全羅南道は2005年から、フォーミュラワン(F1)グランプリ(GP)の招致活動を繰り広げてきた。翌年10月、全世界のF1大会を取り仕切るFOM(フォーミュラワン・マネジメント)と招致に関する調印式を行い、10年から7年にわたり、韓国GPを開催することが決まった。
全羅南道は地域の発展を目指し、西南海岸観光レジャー都市(Jプロジェクト)事業の目玉プロジェクトとしてF1開催を掲げ、招致活動を展開した。
Jプロジェクトの事業地区の一つである霊岩郡三湖面三湖地区で世界的なスポーツイベントを開催することで、Jプロジェクトの推進にはずみを付ける計画だった。全羅南道は、リアス式海岸や、2000以上もの島が点在する多島海など、恵まれた海洋資源を基に「北東アジアの観光ハブ」という将来のビジョンを描いており、その柱となるのがJプロジェクトだった。F1は全羅南道の未来を切り拓く「カギ」であり「呼び水」となるべきイベントだった。
全羅南道は、サーキットの建設費用や大会運営面では赤字を計上しているが、全世界で6億人が視聴するスポーツイベントを開催したことで、国や地域のブランド価値が高まった上、生産・付加価値の誘発など目に見えない効果も極めて大きいとみている。
全羅南道は赤字構造からの脱却を目指し、大会の開催権料やテレビ放映権料の再交渉など、運営費の削減に向けた案を模索する計画だ。
F1の観戦客をターゲットにした観光商品の開発や、観戦ツアー、海洋クルーズなど、外国人観光客の誘致にも積極的に乗り出している。F1サーキット周辺には高品質の自動車部品の輸出産業団地を造成し、こうした事業を自動車産業の質的な高度化に結び付ける戦略だ。