東日本大震災のあと初めて開かれた日本地震学会の大会で、巨大地震をなぜ予測できなかったのかなど専門家みずからがこれまでの研究を問い直すシンポジウムが開かれ、研究の姿勢や社会との関わり方について反省や批判の声が相次ぎました。
日本地震学会は、今月12日から静岡市で秋の大会を開き、最終日の15日、「地震学の今を問う」というテーマの特別シンポジウムを行いました。会場の静岡大学には、研究者などおよそ500人が集まり、初めに全員で震災の犠牲者に黙とうをささげました。発表ではまず、今回の巨大地震を予測できなかったことについて、東北大学大学院の松澤暢教授が「たかだか過去100年程度のデータから、東北沖ではマグニチュード7から8の地震しか起きないと考えてしまっていた。これまでの経験にとらわれない考え方が必要だった」と述べました。また、東京大学大学院の井出哲准教授は「専門家は『地震予知』や『連動』などといった、説明がつきやすいあいまいな概念やことばを重ねてきた。地震を正しく理解し、予測の可能性を高めるためには、色々なことをあいまいにせず、批判精神を持って議論していくことが重要だ」と訴えました。さらに、社会との関わり方について、地震による原子力発電所の危険性を訴え続けてきた神戸大学の石橋克彦名誉教授は「地震学には災害の危険性について情報を提供する責務があり、沈黙しているかぎり、社会は真実を知ることはできない。分かっていないことについても説明することが非常に重要だ」と指摘しました。シンポジウムを主催した委員会の委員長を務める名古屋大学の鷺谷威教授は「ここで地震学が変わらなければ未来はないというくらいの危機感を持っている。今後の議論によって問題点を洗い出したい」と話していました。地震学会は、今後の研究の方向性などについて、来年春に報告をまとめることにしています。