話していました---ラングラーといえば、カウボーイ、カウボーイの間のビッグセラーでしたから。

でもそれから後で、ラングラーがジーンズ以外のイメージを広げようとしていることを知りました。

そこでカウボーイを使ったのです。違うやり方でね。ラングラーはカウボーイのためだけでなく、いろんな服を作っていることを示したのです。ラングラーのコマーシャルは30秒としては大がかりなものでした。

:30秒におさめるのは難しいでか?

マンガーノ:長年それをやっていると、30秒で考えれるようになるものですよ。

もう時間調節をしなくても、 自然に30秒ものができるようになりました。

10年前だったら、ラングラーも60秒コマーシャルになっていたでしょうね。



【chuukyuuアナウンス カラーの現物が出てきました】

f:id:chuukyuu:20080919140128j:image

シーヴァス・リーガルの会長は、6年目についにこの広告を出しもらえることになりました。


「シーヴァスには台座がふさわしい」彼(会長)は私たち(DDB)に憶えきれないほど何回も説いてきました。

「そんな広告は古くさいい、いとこだ」 私たちは彼に数えきれないほどそう説明してきました。

「どこが古くさい?」 会長はいつもこう訊き返したものです。「シーヴァ・リーガルは世界最高級のスコッチだ。台座に合うスコソチは、シーヴァスをおいて、ほかにないはずだ」

「それはそうです」と私たちの返事はお定まり。しかし、台座に載せただけでは、世界最高級のスコッチだと人びとを説得させられない。そんなのはどんなスコッチにだってできる」

「わかった」会長の返事はいつもこう。「広告は君らが専門家なんだから」

何年もこんなことのくり返しでした。でも、数か月前、仕方がない、一度会長のやりたいように写真を撮らせて、私たちが言ってる意味をわかってもらうよりないということになりました。

そう、やってみると、この写真は、私たちにもあることを教えてくれました。

台座に置かれたシーヴァス・リーガルは幾分古めかしく見えます。

Lかし、ほかのスコッチがこれをやっていたら、きっと平凡で陳腐なものに写ったに違いないのです。


お詫びのオマケ(あるいは予告編)



f:id:chuukyuu:20080918054646j:image

この瓶を2度利用することを、連邦法が禁じています。


でも、いつの世にも法律違反者っているものです。空になった(たくさんの楽しい思い出のある)シーバス・リーガルの瓶を捨ててしまうのは嫌だし、かといって2ドル余分に払ってシーヴァス・リーガルを買う気はないという人---そういう人が他の酒のデキャンター代わりにシーヴァス・リーガルを使います。

不法行為?  いいえ、もっと悪い、不道徳です。

それにこんなことしてもだれもだませません。

シーヴァス・リーガルのような12年ものストラシスラグレンリべット・スコッチをほかのスコッチからつくろうとしても無理です。ご立派な試みではありますが。

てすから、もしこれからシーヴァス・リーガルの空瓶をいっぱいにしたい誘惑にかられても、やめてくださいね。全く無駄な行為です。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


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2008-09-17

(284)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(10)

今朝の発見(私事メモですが、ご容赦)---一昨年の暮れに入れ替えた、複合プリンタ(エプソン・カラリオPM−A820)のスキャニングが5,000枚を越えた。このブログともう2つのブログのための作動。22ヶ月ほぼ660日で---。2万円をきる価格だったから、1枚4円!ヤッタァ。今日のフィリス・ロビンソン夫人があげた自選のTV−CM2本は、観たことがない。これのあり場所を探してくるのは、ぼくの仕事ではなく、若い世代のクリエイターがやることであろう。ロビンソン夫人は、DDBの創業時からいた人---女性の年齢をいっては失礼かもしれないが、28,9歳で創業に加わったとして、30周年では58,9歳。名作CF『動物園』の愛娘は6歳前後とみて、30歳代後半の出産。才能ある女性の一つの生き方を示した。ぼくのインタヴューもあわせてお読みいただきたい。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「『スゴイ広告を作れ』という以外には、何ひとつルールがなかった」

  VP兼コピー・スーパパイザー(DDB創立時から13年間コピー・チーフ)

  フィリス・ロビンソン PHYLLIS ROBINSON


:DDB設立当時は、女性のコピーライターは珍しかったですか?

ロビンソン:いえいえ。私が子供の頃、広告に興味を持ったのは、そもそもがキンベルズ(ファッション百貨店)とメーシー(百貨店)の戦争---すなわちパーニス・フィッツギボンとマーガレット・フィッシュバックの戦争---がきっかけでした。

彼女たちの広告を読むのがあまり楽しいんで、14才の時にコピーライタ-になるって宣言したくらいです。

当時の女の子たちは先生、看護婦、女優などになるのが夢だったのを思うと、変わってはいましたが。

:彼女たちが女性であったことで感動なさったわけですか?

f:id:chuukyuu:20080917053824j:image:rightロビンソン:いいえ。彼女たちの仕事が気に入ったのです。そしたら、たまたま女性であったわけ。それに広告代理店には、ほかにも、ジーン・リンドローブなど大物の女性がいました。

それなのに、J・ ウォルター・トンプソンでは食堂に女性専用コーナーを設けているなんて話を耳にしたこともあります。

また、女性はスープとかおむつ、化粧品だけを書いていればいいといった風潮もありました。でもそれは、私たちの手で打ち破りました。

私はどんな物でも、あらゆる物を書きました。

創立当初は私がIt、即コピー部だったからです。

:そして最初の13年間、コピー・チーフを勤めていらっしゃいました。楽しかったですか?

ロビンソン:ええ、とても。代理店建設に大いに貢献しましたから。

それに人びとを育てる機会にも恵まれました。

私の人生で最も収穫の多い期間と言えます。まず、人びとを選び、埋もれている才能を発掘し、そしてそれを育て、花開くの待つ---。

:あなたが雇った人たちの名をあげてくたさい。

ロビンソン:最初の13年間に雇われた人は、すべて私が雇いました。デイブ・ライダー、ボブ・レブンソン、ロン・ローゼンフェルド、メリー・ウェルズ、ポーラ・グリーン、ジュリアン・ケ一ニグ、ロール・パーカー(彼女の場合は、1度ならず、2度も雇いました)。

chuukyuu注】ロビンソン夫人のチルドレン・名コピーライターたちとのインタヴューは、このプログのトップ・ページの本日分の外・上の窓目次[クリエイター・インタヴュー]をクリックで、お読みになれます。


もちろん、この人たちは、すべてて何がしかの経験はありましたが---デパートの広告、小さな代理店など、とてもやりがいのある、しかしまた心身ともに疲労する仕事でした。

自分の仕事をやりながら、それをしたのです。とにかく「スゴイ広告を作れ」という以外には、何ひとつルールがなかったのですから。

:そして13年たって?

ロビンソン:もう十分やった、と思いました。

それ以来、ピンチに頼まれる時以外は、ライターに専念することにしました。

:今も、心身ともに疲労しますか?

ロビンソン:広告の創造は、とても楽しく、たいへん愛しています。でも後は---それは結婚とか、子育てとか同じで、楽しくもあり、やりがいもあれば、反面つらさもあるといったところでしょう。やりがいはあるけれど、仕事でもあるわけですから。

:自選の広告に、ポラロイドのオリビエのコマーシャルとナイスンイージーの「私を私にしてくれる」をお選びになった理由をお聞かせください。

ロビンソン:当時のほかの広告と全く違っていたからです。

SX−70はほかと大きく異なる製品であったため、その製品に釣り合う広告で、しかも誇大でなく、信びょう性があるように聞こえる広告を創造するのがたいへんでした。

私はローレンス・オリビエ(Laurence Olivier)にしか演じられない、出せない雰囲気を思いつきました。

そして幸い彼を使うことができたわけです。あのキャンペーンを選んだのは、製品の発売---フィーリング、言葉、(そしてボブ・ゲイジと)広告のスタイルの設定など---にかかわりを多く持ったからです。


f:id:chuukyuu:20080917051937j:image


「私を私にしてくれる」の場合は、また別です。ナイスンイージーの売り上げが非常に鋭い落ち込みを見せていた時、私たちがクレアロールにそのアカウントをくれるよう説得したんです。

基本線---自然さ---を変えることなく、私たちはドラマチックな上昇線を描かせることに成功しました。

若い購買層をネライ、違った言葉---若者が自分たち自身,人生を語る言葉だけでなく、キャスティング、シチュエーション、服、音楽、なども含む幅広い意味の言葉---で話しました。

あれは 1960年代の革命のはしりだったと思います。今あの一連のスポットを見ると、さほど画期的でも、珍しくもありません。

でも当時としてはあまりに画期的で、クライアントに売るのにとても骨が折れました。

リサーチは絶望的でした。カリフォルニアの老婦人の手のひらの汗が適切でないとか、なんとか。反応もひどいもので、「TVであんなひどい女性なんか見たくない」なんてものが多かったです。


f:id:chuukyuu:20080917051938j:image


今思うと,おかしな話ですけれど。

あのアプローチ---パーソナルな調子、スタイル、自由な感じ、自発性---はあまりにしばしばコピーされてきて、今日では月並みになっていますからね。

あれは社会の変化、未だ気配というくらいの変化、をたくみにとらえて、製品に利用したケースでした。

:あなたの作品は常にフレッシュで、未だ気配にすぎないくらいのフィーリングをとらえ、製品にみごとに応用しています。一種の技術ですね?

ロビンソン:常に自分をとぎすまし、自己に生き、生長していくことです。それは技術だけをみがくのではなく、常に学び、見、考え、観察し、吸収する姿勢をなくさないことです。


D

ポラロイド『動物園』


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次




関連記事:

>>フィリス・ロビンソン夫人とのインタビュー

(12345678)

chuukyuuchuukyuu 2008/09/17 17:36 >einen さん
はい。クロスオーバー・イレブン、4〜5年つづけましたか。4人ほどで書いていました。
世界旅行のこと、世界的マンガ家トミ・アンゲラーのこと---この人は、ニューヨーク、カナダ、アイルランドのコークを経て、生地のストラスブールで隠棲。ぼくより1歳下。多摩美大での教え子の武田秀雄(文春マンガ賞授賞)くんを20年前に紹介し、つい最近、2人展をストラスブールで開いたばかり。

2008-09-16

(283)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(9)

f:id:chuukyuu:20080916042103j:image:rightやっと、新書の著作が終わりました。今日から、ふだんのスケジュールに戻ります。新著にとりかかっていた8日間のおはげまし、ありがとうございました。とても力づけになりました。ほんとうは、かかりっきりではなく、1日に4,5時間もかけなかったんです。浮いた時間はボーナスみたいなものでした。『孫子』と『甲陽軍鑑入門』(角川ソフィア文庫 小和田哲男さん)を読んでいました。さて、復活は、ジョン・ノブル氏から。それでおもったのですが、バーンバックさんを本家のやさしいおじさんのようにおもい、ボブ・ゲイジ氏やヘルムート・クローン氏を気のいい従兄、レン・シローイッツやロイ・グレイスを兄貴、同様にフィリス・ロビンソン夫人やポーラ・グリーンさんを従姉、ボブ・レブンソン氏や今日のジョン・ノブル氏が兄弟のように思えてきたとき、ほんとうに、彼らの才能まで自分のものになったとおもえるのではないかと。遠い国の人たちと見ているうちは、身につかないんじゃないかと。ジョン・ノブル氏は、これまで2回登場していてます。今日の末尾に、URLを掲出しておきますから、時間があったら再訪してみてやってください。 (写真は『特集DDBが選んだDDB』後編)


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「台所に2人の婦人がいるのを目にした瞬間から、人の心はそっぽを向く」

   シニアVP兼コピー・チーフ

   ジョン・ノブル JOHN NOBLE


:フォルクスワーゲン、エイビス、ソフト・ウイスキー、アタリ、モービル、そして今のブローバと、あなたの広告にはひとつの共通点があるように---

ノブル:ユーモアでしょう。ユーモアはすばらしい武器ですからね。

:なぜですか?

f:id:chuukyuu:20080916042104j:image:right:w250ノブル:人びとが映画に求めるものと同じですよ。コマーシャルを見るのは情報を繰るだけでなく、楽しむためもあるのですから。

コマーシャルに楽しさを入れない、恐しく、シリアスなものが横行しています。しかし、1ポンドのバターを売るのに重々しくやる必要があるでしょうか?

ユーモアは好ましさを与えます。それがフォルクスワーゲンのキャンペーンの秘密でした。あの車の好ましいパーソナリティもそれで生まれました。

そしてユーモアは注意をひきます。人びとを目ざめさせます。

:あなたはモービルのカンから小さな車がいっぱい出てくるCFを出しました。

あれはfunny one-linersからはるかに離れていますね。

ノブル:注目されるために異ったことをやろうとしたからです。これは基本的なことなんですが、驚くほど多くの人がそれを忘れています。

テレビは単調です---台所に2人の婦人がいるのを目にした瞬間から、人の心はそっぽを向いてしまうというのに。

でもシューッという音が聞こえ、缶から小さな車がゾロゾロ出てきたら、人びとは目を止め、「オィ、アレは何だ?」と言うでしょう。

注目されないような広告に数百万ドル投入するなんて、ナンセンスですよ。

:フォルクスワーゲンは、どのくらいの間やりましたか?

ノブル:8,9年です。ひとつの製品としては長期間です。

:最も有名な広告キャンペーンを担当するのは、どんな気分でしたか?

ノブル:初めは、その事実を思っただけでわくわくしたものです。しかししばらくすると、DDB以外ではフォルクスワーゲンをやっていることに触れたくなりました。


D

フォルクスワーゲン"Funeral(葬式)"


パーティでは、すばらしい小説を書いたような扱いを受けるんです。

もうたくさん、何か他の話をしましょう。

:成功したキャンペーンを続けるのがあなたの仕事だったわけですか?

ノブル:フォルクスワーゲンをTVに紹介するのも仕事でした。誰もがすばらしいプリント広告のことは知ってましたが、当時はTVにはそんなに出てなかったのです。テレビ用全く新しいものを発明しなければなりませんでした。

にでした。有名な One liners をピックアップするだけでは足りなかったのです。

しかし私たちは、フォルクスワーゲンのフィーリング、そしてユーモアを維持することに成功しました。

:あなたの作品は広告以外のものから影響を受けていますか?

ノブル:映画に大きな影響を受けてます。

どうとはっきりは説明できませんが。私は昔から映画に恋してきました。子供の頃から、次から次へと映画を見てもぜんぜんあきませんでした。

そして家へ帰ると、自分の部屋にこもって、演技のまねをしたもんですよ。

当時集めた印象が今、シーンや、カメラの動きに現われているんでしょう。しばらく前に作ったフォルクスワーゲンのチャーリー・チャンのコマーシャルの漫画なんかにもね。

新しいブローバのラジオ・スポットにもロッキーのようなキャラクターが出てますよ。

映画は俳優に対する尊敬の念を教えてくれましたね。スクリプトがどんなにすぐれていても---死ぬも生きるも、俳優の演技次第です。

:あなたはある記事に、「クリエイティブ・ピープルを子供扱いするな」と書いていますが、それは26才という年で副社長になって、あなたより年上のアカウントマンたちを相手にしてきたことから出た言葉なのですか?

ノブル:それはクリエイティブ・ピープルの持っている子供らしい無邪気な自由と率直さに関係するのですが、中には子供っぽさと混同している人もいるんです。だから彼らはクリエイティブ・ピープルを「キッド」と呼んではばかりません。

でもそれは

私たちの仕事には不可欠なんです。目立つ広告を創造するには多少若く、クレージーでなければ---あるいはそう考えなければ---ならないのです。

それにユニークな広告を要求するクライアントを持つ助けにもなります。モービルはポンプの隣りに男を立たせるといったようなものは望みませんでした。とてもガッツのある会社です---上は全長から、下っ端に至るまでね。

話すガソリン---車が1台も見あたらない地球の絵といったものでもやってのけようとします。

:ひとつのアカウントを長年やっていると、フレッシュさ、おもしろさを保つのに苦労するでしょう?

ノブル:広告のいい所は、毎日が違うということです。全社へ行って毎日同じことをするというのではありません。ここでは、私は毎日新しい方向を向いています---違うアカウントの仕事をすることもあるかもしれません。

モービルの前のコマーシャルをどうしたらしのげるか考えているかもしれません。

f:id:chuukyuu:20080916042105j:image

私は私自身、そして他の人と競い合っています---好意的なやり方でね。初めの頃は、新しい広告を持ってホールへ走り出して行き、見せびらかしたもんですよ。

「これをしのげるか?」ってね。

それにアド・マンは非常に刺激的です---一次元的でなく、楽しく、ユーモラスです。ロイ・グレースやスーザン・カルホーンとなら何時間座っていても、次から次へとおもしろい話題が出てきますよ。うまくいった結婚みたいなもんですね。

:最近では、ラジオ・コマーシャルの仕事もなさってますね。1人で仕事するのとは違いますか?

ノブル:でも私は、ラジオでも1人ではやりません。やっぱり担当のADやプロデューサーなど、そのアカウントに通じており、 しかもいい趣味を持っている人と一緒にやった方がうまくいくからです。

広告はコミュニケーションであり、自分のために書いているのではないことを確かめたくなるものです。反応(リアクション)が欲しいんです。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


関連記事:

>>ジョン・ノブル氏とのインタビュー

(1)(2)(3)(4)(了)

>>ジョン・ノブル氏とロイ・グレイス氏[DDBのチーム・プレイを語る]

(1) (2) (3) (了)

2008-09-12

(282)金曜日のご報告

4日経過。220ページのうち、150ページ分できた。

いま、午前4時ちょっと前。

あと70ページ---と思い、寝過ごした。

「千里の途を行くものは、900里をもって半ばとす」

古人はいいことを言ってくれている。


30%を残して早くも、たるみがでてきている。

きょうを含めて、あと4日。

図版の捜しものという難事がひかえている。


きのうは、これまでこのブログに挙げてきたものの索引のフォルダが

突然、パソコンから消えて、行方を捜すのにあわてた。

索引のフォルダがないと、データのあり場所がわからない。


夕刻、迷い子フォルダの行方が知れた。


もう一つのブログ[『鬼平犯科帳』Who's Who]用の

浮世絵春画のフォルダに隠れていた。

好色のデータめ。


おはげましの★をつけてくださっている友人に感謝。

休載中、これまでのデータをのぞいてくださっている多くの方に

感謝。 

これ、実は、こんどの本の主題なんです。

2008-09-10

(281)水曜日のたわごと

   水曜日のたわごと

ご迷惑をおかけしているアーカイブの休載、失礼しています。

9月8日から、新書づくりにとりかかって、2日過ぎました。

72歳の時に72冊目の編著書を出して以来、6年ぶりの著作ですが

2日目から、カンが戻ってきはじめています。

作業は順調に進むはずで、9月16日には約束どおり、版元へ原稿を

お渡しできる目安がついてきました。

きょうはデザイナーと、装丁・レイアウトの打ち合わせを行います。

本の趣旨は、大人の絵本---ページを繰るだけでわくわくしてくるよう

な仕掛けをプランしています。

見る本なので、目次も後ろへまわすつもり(編集者が、へえ、

こんな本のつくり方もあったのか---とおっしゃるような)。

でも、本をつくるのは簡単ですが、売るのがむずかしい。

で、売れる仕掛けのプランを練らねば。

11月に配本の予定です。

以上、休載のお詫びかたがた、ちょっとした弁明まで。 

2008-09-08

(280)月曜日のお断り

       月曜日のお断り


  まことに不本意ながら、当ブログへの新規のテキストの書き込みを9月17日の連休あけまで

  休載せざるをえなくなりました。


  そのわけは、まったくの私事---新しい編著書の原稿を16日までに渡すことになったからです。

  9日間、フルにかかりきれば、なんとか1冊、できそうです。


 その間、お休みになるなり、これまで1年8ヶ月、1日も休まないでアップしつづけた日記

(原稿)を拾い読みしていただくなりで、お許しください。


  9月17日には、[DDB30周年記念特集]を継続いたします。

  「男子、3日会わねば、括目(かつもく)して俟(ま)つべし」


  ほとんど、変貌などしませんが---。


                                chuukyuu 謹告


伸: なお、余計ごとながら、もう一つのブログ[ 『鬼平犯科帳』Who’s Who]は、9日分書き込んで予約してありますから、順日、アップされるはずです。

2008-09-07

(279)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(8)

f:id:chuukyuu:20080907024044j:image:right土・日曜日には、アクセス数が週日の3分の2とか、日によっては半減する。「休日ぐらいパソコンから離れたい」というクリエイターが少なくないらしい。そりゃあ、わかる。アイデア商売をしていると、24時間をそのためにあててるんだから−−−寝ても覚めてェも、の歌詞どおり。

それで困った。きょうのボブ・レブンソン氏のインタヴューは、クリエイティブに携っているいる人にとって、実のある告白がなされている。アクセスの少ないきょう、アップするかどうか悩んだ。それで思ったのは、これは、無報酬の好意ブログなんだ。こっちに責任はない。欠かさないで読み、自分の体内に入れ、いつかのために咀嚼・検討をしている人だけが勝利者になるのだ。土・日に精神まで休む人はほっとけ。DDBのあの和気藹藹たる厳しい自己鍛錬とは無縁の衆なのだと。(突然、厳しくなる性格なので、ついていけないと、辞めてった人数のほうが多かったなあ)



VWはVW調」「モービルはモービル調」 「ELALイスラエル航空はELAL調」レブンソン調なんか、ないとお感じになったら、今日のテキストのタイトル最上段右手「」をクリック→★。 山あいの村の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


クライアントには、彼らの欲っしているものを与えよ。彼らの期待するものではなく・・・


   クリエイティブ部門重役会副会長

   ボブ・レブンソン ROBERT(BOB) LEVENSON


:あなたのコピーの調子は暖かく、控え目で、不敬な所があって、ユーモラスで、人間的で、いわゆる「DDB広告」調を作り出した要(かなめ)のようなところがあると思いますが。

レブンソン:それに対しては「ありがとう」とお答えするしかないですね。実際、あなたにお会いできてとっても嬉しいですな。

それじゃ、コーヒーをお飲みください。私は仕事にもどります。本当のところ、おほめにあずかって、ありがとう。

しかし、DDB調子は私がここへ来る前からあったんですよ。私はここに来てまだ20年そこそこですから。

:しかし、あなたのコピーにはどこか特別なところがあります。

レブンソン:あなたがおっしゃってるのは、多分フォルクスワーゲンの広告でしょうが、確かにあれには一種の調子かあります。

しかし、あれはボブ・レブンソン調、DDB調というよりり、フォルクスワーゲン調なんですよ。

ELALイスラエル航空の広告にも調子はありますが、あれはELAL調。

モービルの安全キャンペーンの場合はあのクライアントとあのキャンペーンの調子ですし。

サラ・リー(菓子)、ファイナル・ネット、その他のクライアントも全部同じことです。

どのキャンペーンも独自の色あい、テクスチャー、視点、ボキャブラリーがあるんです。

:VWの広告の創始者ではありませんね?

レブンソン:ええ。それに私にはとても追い抜けなかった広告がたくさんありますよ。

「小さいことが理想」、「不良品」とかいったのをどうやったら負かせますか?

しかし声とかボキャブラリーの調子は、私が手を染めてから少し鋭くなったとは思います。

当時のキャンペーンが目指していたものを反映していましたから。事実を揶揄したような感じ、反体制的に、「フォルクスワーゲンは唯一の知的買物」といった調子で表現しましたからね。

ヘルムート・クローンが後年私にとてもうがったことを言ってくれましたよ。彼が気に入ったのは、あのコピーが私たちがなぜあの広告をやっているかを如実に物語っている点だとね。

:あなたがなさっている「親愛なるチャーリー」のアプローチについて説明してください。

レブンソン:ここ数年、私はコピーで行き詰まった人びとに「親愛なるチャーリー」から始めるよう示唆してきました。

私が彼らに言っているのは、こういういうことなんです。

君たちが話しかけているのは、その製品については君よりもうといが、じつに聡明な友人だと思い込め。そしてそれをし終えたら、「親愛なるチャーリー」なる冒頭の一行を抹殺しろ、そうすれば少なくともとっかかりはできるだろうと。

実際、白紙から始めるよりずっといいんですよ。

絶対に失敗しません。

:クリッチックは?

レブンソン:クリッチック(コピーの終りでのひねりのこと)は多分大きなミスでした。

ひどく誤解されました。

でもクリッチックはVWだけで、ELALイスラエル航空、モービルではやりませんでした。

VWには向いているようでした。

人びとは、あの一連のエンドラインを憶えてくれて、「他の車は変わり続けて、同じまま。VWは同じままで、変わり続ける」とか、「1年で出入りする」といった文章は、私が今まで書いたどの文よりプレイバックが多かったですね。

揶揄っぽい言いまわしか、滑稽なエンディングづくりという仕事が始まったという感じです。

広告業界には、意味があろうとなかろうと、とにかく笑いでしめくくらなければ仕事をしたとは言えないなんて感じる人も出る始末。

以来、文の脈絡とは全く何の関係もないくだらないジョークでしめくくるコピーが続出しました。

f:id:chuukyuu:20080203031022j:image

「死が2人を別つまで」

訳文と自選のコメントは、[ボブ・レブンソン氏とのインタヴュー](123追補)

モービルの安全キャンペーン(22

違うんですよね。コピーを、要旨を再び明らかにする文でしめくくれば、フットライン、セカンド、ヘッドラインの役を果たし、意味をなすのですが、ジョークのためのジョークでは、広告の目的を逸脱し、論旨がどこかへ行ってしまうんですよ。

:あなたのアプローチは変わってきていますか?

レブンソン:根本的には変わっていません。今だにシンプルできっぱりとしています。

「なぜこれをしているか? 人に何を言おうとしているか?」

まずこの疑問に自らの満足がいくように答えを出さねばなりません。

私が私の仕事ででも、他の人の仕事ででも、求めているのは、さらに「いかにして」を考えることです。

論旨を明らかにするのと、それをいかにおもしろくするかということとは全く別のことです。論旨をより鋭く,浸透力のあるように表現することは全く別のことなのです。

それが滑稽であろうが、悲しいものであろうが、ストレートであろうが、それは関係ありません。要は論旨を明確に伝えられれば、いいのです。

:でもやはり背後には、「親愛なるチャーリー」があるわけでしょう?

レブンソン:もちろんです。

そして念頭に置くのは、チャーリーが何を知りたいかであって、あなたが彼に何を話したいかではありません。どんなクライアントでも、そして誰でも、関心のあるのは自分の問題であって、あなたのではないのです。

「消費者の利益」という言莱、これはクリエイティブ・ピープルを走らせる言葉ですが、バーンバックや他の偉大なコミュニケーターらが言う、「それは君にとってどんな意味がある?」という言葉と少しも違いません。

:あなたは数多くのすぐれたアートディレクターたちと一緒に仕事をしてこられましたが、それはどんな感じですか?

f:id:chuukyuu:20080907025105j:image

レブンソン:まとめて話しましょう。最上のアートディレクターは、コピーライターが誰であるか、アートディレクターが誰であるかということを忘れ、問題の核心にたどりつこうとだけする。そしてそれから・・・そして初めて・・・よく見え、よく聞こえるように作ろうと努める。

常に私たちからのビジュアル・アイデアを歓迎し、そしてヘッドラインづくりにも貢献する。そんな感じです。

:クライアントはどうすれば代理店からよりクリエイティブな仕事をものにできると思いますか?

レブンソン:簡単です。どんなクライアントでも求めさえすれば、よりよい仕事をしてもらえるのです。

当然私たちは最高の仕事をし、ベストを尽くしたがっているのですから。

しかしどうやったらよりよい仕事をしてもらえるか知っているクライアントがすべてではありませんし、すべてのクライアントがよい仕事であれば安心するというわけでもありません。

私たちの最大の仕事は、クライアントが必要を明確にする手伝をし、作品で安心させることです。

クライアントは私たちと同じくらい安心を欲しがっています。

いや私たち以上かもしれません。

非常に新しいものは非常に恐ろしいものですからね。私たちは常にクライアントに彼らが期待するものではなく、欲しているものを与えなければなりません。

:あなたは国際部でも仕事をしていらっしゃいます。あちらもここと全て同じですか?

レブンソン:私たちより少し遅れており、 したがって少し進んでいるとも言えます。彼らはまだ私たちが相手にしなければならない難問に頭を悩まされることはありません。

クリスマス・パーティで国際部の作ったTV-CMをご覧になったでしょう。言葉やマーケティング問題を知らなくても、どのコマーシャルも十分に理解できました。

あなたが目標層である製品やサービスはひとつもありませんでした。でもメッセージはあなたに通じでしょう。

十分理解でき、「スゴイ!」と思ったはずです。

あれで私たちが常に頭にたたきこみ、実践しようと努めてきた簡単なことが確認できたはずです。

私たちの場合、諸々の問題が多くの時間をムダに費やしているので、人びとに語りかけ、心に触れるという私たちの本来の目的を見失わせているのです。

:未だに広告の仕事を楽しんでいらっしゃいますか?

レブンソン:前よりもいっそうね。人びとの既成概念を変えさせるのに、広告が効果があることを発見し続けているからです。

広告はとても強力な存在ですよ。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


【chuukyuuサジェッション】このブログの最初の画面の左枠の[DDBの広告]をクリック。

モービルの安全キャンペーン(1)〜(25)をご覧ください。


関連記事:

>>ロバート・レブンソン氏とのインタビュー


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2008-09-06

(278)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(7)


f:id:chuukyuu:20080906112608j:image:rightパーカー夫人は、DDB2人目か3人目のコピーライター。ぼくがDDBへ押しかけて、取材をはじめたとき、真っ先に認めてくれて、DDB制作のTV−CMを調達してくれたり、「ウェルカム・ホームパーティ」を催してクリエイターのキー・メンバーを招いて売り込んでくれた。お蔭で、DDBの主要な人たちとは親密になった。パーカー夫人がぼくにつけてくれたキャッチ・フレーズは「chuukyuuはジャパニーズ・ジューイッシュ・コピーライターよ」 これで、ジューイッシュの多いDDBのクリエイターたちは信用してくれた。なんのことはない、ハリー・ケメルマンの『ラビもの』謎解きミステリーで、ユダヤ教のラビとコミュニティの関係に通じていただけのことだが(もっとも、その後、『旧訳』を読み、ユダヤ教徒の700いくつの戒律も覚えましたよ)。パーカー夫妻が日本旅行を楽しんだとき、箱根の電通の寮まで夫妻を乗せてドライブ、近藤朔さんと会食、電通でのスピーチを成功させた。


DDBの雰囲気がすてき」「パーカー夫人を姉にもちたい」 バーンバックさんの指導法!」chuukyuuんちの大ボトルのシーバス!のわけとお感じになったら、今日のテキストのタイトル最上段右手「」をクリック→★。 山あいの村の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。


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  DDBの創業のころの雰囲気

  シニアVP兼クリエイティブ・マネジャー

  ロール・パーカー LORE PARKER


DDBに出した私の最初のへッドラインは、「親愛なるロビンソン夫人」でした。それがみごとに成功。最もエキサイティングだと教えられてきた広告代理店で駆け出しのコピーライターとして最初の仕事にありついたのです。

コピー・チーフのフィリス・ロビンソンに出した手紙には、DDBで働けなかったら、三番街のエルの前で身投げするといった意味のことがしたためたのです。

新入社員の歓迎という意味で、ビル・バーンバックがコピー部全員をランチに招待してくれました。たしかアルゴンクイン(ホテル Algonquin Hotel)のすみのテーブルに5人座ったと思います。

ビルは誇らし気に、この代理店は理想的な規模---従業員数45人---になった、これ以上大きくするつもりはないと言いました。

私はDDBで育ちました。家族さながらに---当時、ビルとフィリスが私にとって両親、大好きなおじさんがボブ・ゲイジでした。

ジョー・ダリーというフレクサラム・ベネシアン・ブラインドのエネルギッシュなアカウントマン、シ・コーンプリットというトラフィック・ランナーもいましたっけ。

セールス・プロモーション部門からライターに抜擢されたばかりのボブ・レブンソンをなぐさめたこともあります。ハートマン・ラッゲジで初めての広告を書いたのに、ビルに嫌われてしまって。ボブはDDBでは長持ちしないって思ってましたのよ。

ヘルムート・クローンの小個室へ入っていったことがありました。彼は寡黙で、めがねをかけていて、私の歴史の先生そっくりでした。あの時、彼は真っ黒なべージに赤い電球を描いていて、ヘッドラインは「さらば、暗室!」とかなんとかだったと思います。丁度ポラロイドの仕事をとろうとしてた時でした。

それから見かけだけは温厚だったマック・デーン。あんまり上品とは言えない西42丁目11へ引っ越した時、彼は西43丁目20ってみごとな言いまわしで呼んでました。


大きな地図で見る

【chuukyuu注】マンハッタン区の中心部を縦に貫通している通りが「アヴェニュー(*番街)」、ハドソン河とイースト河の間を東西に走っている横の通りが番号をふられた「ストリート(*丁目)」とニューヨークっ子は呼んでいる。マンハッタンの中央を北南に走って島を東西にわけているのが5thアヴェ。42丁目は巾の広いが卑猥なストリート。その北側43丁目は静かな閑散とした通り。DDBが引っ越したビルにはその両側に出入り口があった。で、管理部門担当のデーン氏は、北側の入り口の番地を言ったのである。5番街の西側で番地が100番以下だから6番街との間。ぼくが、春・秋、年に2回ずつ10年間ほど東京から通ったのもこのビル。もちろん年々、使用階数が増えていた。


威勢のよいネッド・ドイル。彼は私が最初のクライアント詣での時、道端のバーに入って私がスコッチを頼んでいるのを見て、「シャーリー・テンプルを気取ってるのかい」と言って、いたく私を傷つけたものです。

それから、ビル・バーンバック。クリエイティブ部門の廊下をうろつき回り、有ごしにのぞき、ほめたり、けなしたり。おかげで私たちは、エクスタシーを感じたり、落胆したり。ビルに気に入ってもらえれば、広告に使ってもらえることがわかってましたからね。

私の広告にビルが初めて「すばらしい!」と言ってくれた時は、恋人の所にすっ飛んで行き、アルゴンタインで祝いました。私はついにDDBの1人前のコピーライターになったぞ!ってね。そしたらウェイターが角のテーブルにお座りのドイル氏からですと言ってお酒を持ってきてくれました。シーバス・リーガルでした。


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関連記事:

>>ロール・パーカー夫人とのインタビュー


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2008-09-05

(277)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(6)

DDB紹介[終末宣言]】とともに、米国から取り寄せていた各種の定期購読誌の契約を、一誌だけ残して打ち切った。残したのは『ニューヨーク』誌・・・・・・『ニューヨーカー』誌じゃなく。その『N.Y.』誌に載っていたのが、アウディFOXのこの広告。一見で「FOX」と記憶してしまえるビジュアル。それほど、米国人になじみが薄い銘柄だったのである。「うまいなあ」と感嘆した。ブランド名を浸透させる手っ取り早い妙手だった。日本の広告主だと「キツネは人を化かす」と拒否したろう。あれほどロゴ嫌いだったそのロゴの扱いで1点々々の変化をつけている。蛇足を加えると、DDBが創業30周年を迎え、クローン氏も勤続25年の節目になったこの1979年に、自身の広告代理店を開くためにDDBを退社した。慰労するかのようにニョーヨーク・アートデイレクター・クラブが「名誉の殿堂」入りを告げた。もう一つ蛇足を・・・・・・この若々しいコピーは、Diane Till。



DDB30周年おめでとう」「クローンさんのご冥福を祈る」 「あわせてバーンバックさんのご冥福も」日本でDDB風にやるには?とお感じになったら、このテキストのタイトル右手「」をクリック→★。 田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど。いまは、これだけがつづける励みなんですから。




f:id:chuukyuu:20080905035439j:image

徹頭徹尾、フォックスだ。前輪駆動から、ラック&ピニオン・ステアリング、ラジアル・タイヤ、自信に満ちた容貌にいたるまで。

見ろ。そうだ、フォックスだ!

見れば分かるだろう。オーバードライブのエンジン、逃げるのに必要な索引力を内に秘めている。

スマイル。セイ・フォックス。0-50mpg 8.1秒でカーブの切りざまを見ろ走れ。機動力を見ろ。レスポンはもちろん、ウイットもある。

美しいモデルだ。

2席のフル・リクライニング・バケットシート、ベロアのアップホルスタリー、カットパイルのカーペット。インテリアもリッチなら外見もリッチ。当然だ、フォックスなのだから。

O

フォックスだ、 たしかに。

あの光が見えるか?

スポーツカーのハンドリングを映えるほど賢く、それでいてあなたと4人の友をまんまと抱き込んでしまう。

F

フォックスだ。ハイウェイ37mpg、市街地23。標準ギア。(EPA推定値実際の燃費は運転のしかた、運転する場所、車のコンディション、オプションによって異ります。)

X


It's Fox through and through.With everything from front-wheel drive to rack-andpinion pinion steering to radial tires to assured good looks.

Look. It is' It's Fox!

But of course. Even deep down,it shows its spirit with an engine over the drive wheels giving it the traction it needs to escaoe.

Smile. Say Fox. Take it 0 to 50 mph in a heady 8.1 seconds. Watch it hold a curve. See it maneuver in traffic. It has wit as well as response.

A beautiful model.

With 2 fully- reclining bucket seats, velour upholstery. and cutpile carpeting. As rich inside, as out. But no wonder, it's Fox.

O

It's Fox, all right.

See how it shines?

It's clever enough to give you sports car handling Yet it agreeably holds you and four of your friends.

F

It is a Fox 37 mpg hwy. 23 city; std. shift. (EPA Est Actual mile age may vary based on how and where you drive, car's condition,optional equip.

X




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2008-09-04

(276)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(5)

f:id:chuukyuu:20080904033513j:image:rightもう、ご存じのように、きょうで5日目のこのシリーズは、1969年6月に創業30周年を迎えたDDBの記念特集号『DDBニュース』からの転載である。DDBが創造した偉大なキャンぺーン・・・VWビートルとエイビス・レンタカーを立ち上げたアートディレクターが、ヘルムート・クローン氏であることを教えない美術大学やアート・スクールはないはず。もし、講じていなかったら、その教室はまやかしだ。ところで、このクローン氏、哲学者によくある変わり者である。DDBでは広告の制作をアート=コピー・セッションで行う、ところがクローン氏は、ただ黙ってコピーライターをじっと見つめて、そのおしゃべりを聞いているだけだと。これが3日も5日もつづくと、ライターは気が狂いそうになり、チームを降りたいと切実に思うようになると打ち明けてくれた。しかし、彼がデザインしたものが世紀を代表するキャンペーンになるのだと考えて耐えるのだと。そうそう、DDBの創業は1949年、VWビートルのDDBによる立ち上げは1959年8月・・・そしてクローン氏がDDBを去ったのが、創立30周年の1969年後半。つまり、このインタヴューはDDB在職時最後のもの。

DDBをもっと読みたい」 DDBの作品をもっと見たい」 DDBの環境をもっと知りたい」 「DDBへどうして接近できたの?」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ を、田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど、お忘れなく。これだけがつづける励みなんですから。ただ読みは、もう、ご勘弁。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「全体の語りロ・・・・・・それが現在私がすべてての仕事で追求しているものです」

   シニアVP兼クリエイティブ・マネジャー 

   ヘルムート・クローン氏 HELMUT KRONE


「君がへッドラインで売るより、私はピンク色でもっと多くの車を売ってみせる」クローンさんの有名な警句ですが、説明してくださいますか。

クローン:あれはひとつの局面を象徴したものです。

いかにすばらしいへッドラインといえども、飾りたてすぎれば力を失ってしまう。だから、他のものをさがさざるを得なくなるということを言おうしたのです。


f:id:chuukyuu:20070213183957j:image

小さいことが理想

訳文とエピソードは・・・[かぶと虫図版100選(2)


言葉のアプローチの代わりに見つけた表現方法を指摘した、しゃれた言いまわしですよ。人は非常にビジュアルになったり、かと思うと言葉中心になったり・・・・・・行きつもどりつする。両方は無理でしょう。

しかし、あの警句は、私がエド・マケープに言ったもので、じつは、私は、彼のみごとなヘッドラインに常に嫉妬していたからなんです。

へッドラインでは彼にかなわないいと見て、彼にはできないビジュアルな面でなら勝負できると思ったたというのが本音です。

chuukyuuのひとこと】クローン氏を嫉妬させたコピーライター・・・・・・エド・マケーブ氏はDDBを出て、スカリ&マケーブ社を創立。その時のインタヴューはこのシリーズ終了後に紹介予定。

:「局面」という言葉をお使いになりましたが、伝説にはもちろん「ヘルムートの局面」が含まれますよね。

クローン:形而下のね。表面的です。大きなタイプの局面。小さなタイプの局面。

しかし、ひとつだけ共通したことがあります。

私は常に製品のために個性的なパーソナリティを追求しているという点です。

タイプをピンクにしょうが、パックを金色にしょうが、モノクロだけの広告にしょうが、私たちが使える道具はふんだんにあるのです。

でもほとんどの人がそのどれも使いません。

ページに導入できる手法は恐しいほどとたくさんあるんです。私は最近、プレンターノやスクリブナーの域に達っするまで、囲りの物を全て見て、できるだけたくさんの物を買い、世界を私のオフィスに持ってくるまで、動くことはできないと感じてきました。

頭から出てくるもんじゃないんです。前はそう思ってましたが、考えが変わりました。

:製品のために個性的なパーソナリティをさがすそれが・・・・・・「ルック(スタイル)」ですか?

クローン:「ルック(スタイル)」ではなく・・・・・・全体の語り口です。各キャンペーンの語り口をさがす・・・・・・それは私のお家業なんですよ。たとえば、アウディ5000のエンジニアたち。あれは表現のひとつのアイデアでした。最も大切なのがそのスタイルだったのです、見かけではなく。

語りロ。ルックは一部でしかありません。時にはルックがすべてになることもありますし、また皆無という場合も出てきます。

しかし、最近、私が興味を持っているのは、語り口です。エイビス以来、ずっとそのことに興味があったのかもしれません。

chuukyuuのすすめクローン氏とグリーン女史によるエイビス・キャンペーンは(1234567)

:O.M.スコットは?

クローン:O.M.スコットは、語りも、見かけも世俗的な方法です。非常にL.L. ビーン式でしょう。あの会社にはそれでいいと思ったんです。タウン・イースト・ルックで、ジャック・ディロンが同じやり方ですばらしいコピーを書いています。

「疑問がおありの方は、オハイオ州マリーウェルズの私どもにお手紙ください・・・・・・番地などいりません。なにしろ100年も同地に所在しているのです」と彼がやっているのと、現在私が「ルック(スタイル)」でやっているのと同じですよ。

したがって、全体の語り口なのです。玄関に入って来た瞬間から帰る瞬間まで強烈な個性を見せたため忘れられないセ一ルスマンのようなものですよ。

現在私がすべての仕事で追求しているのが、それなんです。

いまや、無色のセールスマンがうじゃうじゃしています。そしてもちろん無色の広告も。

私が求めているのは、忘れられないパーソナリティです。

:あなたのポラロイドの広告はどんなカテゴリーに入りますか?

クローン:アウディ・フォックスとアウディ5000の仕事の方がポラロイドの仕事よりこのカテゴリーに入るでしょう。


f:id:chuukyuu:20080904035131j:image


f:id:chuukyuu:20080905035439j:image


f:id:chuukyuu:20080904035820j:image:w220:leftf:id:chuukyuu:20080904035821j:image:w220:left


f:id:chuukyuu:20080904035132j:image

ぼくはこれまで、レーシング・カーを設計してきましたが、

このアウディ5000は大きな挑戦でしたよ。


f:id:chuukyuu:20080904035133j:image

夫婦で参画。私は車を設計しました。

亭主ドノは色を決めました。


ポラロイドの仕事はその点ではあまり強くありません・・・・・・他のメリットはありますけど、いま話している範疇には入りません。ポラロイドの場合の必要条件は常に複雑でなくてはならないことです。

そうでなかったら、彼らの目的を達せられません。

ポラロイドは、たとえばコダックと違って、貴族的な全社です。会社としても非常に優雅で、きっちりと仕立てられ、カットされています。

パッケージングも同様で、カメラのデザイン、公けの会での話しっぷりも同様です。芸術のパトロンであり、一流芸術家を招いて仕事をさせます。

だから、私もそうしかできません。スコットのように小さな会社の仕事のように、個性的なことは一切やれないのです。

:DDBフォルクスワーゲンの仕事から個性的な調子はありましたね。でもあなたがダイナ・ショア・タイプ、踊る少女、See the U.S.A. in your Chevrolet (シボレーに乗って米国を見ようよ)調のキャンペーンであの車を「アメリカナイズ」しようとしたら、シンプルに、はっきりと、魅力的に語るというコンセプトを持ったバーンバックさんに止められたとうかがっています。あの経験は役に立ちましたか?

クローン:ええ。自分がイエス・キリストの化身であるという自負を捨て、私にも誤りはあるのだということを悟りました。そしてたしかに私は間違っていました。あれは私の完全なミスジャッジです。当時はダイレクトでシンプルなアプローチが良かったのです。いつの世でもそうでしううが。

:どんな製品でも、サービスでもですか?

クローン:そう。時には非常に複雑にすべきだと思うこともありますかね。たとえは・・・・・・ポルシェでそれをやろうとしています。ポルシェそのもの、あの全社そのものの広告が作りたいのです。

広告は非常にすぐれたパッケージのようなものです。すはらしいバッケージは製品を作っている全社、そしてその中味を象徴します。

広告も全く同じ機能を果たすべきです。いや、それ以上に。

しかしそれはやるとして、誰に語らせるか。それが問題です。しゃれたへッドライン、 そしてきちんとレイアウトされた写真、それだけでは不十分なのです。

:他に変らないものがありますか?

クローン:私の大の苦手があります。ロゴです。私の人生はロゴとの闘いでした。私はロゴから逃れるためこの世の誰よりも離れ技をやってのけた人間でしょうね。もちろん、何かをただ逃れるれるというわけにはいきません。

物を売るには、ロゴに代るもっと良いものを見つけねばなりません。しかし、私はロゴを信用してません。昔からね。

ロゴはまるで「私が広告だ」 と言っているようで、人びとの目を広告からそらせてしまいます。

:オーバック「oh!」の広告は?

f:id:chuukyuu:20080905040640j:image

オーバックス・デパートの広告

クローン:あれはロゴですか? さあね。もしそうとしたら、あれは私のロゴです。ページの下にサインするためこだわるほどのものじゃないですよ。フォックスですか?? あれは、広告全体がロゴです。私が言っているのは、マーク・・・・・・トレードマークのことですよ。

:あなたが闘って勝ったロゴの例をお話ししてください。

クローン:エイビスがいい例です。彼らが初めてここへ来た時、高価なデザイン・プログラムをやった後で、その高価なデザイン・プログラムからあのロゴが思いつかれました。

私が最初にやったのは、それを使わないことです。しかし彼らもあの広告が非常にピュアであってロゴにこだわるべきでないと悟ってくれたというわけです。


f:id:chuukyuu:20070911040041j:image

訳文・解説は・・・[エイビス01


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


chuukyuu予告明日は、クローン氏自選の2点の中の1点の原文が手に入ったので、フォックスのカメラのファインダーにキツネの顔が写っている分の原文・訳文を。(自選のもう1点は、きょう、あげたVWビートル Think small)。


関連記事:

>>ヘルムート・クローン氏とのインタビュー

「レイアウトを語る」(123)

2008-09-03

(275)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(4)

f:id:chuukyuu:20080903033408j:image:rightインタヴューの難物・・・・・この人は、テープ・レコーダが嫌いときているので、手こずった経験がある。いまなら、デジタル・ボイスレコーダを胸ポケットにして、気どらせないで記録できるのだろうが。とにかく、気むずかし屋さんなのだ。このインタヴューでも、自分の好きな作品の一つに、40年も前のモノクロ・アニメのユニロイヤル・タイヤ「雨の日のタイヤ」をあげているんだから。水の精・竜のような怪獣がタイヤにまとわりついて妨害をするが、ユニロイヤルは平然と走行をつづけるといったもの。手持ちしていたけれど、畏友の収集家・金子秀之さんに進呈したような。ライダー氏が語ったアウディ5000・・・・・・やっと探しあてたが、訳したり、英文をOCRしている時間がなかった。このコラム、この1日分だけでも、たっぷり5時間かけているので。

「貴重な資料が次代に残せる」 「勇気が出てきた」 「いや、渡る世間は鬼ばかり」 「DDBでもクライアントと戦って通しているんだ」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ を、田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど、お忘れなく。これだけがつづける励みなんですから。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「広告が固定した公式になった時、それは新たな:革命の時だ」

シニアVP兼クリエイティブ・マネジャー 前コピーチーフ兼アソシウイト・クリエイティブ・ディレクター

                ダヴィッド・ライダー DAVID REIDER 


:DDBで何年ライターをやっていますか?

ライダー:25年です。


:広告のライターがそんなに長く務まる秘訣は?

ライダー:ずいぶん昔のことですが、ひとつの教訓を学んだのです。

他の人たちがジグしている時は、サグすべき時だって。

クリエイティブ・ビジネスにこんなに長くいられるのは、ひとつにあの教訓があるが故でしょうな。

広告で効果的であろうとすれば、固定していてはだめです。

昨日の革命は今日の体制となり、そして明日の反動ともなるのです。


:変わらないものはありますか?

ライダー:2,3の基本的な価値でしょう。

たとえば、フレッシュさの必要・・・・・・そう、つまり変化です。事実はもちろんフィーリングも表現も大切。信憑性のあること。

それが私の言う基本です。

「広告で成功する30のルール」に賛成する人には、私は反対です。広告がどんな部分にしろ固定した公式になってしまったら、それは新たな革命が必要な時なんです。


:今日、革命的であろうとすれば、どうあればいいのでしょう?

ライダー:そう・・・・・・信憑性の問題との対しかたでしょう。今日それが最も難しい問題のひつだと私は思います。アメリカ人が今ほど多くの物・・・・・・とりわけ広告・・・・・・に懐疑的になったのは例のないことです。

今ほど広告が真実に満ちていることはないのが皮肉ですが。TVでするほとんどすべての主張にも証拠を示さねばならないのです

政治家がそれをやったらどうなりますか!

この間題に対処するには、すばらしい技術と芸術的手腕が必要です。いかにクリエイティブ(創造的)であっても、視聴者あるいは読者が広告を信じなければ、すべては娯楽にしかすぎません。


f:id:chuukyuu:20080903033410j:image


:特定の例をあげてくれませんか?

ライダー:信憑性のあるもの? それともない方?


:ある方です。

ライダー:アウディ5000のキャンペーンを例にとりましょう。

とても難しい問題があったのです。以前は安い車で認められていたメーカーから出された基本価格$9000のラグジャリ一・セダンを発売することです。正直にいって、合衆国でのアウディの評判はヨーロッパほど確立していませんでした。

私たち(クライアント、アカウント・グループ、そしてクリエーティブ・チーム)が5000を分析してみても、何ひとつ際立ったドラマチックな特徴はないわけです・・・・・いろんな点ですばらしい車であることは間違いありませんでしたが。

でもこの車のユニークさは、ドイツのすぐれたエンジニアリングにあることが少しずつわかってきました。

しかしそれをおもしろく、かつ信憑性がある話に仕上げるのはたいへんです。

そこでへルムート・クローンと私は。この車を実際にデザインしたアウディのエンジニア以外に話上手に告げれる人はいないという結論に達しました。

私たちはインタビュー形式を用いて,アウディのエンジニアに直接、率直に語ってもらいました・・・・・しかし,まあ幾分ドイツ風になりましたがね! 

ビジュアル的には、「直接的に」ならないように気をつかいました。

とても成功しましたよ。ひとつひとつの広告でかなりの硬いエンジニアリングの情報を入れたのに、かなりの精読率をあげました。

雑誌最高という例もかなりありました。このキャンペーンは合衆国内でアウディの進んだエンジニアリングを認めてもらうための地ならし的なもので、このクラスで車を売るにはそれが必要だったのです。それが局面?゛です。


:局面?では?

ライダー:この時点で、ユニークな機会が出現しました。

もちろん私たちはこの機会をすかさずとらえましたよ。アウディ5000のロード・テスト結果が『ロード&トラック・カー&ドライバー』誌といった権威あるスポーツカー誌に載ったのです。

この批評でアウディのエンジニアがアウディ5000について語ったすべてが肯定されたわけで、私たちはすぐさまそれを広告で使い、一般の注意をひきました。

このキャンペーン以来アートディレクターはボブ・タッカーです。


:アウディ5000の売れゆきはどうですか?

ライダー:市場最高のホットな車のひとつになりました。(1979年)2月の売り上げ台数は昨年同月の54%増です。

それも信憑性のおかげなんですよ!



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新しい、大型のアウディ5000の発表です。

この技術者たちが強力なエンジンを設計したんです。



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ぼくは、航空機のコックピットをイメージしながら

アウディ5000のインテリアをデザインしましたよ。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


関連記事:

>>ダヴィッド・ライダー氏とのインタヴュー (

2008-09-02

(274)DDBが選んだDDB ---【DDB紹介[終末宣言]】(3)

f:id:chuukyuu:20080902055125j:image:rightロイ・グレイス氏は、1986年にニューヨーク・アートディレクターズ・クラブから、「名誉の殿堂」入りという、アートディレクターとして最高ともいえる栄誉を受けた。日本人で受けたのは、記憶しているかぎり、デザイナーとして福田繁雄さん、田中一光さん、亀倉雄策さん、石岡瑛子さんの順で---だけじゃあなかったかなあ。DDBの紹介をやめた年から、高価で場所ふさぎできわめて有用な『N.Y.ADC年鑑』の購入を停止したから。そう、20年間ほど、古い年度分も遡ってきちんと購入しつづけいたんです(すべて、某所へ寄贈したら半分散逸していた)。で、購入をやめた1980年代以降の『同年鑑』を電通図書館とか東京ADCとかアメリカン・センターとか、備えていて当然な場所と人に問い合わせてみて、日本には1冊もなさそうと、あきらめざるを得なかった。寄贈して行方不明にならなかった半分が、唯一、日本在存のものかもしれない。それで気がついたのだが、30年前の「DDBは、もう古い」という地の声は、何を根拠にしていたのか。その人の単なる、狭い見聞での感度でしかなかったのかと。まあ、紹介を停止したことで小遣いはできたが・・・・・

いや、ロイ・グレイス氏だ・・・・・・すばらしい、「売る」ユーモアの持ち主である。日本にはきわめて少ないタイプ。しいてあげれば、福田繁雄さん。


「貴重な資料が次代に残せる」 「勇気が出てきた」 「いや、渡る世間は鬼ばかり」 「DDBでもクライアントと戦って通しているんだ」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ を、田園地帯の夜空の満天の星の数★★★★★★★★★ほど、お忘れなく。これだけがつづける励みなんですから。




>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次




「何が大変といって、人びとに既知のものを変えさせることほど難しいことはない」


     シニアVP兼クリエイティブ・ディレクター ロイ・グレイス ROY GRACE 


:あなたはわが社の出戻り組の有名なお一人です。戻るのは大変でしたか? 簡単でしたか? それとも・・・・・・


グレイス:楽ではありませんでした。いずれにせよ、前にいた所が良くなかったことを認めるようなものですから。

私の場合、自分で会社を開き、それがいろんな理由からうまくゆかなかったのです。それからしばらくして、(カール・)アリー(代理店)へ入り5,6ヶ月働きました。・・・・・・単に戻るのが難しいという理由だけで。


:だったら、なぜ戻られたんです?


グレイス:いろんな場所で働いてみて、どんな場所よりDDBが働くのにベターな場所であることがわかったからです。

ベターとはすなわち・・・・・・ここではクリエイティブ部門の人びとに責任が与えられるから。ごっそりお金をくれる代理店はたくさんあるけれど、責任は与えられません。おかしな話です。

ここでは成功するも失敗するも自由。人びとには成長し、大望を抱き、より高いゴールに到達する余地が与えられています。

厳しいルールも他と違ってほとんどありません。会議も少ない。仕事が会議でなされる代理店が多く、したがってそこでは個人の責任はありません・・・・・・すべて「我々がやった」なんです。たまにひどい悲劇が起こったら、そこで初めて責める奴をさがすという寸法。


:ここ数年で、ものすごい数の賞を受賞なさっています。賞を広告の目的に不適切と言ってけなす人もいますね。


グレイス:賞なんてものは、審査員次第でしょう。審査員が良ければ、その賞も良くなる。たいていの場合、受賞した広告キャンペーンは販売を成功させていますがね。


:濠雨のように受賞したコマーシャルの中に、フォルクスワーゲンの「葬式」と「クレンプラ一家に追いつけ」、アルカ・セルツアーの「マンマミア」、アメリカン・ツーリスターの「ゴリラ」があります。どれもユーモラスですね。


D

フォルクスワーゲン"Funeral(葬式)"


D

フォルクスワーゲン"Mr. Jones & Mr. Krempler"


グレイス:ユーモアがその製品にふさわしい場合、好んでユーモアを用います。とくに娯楽に関係のある製品などに。第一、テレビ自体が娯楽媒体でしょう。そういう条件下で、ユーモアを通じてメッセージを強め、視聴者により受け入れられやすくできるなら、それを使うことにしています。

もちろんルールは破られるためにあります。

しかし鎮痛剤など性格が真面目な製品の広告にユーモアを導入することはしません。


f:id:chuukyuu:20080411145907j:image:left:w300

アルカ・セルツァー"Mama Magadini's Meatball"


:しかしアルカ・セルツァーは・・・・・・


グレイス:ああ、そうだ。あのアカウントのストラテジーをそのまま継承したんです。私は良くないと思ったんだが。

しかしあの話はやめましょう。


chuukyuu注】当ブログ[メリー・ウェルズ物語]で、このTV-CMをめぐって、「ハード・セル」「ソフト・セル」論争がしかけられ、アルカ・セルツァーのアカウントがDDBからWRGへ移動した苦い事件を指している

>>『メリー・ウェルズ物語』

>>アルカ・セルツァー広告の扱いにまつわる攻防について


:仕事をやりたい製品の好みはありますか・・・・・・楽しいものとか真面目なものとか。


グレイス:いいえ、まったくありません。個人的に好きでない製品はあります。そんな製品の仕事はやりにくいですね。しかし一般的に、できるだけ幅広い種類の製品を手がけるべきだと思います。さもないと視野がせまくなってしまいます。


:問題に対するあなたの基本的なアプローチは?


グレイス:まず消費者の注意をひく方法を考え、それからメッセージを伝えます。

簡単なワンツー・ステップです。

注意をひく、そしてメッセージを伝える。

この2つのステップをふまない広告にはろくなのがありません。

訪問販売のセールスマンだって、まずドアをノックするでしょう。

簡単とは言いましたが、消費者の注意をひく適切かつおもしろい方法を思いつくのは、もちろん簡単ではありません。実際,最も大変な部分と言っていいでしょう。しかしそれと同じくらい難しいことも他にあるんですよ。


:何ですか?


グレイス:新しく、異ったアイデアを売ることです。

50%はアイデアを作ることで、50%は売ること(注;クライアントを説得すること)だって、いつも思います。いかにすばらしくても、売れなければ無に等しいんですから。


D

アメリカン・ツーリスター「ゴリラ」


:なぜそれが難しいんですか?


グレイス:踏みならされた道を行くことに安心感があるからです。

何が大変かといって、人びとに既知の考え方を変えさせることほど難しいことはありません。

変ったものを出すと必ず手痛い攻撃を受けます。

そしてそれが終わると、それがそれからの踏みならされた道になるわけです。

変わっていて、大きな爆弾となる危険を(そうなる場合もあります)伴うことをやろうとすると、不快な目にもずい分あいます。

しかし最大の爆弾は静かな失敗・・・・・安全で目を止めてもらえない広告・・・・・・です。

それはトライしようともしない過失です。

現在この業界ではそれが大きな危険となっています。

また、確実な広告を求めようとすることも危険です。

安全ではあるが、黙殺される広告・・・・・・です。

それはトライしようともしない失敗です。

現在この業界ではそれが大きな危険です。

また確実な広告を求めようとすることも危険です。


:計器を用いないで飛ぶことの恐怖じゃないですか?


グレイス:その通り。しかしやりすぎということもあります。純粋に判断力だけで動いていると、失敗の危険も出てきます。

判断力を持たずに安全さを求めるシステムで動いていても、失敗は伴います。どちらにしても保証などないわけですよ。

しかし、失敗のない解決策を求めることがいちばん危険です。

あらゆる分野のテストをし、万人が求めている結果を得、市場へ出ても、失敗する。判断力で勝負しても、失敗の可能性は同程度・・・いや少いかもしれません。

どちらがいいかは言えません。

しかしいずれも100%正しくはないというのが現実です。過去、そして現在の成功例はほほ判断力に基いて作られた広告です。

広告は科学ではありません。

それだったら、クリエイティブ・ピープルもやりやすいんですが。


:しかしクリエイティブ・ピープルにも、すばらしい才能に恵まれた人、それほどでもない人、すなわちすばらしい判断力のない人がいるわけです。保証を求めるのは後者の保身の術でしょう。


グレイス:2種類の両極端があります。

ひとつは、すべての人をある程度の鎖でつなごうとすること。

そしてもう一方は、万人を自由にさせること。

多分、DDBのように規模が大きくなってくると、クリエイティブマン全員にすばらしさを求めるのは不可能でしょう。

しかしすべてを安全にしようとすると、すべてが堕落するというのが私の考えです。

たしかにすべての人を自由にさせても、失敗はあるかもしれません。

でも、すぼらしいものが生まれるチャンスはこちらの方が多いのです。

ゴールは高くめざせですよ。

落ちるのは簡単です。上るのはたいへんですが。

いずれにせよ、完壁な方法などあり得ません。

しかしチャンスを与えられれば、真にすぐれた判断力を持ったクリエイティブ・ピープル・・・・・クリエイティブ部門の人だけに限りません。

アカウント、メディア、マーケテイング、あらゆる分野で同じことが言えます・・・・・はきっと大成功するはずです。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


予告インタヴューアー泣かせの、クリエイティブ・マネジャーで前コピー・チーフで、25年在職の気骨の士・・・・ダヴィッド・ライダー氏


関連記事:

>>ロイ・グレイス氏 『名誉の殿堂』入り (

>>ロイ・グレイス氏とジョン・ノブル氏『DDBのチーム・プレイを語る』

参照:

>>ロイ・グレイス氏と言葉を交わした。TV-CMプロデューサーで研究家の畏友・金子秀之さんのリート

2008-09-01

(273)DDBが選んだDDB ---【DDB紹介[終末宣言]】(2)

f:id:chuukyuu:20080901033946j:image:right20年前に存在していた『日米コピーサービス』1979年9月25日(378号)から、転載している。第2回は、極端にインタヴュー嫌いのボブ・ゲイジ氏。DDBのクリエイターたちが尊敬してやまなかった創業以来のアートディレクターである。

ゲイジ氏の現役時代の仕事---オリンやジャマイカ観光局の広告には、ずいぶん教えられた。いま、創られている広告レイアウトの多くは、ゲイジが始めて作りだしたもの---ともいえそう。「DDBが成功したのは、バーンバックさんが創業にあたって、ポール・ランドでなく、ボブ・ゲイジを選んだからだ」とさえ、ジョージ・ロイス氏がささやいてくれた。その経緯は『創造と環境』第1部に。

会話中に写真を挿入している自選TV−CM[クラッカージャック]と「ポラロイド Just on step]については、資料が手元にないので、見つかり次第、お知らせすることに。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


「心を打つも良し。尺骨些姉を打つも良し。ただし要(かなめ)を打て」

     エクゼクティブVP兼アートディレクター ボブ・ゲイジ ROBERT(BOB) GAGE


:ヘルムート・クローンはあなたのことを近代広告アートディレクションの発明者とよんでいますね。

ゲイジ:え、ええ、まあ。


:彼はあなたの発明を列記してくれました。

最初のダブルテーク・アド(ヘッドラインの2パーツをイラストレートした2枚の写真)、

環境を利用した広告(手袋をはめた手がパスのコードをひっぱっている。手袋のためのバス・カード)。

ページを「破壊」させる。

タイプに「話さ」せる。


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ジャマイカ観光局

  【chuukyuu注】訳文・解説は、ロン・ローゼンフェルドとのインタヴュー(1)


広告のポップアート発明。

バンやショッピング・バッグも絵になること

  【chuukyuu注】オリンの作品を探索中。

を証明。広告にモンドリアンのボーダーを初めて使う---etc.etc.etc

ゲイジ:ヘルムートは人びとの行動を分析するのにかけては天才だから。


:あなたがやって、分析するのは彼というわけですか?

ゲイジ:ヘルムートは自分のすることもすべて分析しますよ。私はまずやる、するとひとつの結果を生むというだけで、彼の言うように新境地を開拓するという意識は持ってません。何でも新しいやり方をやろうとしているだけですよ。


:今もプリント広告をやっていますか?

ゲイジ:今もプリント広告をやってます。でも以前ほど多くはないですね。

ヘルムートの話にもどりますが、プリント広告では、ヘルムートの右に出る者はありません。私に言わせれば、彼は史上最高のプリント広告のアートディレクターですね。

ヘルムートには忍耐という才能があるんです。彼はひとつの仕事に取りかかると、分析し、改良し、是正し、変更し、育てあげていきます。

一方、私の方は忍の一字とはほど遠く、私のやることはすぐ結果を生むか、生まないか、そのどちらか・・・といった感じです。

今までたいてい結果が出ているだけで、私はヘルムートが展開させていくほどまで展開させ、育てあげるということがありません。


:彼も言ってました。あなたはとても落ち着かず、ご自分で発明した物を完成させる気がないと。

ゲイジ:忍耐力がない。すぐあきてしまうんだ。


:コマーシャルのフイルム・ディレクトをなさったのも、アートディレクターとして最初で、今もやってらっしゃいますね。

ゲイジ:テレビの方がおもしろいです。テレビの方が驚きがたくさんあります。

四角四面のストーリーボードと取り組むのは嫌いです。

セットに入っているとそこで起こっていることからヒントを得ることが多い。

最初とはまったく興るものを思いつくことがよくあるんですが、それはセットからインスピレーションが得られるんですね。

プリントより扱う次元も多いし。労働条件はずっと楽しい。外には出られますし、オフィスへ行かなくてもすむ。テレビは私にとっては、ひとえに---そう、魅力的なんです。


:コマーシャルの仕事の時も、デザイン式に考えますか?

ゲイジ:デザインの目で考えたことは一度もありません。常にメッセージ中心に考えます。

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そしてそのメッセージを適切な強さ、信憑性で裏付けて伝えようと努めます。

用いられる趣向は人生のとても真面目な面のモンタージュか、ユーモアあふれる面のモンタージュか、どちらかです。

私はエモーショナルな広告を信条としているんです。


:心を打て、ですね。

ゲイジ:心を打つも良し、尺骨の端を打つも良し。ただし要(かなめ)を打て、ですね。


:ルールは破られるためにあると言いますが,主義はどうでしょう。

ゲイジ:私は非常に節操のない人間でして。

ルールなど一度も従ったことがありません。


:そう、私もルールは嫌いです。

ゲイジ:だからルールは破りません。知らないだけです。

ルールがあるとすれば、ユーモアあふれる感動、あるいは心を深く打つ感動からくる適度な強さ、を作品にもたせること。

あるいは言わんとすることを人びとに認識させられるようドラマ化し、信じられやすいように表現すること。

それだけです。他には知りません。


:先日、バスの側面にポスターを見かけました。レインコートを着、傘をさした女性がわきにいて、今まさにポスターから飛び出そうとしているように見えました。

「あれはボブ・ゲイジが30年前にやっていたやつだ」と思いまLたね。

ゲイジ:若い人にああいった考え方にもどろうとする人が多いですよ。少々古くさいですが、いい広告ですよ。今まではすべてが拘束され、計算され尽くした時代でした。前の時代の反動だったんです。しかし今、いろいろ解放されつつあります。

アートディレクターは再び飛ぼうとしています。食べすぎて胸やけしてきたんでしょう。


:胸やけ解消と言えば、あなたとジャック・デイロンがジム・ガーナー、マリエット・ハートレイを使って作ったあの食欲をそそるポラロイドのコマーシャルはどうやって作られたのですか?

ゲイジ:私たちがガーナーを初めて使ったのは、プロントのコマーシャルでした。あのスポットである女性を彼と共演させ、2回目のスポットにも使おうとしたんですが、無理理だったんです。

で、マリエットを登場させました。

ジャックがスポットを書きました。でもクライアントは非常におもしろいとは思わなく、さんざんやりとりしたあげく、やっと「ゴー」の許可が出ました。

”There's Just one step.”となりました。ジャックはコマーシャルのエンディングを女性に「やっぱり、カメラを向けるのも、ひとつのステップに入ると思うわ。そしてガーナーに「いや、違うよ」と言わせて結びました。

すると、マリエットとガーナーがアドリブを入れたんです。

「いえ、そうよ」「そんなことどうでもいいじゃないか」「いえ、だめよ」

どうやって28秒にまとめあげたのか。でもとにかくやってのけたのです。

あのコマーシャルは、スリーパー(価値がなかなか認められない。売れ行きが遅い製品)でした。

しかし、リサーチでガーナーが人びとと関わると、彼のポラロイドのコマーシャルははるかに注目され、人びの記憶に残り,要旨を長く伝えられることがわかったので、マリエットとジムのを展開させ始めました。

もっとも、2人の共演でこれからも多くのコマーシャルを撮り続けるべきかどうかは、多くの人が疑問を抱いていました。

しかし、2人の人気が高くなるにつれ、「モノ」になっていったのです。


:ひとつのテーマからどうやったらあんなに多くのバリエーションが生まれてくるのか、不思議です。

ゲイジ:ジャックと私は腰を降ろすと、何かを思いつくまで、お互いの顔を長時間じっとみつめ合います。たいへんです。書くに値いする情報が入れば、取っかかりはできるわけです。

「もっとコマーシャルを作ってくれ」と言われるだけでは、おもしろいもの、ポイントのあるものは簡単にはできやしません。


:今やあなたはガーナーとハートレーと実際に暮らしているみたいな感じでしょう。

ゲイジ:ええ。2人とも実に愉快な人たちです。ガーナーは最初は扱いにくく、コマーシャルには出しぶっていました。2人ともそうでした。

契約にサインし、セットに来た時こう思ったそうです。「ヤレヤレ。なんてことになった」って。

「ダニ一・ケイは最初の日からは不可能だ。人生最悪の時じゃないか。各コマーシャルで、ワンテークしか撮りたくない」

そこで私は言ったんです。O.K. 1回にワン・テークだけ、と。

今じゃかわいい子猫ですよ。ガーナーとマリエットには外の世界の人びとに愛されるメッセージが備っており、 したがって仕事仲間としては非の打ちどころかありません。


:ボブ、あなたもインタビューをしにくい人ですね。

ゲイジ:だって、私はこの仕事を通してしか自分を表現できる方法はないというんで、アートディレクターになったんですよ。隠れるにはもってこいですからね---インタビュアーからも。


>>DDB紹介[終末宣言]クリエイターインタビュー集目次


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>>ロバート(ボブ)・ゲイジ氏「私は、広告が好きだ」


明日は、ロイ・グレイス氏の予定】