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No36736 の記事


■36736 / )  霧江が会ったベアトは誰/マルフク寝具店にあったもの
□投稿者/ Townmemory -(2009/12/07(Mon) 09:27:54)
http://blog.goo.ne.jp/grandmasterkey
     わりあい細かい推理を二題。

    ●ep2で霧江は誰に会ったのか

     ep2。源次をしたがえて、玄関ホールから堂々と屋敷に入来するミニスカブレザーのベアトリーチェ。
     それを霧江は目撃して、会話をかわしています。

     霧江が目撃しているのだから、ブレザーベアトはああいう姿の人物としてじっさいに存在しているのではないか、という説を採る人もけっこう多いみたいですね。

     わたしは、朱志香=ベアトリーチェ説をとっていますので、あの場面は、朱志香と霧江の会話が発生したのだ、という立場です。
     ブレザーベアトは、「朱志香が魔女として行動している姿」だという理解をしています。ブレザーベアトがいるところには朱志香の体があるっていうことです。ドレスベアトは観念的な存在で、ブレザーベアトは物理的な存在だという区別ですね。

     さて、こういう考え方をとる場合、「玄関ホールの霧江とベアト」のシーンは、どう解釈したらいいのか。わたしがどういう整合のさせかたをしているのかということをお話してみます。じつは、わりと強引で、アクロバティックです。

         *

     ep2の霧江は、玄関ホールのシーン以前に、いくつか印象的な発言をしています。

     まず霧江は、薔薇庭園で、真里亞が語る「ハロウィンと魔女の話」をきちんと聞いています。その話を嫌がる楼座に対して、
    「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」

     というフォローまで入れている。

     さらにそのあと。
     霧江は楼座とふたりで真里亞のことを話すのですが、
    「楼座さんは毎日を真里亞ちゃんと過ごしてるから、小さな変化に気付かないかもしれないけれど。一年ぶりに再会した私たちには、その大きな成長ぶりがよくわかりますよ…。」

     と、真里亞ちゃんに対して、とても肯定的なものの見方をしています。

     ここで押さえておきたいのは、
     まず、霧江さんという人は、
    「魔女に傾倒する少女の感性」
     に対して、ひじょうに理解とシンパシーをもった人だということ。

     そして同時に、霧江はこの日、
    「魔女ぶりたがる女の子」
     というものに対して、すごく印象が強い状態だ、ということなのです。


     さて。
     そういう霧江さんが、そういう精神状態で、化粧直しに出たところ、玄関ホールで源次を従えた朱志香に会ったと思って下さい。
     一年ぶりに再会したといえば、霧江は朱志香にも一年ぶりに会ったのです。

     ここでは、ブレザーベアトは朱志香であるという仮定ですから、
    「肖像画の魔女のように尊大な表情をして、肖像画の魔女のように尊大に歩く朱志香」
     に、ばったり出くわしたのです。

     霧江は、こんなセリフを投げかけます。
    「……初めまして。霧江と申します。初対面でしょうか。もし以前に挨拶をしていたなら、名前を忘れてしまって申し訳ございません。」

     さて、これは一見、義理の姪っ子に言うようなセリフではありません。

     けれども。
     このセリフにこめられたニュアンスが、以下のようなものだったら、どうでしょう。

    「あら初めまして。そんなふうに肩で風を切って偉そうに歩くあなたはいったいどちらさま?」

     からかいを含んだ、ユーモアなセリフ。状況にも一致し、大人の女が18歳の女の子に投げかけそうな言葉に、急になってきませんか。

     霧江には、
    「朱志香ちゃんはベアトリーチェを気取って、ベアトリーチェぶって歩いている」
     と見えたんじゃないかな。
     霧江はそのあと、こんなやりとりを想定してたんじゃないかしら。

    「あら初めまして。そんなふうに肩で風を切って偉そうに歩くあなたはいったいどちらさま?」
    「妾はベアトリーチェであるぞ」
    「プッ、ウフフフ、何言ってるの朱志香ちゃん。なかなか似合うわよ」


     ところが、朱志香の返答は、霧江の予想をこえていました。
    「…うすうすは想像がついているくせに、妾に敢えて名乗らそうというのか。」
    「………………………。」

     想定外の返事が返ってきたので、霧江は思わず絶句してしまいます。
    「冗談の魔女ごっこだと思っていたら、本気っぽかった」がための絶句だと考えても良いのですが、
    「18歳の小娘が、自分の詰め手をあっさり見抜いて、切り返してきた」
     から、一瞬、虚を突かれた、と考えたいような気がします。

    「初めまして。あなたのお名前を教えて下さい」
     という霧江の呼びかけは、
    「相手に、自分はベアトリーチェだと名乗らせる」
    「それによって、『何言ってんの、もう』というところに話を持って行く」
     という、「会話の詰め将棋」だったんじゃないかなっていう理解なんです。

     この手のカケヒキには自信を持っている霧江が、詰め手をかわされ、逆に沈黙させられた。これは驚いた……。という反応だというふうに見たいのです。わたしの願望的に。


     ブレザーベアトが階段を上がっていったあと、夏妃があらわれて肖像画を見て、「魔女なんてお父様の世迷い言ですよねー」といった意味の発言をします。
     それを聞いて霧江は、「いやいや、あんたのお家、魔女ウロウロしてますから! それともごまかしてんの?」といった意味のことを内心で思います。

     でも、ブレザーベアトが朱志香だとしたら、それも問題ないのです。
     霧江は朱志香の中に魔女を見たわけですが、夏妃にとっては単に、自分の娘が屋敷の中を歩いているだけのことなのです。
     もし夏妃が、階段を上がっていくブレザーベアトの後ろ姿をちらっと見たとしても、それは彼女にとっては、「娘の後ろ姿」としか認識しないわけなのです。


    ●マルフク寝具店にあったもの

     アニメ版を見て思い出したもう一題。ep4の縁寿が、マルフク寝具店で見つけた「これが魔法なのね」と思うもの。
     これはもう、「さくたろうがもう一個あった」という推理が定説になっていますよね。それに賛成です。そう思います。いまさらの論点だけれども、いちおう論じておきます。

     この場合、「さくたろうはひとつしかない楼座のハンドメイド品である」という事実に反することになるわけで、そのあたりの整合のさせかたには諸説があるみたいです。

     これは普通の考え方で、多くの人が同じ意見だと思うのですが、わたしは、
    「楼座の死後、アンチローザ社がさくたろうを商品化して流通させた」
     ということで、良いかなって思っています。

     この説の良い点は、「さくたろうは楼座が愛をこめて作った唯一無二のものであってほしい」という願望に、反しないことです。

     さくたろうのぬいぐるみは、六軒島の事件が起こった時点では、たしかに、
    「楼座が手作りした唯一無二のもの」
     であった。
     けれども、事件後、楼座の会社が勝手に商品化して売り出したので、同じデザインのぬいぐるみがあるという意味では、唯一無二ではなくなった。

     楼座が手作りしたオリジナルさくたろうと、社員がコピーした製品版さくたろうが存在するという形の理解ですね。

     未来の真実は過去の真実にまさる、というセリフがep5にあります。これはまんま「後期クイーン問題」で、さくたろうのこともきっとこれだと思います。
    「さくたろうは世界にたったひとつ」という真実は、ある時点までは真実だったけれども、その後、新たな別の真実が生まれたので、それは真実ではなくなった。

     TIPSには「型紙も消失している」とあるけれども、べつに焼却処分されたと書いてあるわけでもないし、「消失していた型紙が発見された」ということで良いのです。これも「未来の新たな真実」です。

     アンチローザ社は、オーナー・デザイナーであった社長が急死したので、たいへんな混乱に陥ったのでしょう。
     進行中だったビジネスもストップだし、新商品だって作れない。
     けれども社員たちにも生活があるわけで、なんとか会社を回していかなければならない。
     そこで、会社の方向転換がはかられる。
     楼座が好むような、高額高付加価値商品ばかりで押していくのをやめて、安価で大衆的な縫製商品を出していくことで、会社の生存を図ろうとする。ようするに、渋谷か原宿にしか売ってないような服ばかり売るのをやめて、場末のマルフク寝具店に置かれるようなものを作って売るようになる。

     たぶん、型紙はそんな折にタイミング良く発見されたのかな。
    「非業の死にみまわれた当社の前社長・右代宮楼座が、愛娘のために作った抱きまくら」
     というのは、売り出し文句として申し分ありません。六軒島事件は大ニュースですから、それに乗っかるかたちで、会社の存続をはかる。
     そのくらいのことは普通にありそうで、無理な想像ではないように思うのです。


     ベアトリーチェが「さくたろうを生き返らせられない」というのは、
    「さくたろう人形は唯一無二のもの」
     という情報にもとづくものです。
     ベアトリーチェは1986年までしかない、切り取られた六軒島の中にいるので、その時点までの情報しか持っていません。

     1998年の縁寿は、そんなベアトとマリアの黄金郷に、
    「さくたろう人形はもうひとつ(以上)ある」
     という、1986年以降に生まれた「新たな真実」を持ってきた。だから、古い真実しか持っていないベアトにはさくたろうを生き返らせられないが、新しい真実を持っている縁寿はさくたろうを生き返らせることができる。

     縁寿はベアトリーチェに「後期クイーン問題」をつきつけたのだ、という理解なのです。
     未来の真実によって、過去の真実を撃退する。この形はきれいなので、できればそういう形にもっていきたい。この形をつくるには「楼座はスペアを作っていた」とか「さくたろうは最初から市販品だった」という説では、なかなかうまくいかない感じなのです。
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