脱・原発はムリ?民主“電力マネー”を食った議員リスト

2011.07.27


民主党議員への電力関連団体などの献金(パーディー券含む)【拡大】

 東京福島第1原発事故を受け、電力業界と政治の密接な関係が改めて注目されている。長期政権を誇った自民党と電力会社のつながりは当然深く、政治献金額などで突出しているが、実は政権与党となった民主党も決して無関係ではない。「脱原発依存」を掲げる菅直人首相を支える閣僚や党幹部など、民主党議員と電力業界の献金実態について調べてみた。

 「皆さんどう思いますか?」

 ソフトバンクの孫正義社長は今月23日、自民党の政治資金団体「国民政治協会」本部の2009年分政治資金収支報告書で、個人献金額の72・5%にあたる4702万円が東京電力など電力9社の当時の役員・OBらからのものだったとの共同通信の配信記事を受け、こうツイートした。

 孫社長としては、自民党と電力業界の“癒着”を指摘することで、太陽光発電などで連携した菅首相や民主党を後押しする狙いがあったのかもしれない。

 東西冷戦時代から、電力業界をはじめとする経済界が「民主主義の理念」を基調とする自民党を支援してきたのは歴史的事実。だが、その後の冷戦終結や政界再編、二大政党制の高まりなどを受け、電力業界は少ないながらも民主党にも献金の輪を広げているのだ。

 ここ数年の民主党議員や民主党本部の政治資金収支報告書を夕刊フジが調べたところ、電力業界からの政治献金やパーティー券購入が確認できた=別表参照。

 現職閣僚では、電力業界を所管する海江田万里経産相が2006年10月、東京電力労働組合政治団体から6万円。前経産相である大畠章宏国交相の政党支部には、茨城県電力総連や東電労組政治連盟本部、電力総連政治活動委員会などから計8万円が献金されていた。

 「ポスト菅」の筆頭格とされる野田佳彦財務相の政党支部には09年8月、電力総連政治活動委員会の代表から3万円。維新の元勲・伊藤博文の子孫にあたる松本剛明外相の政党支部には09年8月、電力総連政治活動委員会から3万円など。

 額が大きいのは、平野博文元官房長官の政党支部が09年8月、関西電力労働組合から受けた30万円。民主党屈指の政策通である大塚耕平厚労副大臣にも09年7月に中部電力労組政治連盟から24万円。経団連の石川一郎初代会長を祖父に持つ下条みつ政調副会長には09年11月、東京電力から40万円が献金されていた。

 民主党本部も07年5月と08年6月に、電力総連政治活動委員会から150万円ずつ受け取るなど、自民党とはケタが違うが、ちゃんと電力業界からも献金を受けているのだ。

 政治評論家の浅川博忠氏は「同じ電力業界からの政治献金でも、自民党は財界主体で、民主党は労組主体といえる」といい、こう続ける。

 「不況と政権転落で、財界から自民党への献金額は減っている。一方、1年10カ月の民主党政権を見てきて、財界だけでなく労組までも『民主党は経済政策が分かっていない』とあきれている。性急な『脱原発』についても、労組までが『産業空洞化を招き、雇用悪化に直結する』と危機感を覚えている。このままでは、財界も労組も民主党から距離を置き、安定感のある自民党に再び期待するのではないか」

 様子見で少しずつ民主に献金していたが、あまりの体たらくに、電力業界もさじを投げようとしている、というのだ。

 そんな電力業界の思惑を知ってか知らずか、菅首相は26日、首相官邸で国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長と会談。自身が表明した「脱原発依存」について、「幅広い観点から国民的に議論する必要がある」と強調した。

 献金額の多寡はともかく、民主にも自民にも、まともな政治をしてもらうよう願うばかりだ。 

 

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