床運動で首強打した田中佑典「チームに申し訳ない」　

　足元が定まらない。５種目目の床運動で田中佑が宙返り１回ひねりの着地に失敗し、首を強打した。意識は飛んでいた。「覚えていない」。それでも次の技へ入ろうと本能が体を動かした。スタッフが駆け寄り、２１歳の予選は幕を閉じた。

　初出場ながら予選で全６種目を任された。「個人総合のチャンスをもらっていたのに残念。チームに申し訳ない」。直前の演技者だった兄の和仁は「自分が床でミスしたので、いつも以上に頑張ろうとしたと思う」と、ふがいなさを呪った。

　誰よりも勢いがあった。４種目目の鉄棒は得意種目。エース内村を上回るＤスコア（演技価値点）で着地までピタリ。大歓声を浴びた。この時点での合計点は内村を抑え全体の首位。「チームのために完璧な演技をする」という誓いを守っていた。

　立花監督は「軽い脳振盪（しんとう）。良い処置をして備えさせたい」と、団体決勝での起用をにおわせた。鉄棒で種目別決勝に進出する可能性も高い。まだ輝きを放つ舞台は残っている。「完璧」を追求する演技を、もう一度世界に見せつける。（青山綾里）

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