きょうの社説 2011年10月17日

◎米粉の消費拡大 品質、技術でも先進地に
 石川県は県産米粉の消費拡大を図るため、「米粉ポイント制度」という新しい取り組み を11月にモデル実施する。パンや菓子などの米粉商品を購入し、ポイントをためた消費者に特典を与えるという試みである。今回の実施期間は1カ月間だが、事業の協力店として47社338店舗が名乗りを上げており、県産米粉の需要喚起につながる一手となることを期待したい。同時に消費者の声を生かして米粉商品、さらに米粉自体の品質を高める官民の努力を一段と強めてもらいたい。

 農林水産省はコメの消費拡大と食料自給率向上のため、補助金の出る新規需要米として 米粉用米の生産を奨励している。小麦の価格高騰という事情もあって、作付面積は徐々に拡大している。

 北陸は米粉利用の「先進地」といわれ、さまざまな米粉商品が登場している。ただ、米 粉用米の作付面積は県によってばらつきが大きく、2010年産米は新潟県が1731ヘクタールと全国トップ、富山県は192ヘクタールと中位にあるが、石川県は19ヘクタールにとどまる。

 課題の一つに挙げられるのは米粉の品質や特性である。北陸農政局などによると、米粉 の利用が拡大するにつれて、米粉の粒度、吸水性など品質の不ぞろいを問題視する実需者の声が多くなっている。商品を生産ラインに乗せるには、米粉の品質の安定化、均一化が必要なのである。

 また、米粉食品は「老化」が早く進むため食感が劣化しやすく、流通管理が難しいとい う問題点もかねて指摘されている。米粉の需要と用途拡大の一つの鍵は、こうした課題を克服できるかどうかにある。

 その対応策の一環として、県農業総合研究センターは、酸化による食品変質が起こりに くい抗酸化性の米粉の研究開発などに取り組んでいる。民間業者との連携を強め、高品質の米粉製造や、米粉食品の食感、おいしさを長持ちさせる技術開発においても先進地といわれるようにしたい。

 米粉の品質に関しては、新潟県が用途に応じた品質基準を独自に定める事業を進めてい る。全国的な課題である米粉の規格化を先導する動きとして注視したい。

◎めぐみさん情報 膠着動かす材料の一つ
 北朝鮮に拉致された横田めぐみさんが2004年末から05年初めには生きており、0 4年に日本に渡された「遺骨」は偽物という情報を、先ごろ韓国の国会議員が明らかにした。韓国へ逃れた脱北者が北朝鮮労働党の日本担当者から聞いた情報という。日朝協議が3年以上開かれず膠着(こうちゃく)状態にある拉致問題を動かす材料、手がかりの一つになり得る情報であるが、民主党政権下では拉致問題担当相が既に5人目を数えるなど、拉致問題を軽視しているのではないかと疑われる状況にあるのは残念である。

 横田めぐみさんは今月5日に47歳の誕生日を迎えた。蓮池薫さんら5人の拉致被害者 が帰国して、丸9年にもなる。拉致問題解決の道筋が見えない中、野田政権は北朝鮮に対する新たな制裁措置を見送る方針を固めている。

 制裁を重ねても北朝鮮は協議に応じず、圧力路線は限界に来ているという判断のようだ 。しかし、制裁を緩めれば北朝鮮が問題の解決に動くという保証もない。野田佳彦首相にまず銘記してほしいのは、拉致問題の壁をこじ開ける強い国家意思と行動を絶えず示し続けることの重要性である。首相は18日に韓国を訪問するが、「めぐみさん生存情報」の確認を含め、拉致問題に関する日韓協力をさらに強めてもらいたい。

 北朝鮮は2008年8月の日朝実務者協議で、拉致被害者を再調査する委員会の設置を 約束した。しかし、その後間もなく、当時の福田康夫首相が退陣表明をしたのを口実に再調査委の設置を先送りし、現在に至っている。

 民主党政権は自民党政権下の制裁措置を継続し、菅直人前首相は今年6月、北朝鮮が9 月までに再調査に応じない場合は制裁強化を検討するよう関係閣僚に指示していた。ただ、北朝鮮や拉致事件容疑者と関係のある団体に菅氏側から政治献金が行われており、菅氏の「本心」が見えにくかったことも否定できない。野田政権は圧力路線から対話路線に軸足を移しているようにも見えるが、現状のままでは、拉致被害者再調査の約束がほごにされかねない。