ショックのあまり、その場に倒れこんだ。やっとの思いで起き上がると、協力会社が手配した車ですぐに福島へ向かうことになった。車中では一睡もできなかったという。
「なにそんなお父さん、嘘だろーって、全然信じられなくて。夜の9時に家を出発して、(福島に)着いたのは翌朝の4時半頃。福島警察署で、棺おけに入ったお父さんに会えたのは、午前10時少し前です」
横たわった信勝さんの顔は、両耳の辺りの皮膚が濃い紫色に変色し、顎と頬に擦り傷がついていた。
「お前! 裏切ったな!」
「『本人かどうかの確認をしてください』と言われて、顔を見ても(死んだということが)まだ信じられなかった。顎の傷は、マスクが息苦しくて外したような痕だった」
信勝さんはその後、福島の火葬場で荼毘に付された。カニカさんは、残った信勝さんの喉仏の骨を大事に包み、御前崎市の自宅に連れて帰った。
それから2ヵ月も経たない7月初めのことである。
「(協力会社の)社長さんに誘われて、食事へ行ったとき、『50万円やるからタイに帰れ!』と言われたんです。『明日の夜、50万円持って家に行くから、印鑑探しておいて』と」
はじめは、タイにいる自分の家族に会いに行けるし、いい話だと思って聞いていた。だが、「印鑑をちょうだい」と言われたことがひっかかり、労災申請の手続きで相談していた鷹匠法律事務所の大橋昭夫弁護士に電話をかけ、「印鑑は押さないほうがいい」とアドバイスを受けた。
「50万円は欲しかった。でも、先生に相談しておカネを受け取るのはやめたんです」
翌日の夜、協力会社の社長が自宅を訪れた。そこで、労災申請について弁護士に相談していることを知った社長は激高し、カニカさんを指差しながら「お前! 裏切ったな!」と叫んだという。
「『違うよ、社長。私裏切りじゃない』と言ったけど、社長は怒って『もうお前のことは切る(関係を絶つ)!』と言って、帰りました」
この一件から10日ほど経ったとき、協力会社の事務員が、信勝さんが福島原発で働いた際の給与を渡しに自宅へやってきた。5月11日から亡くなった14日までの4日間で8万円。1日2万円の日給だった。これ以降、協力会社の社長からは一切連絡はない。
業務中に亡くなった人の命がたったの50万円。協力会社の社長が提示したこの金額は、どのような根拠で決められたのか。当の社長に問い合わせると、まくし立てるような口調で次のような回答が返ってきた。
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