「どんな子でも学校へ来る子供たちは勉強がしたいんだよ」。こんな信念を持ち、荒れた高校を3年間で再生させた元県立姉崎高校校長、白鳥秀幸さん(60)=市原市=が、当時の体験をつづった「あねさきの風(上)-千葉県立姉崎高等学校再建への挑戦」(学事出版、2100円)を出版した。
白鳥さんが姉崎高校長に就任したのは04年春。衝撃的な始業式だった。生徒の3分の1が金髪、茶髪で、名前を呼んでも起立せず、すぐ騒がしくなる。クラス名を表示するルームプレートは一枚も付いておらず、だらだらした態度の生徒が「分かんねえ」「やりたくねえ」を連発し、授業を始めるまで30分もかかった。当時、同校は2年連続で定員割れし、地域住民から県教委へ廃校要求が出されたほどだった。
そこで、まず校門にテントを設置し、頭髪と服装のチェックから取り組んだ。1日の始まりのあいさつを励行し、茶髪を1カ月で一掃した。授業も「分からないまま続けているのではダメ」と、小学・中学レベルにまでさかのぼって学び直す「マルチベーシック」という学習法を採用。個々の力をチェックするプリントをつくり、生徒に学ぶ意欲を持たせた。
こうした取り組みの結果、3年後には欠席、早退、遅刻者も激減し、入試倍率も上がった。成果を一目見ようと他県の高校長が見学にも訪れた。
「だれもが思いながら、だれもできなかった改革。姉高に新風を吹き込みたかった」と白鳥さん。「主役はあくまで生徒。校長としての3年間、生徒と同じ目線に立ち、自ら率先して校内のごみを拾ったりしながら、一つ一つ問題をクリアしてきた」と振り返る。
著書には、生活、学習、進路の指導を三位一体と考えて進めてきた改革の足跡が詳しくつづられている。教員の協力も得て作成した「マルチベーシック」のプリントの一部も資料として掲載している。題字と表紙絵は、日本版画協会名誉会員で、白鳥さんの恩師でもある深沢幸雄氏(市原市)が作成した。
白鳥さんは「完全燃焼した3年間だった。今度は生徒と教師のエピソードを交えた実話を下巻で紹介したい」と語っている。【渡辺洋子】
毎日新聞 2011年10月17日 地方版