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科学的な間違いに振り回されないように(1) 原発と核爆発

武田邦彦 (中部大学)
福島原発事故が起こった直後には原子力関係者や被曝医療の医師が中心になって発言されていましたが、半年が過ぎ多くの人がさまざまな角度から発信するようになってきました。

このこと自体は良いことなのですが、もともと原子力に関係の少なかった人は事故後の政府、専門家などの「意図的な誤報」にかなり影響を受けているようです。間違った知識は間違った判断を生み、それが子供たちの被曝を増やすことにもつながります。その意味で、少し解説をしておきます。

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「原発は核爆発しない」と言っている人がいます。この世のものはすべてと言って良いほど「エネルギー」がもとになってある現象が起こります.事故を起こした原発を爆発させるエネルギーとしては、1)水素が酸素と結合するときにでるエネルギー、2)核反応が起こって質量欠損によって生じるエネルギー、3)相変化によって膨張するエネルギー、の3つはすでに観測されています。

1)によるものが水素爆発、2)が核爆発、そして3)が水蒸気爆発です。爆発の規模、およびそれによる影響は大差ありません。潜在的なエネルギーとしては核爆発がもっとも大きいのですが、原発は原爆と違い、爆弾のように瞬時に大きなエネルギーを出せるようにはなっていませんので、その温度、爆風などの規模はそれほどでもありません。

原発の核爆発は、「臨界」、「遅発臨界」、「即発臨界」、「核反応」など多くの言葉があり、特に原発は安全であるということを印象づけるために「爆発」という言葉を避けていますが、科学用語としては私たちが日常的に見る「火事」は、科学的には「可燃物のガスが爆発限界に入った」と表現して厳密に正しいのです。

原子炉の非常用の「制御棒」があるのは、「運転中に緩やかに起こっている核爆発」が異常時に異常な速度で起こると困るので、とにかく「核爆発」を止めるために何が何でも燃料の中に挿入して中性子を吸収させます。「制御棒がある」ということはイコール「原発は核爆発する、もしくはいつも核爆発する」ということを意味しています。これを「臨界を超えた」と言っても、「核反応が連続して起こっている」と言っても、「中性子による連鎖反応が進む」と言っても全く同じで、いずれも「質量欠損による発熱」です。

ちなみに広島原爆では0.8グラムの質量欠損があのすごい爆発になっていますが、それに比べると原発のウランが膨大なことから、原発のすごさが広島原爆どころではないことが判ります。

とりあえず間違ったことに影響されるといけないので注釈を書きましたが、今や、事故のはじめに問題になるところを掘り起こして議論するよりも、除染、被曝を下げること、食材のことなどをみんなで知恵を出し合う方が良いと私は思います。社会はいろいろな反論があって健全ですが、あまりにも後ろ向きのことや人格攻撃などを含むのは感心しません。

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