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あの日から、新聞づくりに携わる私たちは「届けるべき情報とは何か」という問いを、ずっと突きつけられている。来年創刊100年を迎える宮城県石巻市の夕刊紙「石巻日日(ひび)新[記事全文]
今冬や来年夏の電力不足が話題にのぼり始めた。まずは今夏のきちんとした分析が必要だ。この夏、東京電力管内のピーク需要は昨年より18%減り、東北電力では16%少なかった。[記事全文]
あの日から、新聞づくりに携わる私たちは「届けるべき情報とは何か」という問いを、ずっと突きつけられている。
来年創刊100年を迎える宮城県石巻市の夕刊紙「石巻日日(ひび)新聞」。大震災で輪転機が止まるなか、手書きの壁新聞を発行し続けたことで知られる。
激しい揺れを受け、記者たちは大津波警報を聞く前に、取材に飛び出した。それぞれの場所で逃げ延び、孤立しながらも、情報を集め続けた。それを持ち寄り、ペンで書き出した。
3月12日から6日間の号外の大見出しはこうだ。「日本最大級の地震・大津波」「各地より救難隊到着」「全国から物資供給」「ボランティアセンター設置」「支え合いで乗り切って」「街に灯(あか)り広がる」
圧倒される事実を、記者たちは目の当たりにする。だが、壁新聞に書ける分量は1千字に満たない。葛藤の末に決めたのが、被災者の混乱を避け、その行動と心を先導するために必要な情報と希望を、届けること。
避難所で見入る人々の不安を思い、あえて詳しい被災状況に踏み込むのは避けた。それがよかったかどうか、自問自答は続く。いきさつは近江弘一社長と記者らが書いた本「6枚の壁新聞」に詳しい。
あの日から、私たちは厳しい批判にさらされている。
福島原発事故の深刻さを、きちんと伝えたのか。日々の動きを追うのに精いっぱいで、政府や東京電力が公表するデータや見方をそのまま流す「大本営発表」になっていないか。
放射能の危険性を、どう評価し、いかに報道するのか。わからないこと、不確かなことを、どんな記事にすべきなのか。その難しさと、いまも日々、向き合っている。
あの日から、私たちは何度も自省している。
原発事故と津波による途方もない被害を、少しでも減らせなかったのか。「3・11」の前にその危険性を報じ、対策を促せなかった責任は免れない。
忸怩(じくじ)たる思いを込め、7月に社説特集「原発ゼロ社会」を載せた。起こりうる事態を見すえて、これからもさまざまな提言をしてゆく。
あの日から、7カ月余り。
石巻日日新聞の若い記者は、「震災からの復興は、果てしない階段を上っているようだ。多くの人に頂上は見えず、何があるのかも知らない。だからこそ情報が欲しくなる」と記す。
私たちも目を見開き、耳を澄まして情報を探り伝えていく。きょうから新聞週間が始まる。
今冬や来年夏の電力不足が話題にのぼり始めた。まずは今夏のきちんとした分析が必要だ。
この夏、東京電力管内のピーク需要は昨年より18%減り、東北電力では16%少なかった。
他の電力会社でも4〜12%減り、各社とも供給力には余裕があった。8月全体の電力消費量も、東電管内では昨年より17%少なかった。
これは、節電の成功である半面、過剰達成ともいえる。
経済産業省も「電気の使用制限という強制措置を伴う場合、目標以上の節電が行われる傾向がある」としている。
今夏の節電で社会は我慢を強いられた。経産省によれば、コストが数億円から数十億円かさんだ企業もあるという。
個々の節電にどの程度の効果があり、どこにしわ寄せがあったか。その分析は不十分だ。
大きな理由は、電力会社が詳細な需要データを公開しないからだ。電力会社は需要を大口、中規模事業者、家庭に分類しているが、ピーク時の部門別データですら大口以外は実績値を明らかにしていない。
東電は、家庭部門での一日の電力消費の推移データを「持っていない」という。需要ピーク時に大口は昨年比で29%削減されたとしつつ、家庭については類推値として「6%減」と発表しているだけだ。
停電回避に家庭の貢献は小さかったことになるが、人々の実感とは相当のズレがある。「家庭のエアコン我慢が停電回避のカギ」といったキャンペーンを展開したのだから、どこが不足し、どこが過剰だったのかなどを示して欲しい。
仮に家庭部門のデータがないとしても、電力消費の推移を把握できるスマートメーターを実験的につけている家庭がある。そうした情報をもっと生かす必要がある。サンプル調査という手法もある。それが、節電を要請した公益企業の義務だろう。
日本は欧米に比べ、昼の需要ピークと夜間の谷間との差が大きく、発電所の効率を悪くしている。必要な時間帯に効果的に節電する態勢を早急につくらなければいけない。
そのためには、メーターや送電線のスマート化を進めたうえで、ピーク時には電気代が高く、夜間は安くなる料金制度を導入する必要がある。そうすれば、家庭もピーク時の節電によってメリットが生まれる。
この冬には原発比率が高い関西、九州電力管内で電力不足が心配される。電力会社と消費者が情報を共有しながら、納得ずくで節電する社会にしたい。