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社説:電力業界と「政官」 なれあいを放置するな

 福島原発事故を境に電力業界と政官界のさまざまな「なれあい」体質が指摘され続けている。にもかかわらず、こうしたゆがみをただそうとする動きは鈍い。

 政府は原子力の安全規制を担う組織の経済産業省からの分離など体制見直しを進めているが、なれあいを生む構造にメスを入れなければ問題は解決しない。電力会社や関係公益法人への官僚の天下り規制、電力会社から政党、政治家への「抜け道献金」是正を早急に求めたい。

 電力会社と当局のもたれあいが安全規制をゆるめ、さらにエネルギー、原発行政をゆがめることへの懸念が原発事故を境に強く指摘されている。その象徴と言えるのが電力業界への官僚の天下りだ。1月に東京電力の顧問に就任した経産省出身の元資源エネルギー庁長官は原発事故発生後に批判を浴び、退任した。

 東電については、同社に天下りしている中央官庁OBがおよそ50人にのぼることがその後判明した。枝野幸男経産相は電力業界への天下りの実態調査と規制を強める考えを示している。当然の対応だろう。

 だが、それだけでは氷山の一角に手をつけたに過ぎない。エネルギー関連公益法人の多くは東電など電力会社が資金を拠出し、おびただしい官僚OBが天下りしている。

 毎日新聞の調査によると、少なくとも官僚OB121人が電力会社を会員とするこうした法人に再就職している。特定官庁がきまった役職を代々「指定席」とするケースもある。電力会社が天下りの受け皿を用意し、官庁となれあう構図に野田内閣は真剣に切り込むべきだ。

 政治と電力業界のなれあい体質も問われる。東京電力は「公益企業」を理由に政党、政治家に企業献金しないことを74年に決めた。

 ところが、役員ら幹部による自民党政治資金団体などへの個人献金は続けられてきた。複数の国会議員のパーティー券を数年間にわたり購入していたことも東電は明らかにしている。これでは実質的な企業献金との批判は免れまい。

 一方で、民主党側も電力関係労組から献金、パーティー券購入など資金提供を受けている。国会に原発事故調査委員会が置かれ、どこまで公正に調査権を行使するかが問われている局面だ。与野党は電力業界関係の政治資金受領を自粛し、判明した場合は返納することを申し合わせるべきではないか。

 原発をめぐっては再稼働、エネルギー政策をめぐり、さまざまな見解が対立する。だが、どんな立場にせよ、こうした体質を脱却することは最低限の前提となるはずだ。放置するのは怠慢である。

毎日新聞 2011年10月16日 2時30分

 

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