韓国戦争(朝鮮戦争)で戦死した兄に対し、国家報勲処がわずか5000ウォン(約330円)の補償金しか支払わなかったことに対し、遺族が異議を申し立てた裁判で、国民権益委員会傘下の中央行政審判委員会は16日、遺族の主張を認め、報勲処に再検討を求める決定を下した。命の価値をわずか5000ウォンとした非情な決定は、今後論議を呼ぶものとみられる。
慶尚南道昌原市に住むKさん(女性・63)は、1男3女の末っ子として生まれたが、父親や兄、姉に関する記憶はほとんどない。
Kさんが2歳だった1950年に韓国戦争が起き、兄(当時18)は前線へと出征。同年、兄は北朝鮮軍との戦闘で戦死した。姉2人も戦争中の爆撃でいずれも死亡し、父は持病で他界した。母も戦争で子どもたちを失ったショックで精神を病んでしまった。Kさんの幼少期について語る父やきょうだいたちは、戦争と共に消え去ってしまった。
過去を共有する家族を戦争で失ったKさんは、それから58年後の2008年4月に知人から兄が韓国戦争で戦死した事実を聞かされた。断片的な情報を頼りに調査した結果、兄が国立ソウル顕忠院に埋葬されたことを確認した。Kさんは同年12月、国家報勲処に戦死者補償金を申請した。
今年4月24日、国家報勲処から通知書が届いた。封筒を開けると、そこには「故人に対する補償金が5000ウォンに決定したことをお知らせします」と書かれていた。Kさんの兄の死に対する補償金は、わずか5000ウォンだというのだ。
報勲処は2009年からこれまで、Kさんのケースも含め、韓国戦争の戦死者3人に対し補償金5000ウォンを支給するとの決定を下していた。