山梨大医学部(山梨県中央市)などの研究グループは、東京電力福島第1原発で汚染水の浄化に使われている鉱物「ゼオライト」より新種の藻類「バイノス」の方が、放射性ストロンチウムとヨウ素の吸収効率が高いことを実証した。同原発での実用化に向け大手プラントメーカーと交渉中で、今月末に放射性物質で汚染された土壌処理にバイノスを活用するデモンストレーションを福島県伊達市で実施する予定だ。【岡田悟】
バイノスは筑波大系ベンチャー企業「日本バイオマス研究所」(千葉県柏市)が汚泥浄化用として製品化しており、放射性物質汚染に対応できないか北里研究所(東京都港区)などと共同研究していた。
山梨大医学部第3内科で甲状腺疾患などを研究している志村浩己助教が、福島県浪江町の側溝などにたまっていた汚染水で4~7月、実証実験を実施。その結果、放射性セシウム137とストロンチウム各2メガベクレル、放射性ヨウ素3メガベクレルがそれぞれ入った水1リットルにバイノス100グラムを入れて遠心分離機にかけると、10分間でストロンチウムは8割程度、セシウム137は4割程度を除去できた。ヨウ素も24時間で4割程度減った。ゼオライトと比較実験したところ、ヨウ素についてはゼオライトはまったく吸収しなかった。ストロンチウムについては約1時間で、ゼオライトは約6割しか吸収しなかったのに対し、バイノスは95%吸収した。
バイノスは藻のため、光と炭酸ガスがあれば容易に増やせる。乾燥させると重量が20分の1になるため、吸収後の処理の簡略化も期待できるという。
毎日新聞 2011年10月17日 東京夕刊