変えられないものを受け入れる力、そして受け入れられないものを変える力を・・・
|
女性のレイプ後PTSDに対する治療の話『どこか遠くへ、逃げたら楽になるのかな・・・ パートIV』からのスピン・オフです。
レイプ後PTSDには、非常にしばしば外傷体験に関連した「悪夢 nightmare」が多いことが知られています。 悪夢が嫌すぎるために、眠ることが怖くなってしまい、不眠になってしまう人も少なくありません。
じゃあ、この「悪夢」はどうしたら良いのか?
基本的には、「悪夢」はそのもとになっている疾患の治療で一緒に治っていく傾向があります。 ですので、レイプ後PTSDにともなう「悪夢」も、PTSDの治療をして不安を克服していくと、なくなっていきます。
ただ、それとは別に「悪夢」だけをなくしていく、という治療もあります。
PTSDに伴うものでなくても、普通の「悪夢」を繰り返し見てしまう人は結構います。
そのような場合に、「イメージ・リハーサル治療」という方法があります。 Kellner先生たちが提唱するその方法では、繰り返し見る「悪夢」を思い出してノートに書き出し、それに対して悪夢ではない別の結末を用意した修正版を考えて書き出します。 夢をお好みに書き換えるのです。 そして悪夢ではなく、修正した夢のストーリーを何度も何度もイメージ・トレーニングします。 こうして日中の起きているときに、「白昼夢」として修正版の夢をイメージし、脳にしみこませておくのです。 そんな、割と単純なやり方で、何年にも何十年にもおよぶ「悪夢」を見事退治することができることが示されてるのです。
Krakow先生たちは、この「イメージ・リハーサル治療」をレイプ後PTSDに伴う「悪夢」に応用しました。
すると、たった3セッションの「イメージ・リハーサル治療」によって、長年続いていた「悪夢」の頻度ががくっと減ったのです。 それだけではなく、悪夢は自分の力ではどうしようもないのだとあきらめ、無力感を強めていた患者さんたちは、悪夢も自分の力で克服することができることを体験し、ある種の自信を取り戻すことさえできたのでした。
参考書:
(1) Krakow B, et al. Imagery rehearsal therapy for chronic nightmares in sexual assault survivors with posttraumatic stress diorder - a randomized controlled trial. JAMA, 2001; 286: 537-545.
(2) Kellner R, et al. Changes in chronic nightmares adter one session of desensitization or rehearsal instructions. Am J Psychiatry, 1992; 149: 659-663.
|