東京都世田谷区で起きたホットスポット騒動の正体は、民家の床下に置かれていた瓶入りのラジウムだった。過去には夜光塗料に使われ、鉱泉にも含まれている。そんな身近な「放射性物質」をたどると――。
現場を調べた文部科学省によると、瓶の一部には「日本夜光」と書かれていた。ラジウム226は蛍光塗料に混ぜると光を出す特性があり、かつては夜光塗料に含まれていた。第2次世界大戦中は飛行機や船の計器類の目盛りに活用され、製造会社の一つが、現存しない「日本夜光塗料製造所」だった。「日本塗料工業史」には、東京で大規模な空襲があった1945年5月25日、本社と工場が全焼したと記述がある。
ラジウムは医療目的でも使われていたが、瓶の形状などから、今回のものは夜光塗料の可能性が高いという。しかし、世田谷の民家にあった理由は不明だ。居住者の夫婦は1953年ごろに引っ越してきたが、夫は10年ほど前に亡くなり、80代の妻は現在、老人施設で暮らす。その家族は瓶について「初めて見た」と話したという。