HOT-2700
肺胞でのガス交換の障害について
◎私達の身体の中を流れる血液が、果たすべき役割りは、沢山あります。
その中でも、特に、酸素を、全身の細胞まで、運ぶと言う大切な役目があります。
そして、また、炭酸ガスを回収する役目も、忘れてはなりませんが。
今日のテーマは、酸素を取り込む仕組みの中で、低肺機能が、生じている原因について、考えて見ましょう。
☆心臓は、一回の鼓動で、約80mlの血液を送り出します。
一日に、10万回、働きますから、一日の輸送量は、約8トン、にもなります。タンクローリー車、一台分に相当する、凄い量です。

☆血液の全量は、一升瓶2本、約4リットルの量しかありません。
同じ血液が、一日に、ほぼ2千回、身体を回って、心臓を通過している、と言うことになりますね?。

☆一日、24時間を、2千回で割ると、一回に付き、約45秒と言うことになってしまいます。全身を巡る血液の速さに、驚きの声も出ません。

◎脈拍を60回とすると、45回、脈が打つと、全部の血液が、循環したことになってしまいます。

☆呼吸数を、毎分15回とすれば、一回の呼吸時間は、4秒掛かります。

◎整理しますと、全身の血液が、45秒間に、心臓ポンプ45回の拍動で、肺胞を通過し終わります。
そして、その同じ時間内に、、出入りした空気(呼吸数、12回位する)から、酸素を貰っている計算になります。

■以上を、独断と偏見で、イメージに、纏めて見ます。
潮の満ち引きの様に、肺胞内の空気が入れ替わり、呼吸一回分の期間内には、全肺胞の毛細血管を通過する血液は、3回から4回、流れ替わっていることになります。
従って、酸素を沢山取り込める条件には、次の様な事が必要になります。
◎酸素を含む空気が、沢山、肺胞内に、出入り出来る事。
◎肺胞を取り巻く毛細血管内に、多量の血液が流れること。
           ◎その間の、間質の厚さが薄く、酸素が、通り抜け(拡散)出来易い事など。

話を続けますと、酸素が取り込めないガス交換障害が生じてくる原因としては、次の4種類の原因があります。 
@肺胞低換気  A拡散障害  B換気ー血流比VA/QC 不均等  Cシャントの増加。  があります。
これらは、全て、低酸素血症の原因となります。言葉を変えれば、息切れ,動悸の原因になります。
そして、また、別に、炭酸ガス分圧の異状については、肺胞低換気のみが、
原因になるといわれています。
ガス交換障害(酸素取り込み不足)の四つの原因について、理解しましょう。
@肺胞低換気

ガス交換障害・肺胞低換気
吸気によって肺胞に達したガスは、肺胞毛細血管と接触し、酸素と炭酸ガスの交換が行われます。一方、肺胞気には、吸気により、次々と、酸素が補充され、呼気により、炭酸ガスを体外へ排泄します。

この様にして、肺胞での酸素分圧は、約100mm、炭酸ガス分圧は、40mと、一定の値に保たれていますが、これに大きな影響を与えているのが、
肺胞換気量と肺毛細血管血流量です。

一回換気量500mLの大気を、一分間に15回呼吸しているとします。
毎分250mLの酸素を取り入れ、200mL の炭酸ガスを排泄しているといわれています。肺胞の弾性と空気通路の抵抗などが関係してきます。
この様な肺胞低換気があると、高炭酸ガス血症と低酸素血症を生じてしまいます。

慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、喘息)などで、気道の閉塞。
気道が細くなったり、痰が溜まって、空気のとうりを邪魔したりする状況は、避けねばなりません。
Aガス交換障害・拡散障害
◎換気によって、気道内に吸入された大気は、気管支を経由して、肺胞に達します。
つまり、吸気中の酸素が、肺胞から肺毛細血管へ移動し、肺循環により、各組織へ運ばれていきます。
逆に、肺毛細血管からは炭酸ガスが、肺胞内へ移動し、呼気により、体外へ排泄されていきます。

◎この酸素と炭酸ガスの交換は、肺胞ー毛細管膜を通じて、拡散と言う物理現象によって行われます。
 □拡散とは、ガスの分子が、濃度の高い方から低い方へ移動する現象を言います。

◎酸素について言えば、肺胞内の酸素分子の濃度は、肺毛細血管の濃度より高いので、酸素分子は、肺胞から肺毛細血管へ移動して、平衡状態に達します。逆に、炭酸ガスでは、分子濃度の高い肺毛細血管より、低い肺胞への炭酸ガス分子の移動が起こります。

◎あるガスがある厚みを持った膜を通って拡散する量を考えてみると、ガスの拡散量は圧較差と拡散面積に比例し、膜の厚さに反比例します。

これを、肺に当てはめれば、肺胞の面積に比例し、肺胞ー毛細管膜の厚さに反比例し、肺胞気の分圧(酸素分圧、炭酸ガス分圧)と、毛細管膜の分圧との差に比例して、ガス交換が行われます。

◎肺の拡散障害を起こしている代表的な疾患は、肺繊維症と肺気腫です。

△肺繊維症の場合は、肺の繊維化のため、肺胞毛細管膜の肥厚が起こります。膜の厚さが増加するために、拡散障害が起こってきます。

△一方、肺気腫の場合は、肺の気腫化により、肺胞が破壊されてきますから、拡散する面積が減少して、拡散障害が起こってきます。
ガス交換障害:    BVa/Qc 不均等;換気血流比不均等
☆一方の肺胞は普通に膨らんでいる、一方は途中で閉塞していて狭くなっているので肺胞が余り膨らんでいない。


☆肺胞の大きさにバランスした血液が流れていたらいいのですが、小さいところに沢山の血液が流れて、大きいところに少しの血液しか流れていなかったら両方とも上手く酸素を取り込めないので酸素が低くなってくる


☆そういう状態を換気血流比不均等と言います。
 ガス交換障害:    Cシャント
□上側の血管のように、肺胞にくっついていれば血液の中に酸素が取り込まれ易くなりますが、病気によって、色々なことが起こります。


□下側の血管のようにバイパスになってしまい、肺胞と離れていれば酸素を取り込むことが出来ません。

■したがって合流した血液の中の酸素量は低くなります。


【呼吸不全の原因疾患…病態別に】
1.肺胞低換気:
 1)呼吸中枢機能低下:脳炎、脳卒中、薬物中毒(鎮静・睡眠薬)など
 2)神経筋疾患:ギランバレー症候群、重症筋無力症、多発性硬化症など
 3)胸郭・横隔膜の損傷:肋骨骨折、横隔膜麻痺、高度の腹水、肥満など
2.換気血流比不均等分布:
肺気腫、気管支喘息、肺梗塞、心不全など
3.拡散障害:
肺線維症、過敏性肺臓炎、肺水腫など
4.シャント:
肺炎、無気肺、ARDS、肝硬変、肺動静脈瘻など
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