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解雇規制は大企業正社員しか得をしない

 一見、解雇規制がきびしい方が労働者にはやさしいしくみに思えますが、労働市場の流動性がなくなるので簡単には転職できませんし、一生懸命働いて会社のためにお金を稼いでも、中高年のノンワーキングリッチの人たちの給料に多くが消えていってしまうために若年層の給料が非常に安くなりがちだったりと、長い目で見れば労働者にとっても悪いことの方が多いでしょう。

 運よく大企業の正社員になったけどあんまり仕事をしない人にとっては硬直した解雇規制というのは天国みたいなもので、大きな既得権益なのですが、一番悲惨なのはこれからキャリアをはじめようとして仕事を探している若者でしょう。スペインやフランスのように解雇規制が厳しい国では若年層の失業率が常に20%を超えています。

 きびしい解雇規制というのは、じつは新卒の学生に一番不利なしくみなのです。中高年の正社員をひとり解雇できれば、新卒を3人雇うことができても、正社員の権利は法律で固く守られているのでそのようなことは起こらないのです。

 労働市場が硬直していると若者の職が奪われてしまい、社会人として必要なスキルを学ぶ機会もなくしてしまうので、生涯を通して単純労働しかできない人を社会にたくさん生みだしてしまいます。

 また、社会全体としても、衰退産業にいつまでも労働者が残り、成長していく産業に労働力を移動させることができませんので、経済全体で見れば大きなマイナスなのです。

 

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