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焦点/“文化の復旧”なお時間/宮城の11大型公共施設、再開できず
 | 震災で壁が剥がれるなどした東京エレクトロンホール宮城=仙台市青葉区 |
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東日本大震災では東北各地で、市民会館や文化センターなどの大型公共施設も数多く被災した。宮城県内では東京エレクトロンホール宮城(仙台市)など11施設が、震災から7カ月が過ぎた今も再開できないでいる。天井落下や壁面の亀裂など被害が深刻なためで、現在も避難所として使われている施設もある。
宮城県内の40の大型公共施設が加盟する県公立文化施設協議会によると、加盟全施設が被災した。このうち再開できていない施設は表の通り。エレクトロンホールや泉区の「イズミティ21」、南三陸町スポーツ交流村(ベイサイドアリーナ)など10施設は震災被害が大きく、気仙沼市民会館は避難所にもなっている。 津波被害を受けたのは石巻文化センター。他は大規模な空間を支える柱がないホール特有の構造が、甚大な被害につながったとみられる。12月10日に再開予定のイズミティ21以外は、年内の再開が難しい状況だ。 震度7を記録した栗原市の栗原文化会館は壁面に亀裂が入り、配管から漏水した。今後、耐震性を高める修繕工事に入る予定で、再開は早くて来春以降となる。壁面や音響設備の損傷が激しかった角田市市民センターも全面的な改修が必要で「取り壊しも含め検討中」(同センター)という。 エレクトロンホールは天井の一部が落下したり、屋上にある暖房の排気筒が壊れたりしたため、来年3月までの使用中止を決めた。今月中にも本格的な修繕工事に着手する。 エレクトロンホールの指定管理者の一つ、県文化振興財団は「心に癒やしを与える文化施設が復旧しないと、平穏な生活に戻ったとはいえない。一日も早く再開させたい」と話している。
◎「支援優先」避難所に/事業中止、財務を直撃
「今は避難している人が自立した生活を送れるよう支援することが最優先」。気仙沼市民会館の松下尚子館長(66)が強調する。会館には今も、さまざまな事情で仮設住宅などに移れない被災者約40人が身を寄せる。 例年、この時期は芸術関連のイベントがめじろ押しだが、中ホールや楽屋は被災者の避難所となり、ロビーには支援物資の段ボールが山のように積まれている。 毎年、文化の日(11月3日)の前に開かれていた気仙沼市最大の文化イベント「気仙沼市民文化祭」はことし、「会場が確保できない」として、中止になった。市内の全児童生徒が参加する「小中学校音楽祭」も開催を見合わせた。 松下館長は「来年の成人式を皮切りに本格再開させたい」と話すが、それまでに被災者の移転先が決まる確かな見通しは今のところない。 多賀城市の社会人らでつくる多賀城吹奏楽団は毎年10月、多賀城市民会館で定期演奏会を開いてきた。震災で市民会館は天井、壁の一部が崩落し、再開の見通しは立っていない。楽団はことしの定期演奏会を見送り、代わって慰問活動や地域の催しに力を入れる。 団長の立花重典さん(40)は「会館が落成した1987年からここで演奏してきた。慣れ親しんだ場所でもう一度演奏したい」と話す。 長引く休館は、施設の財務状況も直撃している。東京エレクトロンホール宮城(仙台市)は、震災前に前払いで受け取っていた利用料の返却手続きに追われている。2011年度は大ホールと会議室の利用申し込みが1124件あり、返金総額は約4000万円に上る。収益の柱だった演劇や演奏会など12の自主事業も開催を見送った。 ホールの指定管理団体の一つ、県文化振興財団によると、総収入2億5000万円のうち半分を占める利用料や事業収益が本年度は全額見込めなくなった。 財団の白石光雄事務局長(61)は「職員の自宅待機などで人件費の削減に取り組んでいる。早く再開の期日を決め、利用予約の受け付けや自主事業を企画したい」と話す。
2011年10月15日土曜日
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