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☆
「えっ?!永輝が倒れた?!」
翌日、いつものように庭に回りこんで石を投げようとした亜樹は、玄関前にいた永輝の母親から永輝が昨日から寝込んでいることを知らされた。
「ウソだろ…。昨日はあんな元気だったのに…」
亜樹は一体何が起こったのかと聞いてみたが、永輝の母親にも原因がわからずとにかく熱を出して起き上がる気力も無いということらしい。
いてもたってもいられず亜樹はそのまま家の中に入ろうとしたが、もしなにかの伝染病だったら感染する危険もあるので今日は病院に連れて行くからお見舞いは明日以降にしてくれと言われ、仕方が無く亜樹は永輝の家を後にした。
「まったく……本当に世話の焼ける奴だな……」
口では悪態をついてはいたが、亜樹の顔色は真っ青になっていた。
原因がわからないというのはとにかく恐ろしい。
もしかしたら、治る術のない病なのかもしれないのだ。
そうなったら、永輝はもう…
「…バカバカ!俺ってばなにを考えているんだ!!」
永輝が死んでしまうなんて、そんな想像をするだけでもゾッとする。
当たり前のように、いつも傍に永輝がいる日常。
それがこれまでも、これからもずっと続くという当たり前のようで当たり前ではないこと。
いつかは自分と永輝は別々の道を進み始めるかもしれない。別れの時が来るかもしれない。
が、それがこんな突然に訪れるなんて想像もしたくない。
「大丈夫だ……大丈夫だ……
絶対に、永輝が死ぬはずがない……」
亜樹は必至にそう思い込んで不安を払拭しようとしていた。
が、結局その日は永輝のことが気がかりで何をするにも全く身に入らず、家にどうやって帰ったのかも分からないほどに気を奪われていた。
「……やっぱでないか…」
あいも変わらず発信音しか出ない携帯電話を、亜樹はポイと放り捨てた。
学校にいった後から頻繁に永輝当てに電話をかけたものの、結局ただの一度も永輝が電話に出ることはなかった。
電話の電源を切っているのか、それとも電話に出られないほど調子が悪いのか。
あまり考えたくはないが、後者と考えるのが自然であろう。
本当なら今すぐにでも永輝の家に飛んでいきたいのだが、朝の一件から門前払いを食らうことは間違いないのでそれすらもできない。
いっそ今の永輝の状態だけでも知りたいと永輝の家の電話もかけたのだがそれすら通じない。
こんなことなら学校帰りに永輝の家に寄ればよかったと後悔したが、そもそもそんな発想すら浮かぶことなくいつの間にか自宅に帰っていたのだからよほど混乱していたといえる。
「あのバカ野郎…。連絡の一つくらいよこせってんだ…。余計な心配しちまうじゃねえか……」
どんな形でもいいから近況が知りたい。
いっそのこと、ダメと言われているのを無視して家に押しかけてやろうか。
「……うん。それがいい。そう決めた!!」
元々物事を深く考えることをあまりせず一度決めたら突き進む性分であるがゆえに、今の状況が亜樹にはどうしても辛抱が出来なかった。
座して報告を待つより、自分の目と耳で実際に確かめなければ気がすまない。
もし、永輝の親が家に入れてくれなかったら、ベランダの柱をよじ登ってでも永輝の部屋に侵入してやる!
そうと決めた亜樹は、早速身支度を整えて外に出て行こうとした。
その時
「〜〜〜〜〜〜♪」
ずっと沈黙していた携帯電話が不意に鳴り響いた。
しかも、その音楽は永輝の着信した時の専用のものだ。
「!!!!!」
永輝からだ!
と思うなり亜樹はベッドに投げ捨てられていた携帯電話を目にもとまらない速さで掴み通話ボタンを押した。
「おい!おい!!永輝!!
大丈夫なのか?もう、大丈夫なのか!!!」
階下はおろか向こう三軒にまで響き渡るような大声で亜樹は電話に声をかけた。
「……うん。もう大丈夫だよ亜樹ちゃん…
心配かけて、ごめんね……」
電話の向こうから聞こえてきた永輝の声はかなり小さいながらもしっかりとしている。
どうやら命に関わる病気ではなかったようだ。
「本当か!よかった、本当によかった!!
全く、大丈夫だっていうならもっと早く連絡寄越せ!!本当にグズだなお前は!!」
ホッとしたからか亜樹の口からはつい悪態が出てしまったが、その顔はさっきとは別人のように晴れ晴れとしている。
電話の向こうの永輝もそのことは重々承知しているようで、特に突っ込みを返してくることもなかった。
「うん、本当にごめんなさい…。ちょっと栄養とることに夢中だったから……。電話をかける暇もなくて…
なにしろ、朝から何も食べていなかったから、ね……」
「おお、そうかそうか!食欲出てきたのはいいことだ!
何か食べたいものはあるか?何だったら今もって行ってやってもいいぞ!!」
それは亜樹にとってほんの冗談のつもりだった。ところが
「うん……。僕も今亜樹ちゃんに家に来て欲しいと思っていたんだ…」
と永輝が思いも寄らない答えを返してきたので
「っ?!」
亜樹の胸が一瞬ドキン!と高鳴った。
「え?!な、ななななにをお言ってるんだお前ははは!!」
予想外の展開に明らかに取り乱している亜樹に、永輝は相変わらず小さい声でぽつ、ぽつと話をしてくる。
「…どうしても聞いて欲しいことがあってね……。電話越しじゃなくて、面と向って聞いて欲しいんだ……」
「あ、ああ…。わかった。わかったけど、今行っていいんだな……」
「うん。待ってるから……」
そう言って、電話は切れた。
「………」
もう何も言ってこない電話を亜樹は暫く握り締めたまま呆然としていた。
(あ、あいつ……、なにを言おうとしているんだ……)
これまで、永輝の方から何か言ってくるということは皆無に近かった。
大体は亜樹が主導権を握り、永輝はそれに無理矢理引っ張られるといったことを小さい頃から繰り返していたのだ。
それが、何を思ったか永輝の方から亜樹のほうに話があるという。しかも、電話越しではなく直接だと。
そういうからにはよっぽど大事な話に違いない。
(まさか……、プロポーズ、とか?!)
正直、亜樹は自分にそれほど女としての自信を持っていなかった。
自分の目から見ても大雑把でがさつで乱暴で、女っ気というものが欠片ほども感じられない。
だからといって周りの女友達のように女らしくするということがどうしても馴染めず、また率先してする気にもなれなかった。
自分は生まれる性別を間違えたのではないかと思うことも一度や二度ではない。
だからこそ、自分が男性に好意をもたれるなんてことは考えたこともなかったし、ましてやそれが一番身近にいた他人の異性である永輝からなんてことは完全に考慮の余地の外だ。
(ま、まさか……。そんなこと、あるわけない。俺みたいな女を、好きになる奴なんか……)
そうは思っていても、胸の高鳴りは益々高まり動悸で息苦しくなるほどだ。
「……とにかく…、会ってみるしかない!」
さっきまでアポなしで行くはずだったのがちゃんと言質が取れたのだ。これで行かない理由なんてない。
亜樹はいてもたってもいられず、飛び出すように家を出て行った。
この時、冷静に永輝の電話を聞いていれば亜樹は気がついていたかもしれない。
永輝の声が小さいだけでなく、男にしては異様なほど高かったということに。
☆
「あれ……?」
家に来てくれとの連絡を受けて喜び勇んで永輝の家に駆けつけた亜樹だったが、一目見て永輝の家の様子がおかしいことに気が付いた。
さっきの電話から家に永輝がいることは間違いないのに家のどこにも灯りがついていないのだ。
すでに夜の8時が過ぎて外は真っ暗だというのに、永輝の部屋はおろか庭先の茶の間すら電気が灯っていない。
それどころか、人がいる気配すら感じられない。
「おかしいなぁ…」
亜樹はなにか嫌な気配を感じていたが、永輝に呼ばれたという嬉しさの方が先に立ちあまり深く考えることなく呼び鈴のボタンを鳴らしてしまった。
すると、玄関の電気がパチリと点き、中から永輝の母親が顔を出してきた。
「あら……いらっしゃい。亜樹ちゃん……」
「おばさん、こんばんわ……?」
ドアから出てきた永輝の母親を見て亜樹はなんか違和感を感じた。
いつもは永輝の母親とは思えないほど闊達としているのだが、今の彼女はなんとなく気だるそうで心ここにあらずといった雰囲気をかもし出している。
お腹の調子でも悪いのか腹に回した手を絶え間なく擦り、心なしか腹そのものも膨らんでいるような感じがする。
「…?おばさん、お腹どうかしたんですか?なんだか、随分張っているような……」
「ん?ああ…、なんでもないのよ。
それよりも上で永輝が待っているわ。ほら、上がって……」
永輝の母親は訝る亜樹の手を取って上がらせ、そのまま2階の永輝の部屋へと連れて行こうとした。
「お、おばさん……?!」
その強引さにさすがに亜樹もこれはおかしいと思った。
「おばさん、お、おじさんは……?!」
「いいからいいから。そんなことより永輝と会うのが先よ……」
亜樹が間を開けようと話題を逸らそうとするものの、そんなことに構うことなく母親は亜樹の手を引っ張って永輝の部屋まで連れて行ってしまった。
部屋の中はやはり明かりは付いておらず、窓から入ってくる町と星の明かりだけがぼんやりと永輝の部屋を照らしている。
「では、お二人ともごゆっくり……うふふ」
まるでこれから起こる事が分かっているかのような含み笑いを残して、母親は永輝の部屋のドアを閉めた。
「…なんだってんだよ、まったく…」
一体何が起こっているのか全く理解できず戸惑う亜樹だったが、とにかく視界を確保するために部屋の明かりのスイッチを入れた。
すると
「こんばんわ……亜樹ちゃん…」
「永輝!………っ?!」
待ち焦がれた永輝の声に亜樹の声は喜色に包まれたが、それはすぐにかき消された。
亜樹の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で布団を頭から被り顔だけ出している永輝の姿だった。
「なに……してんだ?永輝……」
亜樹は永輝の異様な姿に戸惑いの色を隠せなかったが、永輝の方は亜樹を見つめたまま顔をニヤニヤと綻ばせていた。
「うん……さっきやっと体が安定してね……。いの一番に亜樹ちゃんに見せたくて……電話をさぁ……」
「?!」
「僕ねぇ…、ずっと変わりたいと思っていたんだ……。そうしたら、まさかこんなことがさあ……うふふふ…」
永輝の言っていることが亜樹には全然要領を得ない。
というか、一体に何を言っているのかすら理解できない。
布団に包まったまま低く微笑む永輝は今まで亜樹が見たことが無いほど不気味で、はたして目の前にいるのが本当に永輝なのか疑わしくなるほどだ。
「おい!さっきから一体何を言っているんだよ永輝!!一体全体訳わからねえぞ!!」
物事を深く考えるのが苦手な亜樹はカッとなって永輝に詰め寄り、それを見て永輝は馬鹿にするようにフッと目を細めた。
「ああ、ごめんね亜樹ちゃん。亜樹ちゃんのわからないような事言っちゃって。
亜樹ちゃんにはその目で見てもらった方がよかったね。
ほら、見て……。僕の『新しい体』……」
そう言って永輝はベッドの上で立ち上がり、被っていた掛け布団をバサリと下ろした。すると…
「?!」
その永輝の姿を見て亜樹は仰天した。
布団を下ろした永輝は一糸纏わぬ全裸だった。それはまだいい。よくはないがそんなことは問題ではない。
男のはずの永輝の胸はふっくらと膨らみ、腰はすらりとくびれ、股間にあるはずの男の証は綺麗さっぱり消え失せていた。
元々永輝はその顔立ちと細身の身体から女性に間違われることも少なくなかった。
だが永輝は紛れも無い男性だ。それは亜樹が天地神明に賭けて保障できる。
なにしろ、小さい時永輝の裸体を幾度となく見てきたのだ。男と女の身体の違いくらい、さすがに亜樹でも分かる。
ところが、今目の前にある永輝の姿はまごうかたなき女性のそれだった。
しかも、骨盤の左右の辺りはまるで何かが詰まっているかのようにぽっこりと膨らんで皮膚越しに赤く不気味な光を放ち、永輝の手は愛しそうにそれを撫で擦っている。
「あ……あ?」
一体永輝の身に何が起こったのか全く理解できずに唖然とする亜樹を、永輝はそれまで亜樹が見たこともないほどの幸せそうな顔で見下ろしていた。
「うふふっ、すごいでしょぉ……。僕女の子になっちゃったんだぁ……
女の子の身体って、すっごい気持ちいいんだねぇ……。知らなかったよぉ……」
大きなお腹を擦りながら、永輝は頬を赤らめながら本当に気持ちよさそうに呟いた。
その顔は亜樹の目から見ても色っぽく、前知識無しに見ていたら女でも胸が高鳴りそうな光景だった。
「お、お前……一体何が起こったんだよ……。なんで、女になっちまったんだよぉ……」
呆然と永輝を見詰める亜樹の口元はカタカタと震えている。
自分の幼馴染が何の前触れもなくいきなり女になってしまったのだから無理からぬことだ。
もしかしたら目の前にいる永輝は永輝の姿を模した別の生き物なのではないかとさえ思ってしまったりする。
そして、亜樹のその考えはあながち間違いではなかった。
「うふ…、知りたい?僕が女の子になった訳……あはぁぁ……っ!」
今にも泣きそうな顔で自分を見ている亜樹の前で、ニヤニヤと微笑んでいた永輝が不意に悩ましい声をあげ股間に手を回した。
指の間からぽたり、ぽたりと熱い蜜が滴り落ちてベッドのシーツを濡らしていく。
「……ぃっ!」
その染み渡る蜜を見て亜樹は息を飲んだ。
永輝の股間から滴る蜜は毒々しいまでの赤色をしており、まるで血液が噴きだしているようだ。
が、そこから薫る匂いは血のような鉄錆臭さはなく熱帯に咲く花のようなむせ返るほどの甘い香りだ。
「うっ……」
あまりの匂いのきつさに亜樹は咽返りそうになって口元を手で抑えた時、永輝の身体に変化が訪れた。
大きく膨らんでいたお腹の二つの膨らみがうねりうねりと蠢きだし、それに伴い永輝から滴る蜜の量も増していっている。
永輝の顔は快感で蕩けきり、忙しなく動かす指は蜜で真っ赤になっている。
そして、その量がまるでお漏らしでもしているほどになった時
「うはぁぁ……でる、でて……きちゃうぅ!!」
股間からブシュッという炸裂音と共に、まるで蛸の足のような真っ赤に光る触手が二本顔を出してきた。
「ふはぁぁ……どう?すごいでしょぉ……。この子達が、僕を女の子にしてくれたんだよぉ……!」
まるで意思を持っているかのようにぐねぐねと動く触手を両手で掴んだ永輝の瞳も、いつの間にか触手や蜜と同じく真っ赤に輝いていた。
それは人間のものでは決してない。
「昨日亜樹ちゃんがベランダに投げた石の中に、この子達がいたんだ。
まだ卵の状態だったんだけど、僕の体温で孵ったみたいでそのまま小さな触手を伸ばして僕のちんちんの中に入ってきたの…」
その時の光景が永輝の頭の中に蘇ってくる。
急に股間に感じた違和感にバランスを崩した永輝は椅子から転げ落ちたが、次の瞬間に永輝を襲ったのは想像を絶する快感だった。
尿道を細い針金のようなものがぐいぐいと遡って奥に進んでいく感触は、たちまちの内に永輝を絶頂へと導いた。
「パンツを破ってこの子がおしっこの穴に入ってきたとき、気が狂うほど気持ちよくって……
僕、あっという間に射精しちゃったんだぁ……」
が、射精をしても快感は全く納まらずむしろどんどんと増していき、永輝は声にならない悲鳴を上げて絶え間ない射精地獄へと堕ちていった。
「どんなにどぴゅどぴゅしても全然止まらなくて……。ちんちんの奥でこの子がたまたまに刺さるを感じて、もっとすっごい射精しちゃったぁ……。あれ、気持ちよかったなぁ……」
永輝の睾丸を刺した寄生生物は、そのまま永輝の睾丸を犯して同化し永輝の肉体に着床してしまった。
「あとは、僕のたまたまがこの子達に変わっていって……、僕の身体をこの子達が繁殖しやすい体……、つまり産んで増やす女の子の身体に変えていったんだ……
そして、僕は人間から『メス』になったんだよ、亜樹ちゃぁん……。ク、ククク……!」
「ひっ…え、えいきぃ……!」
ちがう。ここにいる永輝はもう自分の知っている永輝じゃない。
永輝の姿は残しているものの、得体の知れない生物に身体と心を乗っ取られた怪物だ!
「亜樹ちゃん……。亜樹ちゃんもメスだからわかるよねぇ……
子供を産む悦びが。子孫を増やす悦びがさぁ……」
すたり、とベッドの上から飛び降りた永輝は触手を絡ませた手をすいっと亜樹の方に伸ばした。
「だからさぁ……亜樹ちゃんもなろ?この子達を増やす苗床になって頂戴よぉ……!」
亜樹を見る永輝の真っ赤な瞳が欲情でギラギラと輝いている。
それは子孫を、仲間を増やすことに無上の悦びを感じる繁殖欲だ。
だが、それは亜樹にとって到底受け入れられるものではない。
いくら永輝(の姿をしたもの)の頼みとはいえ、化け物に身体を支配されるなんて真っ平御免だ。
「や、やめろ……来るな!!」
亜樹はじりっとあとずさった後、そのまま一気にドアまで飛び退き部屋から逃げようとした。
が、部屋を空けるドアノブはびくとも動かなかった。
「え?!な、なんで?!」
亜樹は焦ってガチャガチャとドアノブを捻るが、ノブは右にも左にも全然回ろうとしない。
その間にも、永輝はまるで愉しむかのようにゆっくりと亜樹に近づいてくる。
「た、助けて!!おばさん!おじさん!!」
このままじゃ確実に捕まる!と直感した亜樹はドアをバンバン叩きながらドアの向こうにいるはずの永輝の両親に助けを求めた。
「助けて!助けてぇ!!」
まるで壊さんばかりの勢いで半狂乱になってドアを叩く亜樹の手に、しゅるりと触手が絡まりついてきた。
「ククク……。ムダだよ、亜樹ちゃん…」
後ろでは永輝が邪悪な笑みをにやにやと浮かべている。
「お父さんは僕が『メス』になった時、最初の栄養にしちゃったんだ。
出来たばかりの女の子の孔で、お父さんのおちんちんからいっぱいいっぱいこの子達の栄養を搾ってたの。
やっぱ、卵を増やすには栄養を取らないといけないからねぇ……!」
では、さっき電話を取った時に言っていた『栄養を取る』というのは、父親を犯して精液を搾り取っているということだったのか。
「そして、増やした卵から孵ったこの子達をお母さんに植え付けてお母さんも『メス』にしちゃったんだ。
最初はお母さんもとっても嫌がっていたけど……、この子達が入った後はとっても悦んで、僕の絞りカスからさらに栄養を搾り取っていたなぁ……
搾りすぎてお父さん死んじゃったけど、まあ関係ないよね。もう『メス』にならないほど干からびていたし」
自分の父親が死んでしまったことをまるで他人事のように話す永輝に、亜樹は背筋がゾッとした。
「お、お前……おじさんが死んだんだぞ?!自分の親が死んでなんとも思わねえのかよ!!」
「え、なんで?栄養にも苗床にも役に立たないんだから別にどうなってもいいじゃない」
亜樹が一体何に対して怒っているのか永輝は本当に理解できないらしく、きょとんと目を丸くしていた。
もう永輝の価値観は人間のそれではなく寄生生物のものに完全に変わっているようだ。
「だ・か・ら・さ。
まだ身体に栄養をたくさん蓄えていて、肉体も元気な亜樹ちゃんはこの子達の苗床にぴったりなんだよ。
僕の大好きな亜樹ちゃん。亜樹ちゃんも僕と一緒にこの子達でこの星をいっぱいにする苗床になろうよぉ!!」
「や、やめろ――――っ!!」
亜樹の手に絡まった触手が物凄い力で亜樹の身体を永輝の方に引っ張ろうとする。
亜樹はノブを掴んだ手に精一杯の力を込めて抵抗するが、所詮ほんの僅かな時間しかもたず亜樹の身体はそのまま永輝に抱きすくめられてしまった。
「アハハァ!亜樹ちゃあん!!僕の亜樹ちゃぁぁん!!」
「放せぇ、放せバケモ……ムググッ!!」
抱えられた身体を遮二無二動かして抵抗しようとした亜樹の唇が、永輝の唇で強引にふさがれる。
そのまま永輝は体重を前にかけ、亜樹をベッドへと押し倒してしまった。
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