アップルのコンテンツ配信価格を巡っては今年7月、為替変動に対応する形で、日本などのアプリ配信サイト「アップストア」の価格表を改定したことも問題になった。事前に改訂の知らせを受けなかった出品者の間で、少なからず反発や混乱が生じたのだ。音楽業界でも「そうしたアップルの手法や枠組みに乗ることへの抵抗は根強い」との声がある。
配信事業者のアップルとコンテンツ業界の対立構図について、知的財産権やコンテンツ産業に詳しい福井健策弁護士(日大芸術学部客員教授)は「適正な収益」と「自由な流通形態」の最適なバランスが見いだせていないことが背景にあると分析する。
「配信事業者は、ユーザーが望む価格が安く、自由で便利な買い方ができるサービスを追求する。一方、音楽を提供する側は適正な収益を確保しなければ永続的な事業モデルを構築できない。ネットが普及した中でこれらを両立させる仕組みが確立できていないことが根底にあるのではないか」。福井弁護士はこう指摘する。
ただし「コンテンツを持つ側も、配信側も、音楽作品を広く流通させたいという理念では一致している」(福井弁護士)。だとすれば、落としどころは、どこにあるのだろうか。
アップルが今回始めたクラウドサービスはあくまで、著作権を侵害しない「正規」の枠組み。JASRACの担当者も「アップルがユーザーにとって利便性が高いサービスを法律にのっとって展開しようとしているのはわかる」と理解を示す。アップル側は「日本でのサービス開始は時期を含めて何とも言えない」(日本法人の竹林賢広報部長)という。しかし、見通しが立たないながらも、「音楽業界とはパートナーとして丁寧に話し合っていきたい」(同部長)との考えだ。
クラウド型の音楽配信にはアップルだけでなく、米アマゾンや米グーグルなどのほか、複数のベンチャー企業も乗り出している。アップルは米国で、年24.99ドルを払えば、CDなどからパソコンに取り込んだ楽曲でも、追加料金なしにクラウドを通じて別の端末に「配信」することができるサービスも始める。利用者にとっての魅力を高めつつ、日本を含む海外の音楽業界を納得させる仕組みをどう整えていくか。
5日に死去したスティーブ・ジョブズ氏が道筋をつけた同サービスで、アップルが競合他社に対抗して事業を優位に展開できるかどうかは、米国流を押しつけるのではなく、各国の事情を勘案した提案をできるかどうかにかかっている。
(電子報道部 宮坂正太郎)
人気記事をまとめてチェック >>設定はこちら
アップル、iCloud、iTunes、JASRAC、グーグル
「スティーブの死を知ってから、その日はしばらくぼーっとしてました。そして、彼と仕事をした思い出がよみがえりました」
米アップルの創業者のスティーブ・ジョブズ氏が逝った10月…続き (10/13)
100年以上続いた鉄道安全運行の仕組みが大きく変わる――。東日本大震災で甚大な被害が出た宮城県の仙石線(仙台―石巻間、総延長52キロメートル)…続き (10/2)
「ウルトラブック」も登場 超薄型・軽量の秋冬モデルを試す (10/15)
エレコム、早くもiPhone 4S向けカバーを展示 (10/14)
思い立ったらすぐにメモ…テキスト・手書き・音声で (10/15)
「スタート」メニューを使いこなそう (10/13)
アップルと音楽業界「攻防」再び 舞台は「iCloud」 (10/15)
日産が小型で低コストな燃料電池、車両の床下に搭載可能 (10/14)
スマホのタッチパネルの生産性が5倍に (10/14)
車室は衝突してもつぶさない、材料選びの妙 (10/12)
自然界に学び製品開発、環境負荷低減へ (10/11)
温暖化ガス「25%削減目標、撤回すべきでない」 (10/12)
日産が小型で低コストな燃料電池、車両の床下に搭載可能 (10/14)
太陽光発電システム、転換点を迎える市場 (10/3)
・米GM、燃料電池車も虎視眈々
・NECカシオなど、ドコモの「高速携帯」対応のスマホ投入
・メディネット、アジアで細胞治療展開へ
・いすゞ自動車、首都圏の3販社を統合
・三井造、風力発電設備、保守サービス参入…続き