巷では日本IBMとスルガ銀行のシステム開発における双方の不履行で争っている。
簡単に言えばスルガ銀行の新システムを日本IBMが受注したのであるが、要件定義終了段階からそれぞれが食い違い、合意金額をスルガ銀行側は新経営システムを完成すべきと主張し、日本IBMは合意書で請負契約をした覚えはないということにて係争中なのである。
私は三菱東京UFJ銀行(当時は東京三菱銀行)および他の金融機関でも双方の経験がある。
双方と言うのは銀行側の技術者としてということと、ベンダー側の技術者としてということである。
詳しく書くことはできないが、銀行があるベンダーに依頼していたシステムのベンダー側技術者として活動していた時に、このままでは開発計画に無理が生じ要件定義さえも終了しないであろうと主張したところ、ベンダー側から契約を解除され、結果として銀行側の技術者となったのであるが、予告どおりの結果となってしまい、別のベンダーに新システムを依頼するという結果になったことがある。
客側の要件定義というのは当然ながら膨らませる傾向にあるのは当然だ。
なぜならシステムの要件を詰めていけば詰めていくほど「あれも」「これも」と夢が膨らんでいくのである。
しかしながら全てをシステム化することは予算などの関係上無理と言うことになるので、ベンダー側は必死でその夢を壊していかなければならない。
壊すというのは極端な言い方かもしれないが、今すぐやる必要のないものであったり、「できたらいいな」という程度のものであれば却下する勇気が必要なのだ。
私の絡んだプロジェクトの場合は、ベンダーのそもそもの見積もりが甘かったため、計画自体に無理があったのだが、今回のスルガ銀行と日本IBMはどうであったのかは経緯を見ていかねばならないだろう。
ただ、三菱東京UFJ銀行でお世話になっていたとき、コンサルタントSEが本店に私を含めて数人がいて、それらが実現可能であるかどうかの精査をしていたのである。
それはベンダーの計画が間違いないのか、提案したOS、ミドルウエアで可能なのかをチェックするためのものであり、そういうことをスルガ銀行がしていたのかというのが気になる。
それから採用予定はNEFSSであり、パッケージとしているがこれはかなり体力のいるものであり、カスタマイズが確実に必要になるものである。
SAPなどと異なり自由度が高いのであるが、その分手をかけなければできないというものだ。
実はNEFSSによる開発中断はスルガ銀行だけではなく東京スター銀行もそうなのであり、稼動しているのは住信SBIネット銀行のみなのだ。
さらに言ってしまえばNEFSSはSAILをJava実装したものと考えられ、IMSに限界があるためオープンに移行した製品と考えたほうがよいと思われる。
つまり実績は米国であるのだが、日本にローカライズすることに難があるということなのだろう。
ただし日本IBMの考える方向としてNEFSSでSAILの技術者を使えるかもしれないというのは間違っていないと考えられるのであるが、そもそもSAILは限定されたものであるため、弊社も大型汎用を扱っていた際にその技術者の数が絶対的に少ないという問題もあったのだ。
こうしたパッケージの開発によるトラブルは意外に多かったりするのは、BeSTAでもそうであったし、ベンダー系地銀システムなんてのもローカライズに難があったのも事実。
また小規模の地銀にコンサルティングSEを何人も雇うような余裕はなく、またそれらの技術者と対等に理解しあって話をする人材を数多く持てるわけもなく・・・となると、かなり難しい問題なのではないだろうか。