きょうの社説 2011年10月16日

◎新潟の負担金不払い 国交省は早期解決へ努力を
 各自治体の来年度予算編成が始動する時期を迎えるにあたり、国土交通省にぜひやって もらいたいのは、泉田裕彦新潟県知事が、北陸新幹線の建設負担金の支払いを拒否している問題について、早期解決への糸口を探ることだ。新潟県は今年度予算で負担金をまったく計上していないばかりか、昨年度分もいまだに「滞納」しており、このままでは、来年度予算でも同じことが繰り返される恐れがある。

 この問題をめぐって、泉田知事は「国交省に対し、既に具体的な解決策を提案している 」と主張しており、こじれているのは同省の責任と言わんばかりである。予定通りの2014年度開業を目指すとしているにもかかわらず、一方で要望が認められないからという理由で、石川、富山県などの懸念にはお構いなしで開業の遅れにつながりかねない行動を取り続ける泉田知事の姿勢には、首をかしげざるを得ないが、このまま待っていても何も前進しない。

 新潟県の負担金不払いで足りなくなった事業費は、今のところは鉄道建設・運輸施設整 備支援機構が穴埋めしているが、いつまでもそんなことを続けるわけにはいかないだろう。ここは同省が一歩前へ出て、泉田知事の説得に乗り出す必要がある。

 解決に向けてのポイントとなるのは、泉田知事と同省政務三役クラスとの話し合いだ。 本来は3月15日に津川祥吾政務官と会談することが決まっていたのだが、直前に東日本大震災が発生して延期になった経緯がある。その後、同省が被災地の復旧・復興などで忙殺されていたという事情はあるにしても、7カ月もそのままにしていたのは、手抜かりと言われても仕方があるまい。

 野田佳彦政権が成立してから1月半がたち、前田武志国交相ら同省の新しい政務三役も 、そろそろ落ち着いたはずである。できるだけ早く会談をセットし直し、泉田知事と向かい合うことをあらためて求めておきたい。石川、富山県なども、沿線関係者の中でこの問題の早期解決を望む声が強いことを、あらゆる機会を通じて泉田知事に伝え、国交省を側面支援してもらいたい。

◎アニメと観光地 人気生かす次の一手が重要
 金沢市湯涌温泉の風景をモデルにしたアニメ「花咲くいろは」に登場する祭りの再現で 、約5千人が湯涌温泉街に集まり、アニメ効果の大きさを示した。今春の放映以来、全国から多くの若者らのファンが湯涌や同じくモデルとなった、のと鉄道の西岸駅(七尾市)などを訪れている。

 「花咲くいろは」と同様に南砺市の「ピーエーワークス」が制作した「true te ars(トゥルー・ティアーズ)」でも、モデルとなった同市城端がファンから作品の「聖地」と見なされ、全国的に注目を集めた。今回の湯涌温泉のにぎわいを見ても、企画と情報発信次第で人が集まることがあらためて証明された。湯涌、のと鉄道ともにアニメ効果が見られるようになったが、一過性のブームに終わらせることなく、人気を生かす次の一手を打って、地域おこしにつなげてもらいたい。

 「花咲くいろは」は金沢ケーブルテレビネットやテレビ金沢をはじめ、国内各地で今秋 まで放映され、日本アニメの人気が高い台湾でも注目を集めている。湯涌温泉観光協会では、再現した「ぼんぼり祭り」の定着を図り、観光誘客につなげる考えだ。本社が動画共有サービス「ユーストリーム」で配信した当日の映像にも延べ1万4千人を超える視聴があり、関心の高さがうかがえた。

 「花咲くいろは」の製作委員会は来年、同作の新作映像を製作すると発表しており、一 層の人気拡大が期待される。金沢市は、湯涌温泉街の活性化に向けた戦略プランを見直すことにしており、アニメ人気を生かして幅広い層の誘客を促進する工夫が求められる。

 アニメによる地域活性化に関して、地元北陸に拠点を置く「ピーエーワークス」の存在 が大きい。地方でヒット作を作り、人材を育成するスタイルは東京に集中しがちなアニメ界でも注目されており、これからも地元の視点で北陸の魅力を作品に反映してほしい。モデルとなった地元側はアニメと連動した企画や商品開発などのアイデアを練ってきたが、今後も地元と制作者側が連携して作品と地域を盛り上げていきたい。