後書きで発表とアンケートがあります。是非ご覧ください。
………タグに「ヘイト」か「劣化」を付け加えた方がいいのかな。
第30話:無垢なる翼は穢れに染まる
〔Side Setsuna〕
静かにこのちゃ……お嬢様へと視線を向ける。
お嬢様は楽しげにご友人方と談笑しており、私も思わずホッとする。
(そうだ、これでいい)
私はお嬢様を守れればそれでいい。
どんなに抗おうと、身分と種族の壁を越えることは出来ない。
ならば、私に出来るのは影ながらお守りする事のみ………。
(そして、もう1つ)
後ろの車両にいるであろう相手………神崎玖楼。
長の盟友、高天原先生によると「西のスパイ」である可能性が高いらしい。
あの夜、仕留めきれなかったのが残念でこの上ない。確実に息の根を止めておくべきだったと、今更ながら後悔している。
『刹那、お前は何も間違っていないよ』
刀子さん達に厳しく追及された後、高天原先生は私にそう言った。
『神崎は斬られて当然なんだ。お前は何も間違っていない。お前のやりたいようにやればいい』
優しく頭を撫でながら先生はそう言ってくれた。
そうだ、私は何も間違っていない。これがお嬢様をお守りするための最善の方法なんだ。
今回の旅行においても、お嬢様を守るために力を貸してくれると約束してくれた。
かつての英雄が力を貸してくれるのだから、怖い物などない。
正直なところ、ネギ先生は優秀な魔法使いだと聞いていたが………やはり子供なのだから、そこまで信頼出来そうにない。
やはりその辺り、甘さが残るだろうから、神崎の事も話せないだろう。
(神崎………貴様の好きなようにはさせない)
この旅行で、確実に息の根を止めてみせる。
長に逆らう者達の仲違いにでもすればいい。その辺りは後でどうにでもなる。
〔Side Out〕
〔Side Charlotte〕
日本で有名な観光地といえば、やっぱり京都や大阪が挙げられる。
この私、シャルロット・デュノアもまた、興味津々だったりする。
「京都か。噂には聞いていたが、実際に訪れるのは初めてだな」
「ラウラは見たい場所ってある?」
鈴以外は基本、観光地って行った事ないよね?
僕はやっぱり清水寺かな。例の飛び降りる舞台を見てみたい。
「私はアレだな。志々雄一派のアジトが見てみたい」
「「「「…………………………は?」」」」
えっと、何それ。
「知らんのか。緋村剣心が志々雄真実と激戦を繰り広げた決戦の地でもあるんだぞ?」
………誰、それ。
僕とセシリアがぽかーんとしていると、若干こめかみを揉みほぐしながら、鈴が口を開く。
「………ラウラ。一応言っておくけど、『るろうに剣心』はフィクションだから。実際にあった話じゃないのよ?」
「何だと? しかし、教官が飛天御剣流を」
「千冬さんを一般常識と比較しちゃダメだから!」
長い付き合いの鈴にすら「常識外れ」にされる千冬さんって………。
それより、あの『九頭龍閃』って漫画の技だったんだ。シュバババって無数の突きを受けて、神崎先生吹っ飛んでたけど。
そんな神崎先生も頭からだくだく血流しながら笑ってたのが記憶に新しい。
「ま、その辺は置いときましょ。あの人達は一般常識から逸脱した存在だから」
当人達が聞いたら間違いなく怒るだけじゃ済まないような事を言いつつ、鈴がそう仕切る。
「それより考えるべきは、一夏の事でしょ」
その言葉に、全員が思わずハッとなる。
そう。今回の修学旅行は麻帆良の全中学3年生が対象となっており、当然本校3年の一夏も参加している。
とはいえ、学校が違うのでどのようなルートで回るのかまでは把握できていないのだけど。
「それならば、この前一夏に聞き込んできた。2日目に私たちの行き先と重なるらしい」
箒の言葉に、思わず流石だと思ってしまう。
2日目と言うと、確か奈良だったよね。後は3日目の自由行動日………。
「………言っておきますが、抜け駆けは禁止ですから」
ジト目のセシリアがそう言うのも頷ける。
ちょっと油断すれば間違いなく一歩抜きんでようとする人が出てくるだろうから。
と、そんな時。前の車両から甲高い悲鳴が響いた。
〔Side Out〕
〔Side Negi〕
景色に心を和ませていると、突然悲鳴が聞こえた。
いったい何だと思い、視線を向けると何故かカエルが大量発生していた。
「な、何ですかこれ!?」
いったい誰がカエルを持ち込んだんです!?
………いや、そうじゃなくて、どうしてこんな状況に?
「兄貴、あのカエルから魔力っぽいものを感じるぜ!」
「え………じゃあ、まさかこれって」
「ああ! 多分、関西呪術教会とやらの妨害だ!」
カモ君の言葉に、まさかと思いつつもカエルに意識を集中する。
確かに普通のカエルとは違う。もしかしてあれ、日本固有の使い魔……シキガミっていう物なんじゃ………。
「ね、ネギ君!」
「皆さん落ち着いてください! 保健委員は気絶した人の手当て、それから新田先生にも報告をお願いします!」
さすがに女の人はカエルが苦手な人もいるようで、長瀬さんやしずな先生も気絶してる。
………でも、この妨害の仕方ってどうかと思うんだけど。
「そう言えば親書は大丈夫なのか?」
「えっと………確か上着の内ポケットに」
そう言いながらも、偽物の方の親書を取り出す。
さすがに相手もどこに親書を仕舞っているか知らないだろうから、ここで敢えて偽物を出しておく。
そうすれば、生徒でなく僕に狙いを絞ってくるだろうから。
「ほら、ここに」
僕が親書を出すと、その瞬間に手から親書を何かが奪い取る。
鳥? でも、ここで仕掛けてきたのだから丁度いい。カモ君と視線を交わし、すぐにその後を追う。
車両を出ると、そこには親書を手にした桜咲さんの姿が。
「桜咲さん?」
「!!」
僕が声をかけると、あからさまに動揺する桜咲さん。
「………どうぞ」
そう言い、親書を渡してくれる。
このタイミングでここにいるっていう事は、もしかして桜咲さんが敵?
ふと視線を床に向けると、真っ二つになった鳥の形をした紙があるし………。
「………ネギ先生、気をつけてください。色々と敵も多いですから」
そう言うと、僕が問いかける間もなく、桜咲さんはすたすたと車両に戻っていった。
カモ君、どう思う?
「確かにアイツが敵のスパイって可能性も高いな。けど、学園長は何も言ってなかったんだろ?」
あ、そう言えばそうだよね。
もしクラスに敵のスパイがいるなら、学園長や高畑さんが気づかないはずがない。
修学旅行で妨害があるかもしれんって言ってたんだし、桜咲さんがスパイならそう教えてくれるはず。
そう考えると、桜咲さんは単に親書(偽)を取り返してくれただけ………?
「………情報が足りない」
そもそも、桜咲さんの立ち位置が分からない。
ここは事情を知っていそうな誰かに相談してみるのが1番かもしれない。
「アスナの姐さんに相談してみるっていうのはどうだ?」
「アスナさんかぁ………」
正直、あんまり巻き込みたくないんだけど………うん、話を聞くだけなら大丈夫かな。
〔Side Out〕
〔Side Menou〕
「………見たか?」
「見ました」
「見ちゃいましたね~」
妾たちは一般車両(くりーん車と言ったか?)におるのじゃが、先ほどの騒動についても既に玖楼から連絡が来ておる。
「遠見」で様子を見ていたところ、怪しげな動きをする女を1人見つけた。
「あれって確か、天ヶ崎さんトコの千草ちゃんじゃありませんでしたっけ?」
おお、そう言えばそうじゃな。母親に顔がそっくりじゃ。
あの一件以来会っておらんかったが、まさか強硬派に鞍替えしておったとはの………。
まぁ無理も無い。大戦で両親を亡くし、その両親の命を奪った西洋魔導師を恨むのはある意味当然の流れ。
………とはいえ、表立って動けないのは分かるが、さすがにこれは幼稚すぎると思うのじゃが。
「母様、どうします? 仲間もいないようですし、あの程度の相手なら、ここで押さえるのは難しくありませんが………」
翡翠の言葉に、妾は思考を巡らせる。
ここで天ヶ崎を押さえるのは簡単じゃ。ここからでも遠隔操作で術をかければ一発じゃからな。
………じゃが、ここは放置しておく事にしよう。
「あれ? てっきり母様の事ですから、何かえげつない術でも仕込むのかと思いましたが」
………琥珀、そなたの中の妾のいめーじについて小一時間ほど追求したいところじゃが………まぁよい。
ここで奴を捕えないのにも理由はある。何故なら、妾たちはあくまで西の掃除が目的じゃ。ある意味目的が似通っている天ヶ崎について、放置しても問題は無い。
おそらく奴らの目的は親書では無く、近衛木乃香じゃからな。どうせリョウメンスクナの封印解除にでも使うのじゃろう。
「近衛木乃香に関しても、身体さえあれば問題無い」
術や薬で自我を壊されようが、身体さえ残っていればどうにでもなる。
まぁ、妾としては精神+五体満足の方が後々面白い事になるし、出来ればそっちの方がいいのじゃが………。
「あ、分かります分かります。そっちの方が面白いですよね。何て言うか『キャベツ畑やコウノトリを信じている可愛い女の子に、無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ』がありますよね」
「ほう………そなた分かっておるでは無いか」
「………姉さん、母様、自重してください」
おっと、話が反れてしまったな。
とにかく、ここで天ヶ崎に干渉するよりも、好き勝手やらせておいた方がこっちにとっても都合がいい。妾たちが動かずとも、勝手に勢力を削いでくれるだろうからの。
「それに、先代様がいらっしゃるようじゃし」
そう口に出すと、2人が目に見えるほどに凍り付いた。
………その様子じゃと、どうやらあの手紙の中身までは知らされておらんかったようじゃな。ま、知っておったら今頃逃亡しとるじゃろうし。
「か、母様………先代様が、いらっしゃるんですか?」
「らしいぞ?」
少なくともそういう風に書いてあったし。
妾はよう分からんが、どうも今回の事は先代様も相当お怒りらしく、「1度京都行って詠春シバいたるわ」というような事が手紙に書いてあった。
………おーおー、いい感じに震えておるのー。
「も、もうあそこに突き落とされるのはいやぁぁぁぁぁ!!」
………うむ、さすがに全能力封印してケルベラス大渓谷に突き落とすのは、妾もやり過ぎじゃと思うたからの。
それを乗り越えた2人を凄いと思いつつ、少しだけ気の毒になった。
えー、以前からお話ししていたISのSSについてです。
皆さんからも意見を頂いて、実際に数話書いてみたところ「家族ルート」を執筆する事にしました!
これは織斑姉弟の絆を描くもので、すれ違いつつあった姉弟が手を取り合い、未来を目指していくというものです。
若干、一部のキャラには扱いが厳しくなる時もあるかもしれませんが………。
最近はちょっと忙しいため、こっちに出すのは大分先になるかもしれませんけども、ご期待ください。
あともう1つ。今作品で登場するISキャラ。
特に………仮に箒たちが仮契約した場合、会得するアーティファクトについて、皆さんのご意見を頂きたいと思っています。
一応、イメージとして決まっているものもあるんですが、中にはやはり全然思いつかないのもありまして………是非、皆さんのアイディアを寄せて頂きたいと。
ご協力お願いします。
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