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No27668 の記事


■27668 / )  ラムダはなぜベアトリーチェに強いのか
□投稿者/ Townmemory -(2009/06/26(Fri) 22:58:30)
http://blog.goo.ne.jp/grandmasterkey/
    (注:ひぐらしのネタバレあります)


     赤字の扱い方について、「ラムダデルタ式解法」「ベルンカステル式解法」という話を、別スレッドでしました。 no27569
     そこから連想したことを、もうひとつ。

     ラムダ・ベルン・ベアトの3人で、ジャンケンのような3すくみになる、という話がありました。

     ラムダデルタは、ベアトリーチェのゲーム盤に対して強い。
     ベルンカステルは、ベアトリーチェのゲーム盤に対して弱い。

     この意味を解いてみたい。

         *

     さて、唐突ですが。
    「謎」というのは、つきつめると、「リクツと現象が一致しない」ことです。

     たとえば。
     殺人犯は逃亡したのだから、犯行現場のドアは開いているはずだ(というリクツ)。
     しかし、ドアには内側からカギがかけられていた!(という現象)

     このテの「リクツと現象の不一致」のことを「密室」と呼んだりしています。

     だから、「謎を解く」ということは、単純化すると、「リクツを変えるか、現象を変えるか」という二択です。

     すなわち。
    「ドアが施錠されててもかまわないことにする(何らかのトリックを使って)」
     か、
    「ドアは施錠されてなかったことにする」
     か、どちらかが成り立てば、この密室の「謎は解けた」ことになります。

     前者のアプローチで謎を解くのがベルンカステルで、後者のアプローチで謎を解くのがラムダデルタです。

         *

    「ひぐらし」の話をします。

     ベルンカステルは、「ひぐらし」というゲーム盤の指し手だと推測されますね。
     ベルンカステルが、古手梨花という駒を動かし、「古手梨花が生還する」という条件を導ければ勝ち。

    「このリクツで駒を動かしたら、梨花が生還できる(という現象が発生する)と思っていたけれど、生還できなかった(リクツと現象の不一致)。つまりリクツが間違っているんだ。別のリクツを試してみよう」

     というアプローチで、「どうして梨花は生還できないのか」という「謎を解いた」のが、ベルンカステルです。リクツのほうを動かしました。


     さて。
     ラムダデルタも、「ひぐらし」というゲーム盤の指し手だと推測されます。
     彼女が指していたキングの駒は、鷹野三四です。

     鷹野三四は、リクツと現実が齟齬をきたしたら、現実のほうを変えてしまえ! という方向性を持った人です。

     雛見沢症候群です。
    「雛見沢病原菌の女王感染者が死ぬと、雛見沢症候群の全感染者(全村民)が発狂状態になり凶暴化する」
     という「仮説」を、彼女は持っていました。

     結果的に、この仮説は正しくないことが、作中で実証されます。
     されますが……。

     鷹野三四は素晴らしく高度な知性を備えた人物です。だから、
    「この仮説って、ひょっとして正しくないかもしれない」
     という可能性を、想定していなかったはずがないのです。

     でも、彼女にとっては、「仮説が正しいか、正しくないか」なんて、問題ではなかった。
     その仮説は、「絶対に正しくなければならない」ものだったのです。
     なぜなら、養父・高野一二三の名誉がかかっているから。この仮説は、高野一二三が命がけで提唱したものだったから。

     彼女のとった方法は、
    「この仮説が正しい、という“現実”を作ってしまう」
     ことでした。

     女王感染者・古手梨花を殺し、雛見沢村民を完全虐殺する。
     これで、仮説は「正しかった」ことになる。
    「間違いだったかも」などと言い出せる者はいなくなる。言い出した瞬間、大量虐殺の責任を負わねばならなくなるからです。よって、社会的に「高野一二三は正しかった」という認定がなされる。

     リクツと現実が一致しなさそうになったら、「現実のほうを動かした」のが彼女なのです。

         *

     さて。
     自分の考えと目の前の現実が一致しない。現実を変えるわけにはいかないから、自分の考えを変更しよう。
     というのが、ベルンカステルでした。

     このアプローチは、常識的です。
     ですが、
     現実というものが、固定されていて、そうそう動いたりしないものだからこそ、このアプローチは成立するのです。

     わたしは自分が太ってないと思う(そういう理論)。
     けれど、体重計に乗ったら、3キロも増えてた(そういう現実)。
     10回体重計に乗って見たけど、10回とも3キロ増だった(現実の固定)。
     ああ、じゃあわたしは太ったんだ(理論の変更・真相への到達)

     でも、こうだったらどうでしょう。

     わたしは自分が太ってないと思う(そういう理論)。
     体重計に乗ったら、3キロも増えてた(そういう現実)。
     2回目を計ったら、4キロ減ってた(新たな現実)。
     3回目を計ったら、5キロ増えてた(さらに新たな現実)。
     4回目を計ったら、7キロ減ってた(さらに新たな現実)。
     わたしは太ったんだか痩せたんだかわからない(真相へたどりつけない)。

     そして、このように、「計るたびに結果が変動する」のが、ベアトリーチェのゲーム盤なのです(毎回ちがう現実が観測されるから)。ベルン式のアプローチで真相にたどり着くのは難しい。


     ところで、ラムダデルタは、
    「自分の考えと目の前の現実が一致しない。じゃあ私の考えに合うように現実を変えちゃおう」
     という人ですから、現実が変動するベアトリーチェのゲーム盤への対応力があります。

     私ってば最近けっこう痩せたのよ!(そういう理論)
     体重計に乗ったら、3キロも増えてた(そういう現実)。
     2回目を計ったら、4キロ減ってた(新たな現実)。
     3回目を計ったら、5キロ増えてた(さらに新たな現実)。
     4回目を計ったら、7キロ減ってた(さらに新たな現実)。

     1回目と3回目の結果は、ノイズだから、採用しないんだからね!つーん!(現実の変更)

     体重が減ってるという結果しか残らないから、やっぱり体重は減ったのよ!やっぱり私ってば絶対ね!(理論の確定・真相への到達)

     というように、ラムダデルタ式のアプローチを使えば、ベアトリーチェのゲーム盤でも「真相に到達」できるのです。

     ベアトリーチェのゲーム盤には、都合のいいことに、「幻想描写」というイイワケが用意されています。
    「私、こんな仮説を用意したわ。仮説を否定する現象があるけど、それはぜーんぶ幻想描写だからかまう必要ないの。それ以外の現象はみーんな私の仮説を裏打ちしてくれるわ。よって私は正しい! 正しい答えを言い当てたんだからベアトの負け!」

     こんな暴論をぶっぱなして、ラムダデルタは勝利してしまいます。

     いや、これって、
    「勝手な想像を真相だと言い張って、勝手に勝利宣言してるだけで、“ほんとにあったこと”を言い当ててないじゃん」
     というふうに言えそうですけれども……。

     でも、このゲーム盤には、
    「否定されないかぎり真相だと言い張って良い」
     という特殊ルールが設定されてますから、なんと、これでいっこう構わないわけです。
     鷹野三四が、仮説が合ってるか合ってないかなんて、全然構う必要がなかったのと、同じ状況なんです。

     まとめると、
     ラムダデルタは「現実をムリヤリ固定させる」ので、現実を変動させてケムに巻くベアトリーチェに対して強い。
     ベルンカステルは、「固定した現実を基準にして正しい理論を探る」ので、現実を変動させてケムに巻いてくるベアトリーチェに弱い。
     ベルンカステルは、「固定した現実を基準にして正しい理論を探る」ので、現実を固定して基準値を作ってしまうラムダデルタに対して強い。

     誰が誰に対して強い、というあの設定は、
     ラムダデルタ(が得意とする問題解決アプローチ法)は、ベアトリーチェ(が得意とする謎構築法)に対して強い、
     というように、ことばを補って理解すると、筋が通るように思うのです。

         *

     ついでに。
     ほんとうにラムダデルタがベアトリーチェに対して強いかどうか、想像力でかってに検証してみましょう。

     たとえばこんな設定で。
    「事件の日の六軒島に、“住み込み家庭教師・鷹野三四”という登場人物がいたとしたら?」

     わたしの想像では、「この屋敷のどこかにいる誰かは殺人犯だ。自分も狙われてる」と判断した瞬間、彼女は屋敷にいる全員を皆殺しにかかるのではないかな?
     全員殺せば、その中には犯人・犯人グループがいる道理です。自分の安全が確保できれば良いわけで、べつに犯人特定の必要なんてない。
     あとは、一晩かけてゆっくりと、自分が罪に問われないようにする言い訳と、その証拠を捏造すれば良い。
     犯人の望んだ真相ではなく、彼女が捏造した真相が「真相」となるのです。ベアトリーチェはこれに異議をとなえられない……。
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